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逃亡編
見えなかった入り口
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「残っているのは空っぽのあの家だけです」
レアーメがミトスの生家を見る。
「あの家に今は誰も住んでないのかい?」
「ええ。空っぽです。ミトスが青少年学校に行く時に家具も全て一人で処分したらしくって。本当にボタンひとつ転がってないですよ。ステアの家が管理してくてるんです」
「一人でですか?」
カザンが家を見つめる。一人で片付けるには少し大きな家だった。
「そうです。私達の知らない間に。村の人誰も気が付かなかったんです。いつの間にどうやったのか……」
「あの家入れないかな? 」
カラミンが言った。
「少し見てみたい。鍵を開けてくれないかい?」
ステアとレアーメがお互いの様子を伺うように見合う。
「本当に何もないですよ? 」
ステアが念を押す。
「それでもいいから見たい。迷惑だろうけれどお願いできないかな? 」
「まあ、ヨンキョクさんだし。怪しい人ではないから……」
レアーメがなんとなく促した。
「分かりました。鍵取ってきます」
ノイナー家の扉を開けると、人が住んでいないにしては埃くささはなかった。
「綺麗ですね」
カザン玄関を見渡す。
「私の家とステアの家が月一で掃除してるんですよ」
「じゃあまず二階から」
カラミンが二階に上がる。二階には三部屋あった。カラミンとカザンはクローゼットまで隅々見た。
「本当に空っぽですね」
カザンが言った。
「だろう? 残念だが何もないよ」
ステアが遠回しにこの家に何かを期待するのはやめた方がいいと諭した。カラミンは天井を見上げる。
「屋根裏はないのかな? 」
「ないですよ」
レアーメも天井を見上げる。
「まあ、二階に家具を片付けるのは無理か……」
「え? 」
レアーメが顔を下げる。
「不思議なんだよね。どうやってもこの静かな村で家具を誰にも気づかれずに全て片付けるのは不可能だ。ひとりで全てを運び出す事も。地下は? 」
「地下室もないです」
カラミンはふーんと、部屋を出ると一階に下りた。一階はキッチンとリビング。カラミンはリビングの上をぐるぐる歩く。
「何してるんですか、カラミンさん」
カラミンはカザンに返事もせずキッチンの方へ行った。そして床下収納を見つけると躊躇いなく開ける。
「それはただの床下収納ですよ」
ステアの言葉にも耳を貸さずカラミンは床下収納の底を叩いた。そしてまたリビングに戻ると寝っ転がって耳を床にあてた。
「カラミンさん? 」
「下に部屋がある」
カラミンは起き上がるとカザンに言った。
「え? いや、ないですよ。そんな事聞いたことないし、ここ掃除するようになって地下の入り口なんて見たことないですし、な、レアーメ」
レアーメは何度も頷いた。カラミンは唸りながらまた床下収納の所に戻った。しゃがむと周辺の床をまじまじと見つめる。
「この辺り床板の境目他の場所より少しだけ深い」
カザンもしゃがみカラミンと同じ場所を見る。
「言われてみたら」
カラミンは床下収納の蓋を横や縦に動かすとカチャリと音を立ててはずれた。
「あ! 壊した! 」
ステアが叫ぶ。カザンが金具の周辺を見る。
「違います。取り外せるような仕組みになっています」
レアーメも近づいて確認する。
「本当だ」
「この建物随分古いんじゃないかな?」
カラミンがレアーメに尋ねる。
「古いですね。けど戦後に二回は建て直しているって聞いた事あります」
「戦時中はどの家も、神の火を恐れて食料保存や貴重品隠すために地下があったって言うからね。地下は直しているにしてもずっと残しているのかもしれない。だとしたら」
カラミンは床下収納の端を持つと持ち上げた。するとかっぽりと中のケースも外れた。そしてその底にレバーがあった。カラミンはケースをカザンに渡す。そしてキッチンとリビングの境目辺り立っていた二人を呼んだ。
「多分その辺りが開くから、こっちへ来て」
二人はすぐにカラミンの背中に回った。そしてカラミンがレバーを引くと床の一部が持ち上がった。
「わっ! 」
レアーメとステアが叫び身を寄せ合う。カラミンが持ち上がった床の下を見るとレバーがあった。引こうとしたが動かない。
「スライド式じゃないですか? 」
カザンが言えば、カラミンが言う通りした。すると大人三人横に並んで歩けるほどの空間が出てきて階段もあった。
「学生の頃こういう仕組みの家が、戦時中にあっていう文献を読んだ事があってさ」
カラミンが鼻高々に胸を張った。
「初めてカラミンさんの事を尊敬してしまいました。すいません」
「え。謝る事じゃないよね? カザン」
「俺、ランプうちから持って来ます! 」
ステアがキッチンの裏口から出て行く。
「口に巻く布もね! 埃まみれだとおもうから! 」
レアーメがステアの背中に叫んだ。すぐに戻って来たステアはランプ二つと大きな布を四枚持って来た。全員口元に布を巻くとカラミンとステアがランプを持ち地下を進んで行く。
レアーメがミトスの生家を見る。
「あの家に今は誰も住んでないのかい?」
「ええ。空っぽです。ミトスが青少年学校に行く時に家具も全て一人で処分したらしくって。本当にボタンひとつ転がってないですよ。ステアの家が管理してくてるんです」
「一人でですか?」
カザンが家を見つめる。一人で片付けるには少し大きな家だった。
「そうです。私達の知らない間に。村の人誰も気が付かなかったんです。いつの間にどうやったのか……」
「あの家入れないかな? 」
カラミンが言った。
「少し見てみたい。鍵を開けてくれないかい?」
ステアとレアーメがお互いの様子を伺うように見合う。
「本当に何もないですよ? 」
ステアが念を押す。
「それでもいいから見たい。迷惑だろうけれどお願いできないかな? 」
「まあ、ヨンキョクさんだし。怪しい人ではないから……」
レアーメがなんとなく促した。
「分かりました。鍵取ってきます」
ノイナー家の扉を開けると、人が住んでいないにしては埃くささはなかった。
「綺麗ですね」
カザン玄関を見渡す。
「私の家とステアの家が月一で掃除してるんですよ」
「じゃあまず二階から」
カラミンが二階に上がる。二階には三部屋あった。カラミンとカザンはクローゼットまで隅々見た。
「本当に空っぽですね」
カザンが言った。
「だろう? 残念だが何もないよ」
ステアが遠回しにこの家に何かを期待するのはやめた方がいいと諭した。カラミンは天井を見上げる。
「屋根裏はないのかな? 」
「ないですよ」
レアーメも天井を見上げる。
「まあ、二階に家具を片付けるのは無理か……」
「え? 」
レアーメが顔を下げる。
「不思議なんだよね。どうやってもこの静かな村で家具を誰にも気づかれずに全て片付けるのは不可能だ。ひとりで全てを運び出す事も。地下は? 」
「地下室もないです」
カラミンはふーんと、部屋を出ると一階に下りた。一階はキッチンとリビング。カラミンはリビングの上をぐるぐる歩く。
「何してるんですか、カラミンさん」
カラミンはカザンに返事もせずキッチンの方へ行った。そして床下収納を見つけると躊躇いなく開ける。
「それはただの床下収納ですよ」
ステアの言葉にも耳を貸さずカラミンは床下収納の底を叩いた。そしてまたリビングに戻ると寝っ転がって耳を床にあてた。
「カラミンさん? 」
「下に部屋がある」
カラミンは起き上がるとカザンに言った。
「え? いや、ないですよ。そんな事聞いたことないし、ここ掃除するようになって地下の入り口なんて見たことないですし、な、レアーメ」
レアーメは何度も頷いた。カラミンは唸りながらまた床下収納の所に戻った。しゃがむと周辺の床をまじまじと見つめる。
「この辺り床板の境目他の場所より少しだけ深い」
カザンもしゃがみカラミンと同じ場所を見る。
「言われてみたら」
カラミンは床下収納の蓋を横や縦に動かすとカチャリと音を立ててはずれた。
「あ! 壊した! 」
ステアが叫ぶ。カザンが金具の周辺を見る。
「違います。取り外せるような仕組みになっています」
レアーメも近づいて確認する。
「本当だ」
「この建物随分古いんじゃないかな?」
カラミンがレアーメに尋ねる。
「古いですね。けど戦後に二回は建て直しているって聞いた事あります」
「戦時中はどの家も、神の火を恐れて食料保存や貴重品隠すために地下があったって言うからね。地下は直しているにしてもずっと残しているのかもしれない。だとしたら」
カラミンは床下収納の端を持つと持ち上げた。するとかっぽりと中のケースも外れた。そしてその底にレバーがあった。カラミンはケースをカザンに渡す。そしてキッチンとリビングの境目辺り立っていた二人を呼んだ。
「多分その辺りが開くから、こっちへ来て」
二人はすぐにカラミンの背中に回った。そしてカラミンがレバーを引くと床の一部が持ち上がった。
「わっ! 」
レアーメとステアが叫び身を寄せ合う。カラミンが持ち上がった床の下を見るとレバーがあった。引こうとしたが動かない。
「スライド式じゃないですか? 」
カザンが言えば、カラミンが言う通りした。すると大人三人横に並んで歩けるほどの空間が出てきて階段もあった。
「学生の頃こういう仕組みの家が、戦時中にあっていう文献を読んだ事があってさ」
カラミンが鼻高々に胸を張った。
「初めてカラミンさんの事を尊敬してしまいました。すいません」
「え。謝る事じゃないよね? カザン」
「俺、ランプうちから持って来ます! 」
ステアがキッチンの裏口から出て行く。
「口に巻く布もね! 埃まみれだとおもうから! 」
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