キフの薄い本

中山(ほ)

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一冊目 妄想用紙「神の檻」

プロローグ

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『なぁ、キィ。お前って結構偉い神様なんだよな?』

「何、突然。まぁ、そうだよ。創造神の末っ子で、正式に父神からこの世界を受け継いだの僕だし、一応この世界で一番偉い神様だね」

『なのになんで「キィ」なんだ?もっと威厳のある名でもいいだろうに』

「え、『キ』『ィ』だよ?片方なんて半音文字なんだから……あぁ、そっか、そりゃヒィロは知らないよね。神様ってね、位が上なほど名前が短くなるんだよ」

『なんだその謎ルール。んじゃお前の父親の名前は?』

「るだよ」

『は?』

「る。創造神『る』だよ。ちなみに僕の兄姉たちもみんな二文字か三文字だね」

『神の名付けセンス、訳わかんね』

「さらに言うとね、父の創造主、人間的に言うと僕のおじいちゃんだ。あれはもう概念だよ、概念。
言葉ができる前の存在だから。言葉で表すことができないんだ」

『余計わからんくなったは……』





『とりあえず名前が短いやつには近づかないほうがいいってことだな。人間の自分が敵うわけないし』

「何言ってんのやら。かつて僕の存在を消滅寸前まで削り切ったくせに。
ねぇ、『破壊神』ヒィロくん?」

『~~っっ!?それ、その小っ恥ずかしい呼び名、まだ残ってるのか?
自分が本当に破壊の神だったら真っ先にそんな二つ名破壊してるっての。時間が経てば神だなんて誤解、消えていくって思ってたのに……』

「あ、最近初の破壊神神殿建てられたから」

『……早く成仏したい』

「だぁめ、まだ僕と遊ぶの~」





「そういえば、破壊神殿に飾るヒィロの神像、どうするんだろ?」

『(がくがくぶるぶる)むり、ほんと無理。今すぐ神託出して更地にしてくれ』

「あ、僕の今の身体、ヒィロのだったね。じゃぁ僕が行ってこの姿で作ってもらおう!」

『(ぶくぶく……)白目』





 ノックもなしに執務室のドアが突然開かれた。

「ルイン!大変なことが起こったんだ!!」

 わめきながら入ってきたのは伯父のトールソン。
 僕は読んでいた本から顔を上げずに答えた。

「そう言って本当に大変だったことなんてほとんどないでしょ」

 一応は話の内容を聞くために、読み進めるのは止めている。

「今回は本当に大変なんだって。ちゃんと聞けって」

「聞いてるよ。で、大変なことって?」

 どうせまた、しょうもないことで国が要望書でも出したんだろう。

「新しく建立された破壊神神殿に、破壊神が降臨したらしいぞ」

 慌てて本から顔を上げると、伯父がにやりとこちらを見て笑った。

「え、本当に?破壊神ってうちの初代だよな?ヒィロ兄ちゃんいつ身体取り戻したんだ!?」

「おちつけ、とりあえず降臨の際の絵姿が配られてたからもらってきた」

 差し出された1枚の紙を、奪うように手元へと寄せる。描かれているのは一人の黒髪の少年だ。衣装が、いつもうちに遊びに来る時よりも若干荘厳な気がする。そして、その腰元には小さな瓶。

「むむぅ、よく考えたら絵だけじゃわかんないな。でもヒィロ兄ちゃんの魂が入ってる小瓶が書かれてるから、中身はキィ兄ちゃんのままじゃないか?」

「多分な。ヒィロさんだったら絶対破壊神と名がつくような場所には行かんだろ」

 なるほど、確かに。

「なんでも破壊神神像のために降臨してくれたらしいぞ」

「あぁ、じゃぁ中身は絶対キィ兄ちゃんだ」

 紙を伯父へと返して読書へと戻る。

「相変わらず、初代をからかうのに手段を選ばない最高神様だこと」

 そんなことをつぶやくと、伯父は同感だとばかりにうなずいた。

「昔っかららしいぞ。特にヒィロさんが破壊神と呼ばれだした五百年くらい前からは、頻繁にこのネタを引っ張ってるらしい」

「ふぅん、で、おじさんはこの事みんなに言いふらすの?」

 紙にできたしわを丁寧に伸ばしながら、軽い足取りで執務室を出ていく伯父の背中へと声をかける。

「そりゃ、俺の生きがいだからな~」

 隣の大陸に降臨した破壊神だろうが何だろうが情報を仕入れて、一族に伝えて回るのが趣味の伯父だ。この話は今日中に皆へと回るだろう。

「じゃぁな、当代。本ばっか読んでないでたまには外に出ろよ」

「はいはい、こちとら執務の合間を見つけてようやく時間取ってんだよ。伯父さんが代わって……」

 慌てたようにドアは閉じられた。ちっ、ま、いいか。
 我が家に代々伝わる聖剣スクラッチ。その初代所有者であるヒィロ兄ちゃんの、数奇な運命へと少しだけ思いをはせる。

「ふっ……」

 口元が緩んだ。ヒィロ兄ちゃんと考えて頭に浮かんだのが、小さな輝く瓶だったから。

「一応キィ兄ちゃんが使ってる方が本来のヒィロ兄ちゃんの姿だって理解はしてるんだけどなぁ」
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