異界の相対者

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城人編

シズの休暇(墓参り)

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次の日はよく晴れた。朝食を食べてすぐレアーメとステアに連れられ墓地がある山を登る。
「この山にあるのって墓地だけなのか? 」
ステアに尋ねる。
「この山は墓地だけだよ」
「じゃあ他の山は何かあるのか?」
ステアは少し考えて言った。
「道かな」
ステアとレアーメが大笑いをする。私は愛想笑いで合わせる。やっぱりアカタマは架空の人物なのだろうか。
「いや、誰か山に住んでいたりするのかなって。狩人とか」
 これはぶっこみ過ぎたか。けれど、シズの心配をよそにレアーメは笑いながら教えてくれた。
「いないわよ。狩人も村に住んでいるわよ。山に住むなんて普通に考えて不便じゃない? 」
「……そうだよな」
 アタカマは架空かと、シズはがっかりした。それとも村の誰にも知られずにこっそり山に紛れて暮らしていたのか。
 墓地には白い球体がずらりと並んでいた。それが墓だった。その球体に故人の名前と生まれた年月、死んだ年月が刻まれていた。
「この列がスイド家」
 スイド家の列の一番端にミトスの墓はあった。九十七期生の悲劇から四年だ。他の墓と比べてまだ新しい。下に埋まっているのはミトスではない。それをこの二人は知らない。ステアが持ってきた花を供え、墓地から村の景色を見渡した。見晴らしがいい。
「ミトスはここから村を見ると、まるで村が金の海のようだって言っていたわ」
 隣にいたレアーメが懐かしそうに話した。小麦畑が風になびくと海が波打つように見えるのだろう。
「だからシズちゃん、次は収穫前に来て。ここから見せてあげたい金の海」
 レアーメはきらきらした目で私を見る。もしそれが見に来られたら、シズは来年もこの世界にいることになる。それはあまり考えたくなかった。
「きっと綺麗なんだろうな」
 シズはちゃんとした返事をせずにごまかした。レアーメはただ笑っていた。
 墓参りから宿に帰ると、もう明日には帰ろうかとシズは考えた。これ以上ここにいても帰るための情報はなさそうだ。スイド家に忍び込もうとも考えたが、ステアの家が隣にある。それにこの村は静か過ぎる。よそのものがうろつくのは怪し過ぎる。ただでさえ季節外れの旅行者なのだ。
 宝箱は空ではなかった。ミトスはスパイになるずっと前この村にいた頃から「コイン」の事を知っていた可能性がある。そうだとしたら捜し人はやっぱりカーネスだろうか。そうだとしたらずっと前から、ミトスはシズと入れ替わるつもりだったと考えていた事にもなる。アタカマの事が分かればもう少し繋げる事ができたかもしれない。そんな事をシズが考えていると部屋をノックされた。起き上がって返事をする。レアーメが入ってきた。
「今、大丈夫? 」
「おう、どうかしたか? 」
「おやつどう? 」
 シズが食堂に行くとクッキーと紅茶があった。
「ルルが入ったクッキー。さっきステアが置いていった」
「ステアは? 」
「村長に仕事頼まれてすぐに行った」
 シズはクッキーを一枚とる。
「ルルって隣の村の名前じゃないのか? 」
「そう。そのルル村でしか育たない木の実よ。チョコレートに入れても美味しいの」
 一枚食べる。マカダミアナッツに似た味だった。
「美味しい」
「でしょう? フェナの街に戻ったらどこの店でも売っているから買うといいわ」
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