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『どっちでもいい』と言われるのが一番困る
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「凄い……」
初めて見る光景に言葉を失うメアリー。
下級貴族の邸宅よりも、はるかに大きい建物の中に衣服、アクセサリー、茶器、本、玩具。
数々の品が、博物館の展示品のごとく並べられている。
「これだけの商店を、一箇所にまとめるだなんて素晴らしい発想ね。一度、経営者と話がしてみたいものだわ」
「はいはい。君が優秀なのは分かったから、今は一旦、買い物を楽しもう。せっかくの休日なのに小難しいことばかり考えていたら疲れちゃうでしょ」
メギスはパンパンと両手を打ち鳴らしてから、妹を心配する兄のような目でメアリーを見下ろした。
「それもそうね。休みなんだし全力で楽しまないと。婦人服売り場はどちらかしら?」
「それなら三階だよ」
メギスはメアリーのエスコートをしながら、右手をグルグルと回し始めた。
「なにをやっているの?」
「魔法を使って懐から財布を取り出そうとしたんだけどさ。全然上手くいかないんだよ」
「たしか魔法が使えなくなる結界があったわよね?」
「あー、厳密に言うと『結界を張った術者以外魔法が使えなくなるヤツ』ね。でもオリヴィエ百貨店に、そんな結界張ってあったかなぁ?」
「じゃあ、貴方の魔法が半人前なだけね」
クスリと笑うメアリーをメギスが睨む。
「非魔道士の君にだけは言われたくないね」
傍からしてみればふざけあっているようにしか見えなメギスとメアリーであったが、二人とも、どこか不安げな表情を浮かべていた。
まるで身に迫る危険に気づいているかのように。
***
婦人服売り場に着いたメアリーは、しばらくメギスとドレスを眺めていたが、メアリーの服装からなにかを察したらしい店員から身分を尋ねられた。
メギスが正直に伯爵令嬢だと教えるや否や、すぐさまVIPルームに連れて行かれて、店員に勧められたドレスを色々と試着することになった。
これだと屋敷に仕立て屋を直接呼ぶのと変わらないじゃない!
メギスったら、適当に資本家の娘とか嘘をついてくれれば良かったのに。
色々と彼に言いたいことはあるが、今はショッピングを楽しむことが優先だ。黙っておこう。
次のドレスに着替えてから、試着室のカーテンを開ける。
「ちよっと、大胆すぎないかしら?」
薄いスカイカラーのドレスにピンクのリボンがいくつも縫いつけられている。
デザインとしては十分可愛いが、メアリーとしては膝丈までしかないスカートと、肩が見える上半身部分が気になるようであった。
「僕は全然可愛いと思うよ。最近は、こんな感じの服が流行しているみたいだし」
頬がピンク色に染まるメアリーを、眺めるメギスは満面の笑みを浮かべながら答えた。
「露出が気になるようでしたら、他のドレスもご用意いたしますね」
「えぇ、ありがとう」
店員の女性がメアリーに一礼してから、早足で売り場へ向かう。
別に露出が気になるわけじゃないわ。
ただ産まれた時から、足が見える服を着たことがなかったから恥ずかしいだけ……。
鏡に映った己の姿を見る。
本当に最近の女の子は、こんなドレスが好きなの?
「メギス、ちょっと聞いてもいい?」
更衣室のカーテンを開けっ放しにしながら、猫足の椅子に座るメギスに問いかける。
「いいよ。僕に答えられる範囲なら何でも」
「更衣室で着たドレスの中で、どれが一番似合っていると思う?」
「うーん……」
メギスは数秒間目を閉じてから、再び口を開いた。
「全部、等しく可愛いよ」
「それだと困るのよ!」
「ふぇっ……?」
キョトンとした表情を浮かべるメギス。
なんだか子供みたいだ。
「私は、どれを買おうか迷っているから意見を求めているの。ハッキリと具体的に、どれが似合うか教えてちょうだい」
「そんなこと言われてもなぁ」
「全部気に入らないとでも言いたいの?」
鋭い目つきで睨むメアリーに、メギスはたじろぐ。
「ちっ、違うよ。むしろ逆だって!」
そうこうしているうちに、店員が新しいドレスを何着か持ってくる。
「そういえば店員の方に服の寸法を測ってもらっていないのに、さっきからピッタリサイズのドレスばかり来るわね」
ふと、頭をよぎった質問を呟く。
すると、隣でペチコートを畳んでいた店員が口を開いた。
「服の寸法でしたら、お連れの方からお聞き致しました」
お連れの方ぁ?
メアリーは殺意に満ちた目で、苦笑いをするメギスを睨みつけた。
なんで貴方が私の寸法なんて知っているのよ?
「ちょっと待ってくれ。これには深いわけが……」
「あら、言い訳なら聞かないわよ?」
初めて見る光景に言葉を失うメアリー。
下級貴族の邸宅よりも、はるかに大きい建物の中に衣服、アクセサリー、茶器、本、玩具。
数々の品が、博物館の展示品のごとく並べられている。
「これだけの商店を、一箇所にまとめるだなんて素晴らしい発想ね。一度、経営者と話がしてみたいものだわ」
「はいはい。君が優秀なのは分かったから、今は一旦、買い物を楽しもう。せっかくの休日なのに小難しいことばかり考えていたら疲れちゃうでしょ」
メギスはパンパンと両手を打ち鳴らしてから、妹を心配する兄のような目でメアリーを見下ろした。
「それもそうね。休みなんだし全力で楽しまないと。婦人服売り場はどちらかしら?」
「それなら三階だよ」
メギスはメアリーのエスコートをしながら、右手をグルグルと回し始めた。
「なにをやっているの?」
「魔法を使って懐から財布を取り出そうとしたんだけどさ。全然上手くいかないんだよ」
「たしか魔法が使えなくなる結界があったわよね?」
「あー、厳密に言うと『結界を張った術者以外魔法が使えなくなるヤツ』ね。でもオリヴィエ百貨店に、そんな結界張ってあったかなぁ?」
「じゃあ、貴方の魔法が半人前なだけね」
クスリと笑うメアリーをメギスが睨む。
「非魔道士の君にだけは言われたくないね」
傍からしてみればふざけあっているようにしか見えなメギスとメアリーであったが、二人とも、どこか不安げな表情を浮かべていた。
まるで身に迫る危険に気づいているかのように。
***
婦人服売り場に着いたメアリーは、しばらくメギスとドレスを眺めていたが、メアリーの服装からなにかを察したらしい店員から身分を尋ねられた。
メギスが正直に伯爵令嬢だと教えるや否や、すぐさまVIPルームに連れて行かれて、店員に勧められたドレスを色々と試着することになった。
これだと屋敷に仕立て屋を直接呼ぶのと変わらないじゃない!
メギスったら、適当に資本家の娘とか嘘をついてくれれば良かったのに。
色々と彼に言いたいことはあるが、今はショッピングを楽しむことが優先だ。黙っておこう。
次のドレスに着替えてから、試着室のカーテンを開ける。
「ちよっと、大胆すぎないかしら?」
薄いスカイカラーのドレスにピンクのリボンがいくつも縫いつけられている。
デザインとしては十分可愛いが、メアリーとしては膝丈までしかないスカートと、肩が見える上半身部分が気になるようであった。
「僕は全然可愛いと思うよ。最近は、こんな感じの服が流行しているみたいだし」
頬がピンク色に染まるメアリーを、眺めるメギスは満面の笑みを浮かべながら答えた。
「露出が気になるようでしたら、他のドレスもご用意いたしますね」
「えぇ、ありがとう」
店員の女性がメアリーに一礼してから、早足で売り場へ向かう。
別に露出が気になるわけじゃないわ。
ただ産まれた時から、足が見える服を着たことがなかったから恥ずかしいだけ……。
鏡に映った己の姿を見る。
本当に最近の女の子は、こんなドレスが好きなの?
「メギス、ちょっと聞いてもいい?」
更衣室のカーテンを開けっ放しにしながら、猫足の椅子に座るメギスに問いかける。
「いいよ。僕に答えられる範囲なら何でも」
「更衣室で着たドレスの中で、どれが一番似合っていると思う?」
「うーん……」
メギスは数秒間目を閉じてから、再び口を開いた。
「全部、等しく可愛いよ」
「それだと困るのよ!」
「ふぇっ……?」
キョトンとした表情を浮かべるメギス。
なんだか子供みたいだ。
「私は、どれを買おうか迷っているから意見を求めているの。ハッキリと具体的に、どれが似合うか教えてちょうだい」
「そんなこと言われてもなぁ」
「全部気に入らないとでも言いたいの?」
鋭い目つきで睨むメアリーに、メギスはたじろぐ。
「ちっ、違うよ。むしろ逆だって!」
そうこうしているうちに、店員が新しいドレスを何着か持ってくる。
「そういえば店員の方に服の寸法を測ってもらっていないのに、さっきからピッタリサイズのドレスばかり来るわね」
ふと、頭をよぎった質問を呟く。
すると、隣でペチコートを畳んでいた店員が口を開いた。
「服の寸法でしたら、お連れの方からお聞き致しました」
お連れの方ぁ?
メアリーは殺意に満ちた目で、苦笑いをするメギスを睨みつけた。
なんで貴方が私の寸法なんて知っているのよ?
「ちょっと待ってくれ。これには深いわけが……」
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