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男の正体
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「珍しい色の髪ですね。昔、絵本で見た夜の魔女とよく似ています」
向かい側の席に座るウィリアムが呟く。
窓のカーテンが閉められた馬車の中。半密室の中で自分より播るかに身分が高い方と二人きり……。
うっかり失礼なことを言ってしまえば、せっかく時間を戻してもらったのに、また首と胴体を離れ離れにされてしまう。
心臓の鼓動が止まらない。
頭がくらくらする。
このままだと目眩がしてしまいそう。
落ち着くのよ、私。
この状況を別の側面から捉えれば、人脈を広げるチャンスじゃない。上手く活用しないと。
「私の銀髪が原因で不快な思いをされたようでしたら、お詫び申し上げます」
「いえ、貴方の髪色については全️く気にしていません。私は確たる根拠が無い話には興味がありませんから。『銀髪は不幸の象徴』などといった迷信なら、なおさらです」
迷信には興味がない……か。
上層部の大臣たちは今頃、魔女のことで頭が一杯で私の姿を見るなり罵ってくるものかと思っていたけど、彼のような人が居て良かった。
「ターレンバラ伯爵令嬢、魔女に関する予言は貴方がたの領地内で行われたと聞いています」
「はい、その通りです」
「貴方は予言に対して、どうお考えで?」
フィンが目を細めながら尋ねる。
「もちろん、下らない占い……とでも言いたいところですが、予言式の神託は過去に外れた例がありません。ならば、魔女を見つけて捕らえる外ありません」
「なるぼど、捕らえてから処刑するつもりですか?」
「ただの伯爵令嬢でしかない私に、そのような権限はありません」
「では権限を与えられたら……どうします?」
メアリーは口元に手を添え、ふふっと笑う。
嘲るように。見下すように。
どこまでも残酷に。
「もし予言の『魔女』がどこまでも傲慢で、破壊をもたらす者であるならば、その時はギロチンでスパッと首を落としてしまいましょう」
この時、メアリーの脳裏に現れた人物はただ一人。フィネラだけだ。
フィンは「へぇー」と一言だけ呟やいてから、カーテンを開け馬車の外を見た。
「どうやら私の同行者が用事を済ませたようです」
「では先に降りて同行者の方に姿をかくすよう伝えて下さい。しばらくしたら、私も降ります」
「いえ、その必要はなさそうです」
「え……?」
外側から馬車の扉が開けられる。
開けたのは王宮騎士の一人だ。
騎士は扉から手を離し、身を引く。
「ウィリアムが女性と話しているなんて珍しいな」
神殿の方から豪華な身なりの男がゆっくりと近づいている。神官、王宮騎士、全員が彼の妨げにならないよう道を開け、跪いた。
ウィリアムと同じ赤髪を耳にかけ、万人を惹き付けるであろう太陽のように明るい笑顔を浮かべている。
この人……知っている。
というか、帝国に住まう者なら最低限名前ぐらいは知っているはずだ。
「彼女に少々興味が湧きましてね。それより兄上、陛下から命じられた調査の方はどうでしたか?」
「それなら無事に終わった。できるだけ、すぐに戻って報告しよう」
「分かりました」
ウィリアムが兄と呼んだ男は、きょとんとしているメアリーを見下ろす。
「そこの美しいお嬢さん、名前は?」
「ターレンバラ伯爵の娘。メアリー・ターレンバラと申します。お会いできて光栄でございます。フィン皇太子殿下」
「俺の顔を知っているのか?」
「はい。以前、兄が王宮主催の剣技大会に出場した時、義母と共に観戦へ参りました。そこで殿下が次期皇帝にふさわしい、みごとな剣術を拝見いたしました」
「なるほど、剣技大会で見た俺の顔を覚えていたのか……」
ウィリアムは馬車を降りて、フィンの隣に立つ。
「さぁ、行きましょう。兄上」
「それもそうだな」
立ち去ろうとする二人を見て、メアリーは慌てて馬車から降り、お辞儀をする。
「レディ・メアリー。良ければまたウィリアムの話し相手になってくれ。コイツ女が苦手でな」
「兄上、余計なこと言わないで下さい」
メアリーは頭を下げたまま口を開く。
「承知致しました。皇太子殿下」
向かい側の席に座るウィリアムが呟く。
窓のカーテンが閉められた馬車の中。半密室の中で自分より播るかに身分が高い方と二人きり……。
うっかり失礼なことを言ってしまえば、せっかく時間を戻してもらったのに、また首と胴体を離れ離れにされてしまう。
心臓の鼓動が止まらない。
頭がくらくらする。
このままだと目眩がしてしまいそう。
落ち着くのよ、私。
この状況を別の側面から捉えれば、人脈を広げるチャンスじゃない。上手く活用しないと。
「私の銀髪が原因で不快な思いをされたようでしたら、お詫び申し上げます」
「いえ、貴方の髪色については全️く気にしていません。私は確たる根拠が無い話には興味がありませんから。『銀髪は不幸の象徴』などといった迷信なら、なおさらです」
迷信には興味がない……か。
上層部の大臣たちは今頃、魔女のことで頭が一杯で私の姿を見るなり罵ってくるものかと思っていたけど、彼のような人が居て良かった。
「ターレンバラ伯爵令嬢、魔女に関する予言は貴方がたの領地内で行われたと聞いています」
「はい、その通りです」
「貴方は予言に対して、どうお考えで?」
フィンが目を細めながら尋ねる。
「もちろん、下らない占い……とでも言いたいところですが、予言式の神託は過去に外れた例がありません。ならば、魔女を見つけて捕らえる外ありません」
「なるぼど、捕らえてから処刑するつもりですか?」
「ただの伯爵令嬢でしかない私に、そのような権限はありません」
「では権限を与えられたら……どうします?」
メアリーは口元に手を添え、ふふっと笑う。
嘲るように。見下すように。
どこまでも残酷に。
「もし予言の『魔女』がどこまでも傲慢で、破壊をもたらす者であるならば、その時はギロチンでスパッと首を落としてしまいましょう」
この時、メアリーの脳裏に現れた人物はただ一人。フィネラだけだ。
フィンは「へぇー」と一言だけ呟やいてから、カーテンを開け馬車の外を見た。
「どうやら私の同行者が用事を済ませたようです」
「では先に降りて同行者の方に姿をかくすよう伝えて下さい。しばらくしたら、私も降ります」
「いえ、その必要はなさそうです」
「え……?」
外側から馬車の扉が開けられる。
開けたのは王宮騎士の一人だ。
騎士は扉から手を離し、身を引く。
「ウィリアムが女性と話しているなんて珍しいな」
神殿の方から豪華な身なりの男がゆっくりと近づいている。神官、王宮騎士、全員が彼の妨げにならないよう道を開け、跪いた。
ウィリアムと同じ赤髪を耳にかけ、万人を惹き付けるであろう太陽のように明るい笑顔を浮かべている。
この人……知っている。
というか、帝国に住まう者なら最低限名前ぐらいは知っているはずだ。
「彼女に少々興味が湧きましてね。それより兄上、陛下から命じられた調査の方はどうでしたか?」
「それなら無事に終わった。できるだけ、すぐに戻って報告しよう」
「分かりました」
ウィリアムが兄と呼んだ男は、きょとんとしているメアリーを見下ろす。
「そこの美しいお嬢さん、名前は?」
「ターレンバラ伯爵の娘。メアリー・ターレンバラと申します。お会いできて光栄でございます。フィン皇太子殿下」
「俺の顔を知っているのか?」
「はい。以前、兄が王宮主催の剣技大会に出場した時、義母と共に観戦へ参りました。そこで殿下が次期皇帝にふさわしい、みごとな剣術を拝見いたしました」
「なるほど、剣技大会で見た俺の顔を覚えていたのか……」
ウィリアムは馬車を降りて、フィンの隣に立つ。
「さぁ、行きましょう。兄上」
「それもそうだな」
立ち去ろうとする二人を見て、メアリーは慌てて馬車から降り、お辞儀をする。
「レディ・メアリー。良ければまたウィリアムの話し相手になってくれ。コイツ女が苦手でな」
「兄上、余計なこと言わないで下さい」
メアリーは頭を下げたまま口を開く。
「承知致しました。皇太子殿下」
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