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良い覚悟ね?
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「こんにちは。ミス・グリンダ」
「はい、こんにちは。フィネラ叔母様」
「いつも私の娘と仲良くしてくれてありがとう」
にこやかに笑う彼女の姿は聖人そのものであった。
「メアリーも素敵なお友達ができて良かったわね。貴方の”母として”嬉しいわ」
不自然に”母として”という部分を強調するフィネラ。
メアリーは笑顔を崩ないまま口を開いたが、彼女の瞳には炎のような怒りが宿っていた。
「それで”母”ではなく”伯爵夫人”としてはどうなのかしら?」
「とても悲しいわ。だって今まで伯爵令嬢として相応しい振る舞いをしていた娘が、突然、髪を染めることをやめて、お義母様の許可なくパーティに出かけるようになってしまったもの」
フィネラの視線が、メアリーからグリンダに移る。
「ねぇ、ミス・グリンダ。貴方からもなにか言って貰えないかしら?」
グリンダはしばらく考えるような動作を見せてから、口を開いた。
「私はメアリーが伯爵令嬢として相応しくない振る舞いをしているとは思えません」
今まで絵画のように完璧な、笑みを浮かべていたフィネラの表情が引きつる。
「我々貴族は民衆の憧れである。すなわち、民衆の考え方に囚われず堂々とするべきだ……これは、私のお母様がいつもおっしゃっている言葉です。私には『銀髪は不吉の象徴』という迷信に惑わされず堂々と振舞っているメアリー様の姿は、最も貴族令嬢らしいと思います」
「グリンダ、貴方……」
喜びの余り、言葉が漏れるメアリー。
「へぇー、あの人らしい考え方ね。いいわ、貴方がメアリーのことを大切に思っていることは、よく分かったから」
フィネラの方の表情には、一瞬影が差したが、すぐに笑顔が戻る。
「ねぇ、お義母様。ところで使用人の人数が減っているようだけど?」
ずっと気になっていたことを問いかける。
「よく気づいたわね。使用人なら何人か解雇したわ」
「え、どうして?」
ターレンバラ家は、貴族の中で比べると決して裕福な方ではないが、だからといって使用人を減らす必要があるほど没落しているわけでもない。
一体どうして使用人を解雇したの?
「実は昨日、掃除係が私の前を通ったのよ。本当に礼儀知らずな子だったから解雇したわけ」
なるほど。一見すれば、正当な主張だ。
一般的に掃除係のような下級の使用人が雇い主の前に姿を見せることは失礼とされている。
だから、大体の屋敷は主人のスペースと、使用人の生活スペースが別々になっていて、使用人は主人が外出中に掃除を済ませる。
メアリーとしては下級の使用人が、姿を見せようが、前を通ろうがどうでもいいが、フィネラにとっては違うらしい。
「あら、クビになったのはお義母様の前を通った使用人だけ? 私の目には何人もの使用人が減ったように見えるわ」
「あー、それはね。侍女の何人かがクビになった子と仲が良かったみたいで『あの子だけは見逃して下さい』ってお願いしてきたの。口うるさいから、あの子たちもクビにしちゃったわ」
冷水を浴びたような悪寒に襲われる。
間違いない。
おそらく、最初にクビになった使用人はフィネラにとって邪魔な存在となり排除されたのだ。
フィネラは昔から邪魔だと感じる存在を、それらしい理由で排除する癖があった。
きっとフィネラは最初の子を庇った使用人が、裏で自身の陰口を言うことを恐れたのね。
使用人の主人に対する忠誠心が揺らいでしまうもの。
裁判にかけられ、牢屋で処刑の日を待っていた記憶を思い出す。
居なくなった使用人は無事であろうか?
まさか、投獄されていないわよね?
「そうでしたか。ちなみに、クビにした使用人は別の屋敷に移ったのかしら?」
「そうねぇー」
フィネラは意地らしく笑ってから、メアリーの耳元に近づき、ささやく。
「教えてあげないわ。メアリーが良い子に戻ったら考えてあげてもいいけど」
「貴方にとって”良い子”ってなに?」
「私の邪魔にならない人間のことよ」
継母を睨むメアリー。
フィネラは小さく手を振りながら庭園を立ち去る。
「じゃあ二人とも。仲良くね」
「はい、こんにちは。フィネラ叔母様」
「いつも私の娘と仲良くしてくれてありがとう」
にこやかに笑う彼女の姿は聖人そのものであった。
「メアリーも素敵なお友達ができて良かったわね。貴方の”母として”嬉しいわ」
不自然に”母として”という部分を強調するフィネラ。
メアリーは笑顔を崩ないまま口を開いたが、彼女の瞳には炎のような怒りが宿っていた。
「それで”母”ではなく”伯爵夫人”としてはどうなのかしら?」
「とても悲しいわ。だって今まで伯爵令嬢として相応しい振る舞いをしていた娘が、突然、髪を染めることをやめて、お義母様の許可なくパーティに出かけるようになってしまったもの」
フィネラの視線が、メアリーからグリンダに移る。
「ねぇ、ミス・グリンダ。貴方からもなにか言って貰えないかしら?」
グリンダはしばらく考えるような動作を見せてから、口を開いた。
「私はメアリーが伯爵令嬢として相応しくない振る舞いをしているとは思えません」
今まで絵画のように完璧な、笑みを浮かべていたフィネラの表情が引きつる。
「我々貴族は民衆の憧れである。すなわち、民衆の考え方に囚われず堂々とするべきだ……これは、私のお母様がいつもおっしゃっている言葉です。私には『銀髪は不吉の象徴』という迷信に惑わされず堂々と振舞っているメアリー様の姿は、最も貴族令嬢らしいと思います」
「グリンダ、貴方……」
喜びの余り、言葉が漏れるメアリー。
「へぇー、あの人らしい考え方ね。いいわ、貴方がメアリーのことを大切に思っていることは、よく分かったから」
フィネラの方の表情には、一瞬影が差したが、すぐに笑顔が戻る。
「ねぇ、お義母様。ところで使用人の人数が減っているようだけど?」
ずっと気になっていたことを問いかける。
「よく気づいたわね。使用人なら何人か解雇したわ」
「え、どうして?」
ターレンバラ家は、貴族の中で比べると決して裕福な方ではないが、だからといって使用人を減らす必要があるほど没落しているわけでもない。
一体どうして使用人を解雇したの?
「実は昨日、掃除係が私の前を通ったのよ。本当に礼儀知らずな子だったから解雇したわけ」
なるほど。一見すれば、正当な主張だ。
一般的に掃除係のような下級の使用人が雇い主の前に姿を見せることは失礼とされている。
だから、大体の屋敷は主人のスペースと、使用人の生活スペースが別々になっていて、使用人は主人が外出中に掃除を済ませる。
メアリーとしては下級の使用人が、姿を見せようが、前を通ろうがどうでもいいが、フィネラにとっては違うらしい。
「あら、クビになったのはお義母様の前を通った使用人だけ? 私の目には何人もの使用人が減ったように見えるわ」
「あー、それはね。侍女の何人かがクビになった子と仲が良かったみたいで『あの子だけは見逃して下さい』ってお願いしてきたの。口うるさいから、あの子たちもクビにしちゃったわ」
冷水を浴びたような悪寒に襲われる。
間違いない。
おそらく、最初にクビになった使用人はフィネラにとって邪魔な存在となり排除されたのだ。
フィネラは昔から邪魔だと感じる存在を、それらしい理由で排除する癖があった。
きっとフィネラは最初の子を庇った使用人が、裏で自身の陰口を言うことを恐れたのね。
使用人の主人に対する忠誠心が揺らいでしまうもの。
裁判にかけられ、牢屋で処刑の日を待っていた記憶を思い出す。
居なくなった使用人は無事であろうか?
まさか、投獄されていないわよね?
「そうでしたか。ちなみに、クビにした使用人は別の屋敷に移ったのかしら?」
「そうねぇー」
フィネラは意地らしく笑ってから、メアリーの耳元に近づき、ささやく。
「教えてあげないわ。メアリーが良い子に戻ったら考えてあげてもいいけど」
「貴方にとって”良い子”ってなに?」
「私の邪魔にならない人間のことよ」
継母を睨むメアリー。
フィネラは小さく手を振りながら庭園を立ち去る。
「じゃあ二人とも。仲良くね」
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