転生王子はスライムを育てたい ~最弱モンスターが世界を変える科学的飼育法~

宵町あかり

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第70話 感情の揺らぎ

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【研究ノート・最近の変化】

みんなと一緒になって一週間。
毎日が楽しくて、温かくて、幸せだ。
でも、胸の奥がざわざわする。
みんなを見ると、心臓が跳ねる。
これは...何だろう。
科学では説明できない。感情...というものなのか。

---

 朝、食堂にレオンと仲間たちが集まった。

「皆様、朝食の準備が整いました」

 フィルミナが優雅に声をかけ、ルミナが丁寧にお茶を淹れる。練習の成果で、上手に淹れられるようになった。

「ルミナ、上手になったね!」

 マリーナの嬉しそうな声に、テラが静かに頷く。

「...美味しい」

「みんなで食べる朝食、いつも幸せですわ」

 クリスタの言葉に、エオリアが穏やかな表情で応える。

「こういう平和な時間が、何よりも大切ね」

「坊ちゃま、今日の予定は?」

 リヴィエルが尋ねる。

「今日は...みんなとゆっくり過ごそうかな」

 レオンは自然と笑顔になる。

---

 レオンは仲間たちを見回した。みんながいる。それだけで、こんなに幸せ。心臓が、温かく跳ねる。

 レオンの心に、日常の幸せが満ちる。みんなで囲む朝食。何気ない会話、笑顔、温かい空気。前世では孤独だった。誰とも朝食を共にすることはなかった。

 いつも一人で冷たいトーストをかじり、データを眺めながら食事を済ませていた。会話もなく、笑顔もなく、ただ栄養を摂取するだけの時間。でも今は、こんなに温かい仲間がいる。みんなの笑顔を見ながら、一緒に食事ができる。

 この幸せが当たり前になっている。でも、失いたくない。この瞬間を、ずっと大切にしたい。

◆◇◆

 午後、研究室でルミナがレオンに話しかけた。

「レオン様、少しお時間をいただけますか?」

 真剣な表情のルミナ。

「もちろん。どうしたの?」

 二人で窓辺へ。夕日が部屋を金色に染める。

 ルミナが深呼吸して話し始めた。

「私は500年、一人で古代の知識を守ってきました。孤独で、辛くて...でも使命だと信じて耐えてきました。誰も来ない。誰も私を必要としない。ただ、記録を守るだけの存在」

 ルミナの声が震える。

---

「でも、レオン様と出会い、皆様と出会い...初めて知りました。生きることは、こんなに温かいものだと」

 ルミナの瞳が潤む。

「レオン様...私を目覚めさせてくださって、ありがとうございます。レオン様がいなければ、私は永遠に眠っていたでしょう」

「だから...レオン様は、私にとって特別な方なのです」

 ルミナが一歩、レオンに近づく。

「私の心が、レオン様を見ると温かくなります。この感覚が...何なのか、まだわかりませんが」

「でも、確かなことが一つあります」

「私は...レオン様と一緒にいたいのです」

---

 レオンの心臓が、大きく跳ねた。ドクン、ドクン、と。

「ルミナ...」

 言葉が出てこない。胸が苦しい。でも、嫌じゃない。むしろ、温かい。

「ルミナ、僕も...君に会えて嬉しいよ。君は、僕たちの大切な家族だから」

 ルミナの表情に、少し残念そうな、でも嬉しそうな色が浮かぶ。

「はい...家族ですわ」

 小さな声で。いつか、この想いが届きますように。

---

 ルミナの心に想いが溢れる。500年の孤独が、レオン様との出会いで終わった。この温かさ、この幸せ、この胸の高鳴り。全てがレオン様のおかげ。私の心が求めているのは、ただレオン様と一緒にいること。

 この想いが何なのか、まだ名前は知らない。でも、確かにある。レオン様への、特別な想い。

---

 レオンの心も動揺する。ルミナの言葉が、胸に刺さる。特別、一緒にいたい。その言葉の意味が、なんとなくわかる気がする。でも、まだ確信は持てない。

 心臓が跳ねる。胸が温かい。この感覚は...科学では説明できない。感情...というものなのか。前世では、こんな風に胸が跳ねることはなかった。全てが理論と数式で説明できる世界。

 でも今は違う。ルミナの言葉が、心を揺さぶる。科学では説明できない、温かい何か。この感覚を、もっと知りたい。

◆◇◆

 研究室の外、廊下で六人が立っていた。レオンとルミナの会話を、遠くから見守っていた。

「...ルミナ、やるわね」

 フィルミナの声には、驚きと尊敬、そして少しの羨望が混じっている。

「ずるい!私も言いたかったのに!」

 マリーナが飛び跳ねるように悔しがり、その瞳には素直な焦りが宿っている。

「...私も」

 テラの短い言葉が、六人の想いを代弁する。

---

「焦る必要はないわ。まだ時間はある」

 クリスタが冷静に応じるが、その表情には複雑な感情が浮かんでいる。

「でも、レオンの反応...少しは気づいたかしら」

 エオリアが研究室の中を見つめる。優雅な仕草の中に、期待と不安が見え隠れする。

「あいつ、気づいたか...?鈍感だから、わからんが」

 リヴィエルが小さくため息をつく。

---

 六人がレオンとルミナを見守る。レオンが戸惑いながらも、ルミナに語りかけている。

「ルミナ、僕も...君に会えて嬉しいよ」

 フィルミナが小さくため息をつき、その表情にはレオンへの想いと、ルミナへの複雑な感情が混じっている。

「相変わらず...」

 優雅に呟くが、その声には温かい見守りの気持ちが込められている。

「でも、ちょっとだけドキドキしてたよね!」

 マリーナが希望を込めて指摘する。元気な声だが、その瞳は真剣だ。

「ええ、確かに。進展はある」

 クリスタが頷き、冷静に分析する。

「いつか、レオンも気づくわ。私たちの想いに」

---

 エオリアが温かな表情を見せる。テラは静かに決意を固める。

「...待つ。ずっと」

「...私も、いつか伝える。今はまだ、その時じゃない」

 リヴィエルが静かに続ける。

---

 六人の心に、それぞれの想いが浮かぶ。

 フィルミナの心に、レオン様への想いが満ちる。私もいつか...この想いを伝える。でも今は、レオン様の幸せを見守るだけで十分。

 マリーナの心が騒ぐ。レオン、早く気づいてよ!でも、気づいたら気づいたで恥ずかしいかも...。

 テラは静かに決意する。...言葉にするのは苦手。でも、ずっとそばにいる。それが私の想い。

 クリスタは冷静に考える。時間はある。焦る必要はない。

 エオリアは優雅な表情で待つ。レオンの鈍感さも、可愛いところ。

 リヴィエルは複雑な表情で呟く。坊ちゃま...私も、あなたが好きです。でも、メイドとして支えるのが私の役目。

---

 六人は顔を見合わせた。

「みんな、同じ想いなのね」

 フィルミナが苦笑し、マリーナが少し寂しそうに笑う。

「でも、誰が選ばれても...応援する」

「そうね。レオンの幸せが、一番大切」

 クリスタが温かな表情で頷き、六人が静かに頷く。

---

 七人の心に、複雑な感情が渦巻く。七人全員が、同じ想いを抱いている。レオンへの特別な感情。恋、という名前のついた想い。でも、誰も独占しようとはしない。レオンの幸せが一番大切。

 だから、待つ。レオンが気づくまで。それぞれが孤独を経験してきたからこそ、誰かを幸せにしたいと願う。レオンの幸せのために、自分の想いを抑えることもできる。それが七人の優しさ。

 でも、心の奥底では、選ばれたいと願っている。その矛盾した感情が、七人の心を揺らしている。

---

 レオンの表情が、少しだけ変わった。ルミナの言葉に、確かに動揺していた。心臓が跳ねているのが、遠くからでもわかる。

 まだ気づいていないけど、確実に何かが変わり始めている。いつか、この想いが届く日が来る。七人は、その日を信じて待つ。

◆◇◆

 夜、リビングでレオンと仲間たちが語らいの時間を持った。

「みんなに聞きたいことがある」

 レオンが真剣な表情で言う。

 全員が耳を傾ける。

「最近、僕...みんなを見ると、胸がドキドキするんだ。心臓が跳ねて、温かくなって、幸せな気持ちになる」

「これって...何だろう」

 七人が息を呑んだ。

「それは...」

 フィルミナが言いかけて止まる。

「...自分で気づくべき」

 テラが静かに言葉を添える。

---

「レオン、それは科学では説明できない感情よ」

 クリスタの温かな表情に、エオリアが穏やかに続ける。

「いつか、わかるわ。焦らないで」

「...鈍感野郎」

 リヴィエルが小声で呟き、マリーナが元気よく励ます。

「大丈夫!レオンなら、きっとわかる!」

「私も...同じ気持ちですわ」

 ルミナの静かな言葉に、レオンは心の中で考えた。

---

 前世では、こんな感覚はなかった。研究仲間はいたが、胸が跳ねることはなかった。データを見ても、実験が成功しても、心が温かくなることはなかった。

 でも今は...みんなの顔を見るだけで、胸が温かくなる。これが...前世で知らなかった感情...?

---

「みんな、ありがとう。いつか...わかる日が来るかな」

 レオンの笑顔に、七人は顔を見合わせる。もう少し...もう少しで...。

「レオン様、私たちはずっと一緒ですから」

 フィルミナの優しい言葉に、マリーナが元気いっぱいに答える。

「そうだよ!ずっと一緒!」

「「「「「「「ずっと一緒です」」」」」」」

 全員の声が重なる。

 レオンの心臓が、また温かく跳ねた。

---

 レオンの心に気づきが芽生える。みんなの声が、温かい。胸が締め付けられるように温かい。この感覚が、何なのか。まだはっきりとはわからない。でも、確実に何かが変わっている。

 みんなへの想いが、ただの仲間意識を超えている気がする。この感情の名前を、もう少しで思い出せそうな気がする。前世では知らなかった感覚。誰かのことを想うだけで胸が温かくなる。誰かの笑顔を見るだけで幸せになる。

 この感覚が、何を意味しているのか。科学では説明できない。でも、確かに存在している。レオンの心に、新しい感情が芽生え始めていた。

◆◇◆

 翌日の夕方、レオンと仲間たちが庭を並んで歩いた。長い影が、寄り添うように伸びる。

「これからも、ずっと一緒だよ」

 レオンが自然につぶやく。

「「「「「「「はい、ずっと」」」」」」」

 七人の声が重なる。温かい、優しい声。

 レオンの心臓が、また跳ねた。みんなの声が、こんなに温かい。この感覚...もしかして...。でも、まだ確信は持てない。でも、確実に何かが変わり始めている。

---

 七人はレオンの変化を感じ取り、静かな表情を見せた。

 フィルミナは心の中で呟く。いつか、この想いが届く日が来る。

 マリーナは心の中で叫ぶ。レオン、待ってるよ。

 テラは静かに決意する。...ずっと。

 クリスタは優雅な表情で待つ。私たちは、ここにいます。

 エオリアは穏やかに見守る。あなたが気づくまで。

 ルミナは温かな気持ちで想う。この想いを、いつか。

 リヴィエルは複雑な表情で呟く。坊ちゃま...。

---

 夕日がみんなを照らす。金色の光が、影を一つに溶かす。新しい章が始まる予感。

 夕日の中、レオンと仲間たちが歩く。この瞬間が、永遠に続けばいい。でも、時は流れる。新しい出会い、新しい冒険が待っている。

 レオンの気づき、七人の想い。全てが、少しずつ形になっていく。第7章が終わり、新しい章が始まる。みんなの物語は、まだ始まったばかり。それぞれの想いが、いつか一つの物語になる日が来る。その日まで、この絆を大切に守り続ける。

◆◇◆

 その頃、ガルヴァンが総括報告書を作成していた。

「第6覚醒個体の統合完了。六体体制確立」

 報告書を書きながら呟く。

「帝国の戦力、史上最強レベルに到達」

「六体共鳴現象確認。出力は五体共鳴の1.8倍、条件次第で2.0倍」

「時間加速現象の可能性。軍事転用されれば、世界情勢が激変」

 ガルヴァンが報告書を読み返した。

「...待て。10歳の少年が、これだけのことを?」

 ガルヴァンは自分のコーヒーカップを見る。

「私は...一体何をしているんだ」

 深いため息。

---

「あの少年に比べたら、私の諜報活動など...」

 ガルヴァンが頭を抱える。

「いや、待て。私は優秀な諜報員だ。動揺している場合ではない」

 自分を奮い立たせ、再び報告書に向かう。

「各国は同盟再編成を検討中。世界情勢、激変必至」

「第三王子レオン、史上最年少の戦略家として歴史に名を刻む」

「推定年齢10歳にして、世界を動かす力を持つ」

 ガルヴァンが深いため息をついた。

「あの少年は...世界を変える。そして私は...その記録係か」

 苦笑しながら、報告書を完成させる。

---

 各国の反応が記される。

 聖教国「女神の完全顕現。世界に光が満ちる。全教会での祝祭継続」

 東方連合「帝国との独占交渉権獲得に最優先投資。金貨1億枚の予算確保」

 王立魔法学院「六体共鳴理論の研究に全学を挙げて取り組む。ノーベル魔法学賞確実」

 帝国技術局「時間加速技術の解析開始。軍事転用プロジェクト最優先」

 近隣小国「帝国との同盟条約改定交渉開始。外交使節団派遣」

 芸術家集団「六体共鳴をテーマにした作品が帝都で大流行。新芸術運動勃発」

 歴史学会「古代文明の技術レベル見直し。緊急学会開催、論文多数発表」

---

 一方、屋敷では——

 レオンは知らない。ただ、みんなとの日常を大切にしているだけ。

 研究を楽しみ、仲間と笑い、平和に暮らす。

 世界が激変しようとも、みんなの日常は変わらない。

 その温度差は、果てしなく大きい——。
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