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第3章
第16話 別人
しおりを挟む冒険者組合に依頼達成の報告を行った夜。
屋敷に備え付けられていたシャワーを浴びて、日課のステータス確認を行なっていた。
=========
名前:トウヤ・イチノセ
種族:人間
極限《エクストリーム》スキル
『全能なる魔術師』
+[全属性魔法]
+[召喚魔法]
+[????]
+[????]
+[????]
『神血之医術』
固有スキル
『聖獣召喚』
『回帰の栄光』
スキル
『戦闘武器術』
『戦闘予見』
『戦闘覇気』
『感覚地帯』
耐性スキル
『支配耐性』
『負傷耐性』
『精神干渉耐性』
『状態異常耐性』
称号
『異世界人』『再臨の勇者』『医神の加護』『神導』『神獣の契約者』
=========
固有スキル『回帰の栄光』は、明日羽との戦いを得て取得した。その効果は、一度失ったスキルを再取得し易くする、という物だ。
本来、一度取得したスキルは、衰えても失ってしまう事は殆どない。その為、この固有スキルを取得した人は、この世界でも俺位だろう。
だが、それによって嘗て取得していた戦闘系のスキルを全て再取得する事が出来た。
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『戦闘武器術』
効果
・剣術、槍術、盾術、弓術など、戦闘に関する武器の扱いの全てに補正を受ける。
『戦闘予見』
効果
・回避や気配の感知、先読みなど、戦闘時に身体の感覚器官に働きが上昇する。
『戦闘覇気』
効果
・戦闘時の威圧、殺気が相手に与える影響が上昇する。
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戦闘系統に関連するスキルは、複数のスキルの効果が統合された効果を持っている。
取得するのは困難なスキルではあるが、様々な能力値を纏めて底上げ出来る希少なスキルだ。
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『感覚地帯』
効果
・魔力感知の範囲が拡大する。
・魔力感知の範囲内の精密な情報を取得出来る。
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極一部の魔力感知能力に長け、魔力に対する高い親和性と理解を持つ者だけが取得出来るスキルだ。
自分の知る中で、『感覚地帯』のスキルを持つ人は、俺と俺の魔法の師匠を除けば、誰もいない。
強者達が群雄割拠していた戦時中では、敵の戦力低下を目的とした、希少なスキルを持つ者を暗殺する事件が多かった。その為、故意的に隠匿されていた可能性はある。
「……」
順調にスキルが戻って来てはいるが、『全能なる魔術師』によって新たに取り戻した魔法を見つめる。
=========
『召喚魔法』
効果
・契約した存在を呼び出す事が出来る。
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『召喚魔法』は、神の御業――『空間を渡る力――転移』を真似て神代の人間が創り出した魔法の1つ、と言われている。
だが、召喚魔法の効果は、神話として語られる人や物質を思うがままに一瞬で移動させる神の力とは程遠い。
人とは違う種族――主に魔物や精霊と契約を交わし、相手の同意を得て、空間の道を創造し召喚が出来る。物質の移動は、召喚対象に装備している装備品程度が限界であり、自由自在とは到底呼べる代物ではない。その上、召喚魔法の習得は、制約がある固有魔法を除けば、最も難しい部類に含まれる。
もし、習得出来たとしても、発動に用いられる魔力は、一般人の習得限界と表現される属性魔法の第五階梯とは比較にならない程に膨大だ。それをクリア出来たとしても、魔物や精霊と自分に有利な契約を交わす事が出来るかどうかは、才能と運に大きく左右される。
俺が以前召喚されて召喚魔法を覚えてから、契約出来た存在は数匹しかいない。
世界中を旅して、勇者と呼ばれるだけの力を持っていても、召喚魔法の契約を結べる存在と出会える機会は殆どなかった。
一度認められて契約しても、相手に拒絶されれば、召喚は失敗してしまう。
習得も困難な上に、必ず成功するとも限らない召喚魔法は、凡ゆる面で不便だ。
現在の事は分からないが、10年前の異世界では、召喚魔法を使う有名な魔導師は、極々僅かだった。その極々僅かな魔導師達も、戦争の惨劇に呑まれて、戦場で名を聞く事は直ぐになくなった。
「どうかしたの?」
髪をタオルで拭くリツェアが、扉の前に立っていた。
「ちょっとな」
「ふーん」
詳しい事はどうせ話さない事を分かっているリツェアは、話題を変えた。
「それにしても、意外だったわね」
「何がだ?」
「トウヤが、カシムの弟子入りを認めた事よ」
「弟子じゃない」
「似た様なもんでしょ」
そう返されてしまうと、リツェアに反論が出来ない。その為、俺はリツェアの言葉を認めざる負えなかった。
「私達は兎も角、貴方は執行者に狙われているのよ」
それも、暁明日羽という、俺より遥かに格上の敵だ。
「分かってる」
「それなら良いけど。貴方に関わった所為で、カシム達が死んだ時の貴方なんて見たくないのよ」
「……どういう意味だ?」
本当に意味が分からず、リツェアに問いかける。
「自分では気付いてないかもしれないけど、貴方は相当なお人好しよ。きっと、また後悔する事になるわ」
「また?」
「別に隠していた訳じゃないけど、貴方とは昔に辺境都市で会ってるのよ」
「何?」
リツェアの顔に見覚えはない。
だが、会った時間が短ければ印象には残らないし、遠くから見られただけなら最初から覚えている訳がなかった。
「私は、辺境都市で起こった吸血鬼事件の被害者だったの。だから、吸血鬼を殺してくれた勇者達の事は、10年経った今でも、ハッキリと覚えているわ」
リツェアの口から出た『吸血鬼事件』は、俺が勇者として覚醒してはおらず、明日羽が共に冒険していた頃に起きた悲惨な事件だ。
ある人間の女性が、魔王の力によって吸血鬼となり、その代償として年若く綺麗な女性達の血を奪い続けていた。
当時は、世間が戦争で混乱していた事もあり、俺達が気付いた時には大勢の死者が出てしまっていた後だった。その後、吸血鬼を討ち倒し、囚われていた女性達は解放されたが、その中にリツェアがいたのかもしれない。
「トウヤは、見た目も中身も変わってしまったけど、変わらない部分もあるのよ」
少しだけ挑発的な笑みを浮かべたリツェアは、「おやすみ」と言って部屋に戻って行った。
「変わらない部分、か……」
リツェアの言葉が、何故か頭に残る。
俺の姿は、まるで別人の様に変わった。
姿だけじゃない、周囲への考え方、感じ方も、昔の俺とは違う。それに、自分の得意としていた魔法の属性が変化していると気付いた時には、驚愕した。
本来、この世界で広く知られる魔法――属性魔法には、階梯と呼ばれる序列が存在する。そして、人それぞれに得意属性と呼ばれる物があり、自分の得意とする属性の特徴は威力が強かったり、魔法の習得速度が他の魔法よりも遥かに早い。
逆に、苦手な属性の場合は、魔法を発動すら出来ない事も珍しくはない。
俺が最初に召喚された時に得意だったのは、風属性の魔法だった。
だが、今回は氷属性の魔法が最も体に馴染み、得意と感じでいる。
本来、同じ人間が、途中で得意な属性が変わる事なんて話は聞いた事がない。
「そんな事、別人にならない限り不可能だ」
自身の考えを嘲笑う様に、独り言を呟く。
窓の外の夜空は、厚い雲に覆われて月や星は全く見えなかった。
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