異世界召喚されたのは、『元』勇者です

ユモア

文字の大きさ
33 / 62
第3章

第16話 別人

しおりを挟む


 冒険者組合に依頼達成の報告を行った夜。
 屋敷に備え付けられていたシャワーを浴びて、日課のステータス確認を行なっていた。

  =========

 名前:トウヤ・イチノセ
 種族:人間

 極限《エクストリーム》スキル
全能なる魔術師オール・デウス・ザーヴェラー
+[全属性魔法]
+[召喚魔法]
+[????]
+[????]
+[????]
 『神血之医術アスクレーピオス

 固有スキル
『聖獣召喚』
『回帰の栄光』

 スキル
『戦闘武器術』
『戦闘予見』
『戦闘覇気』
『感覚地帯』
 
 耐性スキル
『支配耐性』
『負傷耐性』
『精神干渉耐性』
『状態異常耐性』

 
 称号
『異世界人』『再臨の勇者』『医神の加護』『神導』『神獣の契約者』


 =========


 固有スキル『回帰の栄光』は、明日羽との戦いを得て取得した。その効果は、一度失ったスキルを再取得し易くする、という物だ。
 本来、一度取得したスキルは、衰えても失ってしまう事は殆どない。その為、この固有スキルを取得した人は、この世界でも俺位だろう。
 だが、それによって嘗て取得していた戦闘系のスキルを全て再取得する事が出来た。


 =========

『戦闘武器術』
 効果
 ・剣術、槍術、盾術、弓術など、戦闘に関する武器の扱いの全てに補正を受ける。

『戦闘予見』
 効果
 ・回避や気配の感知、先読みなど、戦闘時に身体の感覚器官に働きが上昇する。

『戦闘覇気』
 効果
 ・戦闘時の威圧、殺気が相手に与える影響が上昇する。

 =========

 戦闘系統に関連するスキルは、複数のスキルの効果が統合された効果を持っている。
 取得するのは困難なスキルではあるが、様々な能力値を纏めて底上げ出来る希少なスキルだ。


 =========

『感覚地帯』
 効果
 ・魔力感知の範囲が拡大する。
 ・魔力感知の範囲内の精密な情報を取得出来る。

 =========

 極一部の魔力感知能力に長け、魔力に対する高い親和性と理解を持つ者だけが取得出来るスキルだ。
 自分の知る中で、『感覚地帯』のスキルを持つ人は、俺と俺の魔法の師匠を除けば、誰もいない。
 強者達が群雄割拠していた戦時中では、敵の戦力低下を目的とした、希少なスキルを持つ者を暗殺する事件が多かった。その為、故意的に隠匿されていた可能性はある。

「……」

 順調にスキルが戻って来てはいるが、『全能なる魔術師オール・デウス・ザーヴェラー』によって新たに取り戻した魔法を見つめる。


 =========

『召喚魔法』
 効果
 ・契約した存在を呼び出す事が出来る。

 =========

 
『召喚魔法』は、神の御業――『空間を渡る力――転移』を真似て神代の人間が創り出した魔法の1つ、と言われている。
 だが、召喚魔法の効果は、神話として語られる人や物質を思うがままに一瞬で移動させる神の力とは程遠い。
 人とは違う種族――主に魔物や精霊と契約を交わし、相手の同意を得て、空間の道を創造し召喚が出来る。物質の移動は、召喚対象に装備している装備品程度が限界であり、自由自在とは到底呼べる代物ではない。その上、召喚魔法の習得は、制約がある固有魔法を除けば、最も難しい部類に含まれる。
 もし、習得出来たとしても、発動に用いられる魔力は、一般人の習得限界と表現される属性魔法の第五階梯とは比較にならない程に膨大だ。それをクリア出来たとしても、魔物や精霊と自分に有利な契約を交わす事が出来るかどうかは、才能と運に大きく左右される。

 俺が以前召喚されて召喚魔法を覚えてから、契約出来た存在は数匹しかいない。
 世界中を旅して、勇者と呼ばれるだけの力を持っていても、召喚魔法の契約を結べる存在と出会える機会は殆どなかった。
 一度認められて契約しても、相手に拒絶されれば、召喚は失敗してしまう。
 習得も困難な上に、必ず成功するとも限らない召喚魔法は、凡ゆる面で不便だ。
 現在の事は分からないが、10年前の異世界では、召喚魔法を使う有名な魔導師は、極々僅かだった。その極々僅かな魔導師達も、戦争の惨劇に呑まれて、戦場で名を聞く事は直ぐになくなった。



「どうかしたの?」

 髪をタオルで拭くリツェアが、扉の前に立っていた。

「ちょっとな」
「ふーん」

 詳しい事はどうせ話さない事を分かっているリツェアは、話題を変えた。

「それにしても、意外だったわね」
「何がだ?」
「トウヤが、カシムの弟子入りを認めた事よ」
「弟子じゃない」
「似た様なもんでしょ」

 そう返されてしまうと、リツェアに反論が出来ない。その為、俺はリツェアの言葉を認めざる負えなかった。

「私達は兎も角、貴方は執行者に狙われているのよ」

 それも、暁明日羽という、俺より遥かに格上の敵だ。
 
「分かってる」
「それなら良いけど。貴方に関わった所為で、カシム達が死んだ時の貴方なんて見たくないのよ」
「……どういう意味だ?」

 本当に意味が分からず、リツェアに問いかける。

「自分では気付いてないかもしれないけど、貴方は相当なお人好しよ。きっと、また後悔する事になるわ」
「また?」
「別に隠していた訳じゃないけど、貴方とは昔に辺境都市で会ってるのよ」
「何?」

 リツェアの顔に見覚えはない。
 だが、会った時間が短ければ印象には残らないし、遠くから見られただけなら最初から覚えている訳がなかった。

「私は、辺境都市で起こった吸血鬼事件の被害者だったの。だから、吸血鬼を殺してくれた勇者達の事は、10年経った今でも、ハッキリと覚えているわ」

 リツェアの口から出た『吸血鬼事件』は、俺が勇者として覚醒してはおらず、明日羽が共に冒険していた頃に起きた悲惨な事件だ。
 ある人間の女性が、魔王の力によって吸血鬼となり、その代償として年若く綺麗な女性達の血を奪い続けていた。
 当時は、世間が戦争で混乱していた事もあり、俺達が気付いた時には大勢の死者が出てしまっていた後だった。その後、吸血鬼を討ち倒し、囚われていた女性達は解放されたが、その中にリツェアがいたのかもしれない。

「トウヤは、見た目も中身も変わってしまったけど、変わらない部分もあるのよ」

 少しだけ挑発的な笑みを浮かべたリツェアは、「おやすみ」と言って部屋に戻って行った。

「変わらない部分、か……」

 リツェアの言葉が、何故か頭に残る。

 俺の姿は、まるで別人の様に変わった。
 姿だけじゃない、周囲への考え方、感じ方も、昔の俺とは違う。それに、自分の得意としていた魔法の属性が変化していると気付いた時には、驚愕した。
 本来、この世界で広く知られる魔法――属性魔法には、階梯と呼ばれる序列が存在する。そして、人それぞれに得意属性と呼ばれる物があり、自分の得意とする属性の特徴は威力が強かったり、魔法の習得速度が他の魔法よりも遥かに早い。
 逆に、苦手な属性の場合は、魔法を発動すら出来ない事も珍しくはない。

 俺が最初に召喚された時に得意だったのは、風属性の魔法だった。
 だが、今回は氷属性の魔法が最も体に馴染み、得意と感じでいる。
 本来、同じ人間が、途中で得意な属性が変わる事なんて話は聞いた事がない。

「そんな事、別人にならない限り不可能だ」

 自身の考えを嘲笑う様に、独り言を呟く。

 窓の外の夜空は、厚い雲に覆われて月や星は全く見えなかった。




 
 
しおりを挟む
感想 25

あなたにおすすめの小説

間違い召喚! 追い出されたけど上位互換スキルでらくらく生活

カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
僕は20歳独身、名は小日向 連(こひなた れん)うだつの上がらないダメ男だ ひょんなことから異世界に召喚されてしまいました。 間違いで召喚された為にステータスは最初見えない状態だったけどネットのネタバレ防止のように背景をぼかせば見えるようになりました。 多分不具合だとおもう。 召喚した女と王様っぽいのは何も持っていないと言って僕をポイ捨て、なんて世界だ。それも元の世界には戻せないらしい、というか戻さないみたいだ。 そんな僕はこの世界で苦労すると思ったら大間違い、王シリーズのスキルでウハウハ、製作で人助け生活していきます ◇ 四巻が販売されました! 今日から四巻の範囲がレンタルとなります 書籍化に伴い一部ウェブ版と違う箇所がございます 追加場面もあります よろしくお願いします! 一応191話で終わりとなります 最後まで見ていただきありがとうございました コミカライズもスタートしています 毎月最初の金曜日に更新です お楽しみください!

凡人がおまけ召喚されてしまった件

根鳥 泰造
ファンタジー
 勇者召喚に巻き込まれて、異世界にきてしまった祐介。最初は勇者の様に大切に扱われていたが、ごく普通の才能しかないので、冷遇されるようになり、ついには王宮から追い出される。  仕方なく冒険者登録することにしたが、この世界では希少なヒーラー適正を持っていた。一年掛けて治癒魔法を習得し、治癒剣士となると、引く手あまたに。しかも、彼は『強欲』という大罪スキルを持っていて、倒した敵のスキルを自分のものにできるのだ。  それらのお蔭で、才能は凡人でも、数多のスキルで能力を補い、熟練度は飛びぬけ、高難度クエストも熟せる有名冒険者となる。そして、裏では気配消去や不可視化スキルを活かして、暗殺という裏の仕事も始めた。  異世界に来て八年後、その暗殺依頼で、召喚勇者の暗殺を受けたのだが、それは祐介を捕まえるための罠だった。祐介が暗殺者になっていると知った勇者が、改心させよう企てたもので、その後は勇者一行に加わり、魔王討伐の旅に同行することに。  最初は脅され渋々同行していた祐介も、勇者や仲間の思いをしり、どんどん勇者が好きになり、勇者から告白までされる。  だが、魔王を討伐を成し遂げるも、魔王戦で勇者は祐介を庇い、障害者になる。  祐介は、勇者の嘘で、病院を作り、医師の道を歩みだすのだった。

備蓄スキルで異世界転移もナンノソノ

ちかず
ファンタジー
久しぶりの早帰りの金曜日の夜(但し、矢作基準)ラッキーの連続に浮かれた矢作の行った先は。 見た事のない空き地に1人。異世界だと気づかない矢作のした事は? 異世界アニメも見た事のない矢作が、自分のスキルに気づく日はいつ来るのだろうか。スキル【備蓄】で異世界に騒動を起こすもちょっぴりズレた矢作はそれに気づかずマイペースに頑張るお話。 鈍感な主人公が降り注ぐ困難もナンノソノとクリアしながら仲間を増やして居場所を作るまで。

勇者召喚に巻き込まれ、異世界転移・貰えたスキルも鑑定だけ・・・・だけど、何かあるはず!

よっしぃ
ファンタジー
9月11日、12日、ファンタジー部門2位達成中です! 僕はもうすぐ25歳になる常山 順平 24歳。 つねやま  じゅんぺいと読む。 何処にでもいる普通のサラリーマン。 仕事帰りの電車で、吊革に捕まりうつらうつらしていると・・・・ 突然気分が悪くなり、倒れそうになる。 周りを見ると、周りの人々もどんどん倒れている。明らかな異常事態。 何が起こったか分からないまま、気を失う。 気が付けば電車ではなく、どこかの建物。 周りにも人が倒れている。 僕と同じようなリーマンから、数人の女子高生や男子学生、仕事帰りの若い女性や、定年近いおっさんとか。 気が付けば誰かがしゃべってる。 どうやらよくある勇者召喚とやらが行われ、たまたま僕は異世界転移に巻き込まれたようだ。 そして・・・・帰るには、魔王を倒してもらう必要がある・・・・と。 想定外の人数がやって来たらしく、渡すギフト・・・・スキルらしいけど、それも数が限られていて、勇者として召喚した人以外、つまり巻き込まれて転移したその他大勢は、1人1つのギフト?スキルを。あとは支度金と装備一式を渡されるらしい。 どうしても無理な人は、戻ってきたら面倒を見ると。 一方的だが、日本に戻るには、勇者が魔王を倒すしかなく、それを待つのもよし、自ら勇者に協力するもよし・・・・ ですが、ここで問題が。 スキルやギフトにはそれぞれランク、格、強さがバラバラで・・・・ より良いスキルは早い者勝ち。 我も我もと群がる人々。 そんな中突き飛ばされて倒れる1人の女性が。 僕はその女性を助け・・・同じように突き飛ばされ、またもや気を失う。 気が付けば2人だけになっていて・・・・ スキルも2つしか残っていない。 一つは鑑定。 もう一つは家事全般。 両方とも微妙だ・・・・ 彼女の名は才村 友郁 さいむら ゆか。 23歳。 今年社会人になりたて。 取り残された2人が、すったもんだで生き残り、最終的には成り上がるお話。

異世界ビルメン~清掃スキルで召喚された俺、役立たずと蔑まれ投獄されたが、実は光の女神の使徒でした~

松永 恭
ファンタジー
三十三歳のビルメン、白石恭真(しらいし きょうま)。 異世界に召喚されたが、与えられたスキルは「清掃」。 「役立たず」と蔑まれ、牢獄に放り込まれる。 だがモップひと振りで汚れも瘴気も消す“浄化スキル”は規格外。 牢獄を光で満たした結果、強制釈放されることに。 やがて彼は知らされる。 その力は偶然ではなく、光の女神に選ばれし“使徒”の証だと――。 金髪エルフやクセ者たちと繰り広げる、 戦闘より掃除が多い異世界ライフ。 ──これは、汚れと戦いながら世界を救う、 笑えて、ときにシリアスなおじさん清掃員の奮闘記である。

夢幻の錬金術師 ~【異空間収納】【錬金術】【鑑定】【スキル剥奪&付与】を兼ね備えたチートスキル【錬金工房】で最強の錬金術師として成り上がる~

青山 有
ファンタジー
女神の助手として異世界に召喚された厨二病少年・神薙拓光。 彼が手にしたユニークスキルは【錬金工房】。 ただでさえ、魔法があり魔物がはびこる危険な世界。そこを生産職の助手と巡るのかと、女神も頭を抱えたのだが……。 彼の持つ【錬金工房】は、レアスキルである【異空間収納】【錬金術】【鑑定】の上位互換機能を合わせ持ってるだけでなく、スキルの【剥奪】【付与】まで行えるという、女神の想像を遥かに超えたチートスキルだった。 これは一人の少年が異世界で伝説の錬金術師として成り上がっていく物語。 ※カクヨムにも投稿しています

木を叩いただけでレベルアップ⁉︎生まれついての豪運さんの豪快無敵な冒険譚!

神崎あら
ファンタジー
運動も勉強も特に秀でていないがめっちゃ運が良い、ただそれだけのオルクスは15歳になり冒険者としてクエストに挑む。 そこで彼は予想だにしない出来事に遭遇する。 これは初期ステータスを運だけに全振りしたオルクスの豪運冒険譚である。  

スキルはコピーして上書き最強でいいですか~改造初級魔法で便利に異世界ライフ~

深田くれと
ファンタジー
【文庫版2が4月8日に発売されます! ありがとうございます!】 異世界に飛ばされたものの、何の能力も得られなかった青年サナト。街で清掃係として働くかたわら、雑魚モンスターを狩る日々が続いていた。しかしある日、突然仕事を首になり、生きる糧を失ってしまう――。 そこで、サナトの人生を変える大事件が発生する!途方に暮れて挑んだダンジョンにて、ダンジョンを支配するドラゴンと遭遇し、自らを破壊するよう頼まれたのだ。その願いを聞きつつも、ダンジョンの後継者にはならず、能力だけを受け継いだサナト。新たな力――ダンジョンコアとともに、スキルを駆使して異世界で成り上がる!

処理中です...