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第50話 裏切り者の烙印
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翌朝、遺跡に朝日が差し込んでいた。
レオンと五体、リヴィエル、シグレは遺跡の奥を探索していた。石造りの回廊を進むと、これまで見たことのない部屋が次々と現れる。古代の住居跡、祭壇、そして——
「殿下、これは」
シグレが立ち止まり、目の前に広がる光景に息を呑んだ。石棚が壁一面に並ぶ図書室——古代の知識が眠る場所だった。
古代の文献が無数に保管されている。羊皮紙、石板、魔法で保存された書物——500年前の知識が、ここに眠っていた。
レオンは目を輝かせながら、図書室全体を見回した。
「すごい...古代の記録がこんなに残っているなんて」
研究者としての興奮が胸を満たす。前世の科学知識と、この世界の魔法——両方を学んできたレオンにとって、古代文献は宝の山だった。
(500年前の記録...失われた知識が、ここに)
シグレは慎重に文献を一冊取り出し、ページをめくる。
「古代語で書かれていますね。読めますか?」
レオンは自信を持って頷いた。
「シグレ先生に習ったおかげで、何とか読めます」
フィルミナたちも興味津々で近づいてくる。でも、エオリアだけは少し離れた場所で、不安そうにしていた。
最初の文献を手に取り、レオンはゆっくりとページを開く。
「第5覚醒個体、エオリア...」
エオリアの名前が、最初の行に記されていた。
「風の守護者として生まれた」
「自由を愛し、変化を促す存在」
「調和の中で、最も自由な力を持つ」
ここまでは、エオリアを称賛する内容だった。フィルミナが安心したように微笑む。
でも、次のページをめくった瞬間——
レオンの表情が凍りついた。
地上では、ガルヴァンが通信魔法で報告を聞いていた。
「古代図書室発見...機密情報の宝庫だ!」
メルキオールが祈りを捧げる。
「神の記録を発見されたか」
チェン・ロンが冷静に付け加える。
「殿下は、いつも重要な発見をされる」
---
レオンの手が震えている。
「これは...」
文献に書かれた内容——それは、あまりにも衝撃的だった。
「エオリア、調和を破壊せし裏切り者」
「500年前、第1から第4覚醒個体を攻撃」
「四体が傷つけられた記録あり」
「エオリアは追放を受けるべき存在」
室内が静まり返る。重苦しい沈黙が、図書室を包んだ。
フィルミナは文献を覗き込み、その内容を読むにつれて顔が青ざめていく。
「そんな...エオリアが私たちの前の世代を?」
テラが額に手を当て、深く集中する。
「記憶が...確かに攻撃された記憶がある」
マリーナは混乱した様子で、エオリアと文献を交互に見つめた。
「でも、どうして?どうしてそんなことを?」
クリスタは文献を見つめながら、何かを考え込んでいる。
「待って...何か違う気がする。この記述、変じゃない?」
リヴィエルの表情が警戒に変わり、剣に手を伸ばしかける。
「殿下、これは罠かもしれません。慎重に」
エオリアが文献を見て、顔が真っ青になった。震える声で言う。
「違う...私は裏切ってない!」
必死の訴え——でも、文献という証拠が目の前にあった。
「信じて...お願い」
涙声で訴えるエオリア。青灰色の瞳に、涙が浮かんでいた。
「でも、証拠が...」
絶望的な表情で、エオリアは俯いた。
レオンが文献を見つめる。
(裏切り者...?でも、エオリアはそんな人じゃない気がする)
研究者としての冷静さと、人としての直感——両方が、レオンの心の中で戦っていた。
(何かがおかしい...この記録、本当なのか?)
フィルミナは複雑な表情でエオリアを見つめていた。
(証拠がある...でも、昨日の優しさは嘘じゃなかった)
リーダーとして、真実を見極めなければならない。でも、心のどこかで——エオリアを信じたかった。
---
シグレがさらに奥の棚から、別の文献を発見する。
「殿下...さらに記録があります」
レオンはその文献を受け取り、ページを開いた。そこには、さらに詳細な証拠が記されていた。
「エオリア、500年前の冬至の日、遺跡にて四体を攻撃」
具体的な日時が記載されていた。
次の文献には、破壊された遺跡の図面が描かれている。そこには「エオリアの魔力により破壊」という注釈があった。
さらに別の箱から、魔力痕跡が残された結晶が見つかる。シグレが魔力を感じ取り、驚いた表情を浮かべた。
「これは...エオリアの魔力と一致します」
証拠が次々と積み重なっていく。
エオリアは必死に弁明しようとするが、声が震えて言葉にならない。
「確かに...この日、私はここにいた」
「でも、攻撃なんてしてない!」
「誰かが...誰かが私の力を使った」
泣きながら訴えるエオリア。
「信じて...本当に違うの」
でも、証拠はあまりにも具体的だった。
テラは混乱した様子で、記憶を探ろうとする。
「記憶にない...でも記録は確か」
マリーナも困惑し、どう反応していいかわからない様子だ。
「どっちが本当なの?どっちを信じれば...」
(この子は...本当に裏切り者なのか?)
マリーナの心の中で、疑念と信頼が揺れ動いていた。昨日まで一緒に笑っていた仲間。その子が裏切り者だったなんて、信じたくない。でも、証拠がこんなにある。何を信じればいいのだろう。
フィルミナは複雑な表情でエオリアを見つめながら、心の中で葛藤していた。
レオンは文献を見つめながら、違和感を覚えていた。
(証拠は確かにある...でも)
研究者としての直感が、何かを告げていた。
(この日付...少しずれている気がする)
前世の科学的思考が働き始める。
(時系列が合わないところがある)
文献を読み返し、図面を確認する。
(まるで...後から作られたような)
クリスタはエオリアに近づき、彼女の手を取る。
「私も...追放された時、嘘をつかれた」
共感の眼差しで、エオリアを見つめる。
(証拠だけで人を裁くのは...間違っている)
かつて自分も、根拠のない噂で追放された。その痛みを、クリスタは忘れていない。だからこそ、エオリアの訴えを信じたい。証拠よりも、人を信じる勇気が必要なのではないか。
(科学者として、証拠だけで判断はできない)
レオンの心の中で、決意が固まっていった。
---
緊張が高まる中、レオンが前に出た。
「待ってください」
冷静な声——研究者としての、理性的な響きがあった。
全員がレオンを見つめる。
レオンは文献を一つ一つ手に取り、丁寧に検証し始める。日付を確認し、図面を分析し、魔力痕跡を調べる——その姿は、まさに研究者そのものだった。
「この記録には、不自然な点があります」
「まず、この日付。時系列が少しずれている」
指で日付の部分を示しながら、論理的に説明する。
「エオリアがここにいたとされる時刻に、別の場所にいた記録もある」
別の文献を開いて、矛盾点を明示する。
「次に、この魔力痕跡」
結晶を手に取り、光にかざして観察する。
「確かにエオリアの魔力に似ている。でも...微妙に違う」
前世の科学知識が働く。
「まるでコピーされたような。DNAクローンと同じ原理かもしれない」
シグレは驚いた表情を浮かべ、その可能性を理解する。
「魔力のコピー...理論的には可能ですが」
(確かに...魔力結晶による転写技術は文献にあった。しかし実用化された記録はない。もし誰かがその技術を...)
シグレの心の中で、古代魔法学の知識が次々と繋がっていく。禁じられた技術。失われたはずの知識。それが、この事件の鍵を握っているのではないか。研究者として、この謎を解明したい衝動に駆られる。
レオンは頷き、さらに推理を続ける。
「そして、最も重要なこと——動機がない」
エオリアを見つめる。
「エオリアが四体を攻撃する理由が、どこにもない」
研究者として、論理的に分析する。でも、その目は温かかった。
「証拠だけで判断はできない」
エオリアの前に立つ。
「エオリア、君の言葉を聞かせて」
「僕は...君を信じたい」
「一緒に、真実を見つけよう」
「科学者として、そして人として」
エオリアが驚いたように目を見開く。
信じられないという表情——300年間、誰も信じてくれなかったから。
涙が溢れる。
「本当に...信じてくれるの?」
「誰も...誰も信じてくれなかったのに」
泣き崩れるエオリア。レオンが優しく肩に手を置いた。
「大丈夫。一緒に真実を証明するから」
(証拠よりも、人を信じる。それが僕の選択)
科学者としての論理と、人としての温かさ——両方が、レオンの決断を支えていた。
クリスタは涙目になりながら、レオンの優しさに感動する。
「レオン様...優しい」
フィルミナはエオリアに駆け寄り、その肩を抱いた。
「そうよ。証拠だけじゃわからない。あなたの心は、嘘をついていない」
そして、エオリアを力強く抱きしめる。
「私たちがいる。もう一人で戦わなくていい」
マリーナは明るい笑顔を見せながら、エオリアの手を取った。
「私も信じる!証拠より、あなたを信じるわ」
テラが深い声で、静かに付け加える。
「記憶を...もっと調べよう。真実は必ず見つかる」
リヴィエルは剣から手を離し、穏やかに微笑んだ。
「殿下が信じるなら...私も信じます」
五人が手を繋ぐ。家族の絆が、再び温かく輝いた。
(エオリアが...真実を見つけてくれる)
エオリアの心の中で、希望が芽生えていた。300年間凍りついていた心が、少しずつ溶けていく。この温もりを、信じてもいいのだろうか。
地上では、ガルヴァンが通信魔法で報告を聞いていた。
「殿下が裏切り者を擁護!」
「これが...殿下の洗脳技術か!」
メルキオールが祈りを捧げる。
「神の慈悲を体現された...」
チェン・ロンが冷静に言う。
「殿下の判断を信じましょう」
---
エオリアはゆっくりと語り始める。涙を拭いながら、500年間抱えてきた真実を打ち明けた。
「500年前...私は確かにここにいた」
「でも、その時、誰かが四体を攻撃した」
「私の力が...使われていた」
震える声で告白する。
「誰かが私の魔力をコピーして...」
レオンは真剣な表情で、その言葉を一つ一つ受け止めている。
「魔力のコピー...可能なのか?」
前世の知識が働く。
「DNAのクローン技術があった。魔力も同じ原理でコピーできるかもしれない」
「でも、誰が?何のために?」
シグレが別の文献を発見し、レオンに差し出す。
「殿下...これを」
古い羊皮紙に、興味深い記述があった。
「秩序を守る者たち」
「変化を恐れ、調和を破壊しようとした」
「五体の集合を阻止する使命」
レオンはその文献を読み進め、眉をひそめる。
「これは...組織の存在を示唆している」
エオリアが涙を流しながら、続ける。
「私は...罪を着せられた」
「でも、戦えば誰かを傷つける」
「だから...自分が消えれば平和が保たれると思った」
「500年間、ずっと...」
フィルミナはエオリアを強く抱きしめ、その背中を優しく撫でた。
「そんな...あなたは犠牲になったのね。一人で、すべてを背負って」
クリスタも涙を流しながら、エオリアの手を握る。
「私と同じ...追放された。でも、もう違う。私たちがいる」
四体全員がエオリアを囲み、温かい抱擁で包む。
「もう一人じゃない。私たちが、あなたを守る」
温かい抱擁——エオリアの心が、少しずつ開いていく。
レオンは決意を込めた表情で、宣言する。
「魔力コピー理論...研究したい」
地上では、ガルヴァンが叫んでいた。
「兵器複製技術だ!殿下の新戦略!」
メルキオールが祈りを捧げる。
「神の力のコピー...冒涜か奇跡か」
チェン・ロンが算盤を叩く。
「特許申請の準備を!」
レオンは、そんな反応を知る由もなかった。
遺跡の外——木々の影で、黒いローブの人物が立っていた。
「やはり...五体が集まり始めている」
「報告せねば...」
人物が姿を消す。風だけが、不穏な気配を残していった。
神殿の中で、レオンが宣言する。
「次は、本格的な推理だ」
「真実を証明してみせる」
五人が手を繋ぎ、共鳴の光が広間を照らす。
新たな謎——でも、家族がいれば乗り越えられる。
エオリアが小さく微笑んだ。
(レオンが...真実を見つけてくれる)
希望——それは、500年ぶりに訪れた、本当の光だった。
レオンと五体、リヴィエル、シグレは遺跡の奥を探索していた。石造りの回廊を進むと、これまで見たことのない部屋が次々と現れる。古代の住居跡、祭壇、そして——
「殿下、これは」
シグレが立ち止まり、目の前に広がる光景に息を呑んだ。石棚が壁一面に並ぶ図書室——古代の知識が眠る場所だった。
古代の文献が無数に保管されている。羊皮紙、石板、魔法で保存された書物——500年前の知識が、ここに眠っていた。
レオンは目を輝かせながら、図書室全体を見回した。
「すごい...古代の記録がこんなに残っているなんて」
研究者としての興奮が胸を満たす。前世の科学知識と、この世界の魔法——両方を学んできたレオンにとって、古代文献は宝の山だった。
(500年前の記録...失われた知識が、ここに)
シグレは慎重に文献を一冊取り出し、ページをめくる。
「古代語で書かれていますね。読めますか?」
レオンは自信を持って頷いた。
「シグレ先生に習ったおかげで、何とか読めます」
フィルミナたちも興味津々で近づいてくる。でも、エオリアだけは少し離れた場所で、不安そうにしていた。
最初の文献を手に取り、レオンはゆっくりとページを開く。
「第5覚醒個体、エオリア...」
エオリアの名前が、最初の行に記されていた。
「風の守護者として生まれた」
「自由を愛し、変化を促す存在」
「調和の中で、最も自由な力を持つ」
ここまでは、エオリアを称賛する内容だった。フィルミナが安心したように微笑む。
でも、次のページをめくった瞬間——
レオンの表情が凍りついた。
地上では、ガルヴァンが通信魔法で報告を聞いていた。
「古代図書室発見...機密情報の宝庫だ!」
メルキオールが祈りを捧げる。
「神の記録を発見されたか」
チェン・ロンが冷静に付け加える。
「殿下は、いつも重要な発見をされる」
---
レオンの手が震えている。
「これは...」
文献に書かれた内容——それは、あまりにも衝撃的だった。
「エオリア、調和を破壊せし裏切り者」
「500年前、第1から第4覚醒個体を攻撃」
「四体が傷つけられた記録あり」
「エオリアは追放を受けるべき存在」
室内が静まり返る。重苦しい沈黙が、図書室を包んだ。
フィルミナは文献を覗き込み、その内容を読むにつれて顔が青ざめていく。
「そんな...エオリアが私たちの前の世代を?」
テラが額に手を当て、深く集中する。
「記憶が...確かに攻撃された記憶がある」
マリーナは混乱した様子で、エオリアと文献を交互に見つめた。
「でも、どうして?どうしてそんなことを?」
クリスタは文献を見つめながら、何かを考え込んでいる。
「待って...何か違う気がする。この記述、変じゃない?」
リヴィエルの表情が警戒に変わり、剣に手を伸ばしかける。
「殿下、これは罠かもしれません。慎重に」
エオリアが文献を見て、顔が真っ青になった。震える声で言う。
「違う...私は裏切ってない!」
必死の訴え——でも、文献という証拠が目の前にあった。
「信じて...お願い」
涙声で訴えるエオリア。青灰色の瞳に、涙が浮かんでいた。
「でも、証拠が...」
絶望的な表情で、エオリアは俯いた。
レオンが文献を見つめる。
(裏切り者...?でも、エオリアはそんな人じゃない気がする)
研究者としての冷静さと、人としての直感——両方が、レオンの心の中で戦っていた。
(何かがおかしい...この記録、本当なのか?)
フィルミナは複雑な表情でエオリアを見つめていた。
(証拠がある...でも、昨日の優しさは嘘じゃなかった)
リーダーとして、真実を見極めなければならない。でも、心のどこかで——エオリアを信じたかった。
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シグレがさらに奥の棚から、別の文献を発見する。
「殿下...さらに記録があります」
レオンはその文献を受け取り、ページを開いた。そこには、さらに詳細な証拠が記されていた。
「エオリア、500年前の冬至の日、遺跡にて四体を攻撃」
具体的な日時が記載されていた。
次の文献には、破壊された遺跡の図面が描かれている。そこには「エオリアの魔力により破壊」という注釈があった。
さらに別の箱から、魔力痕跡が残された結晶が見つかる。シグレが魔力を感じ取り、驚いた表情を浮かべた。
「これは...エオリアの魔力と一致します」
証拠が次々と積み重なっていく。
エオリアは必死に弁明しようとするが、声が震えて言葉にならない。
「確かに...この日、私はここにいた」
「でも、攻撃なんてしてない!」
「誰かが...誰かが私の力を使った」
泣きながら訴えるエオリア。
「信じて...本当に違うの」
でも、証拠はあまりにも具体的だった。
テラは混乱した様子で、記憶を探ろうとする。
「記憶にない...でも記録は確か」
マリーナも困惑し、どう反応していいかわからない様子だ。
「どっちが本当なの?どっちを信じれば...」
(この子は...本当に裏切り者なのか?)
マリーナの心の中で、疑念と信頼が揺れ動いていた。昨日まで一緒に笑っていた仲間。その子が裏切り者だったなんて、信じたくない。でも、証拠がこんなにある。何を信じればいいのだろう。
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レオンは文献を見つめながら、違和感を覚えていた。
(証拠は確かにある...でも)
研究者としての直感が、何かを告げていた。
(この日付...少しずれている気がする)
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(時系列が合わないところがある)
文献を読み返し、図面を確認する。
(まるで...後から作られたような)
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「私も...追放された時、嘘をつかれた」
共感の眼差しで、エオリアを見つめる。
(証拠だけで人を裁くのは...間違っている)
かつて自分も、根拠のない噂で追放された。その痛みを、クリスタは忘れていない。だからこそ、エオリアの訴えを信じたい。証拠よりも、人を信じる勇気が必要なのではないか。
(科学者として、証拠だけで判断はできない)
レオンの心の中で、決意が固まっていった。
---
緊張が高まる中、レオンが前に出た。
「待ってください」
冷静な声——研究者としての、理性的な響きがあった。
全員がレオンを見つめる。
レオンは文献を一つ一つ手に取り、丁寧に検証し始める。日付を確認し、図面を分析し、魔力痕跡を調べる——その姿は、まさに研究者そのものだった。
「この記録には、不自然な点があります」
「まず、この日付。時系列が少しずれている」
指で日付の部分を示しながら、論理的に説明する。
「エオリアがここにいたとされる時刻に、別の場所にいた記録もある」
別の文献を開いて、矛盾点を明示する。
「次に、この魔力痕跡」
結晶を手に取り、光にかざして観察する。
「確かにエオリアの魔力に似ている。でも...微妙に違う」
前世の科学知識が働く。
「まるでコピーされたような。DNAクローンと同じ原理かもしれない」
シグレは驚いた表情を浮かべ、その可能性を理解する。
「魔力のコピー...理論的には可能ですが」
(確かに...魔力結晶による転写技術は文献にあった。しかし実用化された記録はない。もし誰かがその技術を...)
シグレの心の中で、古代魔法学の知識が次々と繋がっていく。禁じられた技術。失われたはずの知識。それが、この事件の鍵を握っているのではないか。研究者として、この謎を解明したい衝動に駆られる。
レオンは頷き、さらに推理を続ける。
「そして、最も重要なこと——動機がない」
エオリアを見つめる。
「エオリアが四体を攻撃する理由が、どこにもない」
研究者として、論理的に分析する。でも、その目は温かかった。
「証拠だけで判断はできない」
エオリアの前に立つ。
「エオリア、君の言葉を聞かせて」
「僕は...君を信じたい」
「一緒に、真実を見つけよう」
「科学者として、そして人として」
エオリアが驚いたように目を見開く。
信じられないという表情——300年間、誰も信じてくれなかったから。
涙が溢れる。
「本当に...信じてくれるの?」
「誰も...誰も信じてくれなかったのに」
泣き崩れるエオリア。レオンが優しく肩に手を置いた。
「大丈夫。一緒に真実を証明するから」
(証拠よりも、人を信じる。それが僕の選択)
科学者としての論理と、人としての温かさ——両方が、レオンの決断を支えていた。
クリスタは涙目になりながら、レオンの優しさに感動する。
「レオン様...優しい」
フィルミナはエオリアに駆け寄り、その肩を抱いた。
「そうよ。証拠だけじゃわからない。あなたの心は、嘘をついていない」
そして、エオリアを力強く抱きしめる。
「私たちがいる。もう一人で戦わなくていい」
マリーナは明るい笑顔を見せながら、エオリアの手を取った。
「私も信じる!証拠より、あなたを信じるわ」
テラが深い声で、静かに付け加える。
「記憶を...もっと調べよう。真実は必ず見つかる」
リヴィエルは剣から手を離し、穏やかに微笑んだ。
「殿下が信じるなら...私も信じます」
五人が手を繋ぐ。家族の絆が、再び温かく輝いた。
(エオリアが...真実を見つけてくれる)
エオリアの心の中で、希望が芽生えていた。300年間凍りついていた心が、少しずつ溶けていく。この温もりを、信じてもいいのだろうか。
地上では、ガルヴァンが通信魔法で報告を聞いていた。
「殿下が裏切り者を擁護!」
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チェン・ロンが冷静に言う。
「殿下の判断を信じましょう」
---
エオリアはゆっくりと語り始める。涙を拭いながら、500年間抱えてきた真実を打ち明けた。
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「でも、その時、誰かが四体を攻撃した」
「私の力が...使われていた」
震える声で告白する。
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レオンは真剣な表情で、その言葉を一つ一つ受け止めている。
「魔力のコピー...可能なのか?」
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「DNAのクローン技術があった。魔力も同じ原理でコピーできるかもしれない」
「でも、誰が?何のために?」
シグレが別の文献を発見し、レオンに差し出す。
「殿下...これを」
古い羊皮紙に、興味深い記述があった。
「秩序を守る者たち」
「変化を恐れ、調和を破壊しようとした」
「五体の集合を阻止する使命」
レオンはその文献を読み進め、眉をひそめる。
「これは...組織の存在を示唆している」
エオリアが涙を流しながら、続ける。
「私は...罪を着せられた」
「でも、戦えば誰かを傷つける」
「だから...自分が消えれば平和が保たれると思った」
「500年間、ずっと...」
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「そんな...あなたは犠牲になったのね。一人で、すべてを背負って」
クリスタも涙を流しながら、エオリアの手を握る。
「私と同じ...追放された。でも、もう違う。私たちがいる」
四体全員がエオリアを囲み、温かい抱擁で包む。
「もう一人じゃない。私たちが、あなたを守る」
温かい抱擁——エオリアの心が、少しずつ開いていく。
レオンは決意を込めた表情で、宣言する。
「魔力コピー理論...研究したい」
地上では、ガルヴァンが叫んでいた。
「兵器複製技術だ!殿下の新戦略!」
メルキオールが祈りを捧げる。
「神の力のコピー...冒涜か奇跡か」
チェン・ロンが算盤を叩く。
「特許申請の準備を!」
レオンは、そんな反応を知る由もなかった。
遺跡の外——木々の影で、黒いローブの人物が立っていた。
「やはり...五体が集まり始めている」
「報告せねば...」
人物が姿を消す。風だけが、不穏な気配を残していった。
神殿の中で、レオンが宣言する。
「次は、本格的な推理だ」
「真実を証明してみせる」
五人が手を繋ぎ、共鳴の光が広間を照らす。
新たな謎——でも、家族がいれば乗り越えられる。
エオリアが小さく微笑んだ。
(レオンが...真実を見つけてくれる)
希望——それは、500年ぶりに訪れた、本当の光だった。
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どこにでもいる、さえないおじさん。特技なし。彼女いない。仕事ない。お金ない。外見も悪い。頭もよくない。とにかくなんにもない。そんな主人公、アレン・ロザークが死の間際に涙ながらに訴えたのが人生のやりなおしー。
彼は30年という短い生涯を閉じると、記憶を引き継いだままその意識は幼少期へ飛ばされた。
幼少期に戻ったアレンは前世の記憶と、飼い猫と喋れるオリジナルスキルを頼りに、不都合な未来、出来事を改変していく。
記憶にない事象、改変後に新たに発生したトラブルと戦いながら、2度目の人生での仲間らとアレンは新たな人生を歩んでいく。
新しい世界では『魔宝殿』と呼ばれるダンジョンがあり、前世の世界ではいなかった魔獣、魔族、亜人などが存在し、ただの日雇い店員だった前世とは違い、ダンジョンへ仲間たちと挑んでいきます。
この物語は、記憶を引き継ぎ幼少期にタイムリープした主人公アレンが、自分の人生を都合のいい方へ改変しながら、最低最悪な未来を避け、全く新しい人生を手に入れていきます。
主人公最強系の魔法やスキルはありません。あくまでも前世の記憶と経験を頼りにアレンにとって都合のいい人生を手に入れる物語です。
※ ネタバレのため、2部が完結したらまた少し書きます。タイトルも2部の始まりに合わせて変えました。
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