最弱職【掃除士】が実は環境最強でした ~ダンジョンの浄化で世界を救う~

宵町あかり

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第60話 永遠の掃除士として

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双子の誕生から、一年が過ぎた。

朝の光が、王都を優しく包み込む。街のあちこちから、活気ある声が聞こえてくる。かつて虚無の脅威に怯えていた人々は、今では希望に満ちた日々を送っていた。

「パ、パ!」

ソウタが元気よく手を振る。1歳になった男の子は、父親譲りの好奇心旺盛な性格で、何にでも興味を示した。小さな手足をばたつかせ、まるで世界のすべてを掴もうとするかのように。

「ま、ま...」

ヒカリが静かに微笑む。母親に似た優しい瞳で、じっと世界を観察している。その穏やかな表情は、まるですべてを理解しているかのような深さを持っていた。

「おはよう、ソウタ、ヒカリ」

翔太が二人を抱き上げる。小さな体から伝わる温もりが、何よりも愛おしい。この重み、この温かさが、自分が守るべきものの確かな証だった。

「今日は特別な日だよ」

エリーゼが朝食の準備をしながら言った。双子を産んでから、彼女はより一層美しくなった。母としての優しさと、聖女としての威厳が調和している。

「二人の初めての誕生日だもの」

窓の外から、掃除士学校の朝礼の声が聞こえてくる。第二期生も加わり、100名を超える生徒たちが、新しい時代の掃除士を目指して学んでいた。

最弱職と呼ばれた職業は、今では誰もが憧れる存在となっていた。



掃除士学校の訓練場では、朝から活気にあふれた声が響いていた。

「基本が大事だ!まずは雑巾の絞り方から!」

カールが熱心に指導している。かつて聖騎士団長を務めた彼は、今では掃除士学校の教官として、次世代の育成に情熱を注いでいた。新婚のレオと共に、理論と実践の両面から生徒たちを導いている。

「カール先生、質問です!」

第二期生の少女が手を挙げる。東大陸から留学してきた彼女は、煌国の技術と浄化術の融合を学びに来ていた。

「なぜ掃除士は、戦士よりも尊敬されるようになったんですか?」

カールは優しく微笑んだ。

「破壊は一瞬だが、浄化と再生には時間と愛情が必要だからだ。翔太様が教えてくれたことだよ」

訓練場の片隅では、シンが首席として後輩たちを指導していた。卒業後も助教として残った彼は、理論と実践の橋渡し役として活躍している。

「浄化の本質は、相手を理解することです。汚れも、元は何かだったはず。その本質を見極めることが大切なんです」

生徒たちが熱心にメモを取る。彼らの目は、かつての翔太と同じように、希望に輝いていた。

校舎の屋上から、翔太がその様子を見守っていた。

「みんな、成長してるな」

自分が蒔いた種が、確実に芽吹いている。掃除士という職業の価値が、世界中に広まっている。それは、武力ではなく愛と浄化の力で世界を変えられることの証明だった。



正午、王宮の会議室では月例の次元交流会が開かれていた。

安定化した次元ゲートを通じて、翔太Bたちが定期的に訪れるようになってから、技術交流は飛躍的に進歩していた。

「第3世界との接触に成功しました」

ソラが報告書を広げる。大気浄化師として月例講師も務める彼女は、掃除士学校でも人気の教師だった。

「純粋科学の世界ですが、環境問題で苦しんでいるようです」

「掃除士の概念が役立ちそうだな」

翔太が頷く。

「物理的な浄化だけでなく、概念としての『きれいにする』という思想も伝えられれば」

ミズキが付け加える。

「第4世界からも連絡がありました。精霊と人間が共生する世界。彼らは自然との調和を重視していて、我々の浄化術に興味を持っています」

「そして第5世界ですが...」

翔太Bの表情が深刻になる。

「救援隊の準備は進んでいます。3ヶ月後には出発できるでしょう」

システムが暴走した世界。そこで苦しむ人々を救うため、次元を超えた救援隊が編成されつつあった。

「うちからも精鋭を送ります」

翔太が決意を込めて言う。

「掃除士は、どんな汚れも浄化する。それが次元を超えた汚れであっても」

会議の合間、ソラがエリーゼに近づいてきた。

「双子ちゃんたち、元気?」

「ええ、とても。今日で1歳になるの」

「まあ!おめでとう。うちの子と同い年ね。今度、一緒に遊ばせましょう」

次元を超えた友情が、子供たちの世代にも引き継がれていく。それは、新しい時代の希望だった。



午後、街の広場では市民たちが双子の誕生日を祝う準備をしていた。

「掃除士様の子供たちの誕生日だ!」

「盛大に祝おうぜ!」

商店主たちが協力して、巨大なケーキを用意している。子供たちは色とりどりの風船を持って走り回り、大人たちは飾り付けに精を出していた。

リクとミーナも駆けつけてきた。第一子を妊娠中のミーナは、お腹を優しく撫でながら微笑んでいる。

「翔太、エリーゼ、おめでとう」

リクが大きなプレゼントを抱えている。

「これ、俺たちからの贈り物。小さな剣と杖のおもちゃだけど」

「でも本当は」

ミーナがいたずらっぽく笑う。

「掃除道具のおもちゃの方が喜ぶかもね」

ケンとアルテミスも到着した。精霊との共生研究で大きな成果を上げた二人は、新しい浄化術の開発に成功していた。

「精霊浄化術、ついに完成したよ」

ケンが誇らしげに報告する。

「自然の力を借りて、より優しく浄化できる。子供でも使える技術だ」

アルテミスが小さな光の精霊を呼び出す。

「ほら、ソウタちゃん、ヒカリちゃん。精霊さんだよ」

双子が目を輝かせて、光の精霊に手を伸ばす。精霊も優しく二人の周りを舞い、まるで祝福しているかのようだった。

ヴァルガスとグレイスの夫婦も、医療施設から駆けつけた。

「次世代の治療師も育ってきています」

グレイスが嬉しそうに報告する。

「浄化術と治療術を組み合わせた新しい医療。もう、治せない病気はほとんどありません」

リン・シャオからも祝いの品が届いた。東大陸の伝統的な護符と、最新の浄化装置の設計図。

『東西の技術融合がさらに進みました。双子様の成長を心から祝福します』

国王も孫バカぶりを全開にしていた。

「ソウタは絶対に剣士の才能がある!見てみろ、この握力!」

「ヒカリは魔法使いじゃ!この賢そうな目を見ろ!」

王妃が苦笑しながらたしなめる。

「あなた、何になってもいいでしょう。健康であれば」

「そ、そうじゃな...でも、じいじとしては期待してしまうのじゃ」



夕暮れ時、王宮の庭園で誕生日パーティーが開かれた。

1歳になった双子が、皆の前でお披露目される。ソウタは元気に這い回り、ヒカリは静かに周りを観察している。

「さあ、ケーキカットの時間よ」

エリーゼが双子を抱いて、巨大なケーキの前に立つ。

その時——

「パパ!」

ソウタが初めてはっきりと言葉を発した。小さな手を翔太に向けて伸ばしている。

会場がどよめく。

「言った!パパって言った!」

翔太が感動で目を潤ませる。

すると、ヒカリも負けじと口を開いた。

「ママ...」

小さな声だったが、確かにエリーゼを見て言った。

「ヒカリも!ママって!」

エリーゼが涙を流しながら、娘を抱きしめる。

その瞬間、システムが勝手に反応した。

《祝!初めての言葉!》

《ソウタ Lv.2に成長!》

《ヒカリ Lv.2に成長!》

空中に花火のような演出が広がる。

「もうレベル上がるのか」

翔太が苦笑する。

「システムも相変わらずだな」

皆が笑い声を上げる中、記念撮影が行われた。翔太とエリーゼを中心に、双子を抱いて、仲間たち全員が笑顔で並ぶ。

この瞬間を、永遠に残したい。平和な世界で、家族や仲間と過ごす幸せな時間。これこそが、戦い抜いて手に入れた本当の宝物だった。



パーティーが終わり、静かな夜が訪れた。

翔太は一人、掃除士学校の屋上に立っていた。二つの月が静かに王都を照らしている。第二の太陽は夜には光を抑え、優しい月明かりのような輝きを放っていた。

最後の虚無調査の報告書を手にしている。

『世界各地の虚無反応:完全消滅確認』

『第二の太陽:安定稼働中』

『世界浄化レベル:100%達成』

すべての脅威が去った。本当の平和が訪れた。

でも、翔太は警戒を緩めない。平和は、守り続けなければ失われる。それは、この一年で学んだ大切な教訓だった。

「考え事?」

振り返ると、エリーゼが立っていた。双子を寝かしつけてきたのだろう。

「うん。これからのことを」

「第5世界の救援?」

「それもある。でも、もっと先のことも」

翔太は遠い空を見上げる。

「ソウタとヒカリが大きくなった時、どんな世界になっているだろう」

「きっと、もっと素晴らしい世界よ」

エリーゼが寄り添う。

「だって、あなたがいるもの。永遠の掃除士が」

「永遠の掃除士か...」

翔太が苦笑する。

「大げさだな」

「でも、本当でしょう?あなたは死ぬまで掃除士でいるつもりなんでしょう?」

「...うん」

翔太が頷く。

「最弱職と呼ばれたこの職業が、今では最も尊い職業になった。でも、それは結果であって、本質じゃない」

街を見下ろす。夜でも、あちこちで掃除士たちが働いている。街を清潔に保ち、人々の生活を支えている。

「掃除は、愛情だ。大切にしたいという気持ち。きれいにしたいという願い。それは、どんな時代になっても変わらない」

「だから私は、永遠の掃除士でいる」

エリーゼが優しく微笑む。

「私も一緒よ。永遠の掃除士の妻として」

二人は手を繋いで、静かに夜空を見上げた。

そこには、無数の星が輝いている。それぞれの星が、それぞれの世界。まだ見ぬ次元には、助けを待つ人々がいるかもしれない。

「行こう」

翔太が決意を込めて言う。

「この世界も、他の世界も、全部きれいにしよう」

「ええ」

エリーゼが頷く。

「家族みんなで」



——10年後。

掃除士学校の入学式。

かつての小さな校舎は、今では王都最大の教育機関となっていた。各国から留学生が集まり、次元を超えた学生すら在籍している。

「新入生代表、佐藤ソウタ」

名前を呼ばれ、11歳の少年が壇上に上がる。父親譲りの黒髪と、強い意志を秘めた瞳。腰には、小さな掃除道具入れを装着している。

「僕は、父さんのような掃除士になります!」

堂々とした宣誓に、会場から温かい拍手が湧き起こる。

「同じく新入生代表、佐藤ヒカリ」

優雅な足取りで、11歳の少女が並ぶ。母親譲りの美しさと、聡明な眼差し。手には、小さな杖を持っている。

「私は、治療もできる掃除士を目指します」

二人の姿を、学校長席から翔太が見守っている。40歳を迎えた彼は、より一層の風格を身に着けていた。しかし、その本質は変わらない。今でも現場で掃除を続ける、現役の掃除士だった。

エリーゼは3人目の子供を抱いて、観客席から微笑んでいる。5歳の末っ子は、興味深そうに入学式を見つめていた。

「パパ、お兄ちゃんたち、かっこいい!」

「そうね。きっと素晴らしい掃除士になるわ」

会場には、懐かしい顔ぶれが揃っていた。

リクとミーナの息子も入学している。やんちゃな性格で、既にトラブルメーカーの予感がした。

カールとレオは、教師として新入生を迎えている。10年の歳月は二人をベテラン教師に成長させていた。

ケンとアルテミスの娘は、精霊と会話できる特別な才能を持っていた。

次元ゲートから、向こうの世界の学生たちも到着した。

翔太Bとソラの息子、環境浄化術の天才と呼ばれている。

第3世界からは、科学技術に長けた少年。

第4世界からは、精霊と共に育った少女。

そして——

「第5世界救出作戦、成功しました!」

伝令が駆け込んでくる。

会場が歓声に包まれた。10年かけて準備した救援作戦が、ついに実を結んだ。

「第5世界の人々は無事です。システムの暴走も止まりました」

翔太が立ち上がり、宣言する。

「これで、確認されている全ての次元が平和になった」

再び大きな拍手が湧き起こる。

でも翔太は続ける。

「しかし、まだ見ぬ世界があるかもしれない。困っている人々がいるかもしれない」

「だから我々は、学び続ける。成長し続ける。そして——」

学生たちを見渡す。

「次の世代に、この想いを引き継いでいく」

ソウタとヒカリが、父親を誇らしげに見上げている。

入学式が終わり、新入生たちが教室に向かう中、ソウタが翔太に駆け寄ってきた。

「父さん、僕、絶対に立派な掃除士になるから!」

「ああ、期待してるよ」

翔太が息子の頭を優しく撫でる。

ヒカリも近づいてきた。

「私は、新しい浄化術を開発したいの。もっと優しく、もっと効率的に」

「素晴らしい目標だ」

家族が集まり、一緒に歩き始める。

掃除士学校の廊下は、相変わらずピカピカに磨かれている。生徒たちが毎日、心を込めて掃除しているからだ。

「あ、父さん」

ソウタが立ち止まる。

「ここ、少し汚れてる」

小さな埃を見つけたソウタが、腰の道具入れから雑巾を取り出す。

「よし、一緒にやろう」

翔太も雑巾を取り出す。

「私も」

ヒカリが加わり、エリーゼも微笑みながら手伝う。

家族全員で、廊下の小さな汚れを拭き取る。それは、ごく当たり前の日常の一コマ。でも、この小さな行為の積み重ねが、世界を変えてきたのだ。

「きれいになった!」

ソウタが満足そうに笑う。

「うん、ピカピカだ」

翔太が微笑む。

遠くから、新入生たちの元気な声が聞こえてくる。新しい冒険が、新しい出会いが、彼らを待っている。

そして翔太は——

永遠の掃除士として、これからも世界を見守り続ける。

物語は、まだ始まったばかりだ。

━━━━━━━━━━━━━━━
【最終ステータス】
翔太 Lv.200【永遠の掃除士】
HP: 99999/99999
MP: 50000/50000

双子(1歳)
ソウタ Lv.2【掃除士の子】
ヒカリ Lv.2【聖女の子】

10年後
ソウタ Lv.10【見習い掃除士】
ヒカリ Lv.10【見習い治療師】
━━━━━━━━━━━━━━━
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