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第71話 感情の可視化実験
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覚醒を終えた翌日、研究室にこもっていた。
昨日のことが、どうしても頭から離れない。
ルミナの光が、あんなにも美しく輝いていたこと。
その輝きが、彼女の「感情」そのものだったこと。
「感情って、何だろう」
魔導書を広げながら、ぼんやりと考える。
この世界の魔法は、感情と深く結びついている。
喜び、悲しみ、怒り、愛情——。
それぞれの感情が、魔力の性質を変える。
でも、それがどういうメカニズムなのか、誰も解明していない。
「もしかして...感情を測定できたら、魔法の本質がわかるかもしれない」
ノートに図を描き始める。
感情と魔力の関係を、どう可視化するか。
音波の波形に似ているかもしれない。高い感情は高い周波数、強い感情は大きな振幅。あるいは、光の波長のように、感情の種類によって「色」が変わるのかもしれない。
ホワイトボードに仮説を書き出していく。
心拍数と魔力の相関関係。魔素の反応速度。光の色変化——。
「理論だけじゃ分からない。実験が必要だ」
その時、扉がノックされた。
「レオン様、おはようございます」
シグレが入ってきて、ホワイトボードを見る。
「また新しい理論構築ですか?」
「うん。感情の可視化実験を考えてるんだ」
図を指差す。
「ルミナの覚醒の時、感情が光として現れた。あれを測定できないかなって」
シグレが真剣な表情で図を見つめる。
「感情の測定...確かに、魔法研究の根幹に関わる問題ですね」
彼女は少し考え込むような仕草をした。
「しかし、レオン様。感情は極めて不安定な要素です。測定装置が耐えられるエネルギー量を、どう予測されますか?」
その質問に、少し考える。
「確かに...予測が難しいね」
ノートに計算式を書き出す。
「通常の魔力測定装置は、魔力値1000まで耐えられる設計だけど...感情が加わると、予想外の負荷がかかるかもしれない」
「まずは小規模な実験から始めるべきでしょう」
シグレが提案する。
「装置の耐久性を確認しながら、段階的にエネルギー量を上げていく方が安全です」
「そうだね。いきなり全力でやるのは危険だ」
頷きながら、シグレとの議論を続ける。慎重さと好奇心のバランス。それが科学者として大切なことだ。実験計画が少しずつ具体的になっていく様子に、胸が高鳴る。
---
棚から実験器具を取り出し始める。
魔導結晶、共鳴石、心拍計測用の魔導具——。
一つずつ手に取り、確認していく。
「この魔導結晶は、感情に反応して色が変わるはず。理論的には」
結晶の透明度を光にかざす。傷や不純物がないか、慎重に観察する。
「心拍計は...魔力の波動を測定するから、感情の変化も捉えられるかもしれない」
装置の魔力容量を確認。最大値は魔力値1200まで。通常の測定には十分だけど...感情が加わった時、果たして足りるだろうか。
「共鳴石は...これが一番リスクが高いかも」
共鳴石には魔力の増幅作用がある。感情のエネルギーも増幅してしまうかもしれない。
胸に、わずかな不安が芽生える。数式では予測できない領域に踏み込もうとしている。でも、だからこそ面白い。未知への好奇心が、不安を上回る。科学者として、この興奮を抑えられない。手が、自然と次の器具に伸びていく。
「よし、準備完了」
実験器具を机に並べる。
魔導結晶を中心に、心拍計と共鳴石を配置。三角形の頂点に、それぞれを置く。
「この配置なら、三方向から同時に測定できる」
満足げな笑みを浮かべながら、配置を最終確認する。理論通りの配置が完成した時の達成感は、何度味わっても心地よい。
---
その時、扉が開いた。
「レオン様、おはようございます」
ルミナが入ってくる。朝日に照らされた彼女の姿が、柔らかく光っている。
「おはよう、ルミナ」
「今日も、何か実験をされるのですか?」
ルミナが好奇心いっぱいの目で器具を見る。
「うん。君の力を借りたいんだ」
実験器具を指差す。
「感情の可視化実験。君の感情を、測定してみたいんだ」
「わたくしの...感情...?」
ルミナが驚く。
「そう。昨日の覚醒の時、君の感情が光として現れた。あれが本当に感情なのか、測定して確かめたいんだ」
ルミナが少し考える。そして、微笑んだ。
「わかりました。お手伝いします」
「ありがとう、ルミナ」
---
実験室に移動して、装置をセッティングする。
ルミナが中央に立ち、周囲に三つの器具を配置。魔導結晶、心拍計、共鳴石。
「ルミナ、何か嬉しいことを思い浮かべてみて」
指示を出す。
「嬉しいこと...」
ルミナが目を閉じる。
数秒後——彼女の体が、淡く光り始めた。
「おお...」
魔導結晶が反応する。透明だった結晶が、淡い金色に変わった。
「やった!感情に反応してる!」
心拍計も数値を示し始める。魔力値が、徐々に上昇していく。500、600、700...
「順調だ」
ノートに数値を素早く記録していく。予想以上の反応速度だ。理論が実証されていく喜びで、胸が高鳴る。
でも、その時——共鳴石が激しく振動し始めた。
「えっ!?」
共鳴石が、ルミナの感情を増幅している。魔力値が急上昇する。800、900、1000...
「レオン様、危険です!」
シグレが叫ぶ。
「装置の限界を超えます!」
「ルミナ、感情を抑えて!」
慌てて指示を出す。
でも、ルミナは目を閉じたまま、集中している。彼女の顔には、幸せそうな笑みが浮かんでいる。レオン様のことを考えると、わたくしの心が温かくなる。この温もりが、止まらない——。
魔力値が1200を超えた。
バチッ!
心拍計が火花を散らして壊れた。
「あっ!」
続いて、魔導結晶も砕ける。
共鳴石が過負荷で光を失った。
「ルミナ、目を開けて!」
その声に、ルミナがハッと目を開ける。
光が収まり、魔力値が急降下する。
「あ...ご、ごめんなさい!わたくし、つい...」
ルミナが慌てる。周囲を見渡して、壊れた装置に気づく。
「装置が...壊れてしまいました...」
「大丈夫、ルミナのせいじゃないよ」
彼女を安心させる。
「装置の設計が甘かったんだ。感情のエネルギーを過小評価していた」
シグレが壊れた装置を確認する。
「心拍計は完全に焼け焦げています。魔導結晶も粉々です」
「でも、貴重なデータが取れた」
記録を見つめながら、装置の破損を上回る価値を実感する。この失敗から、次の成功への手がかりが見えてくる。
ルミナの感情が、魔力値1200以上のエネルギーを生み出した。これは、通常の魔法の10倍以上だ。
「感情って、こんなに強いエネルギーなんだ」
予想をはるかに超えるデータに、言葉を失う。理論と実験結果の隔たりが、かえって研究者としての興奮を掻き立てる。
「しかも、ルミナは『嬉しい』という、ポジティブな感情だけで、これだけの力を」
「レオン様...本当に、わたくしのせいではないのですか?」
ルミナが不安そうに聞く。
「全然。むしろ、ありがとう」
彼女の頭を撫でる。
「君のおかげで、感情の力がどれほど大きいか、よく分かった」
ルミナがホッとした表情になる。
「でも...わたくしの感情が、そんなに強いなんて...」
「それは、君がレオン様を想う気持ちが強いからです」
シグレが微笑む。
ルミナの顔が真っ赤になった。
「そ、そんな...!」
---
実験後、データを整理する。
「感情のエネルギーは、予想以上だった」
シグレが頷く。
「しかも、ルミナは一人で、この値を出しました」
「うん。でも、気づいたことがある」
グラフを見せる。
「ルミナの感情は、僕への想いから生まれている。つまり、感情は相手との関係性で強くなる」
「関係性...」
「そう。一人じゃなくて、誰かを想う時、感情は最大化する」
シグレが考え込む。
「つまり、感情は単独では測定できない。相手との関係性も含めて考えないと」
「その通りです」
シグレが頷く。
「感情は孤立したものではなく、常に誰かとの繋がりの中で生まれるもの。今回の実験は、それを示しています」
記録を見つめる。
失敗したけど、大きな発見があった。
感情は測定器で捉えられるほど単純じゃない。もっと豊かで、複雑で、予測不可能なもの。
でも、だからこそ美しい。
「次は、どうすべきでしょうか」
シグレが問う。
「共鳴石を使わない、より安定した装置を設計します。それから、感情の上昇ペースを制御する方法を考える」
ノートに改良案を書き始める。
「それに、二人の共鳴効果も考慮しないと。感情は一人じゃなくて、関係性の中で生まれるものだから」
シグレが微笑む。
「失敗から学ぶ姿勢、素晴らしいですね、レオン様」
「失敗は成功の母、だからね」
笑顔で答える。
ルミナは、二人の会話を聞いて、胸が温かくなるのを感じた。
失敗しても、誰も責めない。レオン様は装置の設計ミスを認め、シグレ様は冷静に原因を分析する。そして二人とも、そこから何かを学ぼうとしている。責任を押し付け合うのではなく、共に前を向く——その姿勢が、科学者としても、人としても、本当に尊敬できる。わたくしも、レオン様たちのように、失敗を恐れず前を向いていきたい。
彼女は心の中で、静かに誓った。
失敗を恐れず、学び続ける。それが、レオン様と共に歩むということ。
---
その日の夕方、各国の諜報員は報告を送った。
ガルヴァン(神聖騎士団)が冷や汗を流しながら報告書を書く。
「第三王子レオン、感情制御兵器の開発に着手」
「装置が暴走するも、貴重なデータ取得に成功」
「感情の可視化に成功すれば、兵士の士気を数値化・管理可能に」
「敵の戦意を削ぐ新型兵器の開発も視野に入る」
ガルヴァンが頭を抱える。
「また...また世界が揺れる」
---
チェン・ロン(東方連合商会)が興奮気味に報告する。
「感情測定装置、医療分野への応用可能性大」
「心の病の診断、治療への革命的貢献」
「商品化権の独占交渉、最優先で進めるべし」
「推定市場規模:金貨5000万枚以上」
---
メルキオール(聖教国神官)が厳かに祈りを捧げる。
「感情の可視化は、神の御心を理解する第一歩」
「信仰の深さを測定できれば、真の信者と偽信者を区別可能」
「全教会に感情測定装置の導入を検討」
「レオン王子は、神の啓示を受けし者」
---
学術国の学者たちが色めき立つ。
「感情測定の新理論だと!?」
「心理学と魔法学の融合!これは革命だ!」
「感情の数値化...ノーベル賞級の発見!」
「全学術機関に通達!研究予算を最優先で配分せよ!」
---
一方、レオンは研究室で——
「うーん、次の装置は、結晶を二重構造にして...」
壊れた装置の残骸を見ながら、改良案を練っていた。
ただの科学実験。
感情を知りたいという、純粋な好奇心。
世界が揺れ動こうとも、レオンは知らない。
その温度差が、果てしなく大きい——。
昨日のことが、どうしても頭から離れない。
ルミナの光が、あんなにも美しく輝いていたこと。
その輝きが、彼女の「感情」そのものだったこと。
「感情って、何だろう」
魔導書を広げながら、ぼんやりと考える。
この世界の魔法は、感情と深く結びついている。
喜び、悲しみ、怒り、愛情——。
それぞれの感情が、魔力の性質を変える。
でも、それがどういうメカニズムなのか、誰も解明していない。
「もしかして...感情を測定できたら、魔法の本質がわかるかもしれない」
ノートに図を描き始める。
感情と魔力の関係を、どう可視化するか。
音波の波形に似ているかもしれない。高い感情は高い周波数、強い感情は大きな振幅。あるいは、光の波長のように、感情の種類によって「色」が変わるのかもしれない。
ホワイトボードに仮説を書き出していく。
心拍数と魔力の相関関係。魔素の反応速度。光の色変化——。
「理論だけじゃ分からない。実験が必要だ」
その時、扉がノックされた。
「レオン様、おはようございます」
シグレが入ってきて、ホワイトボードを見る。
「また新しい理論構築ですか?」
「うん。感情の可視化実験を考えてるんだ」
図を指差す。
「ルミナの覚醒の時、感情が光として現れた。あれを測定できないかなって」
シグレが真剣な表情で図を見つめる。
「感情の測定...確かに、魔法研究の根幹に関わる問題ですね」
彼女は少し考え込むような仕草をした。
「しかし、レオン様。感情は極めて不安定な要素です。測定装置が耐えられるエネルギー量を、どう予測されますか?」
その質問に、少し考える。
「確かに...予測が難しいね」
ノートに計算式を書き出す。
「通常の魔力測定装置は、魔力値1000まで耐えられる設計だけど...感情が加わると、予想外の負荷がかかるかもしれない」
「まずは小規模な実験から始めるべきでしょう」
シグレが提案する。
「装置の耐久性を確認しながら、段階的にエネルギー量を上げていく方が安全です」
「そうだね。いきなり全力でやるのは危険だ」
頷きながら、シグレとの議論を続ける。慎重さと好奇心のバランス。それが科学者として大切なことだ。実験計画が少しずつ具体的になっていく様子に、胸が高鳴る。
---
棚から実験器具を取り出し始める。
魔導結晶、共鳴石、心拍計測用の魔導具——。
一つずつ手に取り、確認していく。
「この魔導結晶は、感情に反応して色が変わるはず。理論的には」
結晶の透明度を光にかざす。傷や不純物がないか、慎重に観察する。
「心拍計は...魔力の波動を測定するから、感情の変化も捉えられるかもしれない」
装置の魔力容量を確認。最大値は魔力値1200まで。通常の測定には十分だけど...感情が加わった時、果たして足りるだろうか。
「共鳴石は...これが一番リスクが高いかも」
共鳴石には魔力の増幅作用がある。感情のエネルギーも増幅してしまうかもしれない。
胸に、わずかな不安が芽生える。数式では予測できない領域に踏み込もうとしている。でも、だからこそ面白い。未知への好奇心が、不安を上回る。科学者として、この興奮を抑えられない。手が、自然と次の器具に伸びていく。
「よし、準備完了」
実験器具を机に並べる。
魔導結晶を中心に、心拍計と共鳴石を配置。三角形の頂点に、それぞれを置く。
「この配置なら、三方向から同時に測定できる」
満足げな笑みを浮かべながら、配置を最終確認する。理論通りの配置が完成した時の達成感は、何度味わっても心地よい。
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その時、扉が開いた。
「レオン様、おはようございます」
ルミナが入ってくる。朝日に照らされた彼女の姿が、柔らかく光っている。
「おはよう、ルミナ」
「今日も、何か実験をされるのですか?」
ルミナが好奇心いっぱいの目で器具を見る。
「うん。君の力を借りたいんだ」
実験器具を指差す。
「感情の可視化実験。君の感情を、測定してみたいんだ」
「わたくしの...感情...?」
ルミナが驚く。
「そう。昨日の覚醒の時、君の感情が光として現れた。あれが本当に感情なのか、測定して確かめたいんだ」
ルミナが少し考える。そして、微笑んだ。
「わかりました。お手伝いします」
「ありがとう、ルミナ」
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実験室に移動して、装置をセッティングする。
ルミナが中央に立ち、周囲に三つの器具を配置。魔導結晶、心拍計、共鳴石。
「ルミナ、何か嬉しいことを思い浮かべてみて」
指示を出す。
「嬉しいこと...」
ルミナが目を閉じる。
数秒後——彼女の体が、淡く光り始めた。
「おお...」
魔導結晶が反応する。透明だった結晶が、淡い金色に変わった。
「やった!感情に反応してる!」
心拍計も数値を示し始める。魔力値が、徐々に上昇していく。500、600、700...
「順調だ」
ノートに数値を素早く記録していく。予想以上の反応速度だ。理論が実証されていく喜びで、胸が高鳴る。
でも、その時——共鳴石が激しく振動し始めた。
「えっ!?」
共鳴石が、ルミナの感情を増幅している。魔力値が急上昇する。800、900、1000...
「レオン様、危険です!」
シグレが叫ぶ。
「装置の限界を超えます!」
「ルミナ、感情を抑えて!」
慌てて指示を出す。
でも、ルミナは目を閉じたまま、集中している。彼女の顔には、幸せそうな笑みが浮かんでいる。レオン様のことを考えると、わたくしの心が温かくなる。この温もりが、止まらない——。
魔力値が1200を超えた。
バチッ!
心拍計が火花を散らして壊れた。
「あっ!」
続いて、魔導結晶も砕ける。
共鳴石が過負荷で光を失った。
「ルミナ、目を開けて!」
その声に、ルミナがハッと目を開ける。
光が収まり、魔力値が急降下する。
「あ...ご、ごめんなさい!わたくし、つい...」
ルミナが慌てる。周囲を見渡して、壊れた装置に気づく。
「装置が...壊れてしまいました...」
「大丈夫、ルミナのせいじゃないよ」
彼女を安心させる。
「装置の設計が甘かったんだ。感情のエネルギーを過小評価していた」
シグレが壊れた装置を確認する。
「心拍計は完全に焼け焦げています。魔導結晶も粉々です」
「でも、貴重なデータが取れた」
記録を見つめながら、装置の破損を上回る価値を実感する。この失敗から、次の成功への手がかりが見えてくる。
ルミナの感情が、魔力値1200以上のエネルギーを生み出した。これは、通常の魔法の10倍以上だ。
「感情って、こんなに強いエネルギーなんだ」
予想をはるかに超えるデータに、言葉を失う。理論と実験結果の隔たりが、かえって研究者としての興奮を掻き立てる。
「しかも、ルミナは『嬉しい』という、ポジティブな感情だけで、これだけの力を」
「レオン様...本当に、わたくしのせいではないのですか?」
ルミナが不安そうに聞く。
「全然。むしろ、ありがとう」
彼女の頭を撫でる。
「君のおかげで、感情の力がどれほど大きいか、よく分かった」
ルミナがホッとした表情になる。
「でも...わたくしの感情が、そんなに強いなんて...」
「それは、君がレオン様を想う気持ちが強いからです」
シグレが微笑む。
ルミナの顔が真っ赤になった。
「そ、そんな...!」
---
実験後、データを整理する。
「感情のエネルギーは、予想以上だった」
シグレが頷く。
「しかも、ルミナは一人で、この値を出しました」
「うん。でも、気づいたことがある」
グラフを見せる。
「ルミナの感情は、僕への想いから生まれている。つまり、感情は相手との関係性で強くなる」
「関係性...」
「そう。一人じゃなくて、誰かを想う時、感情は最大化する」
シグレが考え込む。
「つまり、感情は単独では測定できない。相手との関係性も含めて考えないと」
「その通りです」
シグレが頷く。
「感情は孤立したものではなく、常に誰かとの繋がりの中で生まれるもの。今回の実験は、それを示しています」
記録を見つめる。
失敗したけど、大きな発見があった。
感情は測定器で捉えられるほど単純じゃない。もっと豊かで、複雑で、予測不可能なもの。
でも、だからこそ美しい。
「次は、どうすべきでしょうか」
シグレが問う。
「共鳴石を使わない、より安定した装置を設計します。それから、感情の上昇ペースを制御する方法を考える」
ノートに改良案を書き始める。
「それに、二人の共鳴効果も考慮しないと。感情は一人じゃなくて、関係性の中で生まれるものだから」
シグレが微笑む。
「失敗から学ぶ姿勢、素晴らしいですね、レオン様」
「失敗は成功の母、だからね」
笑顔で答える。
ルミナは、二人の会話を聞いて、胸が温かくなるのを感じた。
失敗しても、誰も責めない。レオン様は装置の設計ミスを認め、シグレ様は冷静に原因を分析する。そして二人とも、そこから何かを学ぼうとしている。責任を押し付け合うのではなく、共に前を向く——その姿勢が、科学者としても、人としても、本当に尊敬できる。わたくしも、レオン様たちのように、失敗を恐れず前を向いていきたい。
彼女は心の中で、静かに誓った。
失敗を恐れず、学び続ける。それが、レオン様と共に歩むということ。
---
その日の夕方、各国の諜報員は報告を送った。
ガルヴァン(神聖騎士団)が冷や汗を流しながら報告書を書く。
「第三王子レオン、感情制御兵器の開発に着手」
「装置が暴走するも、貴重なデータ取得に成功」
「感情の可視化に成功すれば、兵士の士気を数値化・管理可能に」
「敵の戦意を削ぐ新型兵器の開発も視野に入る」
ガルヴァンが頭を抱える。
「また...また世界が揺れる」
---
チェン・ロン(東方連合商会)が興奮気味に報告する。
「感情測定装置、医療分野への応用可能性大」
「心の病の診断、治療への革命的貢献」
「商品化権の独占交渉、最優先で進めるべし」
「推定市場規模:金貨5000万枚以上」
---
メルキオール(聖教国神官)が厳かに祈りを捧げる。
「感情の可視化は、神の御心を理解する第一歩」
「信仰の深さを測定できれば、真の信者と偽信者を区別可能」
「全教会に感情測定装置の導入を検討」
「レオン王子は、神の啓示を受けし者」
---
学術国の学者たちが色めき立つ。
「感情測定の新理論だと!?」
「心理学と魔法学の融合!これは革命だ!」
「感情の数値化...ノーベル賞級の発見!」
「全学術機関に通達!研究予算を最優先で配分せよ!」
---
一方、レオンは研究室で——
「うーん、次の装置は、結晶を二重構造にして...」
壊れた装置の残骸を見ながら、改良案を練っていた。
ただの科学実験。
感情を知りたいという、純粋な好奇心。
世界が揺れ動こうとも、レオンは知らない。
その温度差が、果てしなく大きい——。
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ジョブやスキルの無い事から早々と城から追い出される事が決まった、理人の前に天照の分体、眷属のアマ=テラス事『テラスちゃん』が現れた。
『異世界の女神は誘拐犯なんだ』とリヒトに話し、神社の宮司の孫の理人に異世界でも生きられるように日本人ならではの力を授けてくれた。
ここから『異世界でたった1人の日本人、理人の物語』がスタートする
「『異世界でたった1人の日本人』 私達を蔑ろにしチート貰ったのだから返して貰いますね」が好評だったのですが...昔に書いて小説らしくないのでしっかり書き始めました。
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