キフの薄い本

中山(ほ)

文字の大きさ
12 / 12
二冊目 「先っぽだけ」を信じるな!

「先っぽだけ」を信じるな

しおりを挟む
 はっと目を覚まして飛び起きた。

「……あれ?あ、声!声が出る!?へ?あ、身体ある!!!?どういうこと?」

 状況を判断しようと見回すと、すぐそばにキィの姿。

「起きたね、ヒィロ」

 自分を見下ろして嬉しそうな顔をしている。

「……あれ?お前……も身体あるよな?お前が使ってるのって自分の体だよな?」

 黒目黒髪の、かつての自分の姿。

「そうだよ~、今ヒィロが使ってるのは僕が作った予備」

「……予備って、勝手に人の身体複製しやがって。はぁ、何すんの?このカオスな状況で」

 とりあえず、このまま見下ろされてるのはなんか気に障る。
 予備だって言うんだから、横に並べば少なくとも同じ目線にはなるはず。

「んしょ」

 キィの寝台から降りようとするのを片手で制された。

「もう終わったよ。後ちょっと時間あるからせっかくだからヒィロのやりたいことでもさせてあげようかなって」

 その顔には満足そうな笑み。

「終わった?……あぁ、記憶も消した後ってことね。さすがだな、何も覚えてないというか、何してた……かは聞いたら約束した意味ないしな」

 その口端がさらに上向いた。

「うん、内緒。で、何かしたいことある?」

 言われて考える、外はもうすぐ紅に染まる前の金色。

「ん~、せっかく体あるんだから、久しぶりに何か食べてみたいな」

「はいはい~」







 もくもくとパンをちぎっては口に運び、スープのカップに息を吹きかけながらちびちびとすすっている様子を見つめられ、気まずくなって顔を上げる。

「あんだよ?」

「べつに~、必死だなって」

「……あ~、なんか、別にそこまで空腹ってわけじゃないのに、なんかすっごい飢餓感?人間ってやっぱ三大欲求なんだなって思い知ったは」

「さんだいよっきゅー?」

 首を傾げたキィに説明してやる。

「睡眠欲、食欲、性欲。この三つが必須らしいぞ」

 神であるこいつに言ったってわかる訳はないか。
 一度手を止めたことで本能が満足したのか、自分は今度こそ楽しみながら数百年ぶりの食事を片付けた。
 わずかに膨れた腹をさすって、心地よい満足感に言葉をもらす。

「ふぁ……おなか、あったかい………」

「っ!?」

 突然キィが顔を押さえて蹲った。慌てて駆け寄ると、指の隙間から赤いものがわずかに垂れる。

「!?おま、へ?鼻血?大丈夫か?いきなりどうした?」

「なんでもない!なんでもないから!!ちょっと離れて!?」






「まだ、ちょっとだけ時間あるよね」

 頑なに自分を寄せようとせずに、すぐ治癒を完了させて、何もなかった顔で会話を続けようとするキィ。
 ここは追求はせずにおいてやろう。

「そうだな?まだ夕方だし」

 約束は今日一日、だからここでの会話も残らないんだろうな。

「もっと、お腹あったかくしてあげようか?」

 ……?突然よくわからないことを言い出した。

「は?いや、久しぶりに食べたから、もういっぱいだぞ?」

 言いながら、先ほどより熱をもつ腹部へと手を当てた。

「はぁ、おなかぽかぽかしてる」

「!?」







「あのねぇ、ヒィロは男の人とエッチしたこと、ある?」

 そそ、と身を寄せて、囁くように尋ねてくるのがなんか少し不気味だ。
 さっきもだけど、こいつ大丈夫かな。

「あのな、自分男なんだけど?」

「実はね、男同士でもエッチできるんだよ」

「うへぇ、野郎同士で絡み合ってるところとか、見たくないな」

「そう言わずにさ、僕が教えてあげるから、すっごく気持ちよくなれるんだよ?」

 ……何を言い出すんだこいつは。






「気持ちいとか、嘘だろ?」

 どうせ一族の誰かに、特によくわからない情報を吹聴するトールソンから吹き込まれたのだろうと、馬鹿らしい提案を切って捨てたのだが、

「ん~じゃぁ、ちょっとだけ試してみてさ、気持ちよかったらもうちょっとしてみようよ」

 やけに自信ありげなその言い方に、意識のどこかが気をつけろと囁いている気がした。

「……なんかやだ」

「一回だけ、ほんの先っぽだけだからさ」

 普段ならすぐに引き下がるのに、今回はやけに渋るな?

「……?それってお前も気持ちよくなるのか?」

「……………うん!すっごく!!」

 何を言われたのかは知らないが、今度トールには釘を刺しておこう。

「はぁ~。それでか、そんなにしつこいのは。ま、しょうがないか、今回はお礼がわりみたいなもんだしな……はぁ、ちょっとだけだぞ?自分がヤダって言ったらおしまい」

 ま、所詮男同士でできることなんて、せいぜいが抜き合いまでだろう、どうせ記憶消えるなら、それくらい我慢してやるか。
 そんなことを考えながら、嬉しそうな顔のキィに向けて、許可を出した。

「はーい!」






「は?え?無理無理無理!何でお尻!?」

 後ろからキィに抱き抱えられ、自分は必死で首を振っていた。

「ここ使うのが普通なんだよ?知らなかった?」

 ここ、と言いながら窄まりをツンツンするな!
 これが普通だからとすでに服は脱がされて、直接肌が合わさっているのだが、キィの鼓動に変化はなく、本当に当たり前だと思っているのがわかって、余計に混乱する。

「知らない!え、普通ってそうなのか!?」

「そうだよ~、ちょっと入れるとすぐ気持ちよくなるんだ」

 トール!ほんとこいつに何吹き込んだんだ!?

「うぅ……本当にちょっとだけだぞ?すぐ嫌って言うから、すぐやめな」

「はいはい、ちょっと冷たいよ~」

 目の前で瓶から冷たいものが注がれて、身体が跳ね上がる。

「ひゃ!?」

「はいいれまーす」

 ぬるり

「んぁ!?」

「痛い?」

 キィの指をすんなりと迎えてしまった事実に愕然とする。

「え!え!?痛く、無い。え!?本当に普通なの!?」

「そうだよ~、じゃ、動かすね」

 ぬるぬるとなぞるようにうごめくと、そこからぞわり、と何かが背筋を走った。

「ひゃん!は!?え!?なんか、変!?」

「あ、ほら、気持ちいいでしょ?みんな普通に気持ちよくなるんだよ」

 とても気持ちいいとは思えない、そのゾワゾワとしたものが無性に恐ろしい。

「キィ、ヤダから抜いて?」

 指は、止まらなかった。

「え、でもその前に気持ちよかったらもうちょっとって言ったよね、もうちょっとしてから抜いてあげる」

 うぁ、確かにそんな話をしていた記憶。

「言ったけどさぁ、うぅ……」

 あと少しだけ、我慢したらすぐ終わらせよう。






「ぁ……ひゃぁ………んぅ…………」

 声が、止まらない。

「ひ~ぃろ?ヤダって言わないとやめてあげないよ?」

 キィの言葉が耳に届いて、ようやく終わらせる手段があることを思い出した。

「ぁ……や、ぁんっ!?……ゃらぁ、ぁあっ……んぅ!?」

 あ、ヤダって、言わないと、なのに……。

「んふ、気持ちよさそうだね~。もう中ぐっちゃぐちゃ」

 静かな部屋の中、キィの指が掻き回すたびに、じゅぷ、ぬちゅ、耳とお腹の中から音が、する。

「ひっ……はっ………」

 きゅう、と勝手に中がキィを締め付ける。
 背筋をアレが走る。

「ねぇ、気持ちいい?」

「ぁ、きもちぃ……きもち、ぃ……」
しおりを挟む
感想 0

この作品の感想を投稿する

あなたにおすすめの小説

強制悪役劣等生、レベル99の超人達の激重愛に逃げられない

砂糖犬
BL
悪名高い乙女ゲームの悪役令息に生まれ変わった主人公。 自分の未来は自分で変えると強制力に抗う事に。 ただ平穏に暮らしたい、それだけだった。 とあるきっかけフラグのせいで、友情ルートは崩れ去っていく。 恋愛ルートを認めない弱々キャラにわからせ愛を仕掛ける攻略キャラクター達。 ヒロインは?悪役令嬢は?それどころではない。 落第が掛かっている大事な時に、主人公は及第点を取れるのか!? 最強の力を内に憑依する時、その力は目覚める。 12人の攻略キャラクター×強制力に苦しむ悪役劣等生

敵国の将軍×見捨てられた王子

モカ
BL
敵国の将軍×見捨てられた王子

お荷物な俺、独り立ちしようとしたら押し倒されていた

やまくる実
BL
異世界ファンタジー、ゲーム内の様な世界観。 俺は幼なじみのロイの事が好きだった。だけど俺は能力が低く、アイツのお荷物にしかなっていない。 独り立ちしようとして執着激しい攻めにガッツリ押し倒されてしまう話。 好きな相手に冷たくしてしまう拗らせ執着攻め✖️自己肯定感の低い鈍感受け ムーンライトノベルズにも掲載しています。 挿絵をchat gptに作成してもらいました(*'▽'*)

上司、快楽に沈むまで

赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。 冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。 だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。 入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。 真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。 ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、 篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」 疲労で僅かに緩んだ榊の表情。 その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。 「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」 指先が榊のネクタイを掴む。 引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。 拒むことも、許すこともできないまま、 彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。 言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。 だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。 そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。 「俺、前から思ってたんです。  あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」 支配する側だったはずの男が、 支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。 上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。 秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。 快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。 ――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。

色狂い×真面目×××

135
BL
色狂いと名高いイケメン×王太子と婚約を解消した真面目青年 ニコニコニコニコニコとしているお話です。むずかしいことは考えずどうぞ。

番に見つからない街で、子供を育てている

はちも
BL
目を覚ますと、腕の中には赤ん坊がいた。 異世界の青年ロアンとして目覚めた「俺」は、希少な男性オメガであり、子を産んだ母親だった。 現世の記憶は失われているが、 この子を守らなければならない、という想いだけははっきりと残っている。 街の人々に助けられ、魔石への魔力注入で生計を立てながら、 ロアンと息子カイルは、番のいない街で慎ましく暮らしていく。 だが、行方不明の番を探す噂が、静かに近づいていた。 再会は望まない。 今はただ、この子との生活を守りたい。 これは、番から逃げたオメガが、 選び直すまでの物語。 *不定期連載です。

神官、触手育成の神託を受ける

彩月野生
BL
神官ルネリクスはある時、神託を受け、密かに触手と交わり快楽を貪るようになるが、傭兵上がりの屈強な将軍アロルフに見つかり、弱味を握られてしまい、彼と肉体関係を持つようになり、苦悩と悦楽の日々を過ごすようになる。 (誤字脱字報告不要)

博愛主義の成れの果て

135
BL
子宮持ちで子供が産める侯爵家嫡男の俺の婚約者は、博愛主義者だ。 俺と同じように子宮持ちの令息にだって優しくしてしまう男。 そんな婚約を白紙にしたところ、元婚約者がおかしくなりはじめた……。

処理中です...