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一章
聖剣
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長老衆の元へと向かうと、三人とも休憩中なのかゆったりとお茶を飲んでいた。
「来たな、当代」
「今回はルインのためにルール決めたからの」
「何やら厄介な話だと聞いたが?」
「とにかくこれ見て」
簡単にまとめた紙を差し出すと三人とも顔をしかめた。
「ルイン、ちょっと字が小さすぎやしんか?」
「わしら近いもんよう見えんくなってんのよ」
「……読めん」
「っ!あぁもう、僕が読むから」
色々と茶々を入れられながらも、なんとか説明を終えた僕に、じいちゃん達はあっさりといった。
「こりゃ完全に利用されとるな。こないだの隣国の襲撃、あれそのままにしといたら第一王子が率いる軍が『救助』にやってきてたかもしれんの」
「ん、そうでなくとも第一王子を確実に王太子にするために第二王子を潰したいんじゃろ」
「王妃だな。王も噛んでる。第一王子に属してる貴族は全部黒」
もしかしてと思っていたことを肯定されて気が重くなった。
「僕たちがここに住むにあたって、王族・貴族関連の事には巻き込まないって約束、あったんだよね?」
「当然」
「どこに行ったって条件に盛り込むもんじゃ」
「最後まで守り切られたことは数えるほどだの」
最後の言葉は少し寂しげだった。このじいちゃん達のことだから気のせいかもしれないけど。
「……なら、いっか。今回の範囲は隣国とこの国。決定ね。あとは、せっかくだからお引越ししようか?」
思い入れのある家が壊されたことは悲しいけど、ここに残る理由のほとんども無くなったってことだ。どうせ最後なら後腐れなく壊し尽くそう。僕たちの一族らしくね。
---
聖剣争奪戦という順番決めも終わり、復讐戦の直前、参加者は集まって準備の確認をしていた。
「みんな、魔力ポーションは持った?治癒ポーションと混ざらないようにちゃんと分けてしまうんだよ」
薬学、いや、調合を趣味としている大叔父が皆へとポーションの瓶を渡しながら声をかけている。
「ナル先生!はやく~、聖剣のお話~!!」
静かな興奮。普段とは違う空気の中、浮き足立つ子供達へとわたしは講義を続けた。
聖剣スクラッチを使用するにあたって、三つの条件がある。
第一に初代の血縁であること。
大昔は聖剣の所有権を手に入れようと貴族が娘を嫁にと押し付けてくることがあったらしい。
そのうちの一人が産んだ子供は、聖剣を扱うことができず、不貞が発覚。
それ以来、恋愛結婚推奨という謎規則が作られた。
第二に魔法が使えるかどうか。
次の条件に必須なため、どんな方法でもいいから体外へと魔力を放出する手段が必要になる。
ちなみに一番人気は治癒魔法、続いて風魔法だ。初代が使った光魔法は火魔法に次いでの不人気である。
第三、常に魔力を消費しながら利用する事。
聖剣スクラッチの能力は
『切った対象を削り取り、使用者へと還元する』
という単純なものだ。
この削り取る量、つまりは威力、が持ち主の不足分と直結している。
最大の魔力量から現在の魔力残量を引いた分、それが対象へと与える威力だ。
わかりづらい?そうか……。
コップを想像してみなさい。水が空の状態と、半分残った状態、より多く注げるのはどちらかな?そうだね、空の状態だ。この、新しく注ぐ分が対象へと与えられる損傷だ。
だから我々は訓練を行うんだよ。体内の魔力の残量を把握し、どこまでなら戦えるかの最低値を体に教え込む。そうする事で聖剣の力を最大限に利用できるというわけだ。
準備が終わったようだな。じゃぁみんな。いってらっしゃいを言いに行こうか。
---
おまけ
見計らったかのように姿を現した黒髪の少年の元へ、同じく黒髪の、まだ幼い男の子が嬉しそうに駆け寄った。
「キィにーちゃ!おじいがね、いつものお願い!だって。キィにーちゃも剣持って遊び行くの?」
見上げる男の子の笑顔に、少年の目も細まる。
「あはは、僕はこの剣使えないんだよ。いつものね、わかったわかった。大事な剣は無くならないようにしてあげるから。今回も気が済むまで遊んでおいで」
そう促すと、堪えきれないといった様子で大きく頷いた。
「あい!おじいに言ってくる!!」
「来たな、当代」
「今回はルインのためにルール決めたからの」
「何やら厄介な話だと聞いたが?」
「とにかくこれ見て」
簡単にまとめた紙を差し出すと三人とも顔をしかめた。
「ルイン、ちょっと字が小さすぎやしんか?」
「わしら近いもんよう見えんくなってんのよ」
「……読めん」
「っ!あぁもう、僕が読むから」
色々と茶々を入れられながらも、なんとか説明を終えた僕に、じいちゃん達はあっさりといった。
「こりゃ完全に利用されとるな。こないだの隣国の襲撃、あれそのままにしといたら第一王子が率いる軍が『救助』にやってきてたかもしれんの」
「ん、そうでなくとも第一王子を確実に王太子にするために第二王子を潰したいんじゃろ」
「王妃だな。王も噛んでる。第一王子に属してる貴族は全部黒」
もしかしてと思っていたことを肯定されて気が重くなった。
「僕たちがここに住むにあたって、王族・貴族関連の事には巻き込まないって約束、あったんだよね?」
「当然」
「どこに行ったって条件に盛り込むもんじゃ」
「最後まで守り切られたことは数えるほどだの」
最後の言葉は少し寂しげだった。このじいちゃん達のことだから気のせいかもしれないけど。
「……なら、いっか。今回の範囲は隣国とこの国。決定ね。あとは、せっかくだからお引越ししようか?」
思い入れのある家が壊されたことは悲しいけど、ここに残る理由のほとんども無くなったってことだ。どうせ最後なら後腐れなく壊し尽くそう。僕たちの一族らしくね。
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聖剣争奪戦という順番決めも終わり、復讐戦の直前、参加者は集まって準備の確認をしていた。
「みんな、魔力ポーションは持った?治癒ポーションと混ざらないようにちゃんと分けてしまうんだよ」
薬学、いや、調合を趣味としている大叔父が皆へとポーションの瓶を渡しながら声をかけている。
「ナル先生!はやく~、聖剣のお話~!!」
静かな興奮。普段とは違う空気の中、浮き足立つ子供達へとわたしは講義を続けた。
聖剣スクラッチを使用するにあたって、三つの条件がある。
第一に初代の血縁であること。
大昔は聖剣の所有権を手に入れようと貴族が娘を嫁にと押し付けてくることがあったらしい。
そのうちの一人が産んだ子供は、聖剣を扱うことができず、不貞が発覚。
それ以来、恋愛結婚推奨という謎規則が作られた。
第二に魔法が使えるかどうか。
次の条件に必須なため、どんな方法でもいいから体外へと魔力を放出する手段が必要になる。
ちなみに一番人気は治癒魔法、続いて風魔法だ。初代が使った光魔法は火魔法に次いでの不人気である。
第三、常に魔力を消費しながら利用する事。
聖剣スクラッチの能力は
『切った対象を削り取り、使用者へと還元する』
という単純なものだ。
この削り取る量、つまりは威力、が持ち主の不足分と直結している。
最大の魔力量から現在の魔力残量を引いた分、それが対象へと与える威力だ。
わかりづらい?そうか……。
コップを想像してみなさい。水が空の状態と、半分残った状態、より多く注げるのはどちらかな?そうだね、空の状態だ。この、新しく注ぐ分が対象へと与えられる損傷だ。
だから我々は訓練を行うんだよ。体内の魔力の残量を把握し、どこまでなら戦えるかの最低値を体に教え込む。そうする事で聖剣の力を最大限に利用できるというわけだ。
準備が終わったようだな。じゃぁみんな。いってらっしゃいを言いに行こうか。
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おまけ
見計らったかのように姿を現した黒髪の少年の元へ、同じく黒髪の、まだ幼い男の子が嬉しそうに駆け寄った。
「キィにーちゃ!おじいがね、いつものお願い!だって。キィにーちゃも剣持って遊び行くの?」
見上げる男の子の笑顔に、少年の目も細まる。
「あはは、僕はこの剣使えないんだよ。いつものね、わかったわかった。大事な剣は無くならないようにしてあげるから。今回も気が済むまで遊んでおいで」
そう促すと、堪えきれないといった様子で大きく頷いた。
「あい!おじいに言ってくる!!」
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