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12 はじめてのチートスキル
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「へへ、いくら攻撃してもムダだぜ。俺は不死身だ」
ブンブンと鎖を振り回しながらバザックがヒャッハッハッと笑う。
「ええ~、不死身なんてスキルあったら、勝ちようがないっスね」
「いや、いくら願望が具現化する世界でも、法則がある。不死身とか、無限になんか作り出すとかは無理なんだ。無意識に『こんなことは不可能』って思ってる気持ちもあるから」
「それじゃあ、アイツの持ってるチートスキルってのはなんスかね」
「多分、物理無効か超再生だと思う。どれもやっかいなスキルなんだけど」
「それじゃあ、試してみるっスね」
ステータスウインドウを開き、スキルを確認。
指先をバザックに向ける。そこから電撃がほとばしった。
「ひぎぃっっ」
バチィッ、と命中し、バザックは倒れた。しかしブスブスと黒い煙を出しながらなおも立ち上がる。
「魔法も効いてないんスかね」
物理無効のスキルだったら魔法は通じ、今ので倒せたはずだ。それならば──。
剣を抜く。一気に近づいて両腕、両足を斬り飛ばした。
やはり──物理無効ではない。となれば、超再生か。再生するといっても、痛みはあるはずだ。
いや、平然としている。斬ったはずの手足も何事も無かったかのように存在している。
「超再生でもないみたいっスね。しっかし、変な手応えっス」
視覚的には斬ったかに見えた。だが実際にはダメージを受けていない。
「ヒャハーッ、ビビったかよ!」
バザックの鎖攻撃。盾で弾き、そのまま返す勢いでゴッ、ゴゴッと殴打した。
顔面と胸の骨が砕けたはず──。
いや、斧で反撃してきた。俺の肩から胸にかけて衣服が裂ける。
リーダーの意外な健闘に部下たちは勢いづいたようだ。
「すげえ、アニキ!」
「いつもは願望者相手には負けちまうのに」
「よし、俺たちも──」
しかし、部下たちの前にはイルネージュが立ちはだかる。
「これ以上、近づくなら願望者じゃなくても容赦しません」
アイスブランドをブン、と一振り。部下たちの目の前の地面がビキビキと凍りつく。
それでもう戦意喪失。武器を捨て、籔の中へ逃げていった。
「ち、野郎ども……ここからだってのによ」
右手で鎖を回しながら左手の斧をゆらゆら揺らす。図に乗っているようだが、今までの攻防と、コイツの足元に落ちているモノで能力の謎はとけた。
「アンタみたいな弱いヤツにはあんまし意味ない能力っスねえ」
「んだとっ、どういう意味だ!」
剣は鞘に納め、俺はそのまま近づく。
野郎っ、と振り下ろされた斧を素手で受け止めた。バキバキと刃を握り砕く。
呆気に取られているバザックの首を掴み、片手で持ち上げる。
ジタバタ暴れるバザック。懐からポロポロと小さな木片が落ちてきた。
人形に切り取ったような形。
それは亀裂が入ったものや、黒焦げになったものもある。
「これがアンタのダメージを代わりに受けてたんスねえ」
シエラがあっ、と叫んだ。
「チートスキル、身代わりだ!」
バザックを振り、持っている木片を全て落とす。
それを足でひとつ残さず踏み砕いた。
バザックを離すと、ひええと四つん這いになって逃げ出す。
「もう身代わりになるようなモノはないっスねえ」
右手に願望の力を込め、横に軽く払う。
小規模の竜巻が発生。巻き込まれたバザックは宙に舞い、頭から地面に激突。そのまま気を失ったようだ。
バザックの身体からポウッ、と光る球体が飛び出して俺の中に。
ステータスウインドウを開いて確認。バザックを倒したことで、チートスキル身代わりを手に入れたようだ。
「う~ん、チートというわりには地味じゃないっスかね、身代わりって」
「バカ、お前バカ。いくらこの世界でも死んだら生き返れないんだよ。即死効果のスキル持つ願望者だっているんだから、それは貴重なの」
はじめて手に入れたチートスキルだが……最初っから無敵っぽい自分には不用に思える。
あまり喜んでいない反応に、シエラは不満のようだ。
「ふん、いつか絶対、感謝する時がくるから。ああ、シエラ様のチートスキルで助かりました。さすがは可愛くて頭の良いシエラ様だって」
チートスキルの所有者に出会うという偶然に恵まれながら、無事に峠道を抜けて街道へ出た。
ここを道なりに北上。途中何度か魔物に襲われたが、いずれも低級、しかも少数だったので何の問題も無かった。
「いやあ、こんな大きな道でも魔物に襲われるんスねえ」
「わたしがひとりの時よりエンカウント多いですね。やっぱり願望者三人かたまっているからだと思います」
「ああ、願望者って、普通の人より魔物に狙われやすかったっスね。だったら俺たち損スね。ひとりは完全に戦力外だし」
コボルト四体を倒し終え、イルネージュと話しながらチラとシエラのほうを見る。
《女神》シエラは岩陰に隠れこちらの様子をうかがっていたが……俺と目が合うと、ダッシュで向かってきた。
「くぅおらあぁぁーーっ! いつきぃぃ! テメー今、シエラの悪口言っただろーがっ! シエラのスキル、地獄耳をナメるなよっ!」
叫びながら俺に飛び蹴り。
まったく、そんなしょうもないスキルより、回復魔法のひとつでも身に付けていてくれ。
ブンブンと鎖を振り回しながらバザックがヒャッハッハッと笑う。
「ええ~、不死身なんてスキルあったら、勝ちようがないっスね」
「いや、いくら願望が具現化する世界でも、法則がある。不死身とか、無限になんか作り出すとかは無理なんだ。無意識に『こんなことは不可能』って思ってる気持ちもあるから」
「それじゃあ、アイツの持ってるチートスキルってのはなんスかね」
「多分、物理無効か超再生だと思う。どれもやっかいなスキルなんだけど」
「それじゃあ、試してみるっスね」
ステータスウインドウを開き、スキルを確認。
指先をバザックに向ける。そこから電撃がほとばしった。
「ひぎぃっっ」
バチィッ、と命中し、バザックは倒れた。しかしブスブスと黒い煙を出しながらなおも立ち上がる。
「魔法も効いてないんスかね」
物理無効のスキルだったら魔法は通じ、今ので倒せたはずだ。それならば──。
剣を抜く。一気に近づいて両腕、両足を斬り飛ばした。
やはり──物理無効ではない。となれば、超再生か。再生するといっても、痛みはあるはずだ。
いや、平然としている。斬ったはずの手足も何事も無かったかのように存在している。
「超再生でもないみたいっスね。しっかし、変な手応えっス」
視覚的には斬ったかに見えた。だが実際にはダメージを受けていない。
「ヒャハーッ、ビビったかよ!」
バザックの鎖攻撃。盾で弾き、そのまま返す勢いでゴッ、ゴゴッと殴打した。
顔面と胸の骨が砕けたはず──。
いや、斧で反撃してきた。俺の肩から胸にかけて衣服が裂ける。
リーダーの意外な健闘に部下たちは勢いづいたようだ。
「すげえ、アニキ!」
「いつもは願望者相手には負けちまうのに」
「よし、俺たちも──」
しかし、部下たちの前にはイルネージュが立ちはだかる。
「これ以上、近づくなら願望者じゃなくても容赦しません」
アイスブランドをブン、と一振り。部下たちの目の前の地面がビキビキと凍りつく。
それでもう戦意喪失。武器を捨て、籔の中へ逃げていった。
「ち、野郎ども……ここからだってのによ」
右手で鎖を回しながら左手の斧をゆらゆら揺らす。図に乗っているようだが、今までの攻防と、コイツの足元に落ちているモノで能力の謎はとけた。
「アンタみたいな弱いヤツにはあんまし意味ない能力っスねえ」
「んだとっ、どういう意味だ!」
剣は鞘に納め、俺はそのまま近づく。
野郎っ、と振り下ろされた斧を素手で受け止めた。バキバキと刃を握り砕く。
呆気に取られているバザックの首を掴み、片手で持ち上げる。
ジタバタ暴れるバザック。懐からポロポロと小さな木片が落ちてきた。
人形に切り取ったような形。
それは亀裂が入ったものや、黒焦げになったものもある。
「これがアンタのダメージを代わりに受けてたんスねえ」
シエラがあっ、と叫んだ。
「チートスキル、身代わりだ!」
バザックを振り、持っている木片を全て落とす。
それを足でひとつ残さず踏み砕いた。
バザックを離すと、ひええと四つん這いになって逃げ出す。
「もう身代わりになるようなモノはないっスねえ」
右手に願望の力を込め、横に軽く払う。
小規模の竜巻が発生。巻き込まれたバザックは宙に舞い、頭から地面に激突。そのまま気を失ったようだ。
バザックの身体からポウッ、と光る球体が飛び出して俺の中に。
ステータスウインドウを開いて確認。バザックを倒したことで、チートスキル身代わりを手に入れたようだ。
「う~ん、チートというわりには地味じゃないっスかね、身代わりって」
「バカ、お前バカ。いくらこの世界でも死んだら生き返れないんだよ。即死効果のスキル持つ願望者だっているんだから、それは貴重なの」
はじめて手に入れたチートスキルだが……最初っから無敵っぽい自分には不用に思える。
あまり喜んでいない反応に、シエラは不満のようだ。
「ふん、いつか絶対、感謝する時がくるから。ああ、シエラ様のチートスキルで助かりました。さすがは可愛くて頭の良いシエラ様だって」
チートスキルの所有者に出会うという偶然に恵まれながら、無事に峠道を抜けて街道へ出た。
ここを道なりに北上。途中何度か魔物に襲われたが、いずれも低級、しかも少数だったので何の問題も無かった。
「いやあ、こんな大きな道でも魔物に襲われるんスねえ」
「わたしがひとりの時よりエンカウント多いですね。やっぱり願望者三人かたまっているからだと思います」
「ああ、願望者って、普通の人より魔物に狙われやすかったっスね。だったら俺たち損スね。ひとりは完全に戦力外だし」
コボルト四体を倒し終え、イルネージュと話しながらチラとシエラのほうを見る。
《女神》シエラは岩陰に隠れこちらの様子をうかがっていたが……俺と目が合うと、ダッシュで向かってきた。
「くぅおらあぁぁーーっ! いつきぃぃ! テメー今、シエラの悪口言っただろーがっ! シエラのスキル、地獄耳をナメるなよっ!」
叫びながら俺に飛び蹴り。
まったく、そんなしょうもないスキルより、回復魔法のひとつでも身に付けていてくれ。
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