二重扉のアクセスポイント

Alata//

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クリック先の採用画面と憂鬱な夜の東京

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俺はエンジニアの仕事について廻田のお得意さん、嬰季逸(えんだきいつ)との打ち合わせをメール上でしている。内心ウキウキしていて落ち着かなかったが、手元は騒ぐことなくタイピングし続けた。
『ではそういうことだから会社に君の書類を提出しとくね。採用か不採用かは私を通してお伝えする。』
話を進めてくれてとうとう勤め先になるであろう会社に書類を提出してもらった。
『ありがとうございます。』
今までこんな緊張を味わったことがなく現実味を感じられないが、久しぶりに外を見てみようと思い、閉まっている遮光カーテンを開けると東京都は思えないくらい澄んだ夜景に心を奪われた。

その数日後、嬰さんから採用になったとのメールが届いた。
『おめでとう。これからも頑張ってくれ。』
抑えられない嬉しさに初めてジャンプした。
しかし着地した瞬間、息苦しさを覚え、うずくまった。
「うっ…」
人格交代が始まった。いつもとは違う交代の仕方で締め付けられるほど苦しくなる。
目を覚ますと床に横になっていた。気を失っていたらしい。
左が下になって横になっていたので肩と腰が痛い。
「痛った…うーんもぉ…今日何曜日?」
不登校すぎて曜日感覚と時間感覚がバカになる。
起きたら一番最初にSNSを開く。見覚えの無いDMが来ていた。
「なにこれ。」
文面と状況把握のため上の方へスクロールして見たが、なんでこんなことになったのか覚えていなかった。
「あ、あーね。って事は私はこれから違法労働をして行くと…」
独り言が止まらないが気にとめられないので気にしない。
しかし問題はこれからだ。
どうしようか。竜妃がやってしまったことだ。人格を変えての仕事になるか、
行き来しながらの仕事になるのか…違法労働はタダで済む話じゃない。
ピーンポーン
インターホンがなる音がしっかり耳に入った。
誰かが階段を上ってくる。何かあると怖いので確り身構えた。
コンコン
誰かにノックされた。そーっとドアに近づく。
「桜妃ちゃん?私、おばさんよ…あなた宛に郵便が来たの…」
この声は…この家に住まわせてもらってるおばさんの声だ。いつぶりに声を聞いたか分からない。
「は、はい。あ、ありがとうございます。」
郵便物を受け取ると名無しで私の名前だけが書かれている真っ白な封筒だった。
(何よ?これ。)
気になってしょうがないのでとりあえず開けてみる。
中には5枚ほどの書類ときっと返信用である封筒が1枚入っていた。
(は?)
ざっと書類を見ると会社の名前もない訳の分からない書類ばかりだった。
書いてあったのは『仕事上の諸注意』、『収入の振込先について』、『仕事内容と金額について』。
その他諸々の書類があった。
(こんなん訳分からないから竜妃に任せようかな…)
諭すように書類から目を離し、天井を見上げた。
(これからどうするんだろ。)
無性に外に出たくなった。エナドリを片手に窓辺に寄りかかる。
今日の東京も夜の街で賑わっている頃だろう。私はため息をひとつつき、心の整理をつける前に
精神的に疲れたのでベットに横になり、静かで憂鬱な夜を過ごした。
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