最弱職【掃除士】が実は環境最強でした ~ダンジョンの浄化で世界を救う~

宵町あかり

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第59話 双子の誕生

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次元浄化会議から三日後の夜明け前。

王都はまだ静かな眠りの中にあった。二つの月が西の空に傾き、もうすぐ朝日が昇ろうとしている時刻。

「んっ...」

エリーゼが小さく呻いた。

お腹の奥から、これまでとは違う強い痛みが波のように押し寄せてくる。前駆陣痛とは明らかに違う、本格的な痛み。

「翔太くん...」

隣で眠る夫の肩を、震える手で揺すった。

「翔太くん、始まったみたい」

その言葉に、翔太が飛び起きた。

「え?本当に?今?」

普段は冷静な彼も、この瞬間ばかりは慌てていた。

「大丈夫、落ち着いて」

痛みに耐えながらも、エリーゼは微笑もうとした。

「あなたが慌ててどうするの」

「そ、そうだね。すぐにグレイスを呼ぶ」

翔太は素早く着替えながら、使用人を呼んだ。

いよいよ、新しい命が生まれようとしていた。



王宮医療棟への道のりは、いつもより長く感じられた。

夜明け前の静かな廊下を、翔太がエリーゼを支えながら歩く。時折、陣痛の波が訪れると、エリーゼは立ち止まって深呼吸を繰り返した。

「大丈夫?休む?」

「平気よ。でも...急ぎましょう」

医療棟では、既にグレイスと助産師たちが待機していた。前駆陣痛が始まってから、いつでも対応できるよう準備していたのだ。

「エリーゼ様、こちらへ」

グレイスが優しく導く。新婚のヴァルガスも心配そうに見守っていた。

「すぐに国王陛下たちにも連絡を」

「もう向かってますよ」

使用人の言葉通り、間もなく国王と王妃が駆けつけてきた。

「エリーゼ!」

王妃が娘の手を取る。

「母上...」

「大丈夫よ。私もあなたを産むときは大変だったけど、きっと大丈夫」

国王は落ち着かない様子で歩き回っている。

「じいじになる日が来た!ついに、ついにじいじに!」

興奮を隠せない国王に、王妃が苦笑した。

「あなた、落ち着いて。エリーゼの前では」

「そ、そうだな」

国王は深呼吸をして、エリーゼの頬に優しく手を当てた。

「頑張るんだぞ、エリーゼ。わしたちがついている」

「はい、父上」



朝日が昇り始めた頃、本格的な陣痛が始まった。

分娩室の中で、エリーゼが必死に呼吸を整えている。翔太は彼女の手を握り締め、ずっと側にいた。

「一緒にいるから」

「うん...」

痛みの波が押し寄せる度に、エリーゼは翔太の手を強く握った。

その時、突然システムが勝手に反応し始めた。

《頑張れ!新しい命!》

《母は強し!》

空中に応援メッセージが浮かび上がる。

「こんな時まで...」

グレイスが苦笑するが、その表情は温かい。

「でも、システムも祝福してるのね」

エリーゼが痛みの合間に微笑んだ。

時間が経つにつれ、陣痛の間隔が短くなっていく。

「もうすぐですよ」

助産師が励ます。

「あと少し頑張って」

廊下では、仲間たちが心配そうに待っていた。

リクとミーナ、カールとレオ、ケンとアルテミス。皆がエリーゼを応援している。

「大丈夫かな...」

ミーナが不安そうに呟く。

「エリーゼは強い。きっと大丈夫だ」

リクが力強く言う。



正午頃、ついにその瞬間が訪れた。

「頭が見えてきました!」

助産師の声に、室内の緊張が最高潮に達する。

「もう一息です!」

エリーゼが最後の力を振り絞る。

そして——

「おぎゃあああああ!」

元気な産声が響き渡った。

「男の子です!元気な男の子ですよ!」

グレイスが赤ちゃんを取り上げる。

小さな命が、力強く泣いている。その顔は、まるで翔太を小さくしたような顔立ちだった。

「翔太くんにそっくり...」

エリーゼが涙を浮かべながら微笑む。

「名前は?」

「ソウタ」

翔太が即座に答えた。

「創造の創と、太陽の太で、創太」

システムが再び反応する。

《新たな命の誕生を祝福!》

《ソウタ Lv.1【掃除士の子】》

「レベル1から始まるのか」

翔太が微笑む。

「当たり前でしょう」

エリーゼが優しく笑った。

しかし、まだ終わりではなかった。

「エリーゼ様、もう一人来ますよ!」

助産師の声に、皆が息を飲む。

「双子の二人目です!」



ソウタの誕生から30分後。

再び陣痛が始まり、エリーゼが頑張っている。既に一人産んだ疲労があるが、彼女は必死に力を振り絞った。

「もう少しよ、エリーゼ」

王妃が娘を励ます。

「頑張って」

翔太もずっと手を握っている。その手から、温かい励ましが伝わってくる。

そして——

「おぎゃあああ!」

今度は少し高い声の産声が響いた。

「女の子です!可愛い女の子ですよ!」

グレイスが二人目の赤ちゃんを取り上げる。

この子はエリーゼに似た美しい瞳をしていた。まだ生まれたばかりなのに、その目は澄んでいて、まるで世界を見つめているかのよう。

「エリーゼに似てる...」

翔太が感動の涙を浮かべる。

「名前はヒカリ」

エリーゼが優しく言った。

「光...希望の光」

《双子の誕生、奇跡的!》

《ヒカリ Lv.1【聖女の子】》

システムの祝福が続く。

エリーゼは安堵の涙を流した。長い戦いが終わり、二つの新しい命が無事に生まれた。

「よく頑張ったね、エリーゼ」

翔太が妻の額にそっとキスをする。

「うん...私たち、親になったのね」



分娩室の外では、歓声が上がっていた。

「双子だって!」

「男の子と女の子!」

リクとミーナが駆けつけてきた。

「おめでとう!無事でよかった」

「俺たちも頑張らないとな」

リクがミーナの肩を抱く。新婚の二人も、いずれは親になる日が来るだろう。

カールとレオも祝福に訪れた。

「未来の掃除士候補ですね!」

カールが嬉しそうに言う。

「でも、何になってもいいんだよ」

レオが優しく微笑む。

ケンとアルテミスも到着した。

「精霊たちも祝福してます」

アルテミスが手を掲げると、小さな光の精霊たちが舞い始めた。医療棟全体が、温かい光に包まれる。

グレイスとヴァルガスが診察を終えて出てきた。

「母子ともに健康です」

グレイスの言葉に、皆が安堵の息をつく。

「本当によかった」

リン・シャオから祝電も届いた。

『東の大陸からもお祝いを申し上げます。次回お会いする時を楽しみにしています』

守護精霊のルクスも飛んできて、小さな光の花を降らせた。

「新しい命の誕生を、精霊界も祝福しています」



夕方になり、ようやく静けさが戻った病室。

翔太とエリーゼ、そして生まれたばかりの双子だけの時間。

エリーゼはベッドに横になり、両腕に一人ずつ赤ちゃんを抱いている。ソウタは元気に手足を動かし、ヒカリは静かに眠っていた。

「小さいね」

翔太が優しく赤ちゃんたちを見つめる。

「でも、こんなに愛おしいものはない」

「この子たちを守っていこう」

エリーゼが幸せそうに微笑む。

「世界じゃなくて、今度は家族を」

翔太がソウタの小さな手に指を差し出すと、赤ちゃんはぎゅっと握った。その小さな力に、翔太の心が温かくなる。

ヒカリが目を開けた。エリーゼを見つめて、まるで微笑んでいるような表情を見せる。

「笑った?」

「まだ早いでしょう」

でも二人には、確かに赤ちゃんたちが喜んでいるように見えた。

窓の外では、二つの太陽が西の空に沈んでいく。オレンジ色の光が、四人を優しく包み込む。

「新しい時代の始まりだ」

翔太が呟く。

「この子たちが生きる世界を、もっと素晴らしくしよう」



その頃、王宮では祝賀の準備が進んでいた。

「王国に新たな希望が生まれた!」

国王が高らかに宣言する。

「双子の誕生を、国を挙げて祝おう!」

街中がお祝いムードに包まれ始めた。商店は祝賀セールを始め、酒場では乾杯の声が響く。

システムも勝手に花火を打ち上げ始めた。実体のない光の花火が、夜空を彩る。

《祝!双子誕生!》

《新時代の幕開け!》

「またやりすぎてる...」

翔太が苦笑するが、今日ばかりは許そうと思った。

病室に、小さなメッセージカードが届いた。

『おめでとう、もう一人の私』

翔太Bからのメッセージだった。

『次元を超えて、新しい命の誕生を祝福します。きっと素晴らしい子たちになるでしょう』

次元の向こうからも、祝福が届いている。

翔太は窓辺に立ち、夜空を見上げた。

「この子たちが大きくなる頃には、次元を超えた交流も当たり前になるかもしれない」

「掃除士として?」

エリーゼが冗談めかして言う。

「父親として」

翔太が振り返って微笑む。

「そして、一人の人間として」

新しい命の誕生は、新しい希望の始まり。

平和な世界で、家族として生きていく。

それが今の翔太とエリーゼの、一番の幸せだった。

━━━━━━━━━━━━━━━
【ステータス】
翔太 Lv.200【創世の掃除士】
HP: 99999/99999
MP: 50000/50000

新たな命
ソウタ Lv.1【掃除士の子】
ヒカリ Lv.1【聖女の子】
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