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神官姿の悪魔
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神殿の見学が終わり、メアリーは帰りの馬車で元侍女から渡された紙を見た。
通行人に外出している姿を見られぬよう閉めたカーテンを、ほんの少しばかり開けて紙を照らす。
何かの写しであろう紙には、リストのようなものが書かれていた。
リストは二つに分かれており、片方は教会に入ってきた寄付のリスト。ターレンバラ家が寄付した記録の他に、見知らぬ人物からの寄付がいくつかある。
それと、見習い神官として暮らす子供たちの出入りを書いたリスト。引き取られた日から、里親の元へ送られた日まで詳細に書かれている。
やっと理解したわ。どうして元侍女が、この紙を渡してきたのか。
「さて、悪い子には罰を与えないと。徹底的に断罪してあげないとね」
あの子、危険を犯してまで私に情報を渡してくれた。きっと、私が来ると信じてリストの写しを予め用意してくれたのね。
ここまで分かりやすい証拠を残しておいて、バレる心配をなにもしていないだなんて。哀れなことね。
いいわ、貴方たちの油断が招く結果を私が見せてあげる。
牢屋に放り込むだけでは足りないわ。
悪い子は徹底的に痛めつけてあげないと。
さて、彼らを裁くのに必要なのは証拠と観衆。
それと、メギスの助けも必要ね。
***
「ちよっとドリー。シーツはもっと丁寧に畳んでっていつも言っているでしょ」
「えー、どうせベッドに敷くときに広げるじゃん」
「そーゆー問題じゃないの。ジムも何か言ってよ」
「分かるぞ。ジミーのやつ、いっつも『どうせすぐ汚れるから』って食堂の掃除適当に済ませるからな」
「ジムだって人の事、言えないだろ!」
メアリーが帰った後の神殿内。
洗濯室では子供たちがお互いに、あーだこーだと言い合いながら下働きとして働いていた。
「静かにしろよ。あまりうるさいと次は君たちが選ばれるんじゃないの?」
子供たちの中でも一番大人びている少年がぼそっと呟くと、彼らの視線は一気に少年の方へと移った。
「ちよっとー、縁起でもないこと言わないでよ」
「アルてば、いつも大人ぶってんじゃねぇよ」
赤いショートヘアの下に見える気だるげな瞳。アルと呼ばれた少年は他の子供たちの文句を全て聞き流し、黙々と作業を続けていた。
というより他の子供たちも怨みや憎悪を込めてアルに嫌味を言っているわけではなく、単純に”おふざけ”として彼の言動にケチをつけているように見えた。
「君たち、そろそろ本当に黙った方がいいよ。大人が来たから」
子供たちが一斉に口を閉じ沈黙が訪れる。
すると、アルが言った通り、複数人の足音が洗濯室に迫ってきていた。
やがて、扉が開き男性神官二人と、女性神官一人が入ってくる。
一番位が高いと思われる神官は、吸いかけのタバコを手に持っていた。
「お前ら、しっかり働いているか?」
タバコを持っている神官は、洗濯室に入ってくるなりカゴを持っていた少年を邪魔だと言わんばかりに突き飛ばした。
「その子に傷はつけないようにと神官長がおっしゃっていましたよ」
女性神官が呆れたような目つきで、タバコを持った神官を睨みつける。
「コイツはちっさくて大して役にも立たないガキだからな。さっさと居なくなって貰った方がいい」
「ジミーは役たたずじゃありません。いつも人一倍働いて、気遣いもできる子です」
シーツを畳んでいた少年が口を挟む。
「お前、誰に向かって口答えしているんだ。孤児のくせに……」
口を挟まれた神官は声を荒らげた。
すると、再び女性神官が「落ち着いて下さい」
と諌める。
「ふん、どうせお前の代わりだっていくらでもいる。次の客に気に入られるといいな」
神官は最後、タバコを床に捨ててから洗濯室を立ち去った。
「おい、ジミー大丈夫か?」
突き飛ばされた少年の元へ、口を挟んだ少年が駆け寄る。
「ねぇ、アル。私たちどうなるのかな?」
アルの隣に居た少女――アンジーが心配そうに問いかける。
「大丈夫だよ。アンジー、僕たちは絶対に助かるから」
静かに黙々と手を動かすアルの瞳には、熱い炎のような光が宿っていた。
通行人に外出している姿を見られぬよう閉めたカーテンを、ほんの少しばかり開けて紙を照らす。
何かの写しであろう紙には、リストのようなものが書かれていた。
リストは二つに分かれており、片方は教会に入ってきた寄付のリスト。ターレンバラ家が寄付した記録の他に、見知らぬ人物からの寄付がいくつかある。
それと、見習い神官として暮らす子供たちの出入りを書いたリスト。引き取られた日から、里親の元へ送られた日まで詳細に書かれている。
やっと理解したわ。どうして元侍女が、この紙を渡してきたのか。
「さて、悪い子には罰を与えないと。徹底的に断罪してあげないとね」
あの子、危険を犯してまで私に情報を渡してくれた。きっと、私が来ると信じてリストの写しを予め用意してくれたのね。
ここまで分かりやすい証拠を残しておいて、バレる心配をなにもしていないだなんて。哀れなことね。
いいわ、貴方たちの油断が招く結果を私が見せてあげる。
牢屋に放り込むだけでは足りないわ。
悪い子は徹底的に痛めつけてあげないと。
さて、彼らを裁くのに必要なのは証拠と観衆。
それと、メギスの助けも必要ね。
***
「ちよっとドリー。シーツはもっと丁寧に畳んでっていつも言っているでしょ」
「えー、どうせベッドに敷くときに広げるじゃん」
「そーゆー問題じゃないの。ジムも何か言ってよ」
「分かるぞ。ジミーのやつ、いっつも『どうせすぐ汚れるから』って食堂の掃除適当に済ませるからな」
「ジムだって人の事、言えないだろ!」
メアリーが帰った後の神殿内。
洗濯室では子供たちがお互いに、あーだこーだと言い合いながら下働きとして働いていた。
「静かにしろよ。あまりうるさいと次は君たちが選ばれるんじゃないの?」
子供たちの中でも一番大人びている少年がぼそっと呟くと、彼らの視線は一気に少年の方へと移った。
「ちよっとー、縁起でもないこと言わないでよ」
「アルてば、いつも大人ぶってんじゃねぇよ」
赤いショートヘアの下に見える気だるげな瞳。アルと呼ばれた少年は他の子供たちの文句を全て聞き流し、黙々と作業を続けていた。
というより他の子供たちも怨みや憎悪を込めてアルに嫌味を言っているわけではなく、単純に”おふざけ”として彼の言動にケチをつけているように見えた。
「君たち、そろそろ本当に黙った方がいいよ。大人が来たから」
子供たちが一斉に口を閉じ沈黙が訪れる。
すると、アルが言った通り、複数人の足音が洗濯室に迫ってきていた。
やがて、扉が開き男性神官二人と、女性神官一人が入ってくる。
一番位が高いと思われる神官は、吸いかけのタバコを手に持っていた。
「お前ら、しっかり働いているか?」
タバコを持っている神官は、洗濯室に入ってくるなりカゴを持っていた少年を邪魔だと言わんばかりに突き飛ばした。
「その子に傷はつけないようにと神官長がおっしゃっていましたよ」
女性神官が呆れたような目つきで、タバコを持った神官を睨みつける。
「コイツはちっさくて大して役にも立たないガキだからな。さっさと居なくなって貰った方がいい」
「ジミーは役たたずじゃありません。いつも人一倍働いて、気遣いもできる子です」
シーツを畳んでいた少年が口を挟む。
「お前、誰に向かって口答えしているんだ。孤児のくせに……」
口を挟まれた神官は声を荒らげた。
すると、再び女性神官が「落ち着いて下さい」
と諌める。
「ふん、どうせお前の代わりだっていくらでもいる。次の客に気に入られるといいな」
神官は最後、タバコを床に捨ててから洗濯室を立ち去った。
「おい、ジミー大丈夫か?」
突き飛ばされた少年の元へ、口を挟んだ少年が駆け寄る。
「ねぇ、アル。私たちどうなるのかな?」
アルの隣に居た少女――アンジーが心配そうに問いかける。
「大丈夫だよ。アンジー、僕たちは絶対に助かるから」
静かに黙々と手を動かすアルの瞳には、熱い炎のような光が宿っていた。
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