転生王子はスライムを育てたい ~最弱モンスターが世界を変える科学的飼育法~

宵町あかり

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第59話 共鳴と祭りの一日

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【研究ノート・感情共鳴現象】

五体共鳴が完成して以来、不思議な現象が増えている。遠く離れていても、覚醒個体たちの感情が伝わってくる瞬間がある。これは...魔素だけでは説明できない。「絆」そのものが物理的な力になっているのかもしれない。

---

 朝の研究室。

 レオンが五体共鳴の安定性を確認するため、実験装置を起動した。

「今日も共鳴の持続時間を測定しよう」

 フィルミナ、マリーナ、テラ、クリスタ、エオリアが円を描くように並ぶ。リヴィエルは少し離れた場所から見守っていた。

 淡い光が覚醒個体たちを包み込む。

 その時——

「あれ?」

 マリーナが目を丸くした。

「今...何か感じた」

 フィルミナも同時に顔を上げる。

「私も...レオン様の想いが...?」

「...温かい」

 テラが静かに呟く。

 クリスタとエオリアも驚いた表情を浮かべていた。

「え?」

 レオンは困惑する。

「僕の想いが...伝わった?」

 シグレが分析装置を確認しながら興奮した声を上げる。

「これは...感情の共鳴現象です。五体共鳴が、魔素だけでなく心と心を繋げている」

 覚醒個体たちとレオンの間に、淡い金色の光の輪が見えた。

 マリーナが感動で目を潤ませる。

「レオンの気持ち...直接感じられた。嬉しいって、温かいって...」

「絆が...見える」

 クリスタが静かに微笑む。

「まるで光のようだった。300年の孤独の中で、こんな繋がりを夢見ていたわ」

 エオリアが涙ぐみながら笑顔を浮かべた。

「すごい...私たち、本当に繋がってるんだ」

(みんなの心が、こんなに近くに感じられるなんて)

 レオンの胸が熱くなる。科学では説明しきれない何かがそこにあった。

---

 レオンがワクワクした表情で提案する。

「この現象をもっと研究しよう。みんな、協力してくれる?」

「もちろん!面白そう!」

 マリーナが元気よく手を挙げる。

「みんなで円になって。僕が強く想うから、何か感じたら教えて」

 覚醒個体たちが手を繋ぐ。レオンは目を閉じ、心を込めた。

(みんな、ありがとう。一緒にいてくれて、本当に嬉しい)

 次の瞬間——

「あっ...」

 フィルミナが目を閉じたまま微笑む。

「レオン様の想いが、温かく伝わってきます...」

「うん、感じる!」

 マリーナも嬉しそうに頷く。

「ありがとうって気持ち...すごく伝わってきた」

 テラの目から、一筋の涙が静かに流れた。

「...こんな気持ち、初めて。言葉にできない」

 小さな声で、でも確かに想いを紡いだ。

 シグレがメモを取りながら興奮を隠せない。

「素晴らしい。では今度は逆に、レオン様を想ってみてください」

 覚醒個体たちが目を閉じる。

 レオンの心に、温かな波が押し寄せた。

「何か...温かい」

 胸に手を当てる。

「みんなの想いが...直接伝わってくる」

(これが、絆の力なのか)

 言葉では表せない感動が、研究室を包み込んでいた。

 その頃——

 研究室の外で、ガルヴァンが真剣な表情でメモを取っていた。

(これは...究極の集団制御技術。遠距離での意思疎通が可能になれば、軍事利用の可能性は計り知れない。各国に緊急通達を...)

 彼の報告書には「感情共鳴:戦場指揮革命の可能性」と記されていた。

---

 昼過ぎ。

 実験が一段落し、みんなが休憩していると、フィルミナが窓の外を見ながら言った。

「レオン様、今日は帝都祭りですよ」

「そうだった」

 レオンが顔を上げる。

「研究ばかりじゃ疲れるし、たまには息抜きも必要だね」

「やった!お祭り!」

 マリーナが歓声を上げる。

「浴衣着よう!」

 テラが小声で呟く。

「...浴衣」

 その声には、確かな期待が滲んでいた。

「300年ぶりのお祭り...」

 クリスタが微笑む。

「当時の祭りとどう違うか、比較研究できそうね。...冗談よ。純粋に楽しみだわ」

 エオリアも目を輝かせる。

「みんなで行くお祭り!500年ぶり!」

 リヴィエルが腕を組んで言う。

「私は護衛だ。油断はできない」

 けれど、その口元は少しだけ緩んでいた。

 やがて、みんなが浴衣姿で集合した。

 フィルミナは深い藍色に白い花模様。優雅で上品な着こなしが、銀髪をより美しく引き立てる。マリーナは明るい橙色と黄色の華やかな浴衣。元気な彼女にぴったりだ。テラは淡い紫の落ち着いた浴衣で、控えめながら静かな美しさがある。クリスタは深緑に金の模様、知的な雰囲気が漂う。エオリアは空色の浴衣で、自由な風を纏っているようだ。リヴィエルは黒地に赤い花。クールな印象だが、頬がわずかに赤い。

「さあ、行こう!」

 レオンの声に、みんなが笑顔で頷いた。

---

 帝都の大通りは、祭りの熱気に包まれていた。

 提灯の明かりが夕暮れの空を彩り、屋台からは美味しそうな匂いが漂う。笑い声と音楽が入り混じり、活気に満ちている。

「わー!綿菓子!食べたい!」

 マリーナが屋台を指差す。

「風船もある!」

 エオリアが目を輝かせる。

「全部欲しい!」

 レオンが笑いながら財布を取り出す。

「好きなの選んでいいよ」

 テラが小さな声で言う。

「...お祭り、初めて」

 その瞳には、新鮮な驚きが浮かんでいた。

 フィルミナが綿菓子を受け取りながら、レオンに振り返る。

「レオン様...この浴衣、似合って...ますか?」

 頬がほんのり赤い。

 レオンは自然に答えた。

「うん、とても綺麗だよ。みんな似合ってる」

 その一言に、六人の顔が同時に赤くなった。

(無自覚...!)

 リヴィエルは心の中で突っ込みながら、自分の頬も熱くなっているのを感じた。

 屋台を回り、射的でマリーナが大きなぬいぐるみを当て、金魚すくいでテラが意外な才能を見せた。クリスタは屋台の仕組みに興味津々で、エオリアは焼きとうもろこしを頬張りながら幸せそうに笑っている。

「王子様と六人の美女だ!」

 若い男が驚きの声を上げた。

「まあ、なんて素敵な...」

 年配の女性が感嘆のため息をつく。

「うちの娘にも見せたかった」

 父親らしき男が残念そうに呟いた。

「絵本の中の光景みたい...」

 少女が夢見るような目で見つめている。

 温かな祝福の声が周囲から聞こえてくる。

 レオンは照れながらも、みんなと一緒に笑っていた。

(こんなに楽しい時間、久しぶりだな)

 遠くで、ガルヴァンが真剣な表情でメモを取っている。

(これは民心掌握の完璧なデモンストレーション。美女を従えての市中巡幸、計算され尽くした文化戦略...各国は文化外交を見直すべきだ)

 彼の報告書は、既に三ページを超えていた。

---

 夜空に、花火が咲いた。

 赤、青、金色の光が夜を彩る。大輪の花火が次々と開き、歓声が上がる。

 レオンと六人は、少し離れた丘の上から花火を見上げていた。

「わぁ...!」

 マリーナが感嘆の声を漏らす。

「綺麗...」

 クリスタが目を輝かせる。

「この光を結晶に閉じ込められたら...いえ、今はただ眺めていたいわ」

 花火の光が、みんなの顔を照らしていた。

 エオリアが静かに呟く。

「この瞬間が、永遠に続けばいいのに」

 テラがそっとエオリアの手を握った。

「...うん。私も、同じ気持ち」

 その言葉に、誰もが同じ想いを抱いた。

 レオンが穏やかに笑う。

「みんなと一緒だと、何でも楽しいね。今日は本当にいい一日だった」

 花火の光の中で、六人の瞳がそっと潤んだ。

(ずっと...ずっと一緒)

 言葉にはしない。

 けれど、心の中で静かに誓う。

 この幸せを、ずっと守りたい。

 夜空を彩る花火が、七人の姿を優しく照らしていた。

 絆という名の光が、今日もまた少しだけ、強くなった——
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