最弱職【掃除士】が実は環境最強でした ~ダンジョンの浄化で世界を救う~

宵町あかり

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第37話 北方王国の協力

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朝靄が薄れ始めた頃、俺たちは出発の準備を整えていた。

ノーザリア王国への道のりは、馬車で丸一日。本来なら瞬間移動の魔法を使いたいところだが、これだけの大人数では不可能だった。

「本当に大丈夫か?」

俺は心配そうにエリーゼを見つめた。彼女の顔色は、昨夜よりは良くなっているが、まだ本調子ではない。腹部を押さえる仕草が、時折見られる。

「大丈夫よ」エリーゼは微笑んだ。「一緒に行く。あなたと離れたくないもの」

その言葉に、俺は何も言えなくなった。彼女の決意は固い。無理に止めることはできない。

ローラが小瓶を差し出してきた。薬液が淡い緑色に輝いている。

「これを、エリーゼ様に」薬師の少女は心配そうな表情を浮かべた。「体力回復薬です。でも...無理は禁物ですよ」

「ありがとう、ローラ」

エリーゼは優しく微笑み、小瓶を受け取った。

俺たちのチーム編成は、グスタフ老の助言を受けて精鋭15名に絞られていた。メインパーティーは俺、エリーゼ、リク、ミーナ、そして完全回復したカール。サポートメンバーとして、ローラ、マルコ、ソフィア、レオ。そして新たに加わったアルテミス、タオ、レイを含む6名だ。

「出発するぞ!」

リクの号令と共に、馬車が動き出した。エリーゼは俺の隣に座り、そっと肩に寄りかかってきた。

「少し、休ませて...」

彼女の囁きが、朝の冷たい空気に溶けていく。俺は彼女の手を優しく握った。その手は、いつもより冷たかった。

仲間たちの視線が温かい。特にミーナは、心配そうにこちらを見つめている。

「大丈夫だよ、ミーナ」リクが彼女の肩を叩いた。「エリーゼ様は強い。きっと大丈夫さ」



道中、窓の外の風景が次第に変わっていく。

虚無の影響だろうか。草木が枯れ始めている場所が、所々に見られた。葉が黒く変色し、幹が腐ったように崩れている木々。かつては緑豊かだった草原も、今は茶色く枯れた大地が広がっている。

「ひどいな...」カールが呟いた。「虚無の侵食が、こんなところまで」

道を行く旅人たちの表情も暗い。皆、不安そうに北の空を見上げている。第二の太陽が不規則に明滅し、まるで苦しんでいるかのようだ。

「あれを見て」ソフィアが指差した。彼女の右腕は、まだ半透明のままだ。「難民の群れよ」

北から逃げてきたのだろう。家財道具を積んだ荷車を引く家族連れが、疲れ果てた様子で南へ向かっている。子供たちの泣き声が、風に乗って聞こえてきた。

「助けたい...」レオが拳を握りしめた。「でも、今は...」

「分かってる」俺は彼の頭を撫でた。「だからこそ、俺たちは世界の穴を封じなければならない」

午後になり、ノーザリア王国の国境が見えてきた。巨大な氷の門が、陽光を受けてプリズムのように輝いている。



王都に入った瞬間、歓声が沸き起こった。

「浄化王様だ!」
「翔太様が来てくださった!」
「きっと世界を救ってくれる!」

民衆が道の両側に集まり、花を投げてくる。子供たちが無邪気に手を振り、老人たちが涙を流しながら祈りを捧げている。

その中に、一人のパン屋の親父がいた。彼の視線が俺と合った瞬間、深々と頭を下げた。

「浄化王様...」彼の声は震えていた。「あなた様なら、きっと世界を救ってくださる。私たちは信じております」

彼の隣にいた幼い娘が、恥ずかしそうに前に出てきた。小さな手に、一輪の青い花を握りしめている。

「これ、浄化王様に...」

俺は馬車から降り、膝をついて彼女と目線を合わせた。

「ありがとう。大切にするよ」

少女の顔が、花のように綻んだ。周囲から温かい拍手が起こる。

エリーゼも馬車から降りた。彼女の姿を見た瞬間、民衆がざわめいた。

「エリーゼ王女様...」
「なんと美しい...」
「まるで女神様のようだ」

エリーゼは優雅に微笑み、民衆に手を振った。その瞬間、彼女の王女としての威厳が、陽光のように辺りを包み込んだ。体調不良を微塵も感じさせない、完璧な振る舞いだった。

王都の建築物は、まさに氷の芸術品だった。透明度の高い氷で作られた尖塔が、空に向かって伸びている。壁面には精巧な彫刻が施され、クリスタルの功績を称える像や記念碑が至る所に建てられていた。

「500年前の栄光か...」ヴァルガスが呟いた。いや、まだ彼とは会っていない。この声は、護衛の騎士の一人だった。

王宮への道中、氷でできた美しい城が見えてきた。まるで巨大なクリスタルのように、七色の光を放っている。

警備兵たちが整列し、一斉に敬礼した。

「浄化王様、エリーゼ王女様、ようこそノーザリア王国へ!」



謁見の間は、息を呑むほど壮麗だった。

天井には氷のシャンデリアが輝き、床は鏡のように磨き上げられている。玉座には、白髪に青い瞳の老王が座していた。

ノーザリア国王フリードリヒ3世。60歳を超えているが、その瞳には強い意志の光が宿っている。

「ようこそ、浄化王翔太殿、そしてエリーゼ王女」

国王の声は、謁見の間に響き渡った。

「この度の虚無の脅威に際し、両国が手を携えることができて光栄です」

エリーゼが一歩前に出た。彼女の所作は完璧だった。王女としての礼儀作法が、自然に身についている。

「フリードリヒ陛下」エリーゼの声は凛としていた。「私たちも、貴国との同盟を心より歓迎いたします。共に世界を守りましょう」

国王の表情が和らいだ。

「実は、私もクリスタルの遠い親戚にあたります」彼は静かに語り始めた。「500年前の悲劇を、繰り返させるわけにはいきません」

そして、国王は立ち上がった。

「ノーザリア王国は、全軍の半分、2000名を提供しましょう。さらに、我が国が誇る最新の魔導兵器も貸与いたします」

俺たちは驚きの声を上げた。それは、予想以上の支援だった。

「補給物資も全面的に支援します」国王は続けた。「そして、これを」

侍従が、古い羊皮紙の巻物を持ってきた。

「世界の穴の正確な位置と、周辺地域の詳細地図です。我が国の斥候隊が命がけで集めた情報です」

ソフィアが地図を広げた。その詳細さに、彼女も息を呑んだ。

「これは...素晴らしい」彼女の声が震えた。「虚無の活動パターンまで分析されている」

「そして」国王が手を挙げた。「我が国最強の騎士を紹介しましょう。ヴァルガス!」

重い扉が開き、一人の男が入ってきた。

銀髪に無数の傷跡。歴戦の勇士であることが一目で分かる。そして、その存在感。レベル85という圧倒的な力が、空気を震わせている。

「ヴァルガス・ノーザリア、参上いたしました」

彼は片膝をついて礼をした。



訓練場に場所を移し、ヴァルガスとリクの模擬戦が始まった。

「レベル50の真勇者か」ヴァルガスは剣を構えた。「その力、見せてもらおう」

リクも剣を抜いた。彼の全身から、金色のオーラが立ち上る。

「行くぞ!」

二人の剣が激突した。金属音が訓練場に響き渡る。

レベル差は35もある。普通なら勝負にならないはずだ。しかし、リクは互角に渡り合っていた。真勇者の力が、レベル差を埋めている。

「素晴らしい!」ヴァルガスが笑った。「これほどの若者は初めてだ!」

激しい剣戟の応酬。二人の動きは、もはや常人には見えないほどの速さだった。

数分後、両者は同時に剣を下ろした。

「引き分けだな」ヴァルガスが息を整えながら言った。「君は本物の勇者だ」

そして、彼の表情が変わった。悲しみと決意が入り混じった、複雑な表情。

「実は...」ヴァルガスの声が震えた。「私は、クリスタル様に命を救われた者です」

訓練場が静まり返った。

「20年前、私はまだ駆け出しの騎士でした」彼は語り始めた。「虚無の化物に襲われ、死にかけていた時...クリスタル様が現れたのです」

涙が、歴戦の騎士の頬を伝った。

「あの方は、すでに体の一部が虚無に侵されていました。それでも、私を救ってくださった。『生きなさい』と...」

ヴァルガスは拳を握りしめた。

「あの方を解放することが、私の使命です。この命、世界のために使わせてください」

彼の言葉に、皆が心を打たれた。

「お前たちの噂は聞いている」ヴァルガスは俺たちを見回した。「虚無と戦い、人々を救う英雄たちだと。共に戦わせてくれ」

そして、彼は振り返った。

「騎士団の諸君!」

訓練場の周囲に、100名の騎士たちが整列していた。皆、精鋭中の精鋭だ。

「我々も同行を志願する!」騎士たちが声を揃えた。

こうして、俺たちの軍団は総勢2100名の大軍団となった。戦力は大幅に向上し、希望が見えてきた。



夜、大規模な作戦会議が開かれた。

テーブルの上に、3D魔法投影で地形が映し出される。世界の穴の周辺が、立体的に再現されていた。

「直径約1kmの巨大な穴」ソフィアが説明した。「周囲10kmは完全な虚無地帯。通常の生命は近づけません」

各部隊の役割分担が決められていく。主力部隊、支援部隊、補給部隊。綿密な計画が立てられた。

「補給線の確保が重要だ」ヴァルガスが地図を指差した。「ここと、ここに中継地点を設ける」

エリーゼが手を挙げた。

「待って」彼女の声は静かだが、確固たる意志が込められていた。「民間人の避難も同時に行うべきです」

皆が彼女を見た。

「世界の穴の周辺には、まだ多くの村が残っています」エリーゼは続けた。「彼らを見捨てるわけにはいきません」

「しかし、それでは作戦が...」誰かが言いかけた。

「人を救うことが、我々の使命ではないのですか?」

エリーゼの言葉に、全員が頷いた。人道的配慮の重要性を、改めて認識させられた。

先遣偵察隊の編成も決まった。俺たち精鋭15名、ヴァルガス率いる騎士団20名、そして偵察専門部隊10名。

「出発は明朝」国王が宣言した。「今夜は英気を養いましょう。祝宴を用意しています」

盛大な祝宴が始まった。

ノーザリア料理が次々と運ばれてくる。氷魚の刺身、雪鳥の蒸し焼き、凍土茸のスープ。どれも絶品だった。氷の彫刻が美しく輝き、音楽と踊りが会場を彩る。

「この戦いが終わったら...」

リクがミーナの隣で呟いた。彼の頬が赤い。酒のせいだけではないだろう。

「何?」ミーナが振り返った。

「いや、その...」リクは照れながら、ミーナの手をそっと握った。「一緒に、どこか旅でも...」

ミーナの顔も赤くなった。二人の様子に、仲間たちから温かい冷やかしの声が上がる。

「おいおい、熱いねぇ!」
「若いっていいなぁ!」

和やかな雰囲気の中、俺の視界の端で何かが揺れた。

エリーゼが突然よろめいた。グラスを持つ手が微かに震え、彼女の顔から一瞬で血の気が引いた。額に冷や汗が浮かび、唇が青ざめていく。

そして、腹部を押さえた瞬間――

服の下で何かが一瞬光った。紋様だ。あの謎の紋様が、淡く脈打つように輝いていた。まるで彼女の体の中に、別の生命が宿っているかのように。

エリーゼの瞳が一瞬、恐怖に染まった。自分の体に何が起きているのか分からないという、原始的な恐怖。しかし彼女はすぐにその表情を隠し、無理に微笑んだ。

俺だけが、その全てに気づいた。周りの誰もが笑い、酒を酌み交わしている中で、俺だけが彼女の苦痛を見ていた。

「エリーゼ、本当に大丈夫か?」

俺は彼女の耳元で囁いた。

「...分からない」

彼女の答えは、俺を不安にさせた。

その時、ヴァルガスが近づいてきた。彼の表情は厳しい。

「実は、警告しておきたいことがある」彼は声を潜めた。「最近、斥候が戻らない。世界の穴に送った偵察隊の半数が」

俺たちの表情が凍りついた。

「さらに」ヴァルガスは続けた。「世界の穴が拡大している。一日に数メートルずつだが、確実に」

「時間がない」俺は呟いた。

窓の外を見ると、不穏な光景が広がっていた。

第二の太陽が激しく点滅している。まるで、何かと戦っているかのように。北の空には不気味な黒雲が立ち込め、遠くから不気味な音が響いてくる。まるで、世界が軋んでいるような音だ。

「明日、必ず偵察を成功させる」

俺は決意を新たにした。エリーゼの手を握る。

「一緒に、世界を守ろう」

彼女は微笑んで頷いた。しかし、その笑顔の奥に、不安の影が見え隠れしていた。

明日、いよいよ世界の穴への偵察が始まる。クリスタルの警告通り、虚無王覚醒まで一ヶ月を切っている。

時間との戦いが、始まろうとしていた。

━━━━━━━━━━━━━━━
【翔太】
 職業:真なる浄化王/愛の浄化王
 レベル:100
 HP:15,000 / 15,000
 MP:8,000 / 8,000
 
 スキル:
 ・聖浄化 Lv.MAX
 ・愛の結晶化 Lv.9
 ・調和浄化 Lv.8
 ・聖愛浄化・世界樹 Lv.2
 
 特殊装備:
 ・太陽の欠片(第二の太陽より授与)
━━━━━━━━━━━━━━━

━━━━━━━━━━━━━━━
【エリーゼ】
 職業:王女/古代封印術師の血統
 レベル:42
 HP:3,800 / 4,200
 MP:5,500 / 5,500
 
 状態:体調不良・腹部の紋様活性化
 
 スキル:
 ・王族の威光 Lv.5
 ・封印術基礎 Lv.3
━━━━━━━━━━━━━━━

━━━━━━━━━━━━━━━
【パーティーメンバー】
 
 リク(真勇者)Lv.52
  HP:8,500 / 8,500
  MP:3,500 / 3,500
  スキル:勇者剣術 Lv.8、破邪の一撃 Lv.6
 
 ミーナ(大魔導師)Lv.56
  HP:4,500 / 4,500
  MP:9,000 / 9,000
  スキル:上級魔法 Lv.9、希望の灯火 Lv.2
 
 カール(聖騎士)Lv.46
  HP:7,000 / 7,000
  MP:2,800 / 2,800
  スキル:聖剣術 Lv.7、絶対防御 Lv.5
 
 ヴァルガス(ノーザリア最強騎士)Lv.85
  HP:12,000 / 12,000
  MP:4,000 / 4,000
  スキル:極剣術 Lv.MAX、戦場の覇者 Lv.8
━━━━━━━━━━━━━━━

━━━━━━━━━━━━━━━
【軍団編成】
 総勢:2,100名
 ・精鋭部隊:15名
 ・ノーザリア騎士団:100名
 ・ノーザリア王国軍:2,000名
 ・魔導兵器:3種類配備
 
【状況】
 虚無王覚醒まで:約30日
 世界の穴:継続拡大中
 第二の太陽:戦闘状態
━━━━━━━━━━━━━━━
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