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第109話 憤怒の気配
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朝の光が、火山地帯の野営地を照らす。
レオン、フィルミナ、クリスタの三人が、テントから出てくる。
赤いスライムが、三人の周りをゆっくりと動いている。
昨夜、暴走していた赤いスライム。対極の調和で、落ち着きを取り戻した。そして、三人についてきた。一緒にいたいと、意志を示した。
レオンが、赤いスライムを見つめる。
「君も、僕たちの仲間だね」
赤いスライムが、小さく震える。
それは、喜びの震えだった。
フィルミナは優しい表情で微笑む。
「名前をつけてあげましょう」
クリスタは穏やかに頷いて同意する。
「そうですわね。この子にも、名前が必要ですわ」
レオンは少し考え込んでから、研究者の目で赤いスライムを観察する。
この子は、炎の属性を持つスライム。赤く輝く体は、火山地帯の環境に適応している。そして、昨夜の観察では、『憤怒の牙』の魔素を吸収する能力を持っている可能性がある。
炎と憤怒...この二つの要素を持つ存在。名前は...そうだ。イグナ。イグニス、炎の古語。でも、もっと親しみやすく。イグナ。この子にぴったりだ。
レオンは笑顔を浮かべて言う。
「イグナ...どうかな?」
フィルミナが、目を輝かせる。
「イグナ!素敵な名前ですわ!」
クリスタは満足そうに微笑む。
「イグナ...炎の子。ぴったりですわね」
レオンが、イグナに手を伸ばす。
「イグナ。これから、よろしくね」
イグナが、レオンの手に触れる。
温かい。
赤く輝く体が、喜びを表すように揺れている。
フィルミナが、自分の白い炎を小さく灯す。
「イグナ、私の炎よ。仲良くしましょうね」
イグナが、フィルミナの炎に近づく。
白い炎と赤い体が、互いに共鳴する。
クリスタが、静かに氷を展開する。
「イグナ、私の氷も、よろしく」
イグナが、クリスタの氷に触れる。
冷たいはずの氷。でも、イグナは拒まない。むしろ、心地よさそうに動く。
四人の絆が、生まれた瞬間だった。
---
レオンが、研究ノートを取り出す。
イグナの能力を、詳しく観察したい。昨夜、対極の調和でイグナの暴走を抑えた時、イグナは『憤怒の牙』の魔素を吸収しているように見えた。
もしそれが本当なら、イグナは僕たちにとって重要な存在になる。詳細に記録しよう。
レオンはイグナに優しく声をかける。
「イグナ、君の炎を、もう少し見せてくれるかな?」
イグナが、小さく震える。
そして、赤い炎を微かに放つ。
レオンが、魔素測定器を取り出し、イグナの炎を測定する。
針が、大きく振れる。
レオンが、驚きの表情を見せる。
「すごい...この魔素の質...『憤怒の牙』の魔素と同質だ!」
フィルミナが、興味深そうに見る。
「同質...?」
レオンは測定結果を確認しながら説明する。
「うん。イグナの炎は、『憤怒の牙』の魔素を吸収して、自分のものにしている」
クリスタが、静かに分析する。
「つまり、イグナは魔素フィルターのような役割を果たしているのですわね」
レオンは興奮を抑えきれずに頷く。
「そう!魔素フィルター!イグナは、周囲の『憤怒の牙』の魔素を吸収し、浄化する能力を持っているんだ!」
フィルミナが、イグナを見つめる。
「だから、イグナは暴走していたのね。あの洞窟で、魔素を吸収しすぎて...」
レオンは納得した表情で言う。
「そうだと思う。でも、対極の調和で落ち着きを取り戻した。今のイグナなら、魔素を制御できる」
レオンが、フィルミナとイグナを見比べる。
「フィルミナ、君の白い炎と、イグナの炎を近づけてみて」
フィルミナは静かに頷いて同意する。
「わかりました」
フィルミナの白い炎と、イグナの赤い炎が、互いに近づく。
そして、触れ合う。
微かな共鳴。
二つの炎が、互いに影響し合っている。
フィルミナの白い炎が、イグナの赤い炎を包み込む。イグナの炎が、徐々に穏やかになる。でも、力は失われていない。
レオンが、その様子を観察する。
「フィルミナの白い炎が、イグナの炎を調整している...これは、すごい発見だ!」
次に、クリスタの氷とイグナの炎を近づける。
氷が、炎の熱を受け止める。
でも、溶けない。
むしろ、氷が輝きを増している。
クリスタが、驚きの表情を見せる。
「私の氷が...イグナの炎を受け止めて、強化されている...?」
レオンが、興奮した様子で言う。
「そうだ!イグナの炎は、フィルミナの白い炎と共鳴し、クリスタの氷と反応する!」
レオンが、ノートに詳細を記録する。
イグナ、炎の覚醒個体。『憤怒の牙』の魔素を吸収する能力を持つ。フィルミナの白い炎と共鳴し、クリスタの氷と反応する。魔素フィルターの役割を果たす可能性がある。さらなる観察が必要だ。
イグナが、レオンの手に触れる。
温かい。
レオンが、イグナを撫でる。
「イグナ、君は本当にすごいね」
---
レオンが、地図を広げる。
「今日は、火山の奥部へ進もう。『憤怒の牙』の気配が、さらに強い場所だ」
フィルミナが、警戒しながら言う。
「さらに過酷な環境になりますわね」
クリスタが、静かに頷く。
「ええ。準備を整えましょう」
イグナが、四人の周りを動く。
まるで、「私も行く」と言っているよう。
レオンが、イグナを見る。
「イグナも、一緒に来るんだね」
イグナが、小さく震える。
それは、肯定の意思表示だった。
四人が、火山の奥部へ向かって歩き始める。
溶岩の川を越え、黒い大地を進む。
空気が、さらに熱くなる。
火山灰が、より濃く舞っている。
そして、『憤怒の牙』の気配が、段階的に強まっている。
フィルミナは自分の手のひらの炎を見つめる。
「炎が...微かに揺れています...」
クリスタが、周囲を警戒する。
「気配が...昨日よりも強いですわ」
イグナが、レオンの周りを動く。
まるで、守るように。
レオンが、その様子に気づく。
「イグナ...君も、気配を感じているんだね」
イグナは、本当に魔素フィルターとして機能している。フィルミナとクリスタを守るために、『憤怒の牙』の魔素を吸収している。
この子は...本当に僕たちの仲間なんだ。
四人が、さらに奥へ進む。
大地が、赤と黒に染まっている。
溶岩の流れが、複雑な模様を描いている。
熱気が、容赦なく襲いかかってくる。
レオンが、冷却用の魔道具を確認する。
まだ機能している。でも、この熱気は予想以上だ。
フィルミナの白い炎が、微かに赤く染まり始める。
「...レオン様...炎が...」
クリスタが、即座に氷を展開する。
「冷却します」
氷が、フィルミナの周りを包む。
炎が、白に戻る。
イグナが、フィルミナの周りを動く。
赤い体が輝き、『憤怒の牙』の魔素を吸収し始める。
フィルミナは驚きと感謝を込めて尋ねる。
「イグナ...私を守ってくれているの...?」
イグナが、小さく震える。
肯定の意思表示。
レオンが、その様子を観察する。
四人が、さらに進む。
そして、ある場所に到達した。
周囲の大地が、黒く焼け焦げている。
溶岩の池が、激しく沸騰している。
空気が、さらに歪んでいる。
そして。
突然、強烈な憤怒の波が襲いかかってきた。
---
それは、昨日感じた気配よりも、はるかに強い。
憤怒の気配。
怒り、焦り、不安...全てが混ざり合った、圧倒的な負の感情。
レオンが、額に手を当てる。
なんだろう...頭が熱い。イライラする。
レオンは周囲を見渡して焦りを感じる。
なんで、こんなに暑いんだ。もっと早く進めないのか。フィルミナとクリスタは何をしている。遅い。遅すぎる。もっと効率的に...もっと早く...
レオンははっとして自分を取り戻す。
...待て。これは、僕じゃない。僕は、こんなことを考えない。二人は全力で支援してくれている。遅いなんてことはない。
これは...『憤怒の牙』の影響だ。感情が増幅されている。冷静に。分析しよう。この現象を理解すれば、対処できる。
レオンは深呼吸して心を落ち着かせる。
これが感情増幅...『憤怒の牙』の影響。軽度のイライラと焦りが、増幅されている。でも、意識すれば制御できる。
冷静に...深呼吸して...僕は研究者だ。感情に流されない。この現象を観察し、記録する。
フィルミナとクリスタも、同じ影響を受けているかもしれない。二人を守らなければ。まず、自分を落ち着かせて、それから二人を支える。
レオンは心配そうにフィルミナを見つめる。
フィルミナの炎が、微かに赤く染まっている。
フィルミナは自分の手のひらの炎を見つめて不安を感じる。
心臓が...速い。焦りが...込み上げてくる。
フィルミナはレオンに視線を向ける。
レオン様を...守らなければ。早く。今すぐに。この気配は危険。もっと強い炎を。もっと速く。クリスタは何をしている。遅い。私が全部やらなければ。レオン様が危ない。早く、早く...
フィルミナの炎が、さらに赤くなる。
...違う。これは、私じゃない。私は、こんなに焦らない。クリスタを信じている。レオン様も、私を信じてくれている。
これは...『憤怒の牙』の影響。感情が増幅されている。落ち着いて。深呼吸して。白い炎を...取り戻す。
クリスタが、フィルミナの異変に気づく。
フィルミナの炎が...赤い。レオン様も、額に手を当てている。これは、感情増幅。『憤怒の牙』の影響。
でも、私は大丈夫。300年の経験がある。感情制御は得意だ。今、二人を支えなければ。
私の氷で、冷静さを取り戻させる。そして、レオン様の魔素と共に、この気配を押し返す。二人とも...大丈夫。私がいる。
クリスタが、即座に行動する。
「フィルミナ!レオン様!」
クリスタの氷が、フィルミナとレオンを包み込む。
冷却の力が、二人に伝わる。
フィルミナの炎が、徐々に白に戻っていく。
レオンは安堵の表情で深く息をつく。
「クリスタ...ありがとう」
フィルミナは自分の炎を見つめて反省する。
「私...暴走しかけていました...」
イグナが、三人の周りを素早く動く。
赤い体が輝き、憤怒の魔素を吸収し始める。
イグナの意志が伝わってくる。
「守る...仲間を...守る」
言葉ではない。でも、確かに伝わる。
レオンはイグナを見つめて感謝する。
「イグナ...君も、僕たちを守ってくれているんだね」
フィルミナが、イグナに手を伸ばす。
「ありがとう、イグナ」
クリスタが、静かに言う。
「さあ、四人で。この気配を押し返しましょう」
レオンは力強く頷く。
「そうだね。フィルミナ、クリスタ、対極の調和を」
フィルミナとクリスタが、互いに視線を交わす。
フィルミナの白い炎と、クリスタの氷が、同時に発動する。
そして、混ざり合う。
紫色の波動が生まれる。
イグナが、その波動の中に入る。
イグナの赤い炎が、紫色の波動と共鳴する。
三者の力が、一つになる。
レオンが、三人の肩に手を置く。
魔素が、レオンから三人へと流れ込む。
紫色の波動が、さらに強まる。
赤黒い気配に対抗する、調和の力。
紫色の波動が、赤黒い気配を押し返し始める。
徐々に、徐々に...
赤黒い気配が、後退する。
そして、火山の奥へと引いていく。
四人が、深く息をつく。
フィルミナの炎が、完全に白に戻っている。
クリスタの氷が、柔らかく輝いている。
イグナの赤い体が、穏やかに揺れている。
レオンは三人を見渡して言う。
「みんな...ありがとう。これが、四人の力だね」
---
四人が、安全な場所まで戻る。
火山の奥部からは離れ、キャンプ地の近くに戻ってきた。
レオンは少し疲れた様子で地面に座る。
「今日は...ここまでにしよう。これ以上は危険だ」
フィルミナは安堵の表情で頷く。
「そうですわね。今日の経験を、整理しましょう」
クリスタが、静かに同意する。
「ええ。今日、私たちは大きなことを学びました」
イグナが、四人の中心で休んでいる。
穏やかな赤い光を放っている。
レオンが、今日の経験を整理する。
今日、僕たちは初めて『憤怒の牙』の感情増幅を直接体験した。軽度なイライラと焦り。でも、それでも危険だった。意識しなければ、暴走していたかもしれない。
フィルミナは、僕とクリスタを守ろうとする焦りが増幅された。僕も、二人を守ろうとする焦りが増幅された。でも、クリスタの冷静さが僕たちを救った。
そして、イグナ。イグナは魔素フィルターとして、僕たちを守ってくれた。四人の連携。これが、今日の最大の発見だ。
レオンは穏やかな声で言う。
「今日の経験は、貴重だった。感情増幅を実際に体験できた」
フィルミナは自分の炎を見つめて振り返る。
「私は...焦りを感じました。レオン様を守らなければという思いが、増幅されて...」
クリスタは静かに頷いて答える。
「私も、焦りを感じかけました。でも、300年の経験が役立ちました」
レオンはイグナを優しく見つめる。
「そして、イグナ。君の役割が、今日はっきりした。君は、僕たちを守る魔素フィルターだ」
イグナが、小さく震える。
喜びの震え。
フィルミナが、イグナを撫でる。
「イグナ、ありがとう。これから、ずっと一緒ね」
クリスタは満足そうに微笑む。
「四人の絆が、また深まりましたわね」
レオンが、遠くの火山を見つめる。
あの奥に、『憤怒の牙』が眠っている。今日の体験は、序章に過ぎない。これから、さらに強い気配と向き合うことになる。
でも、大丈夫。フィルミナ、クリスタ、イグナがいれば、どんな困難も乗り越えられる。四人の絆を信じて、明日、また進もう。
レオンは決意を込めて言う。
「明日は、さらに奥へ進む。今日の経験を活かして、慎重に」
フィルミナが、力強く頷く。
「はい。必ず、レオン様を守ります」
クリスタが、静かに同意する。
「私も、全力で支えます」
イグナが、四人の中心で輝く。
四人の決意が、一つになる。
火山地帯の夜は、静かに更けていく。
溶岩の赤い光が、四人を照らしている。
明日、新しい挑戦が待っている。
『憤怒の牙』の真実に、一歩近づく日。
四人の絆が、その鍵となる。
レオン、フィルミナ、クリスタの三人が、テントから出てくる。
赤いスライムが、三人の周りをゆっくりと動いている。
昨夜、暴走していた赤いスライム。対極の調和で、落ち着きを取り戻した。そして、三人についてきた。一緒にいたいと、意志を示した。
レオンが、赤いスライムを見つめる。
「君も、僕たちの仲間だね」
赤いスライムが、小さく震える。
それは、喜びの震えだった。
フィルミナは優しい表情で微笑む。
「名前をつけてあげましょう」
クリスタは穏やかに頷いて同意する。
「そうですわね。この子にも、名前が必要ですわ」
レオンは少し考え込んでから、研究者の目で赤いスライムを観察する。
この子は、炎の属性を持つスライム。赤く輝く体は、火山地帯の環境に適応している。そして、昨夜の観察では、『憤怒の牙』の魔素を吸収する能力を持っている可能性がある。
炎と憤怒...この二つの要素を持つ存在。名前は...そうだ。イグナ。イグニス、炎の古語。でも、もっと親しみやすく。イグナ。この子にぴったりだ。
レオンは笑顔を浮かべて言う。
「イグナ...どうかな?」
フィルミナが、目を輝かせる。
「イグナ!素敵な名前ですわ!」
クリスタは満足そうに微笑む。
「イグナ...炎の子。ぴったりですわね」
レオンが、イグナに手を伸ばす。
「イグナ。これから、よろしくね」
イグナが、レオンの手に触れる。
温かい。
赤く輝く体が、喜びを表すように揺れている。
フィルミナが、自分の白い炎を小さく灯す。
「イグナ、私の炎よ。仲良くしましょうね」
イグナが、フィルミナの炎に近づく。
白い炎と赤い体が、互いに共鳴する。
クリスタが、静かに氷を展開する。
「イグナ、私の氷も、よろしく」
イグナが、クリスタの氷に触れる。
冷たいはずの氷。でも、イグナは拒まない。むしろ、心地よさそうに動く。
四人の絆が、生まれた瞬間だった。
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レオンが、研究ノートを取り出す。
イグナの能力を、詳しく観察したい。昨夜、対極の調和でイグナの暴走を抑えた時、イグナは『憤怒の牙』の魔素を吸収しているように見えた。
もしそれが本当なら、イグナは僕たちにとって重要な存在になる。詳細に記録しよう。
レオンはイグナに優しく声をかける。
「イグナ、君の炎を、もう少し見せてくれるかな?」
イグナが、小さく震える。
そして、赤い炎を微かに放つ。
レオンが、魔素測定器を取り出し、イグナの炎を測定する。
針が、大きく振れる。
レオンが、驚きの表情を見せる。
「すごい...この魔素の質...『憤怒の牙』の魔素と同質だ!」
フィルミナが、興味深そうに見る。
「同質...?」
レオンは測定結果を確認しながら説明する。
「うん。イグナの炎は、『憤怒の牙』の魔素を吸収して、自分のものにしている」
クリスタが、静かに分析する。
「つまり、イグナは魔素フィルターのような役割を果たしているのですわね」
レオンは興奮を抑えきれずに頷く。
「そう!魔素フィルター!イグナは、周囲の『憤怒の牙』の魔素を吸収し、浄化する能力を持っているんだ!」
フィルミナが、イグナを見つめる。
「だから、イグナは暴走していたのね。あの洞窟で、魔素を吸収しすぎて...」
レオンは納得した表情で言う。
「そうだと思う。でも、対極の調和で落ち着きを取り戻した。今のイグナなら、魔素を制御できる」
レオンが、フィルミナとイグナを見比べる。
「フィルミナ、君の白い炎と、イグナの炎を近づけてみて」
フィルミナは静かに頷いて同意する。
「わかりました」
フィルミナの白い炎と、イグナの赤い炎が、互いに近づく。
そして、触れ合う。
微かな共鳴。
二つの炎が、互いに影響し合っている。
フィルミナの白い炎が、イグナの赤い炎を包み込む。イグナの炎が、徐々に穏やかになる。でも、力は失われていない。
レオンが、その様子を観察する。
「フィルミナの白い炎が、イグナの炎を調整している...これは、すごい発見だ!」
次に、クリスタの氷とイグナの炎を近づける。
氷が、炎の熱を受け止める。
でも、溶けない。
むしろ、氷が輝きを増している。
クリスタが、驚きの表情を見せる。
「私の氷が...イグナの炎を受け止めて、強化されている...?」
レオンが、興奮した様子で言う。
「そうだ!イグナの炎は、フィルミナの白い炎と共鳴し、クリスタの氷と反応する!」
レオンが、ノートに詳細を記録する。
イグナ、炎の覚醒個体。『憤怒の牙』の魔素を吸収する能力を持つ。フィルミナの白い炎と共鳴し、クリスタの氷と反応する。魔素フィルターの役割を果たす可能性がある。さらなる観察が必要だ。
イグナが、レオンの手に触れる。
温かい。
レオンが、イグナを撫でる。
「イグナ、君は本当にすごいね」
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レオンが、地図を広げる。
「今日は、火山の奥部へ進もう。『憤怒の牙』の気配が、さらに強い場所だ」
フィルミナが、警戒しながら言う。
「さらに過酷な環境になりますわね」
クリスタが、静かに頷く。
「ええ。準備を整えましょう」
イグナが、四人の周りを動く。
まるで、「私も行く」と言っているよう。
レオンが、イグナを見る。
「イグナも、一緒に来るんだね」
イグナが、小さく震える。
それは、肯定の意思表示だった。
四人が、火山の奥部へ向かって歩き始める。
溶岩の川を越え、黒い大地を進む。
空気が、さらに熱くなる。
火山灰が、より濃く舞っている。
そして、『憤怒の牙』の気配が、段階的に強まっている。
フィルミナは自分の手のひらの炎を見つめる。
「炎が...微かに揺れています...」
クリスタが、周囲を警戒する。
「気配が...昨日よりも強いですわ」
イグナが、レオンの周りを動く。
まるで、守るように。
レオンが、その様子に気づく。
「イグナ...君も、気配を感じているんだね」
イグナは、本当に魔素フィルターとして機能している。フィルミナとクリスタを守るために、『憤怒の牙』の魔素を吸収している。
この子は...本当に僕たちの仲間なんだ。
四人が、さらに奥へ進む。
大地が、赤と黒に染まっている。
溶岩の流れが、複雑な模様を描いている。
熱気が、容赦なく襲いかかってくる。
レオンが、冷却用の魔道具を確認する。
まだ機能している。でも、この熱気は予想以上だ。
フィルミナの白い炎が、微かに赤く染まり始める。
「...レオン様...炎が...」
クリスタが、即座に氷を展開する。
「冷却します」
氷が、フィルミナの周りを包む。
炎が、白に戻る。
イグナが、フィルミナの周りを動く。
赤い体が輝き、『憤怒の牙』の魔素を吸収し始める。
フィルミナは驚きと感謝を込めて尋ねる。
「イグナ...私を守ってくれているの...?」
イグナが、小さく震える。
肯定の意思表示。
レオンが、その様子を観察する。
四人が、さらに進む。
そして、ある場所に到達した。
周囲の大地が、黒く焼け焦げている。
溶岩の池が、激しく沸騰している。
空気が、さらに歪んでいる。
そして。
突然、強烈な憤怒の波が襲いかかってきた。
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それは、昨日感じた気配よりも、はるかに強い。
憤怒の気配。
怒り、焦り、不安...全てが混ざり合った、圧倒的な負の感情。
レオンが、額に手を当てる。
なんだろう...頭が熱い。イライラする。
レオンは周囲を見渡して焦りを感じる。
なんで、こんなに暑いんだ。もっと早く進めないのか。フィルミナとクリスタは何をしている。遅い。遅すぎる。もっと効率的に...もっと早く...
レオンははっとして自分を取り戻す。
...待て。これは、僕じゃない。僕は、こんなことを考えない。二人は全力で支援してくれている。遅いなんてことはない。
これは...『憤怒の牙』の影響だ。感情が増幅されている。冷静に。分析しよう。この現象を理解すれば、対処できる。
レオンは深呼吸して心を落ち着かせる。
これが感情増幅...『憤怒の牙』の影響。軽度のイライラと焦りが、増幅されている。でも、意識すれば制御できる。
冷静に...深呼吸して...僕は研究者だ。感情に流されない。この現象を観察し、記録する。
フィルミナとクリスタも、同じ影響を受けているかもしれない。二人を守らなければ。まず、自分を落ち着かせて、それから二人を支える。
レオンは心配そうにフィルミナを見つめる。
フィルミナの炎が、微かに赤く染まっている。
フィルミナは自分の手のひらの炎を見つめて不安を感じる。
心臓が...速い。焦りが...込み上げてくる。
フィルミナはレオンに視線を向ける。
レオン様を...守らなければ。早く。今すぐに。この気配は危険。もっと強い炎を。もっと速く。クリスタは何をしている。遅い。私が全部やらなければ。レオン様が危ない。早く、早く...
フィルミナの炎が、さらに赤くなる。
...違う。これは、私じゃない。私は、こんなに焦らない。クリスタを信じている。レオン様も、私を信じてくれている。
これは...『憤怒の牙』の影響。感情が増幅されている。落ち着いて。深呼吸して。白い炎を...取り戻す。
クリスタが、フィルミナの異変に気づく。
フィルミナの炎が...赤い。レオン様も、額に手を当てている。これは、感情増幅。『憤怒の牙』の影響。
でも、私は大丈夫。300年の経験がある。感情制御は得意だ。今、二人を支えなければ。
私の氷で、冷静さを取り戻させる。そして、レオン様の魔素と共に、この気配を押し返す。二人とも...大丈夫。私がいる。
クリスタが、即座に行動する。
「フィルミナ!レオン様!」
クリスタの氷が、フィルミナとレオンを包み込む。
冷却の力が、二人に伝わる。
フィルミナの炎が、徐々に白に戻っていく。
レオンは安堵の表情で深く息をつく。
「クリスタ...ありがとう」
フィルミナは自分の炎を見つめて反省する。
「私...暴走しかけていました...」
イグナが、三人の周りを素早く動く。
赤い体が輝き、憤怒の魔素を吸収し始める。
イグナの意志が伝わってくる。
「守る...仲間を...守る」
言葉ではない。でも、確かに伝わる。
レオンはイグナを見つめて感謝する。
「イグナ...君も、僕たちを守ってくれているんだね」
フィルミナが、イグナに手を伸ばす。
「ありがとう、イグナ」
クリスタが、静かに言う。
「さあ、四人で。この気配を押し返しましょう」
レオンは力強く頷く。
「そうだね。フィルミナ、クリスタ、対極の調和を」
フィルミナとクリスタが、互いに視線を交わす。
フィルミナの白い炎と、クリスタの氷が、同時に発動する。
そして、混ざり合う。
紫色の波動が生まれる。
イグナが、その波動の中に入る。
イグナの赤い炎が、紫色の波動と共鳴する。
三者の力が、一つになる。
レオンが、三人の肩に手を置く。
魔素が、レオンから三人へと流れ込む。
紫色の波動が、さらに強まる。
赤黒い気配に対抗する、調和の力。
紫色の波動が、赤黒い気配を押し返し始める。
徐々に、徐々に...
赤黒い気配が、後退する。
そして、火山の奥へと引いていく。
四人が、深く息をつく。
フィルミナの炎が、完全に白に戻っている。
クリスタの氷が、柔らかく輝いている。
イグナの赤い体が、穏やかに揺れている。
レオンは三人を見渡して言う。
「みんな...ありがとう。これが、四人の力だね」
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四人が、安全な場所まで戻る。
火山の奥部からは離れ、キャンプ地の近くに戻ってきた。
レオンは少し疲れた様子で地面に座る。
「今日は...ここまでにしよう。これ以上は危険だ」
フィルミナは安堵の表情で頷く。
「そうですわね。今日の経験を、整理しましょう」
クリスタが、静かに同意する。
「ええ。今日、私たちは大きなことを学びました」
イグナが、四人の中心で休んでいる。
穏やかな赤い光を放っている。
レオンが、今日の経験を整理する。
今日、僕たちは初めて『憤怒の牙』の感情増幅を直接体験した。軽度なイライラと焦り。でも、それでも危険だった。意識しなければ、暴走していたかもしれない。
フィルミナは、僕とクリスタを守ろうとする焦りが増幅された。僕も、二人を守ろうとする焦りが増幅された。でも、クリスタの冷静さが僕たちを救った。
そして、イグナ。イグナは魔素フィルターとして、僕たちを守ってくれた。四人の連携。これが、今日の最大の発見だ。
レオンは穏やかな声で言う。
「今日の経験は、貴重だった。感情増幅を実際に体験できた」
フィルミナは自分の炎を見つめて振り返る。
「私は...焦りを感じました。レオン様を守らなければという思いが、増幅されて...」
クリスタは静かに頷いて答える。
「私も、焦りを感じかけました。でも、300年の経験が役立ちました」
レオンはイグナを優しく見つめる。
「そして、イグナ。君の役割が、今日はっきりした。君は、僕たちを守る魔素フィルターだ」
イグナが、小さく震える。
喜びの震え。
フィルミナが、イグナを撫でる。
「イグナ、ありがとう。これから、ずっと一緒ね」
クリスタは満足そうに微笑む。
「四人の絆が、また深まりましたわね」
レオンが、遠くの火山を見つめる。
あの奥に、『憤怒の牙』が眠っている。今日の体験は、序章に過ぎない。これから、さらに強い気配と向き合うことになる。
でも、大丈夫。フィルミナ、クリスタ、イグナがいれば、どんな困難も乗り越えられる。四人の絆を信じて、明日、また進もう。
レオンは決意を込めて言う。
「明日は、さらに奥へ進む。今日の経験を活かして、慎重に」
フィルミナが、力強く頷く。
「はい。必ず、レオン様を守ります」
クリスタが、静かに同意する。
「私も、全力で支えます」
イグナが、四人の中心で輝く。
四人の決意が、一つになる。
火山地帯の夜は、静かに更けていく。
溶岩の赤い光が、四人を照らしている。
明日、新しい挑戦が待っている。
『憤怒の牙』の真実に、一歩近づく日。
四人の絆が、その鍵となる。
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