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38 ブクリエの領都
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オークの集団がブホッ、ブホッ、と興奮して襲いかかってきた。
この程度の魔物ならスキルを使う必要もない。馬上で剣を抜き、斬りつけた。
瞬く間に三体のオークを斬り伏せる。ガタイは多少いいが、手応えは食パンを裂いた程度。
一匹が棍棒で殴りつけてくる。盾すら使わず素手で受け止め、それを奪い取る。
その棍棒を振り下ろすと、棍棒は砕け、オークの頭部は身体にめり込んだ。
残るは二匹──逃げ出した。ヒュッ、と剣を投げつけて一匹を串刺しにし、馬で駆けながら剣を回収。
残る一匹にも追いつき、首をはねた。
「いや、さすが勇者殿。お見事」
伊能が拍手しながら近づき、馬を降りてオークの死骸を見下ろす。
「よし、そんじゃ素材を剥ぎ取ろうか」
「うえ、グロいっスけど……マジでやんなきゃダメっスか」
「仕方ねえな。まずは俺がやってやるよ。ああ、素材になりそうな箇所はお前さんが分かるだろ」
俺はステータスウインドウを開き、神器練精の項目からさらにオークの素材を調べる。
「ええと、代表的なのは牙っスね。それに肉とか皮とか骨……キモいっスね~。あとは身に付けてる毛皮とか人間から奪った武器、防具なんかっスね」
「ふむ。まあ、やってみるか」
伊能は短剣を取り出し、手際よく素材の剥ぎ取りをおこなっていく。
目の前に並べられた骨や肉片、古びた手甲や脛当てを前に、改めてステータスウインドウを開き、願望の力を高める。
素材が光を放ちだした。もともと持っている復元のスキルに似ている……。
素材が宙に浮き、回転しはじめる。そしてまばゆい光とともに一箇所に集まり──。
出来上がったのは斧。柄が長く、両刃のタイプ。いかにもバイキングが持ってさそうな……。
「ほう、なかなか……で、勇者殿、威力のほうはどうかな」
「ちょっと試してみるっス」
身の丈以上の岩があった。出来上がったばかりの斧を両手で持ち、そこへ振り下ろす。
岩は木っ端みじんに粉砕。かなりの威力だが──斧も刃の部分が欠けてしまっていた。
「こりゃあ、武器の性能というより勇者殿のバカ力のせいだな……それとオーク程度の素材じゃあ、それに耐えられんみたいだ」
「そうっスね。もっと強い魔物からの素材ならイイのが作れそうっス。まあ、当分は必要ないっすスけど」
願望者だろうが魔物だろうが、大抵の相手なら素手でも十分だ。素材集めなんかはグロいのさえなければ面白そうだが。
スキルの確認も終え、俺と伊能は街道へと戻る。
その後、いくつかの村を経由してブクリエの国境へ。関所があったが、伊能は許可証を見せてなんなく通過した。
「全然警戒されてないっスね。仲間が捕まってるか殺されたんなら、俺たち堂々と入るのはマズいんじゃないっスか」
「表向き、ブクリエとセペノイアは協力関係にある。今回の俺の任務も公式な訪問という形を取ってるんだぜ。捕まったにしろ死んだにしろ調査員はギルドの事は喋ってないだろう……まあ、あちらさんも特定は出来てないだろうよ」
「お互い、腹の探り合いってわけっスね」
「おうよ。セペノイアの組合長たちはブクリエとの関係は大事に思ってるが、同時に恐れてもいる。まだ誰も成し得てない世界の統一。その可能性に最も近いと言われているのがブクリエだからな」
国境からさらに三日。特に問題なくブクリエの領都へと到着した。
領都の入り口でも伊能は許可証を兵士に見せていた。
兵士のひとりが城まで案内すると申し出たが、伊能はそれを断る。
「なに、はじめてじゃねえしな。迷子になんかなんねーよ」
兵に馬を預け、そこからは徒歩で城へと向かう。
ブクリエの街……セペノイアは商人の街といった感じだったが、ここは武装した兵士や傭兵っぽい人物が多い。
店が多く並ぶ場所でも、武器や防具を扱っている所が目立つ。街全体がものものしい雰囲気だ。
「たしかに大きな街っスけど、なんだかヤな感じっスね。ゴツい人多いし。あ、願望者も何人かいるみたいっスね」
あまり顔はまじまじ見ないようにしているが、それでも時折ダダダダ、と頭に文字が打ち込まれる。
慣れてきたのか、以前よりもイラっとはしなくなってきたようだが。
「上のモンが警戒してんのは、普段から武力偏重のこの国がさらに軍備を増強しているって事だ。使えそうな願望者も雇い入れてるようだな」
「城に行くって事は、さっそくここの領主に会うってことっスか」
「ああ……その前に。勇者殿は気付いたかい? この街に入ってから尾行られてるぜ」
「えっ、マジスか。分からなかったっスね。俺らが調査員を探しに来てるのバレてるんじゃ……」
「いや……おい、振り向くなよ。そこから曲がるぞ」
伊能は自然な感じで右の路地に入る。
伊能はそのまま路地を進み、俺は物陰に隠れる。
しばらくして全身をローブに包みフードを目深に被った、いかにも怪しい二人組が路地に進入してきた。
伊能がひとりで振り向いたのを見て、慌てて引き返そうとするが、俺がその前に立ちはだかる。
「何者っスか? 場合によっちゃあ、覚悟してもらうっスよ」
俺がちょいと脅すように聞くと、背の低いほうがフードを脱ぎながら言った。
「ほう、ずいぶんと生意気な口を利くじゃないか。何をどう覚悟するのかな」
この程度の魔物ならスキルを使う必要もない。馬上で剣を抜き、斬りつけた。
瞬く間に三体のオークを斬り伏せる。ガタイは多少いいが、手応えは食パンを裂いた程度。
一匹が棍棒で殴りつけてくる。盾すら使わず素手で受け止め、それを奪い取る。
その棍棒を振り下ろすと、棍棒は砕け、オークの頭部は身体にめり込んだ。
残るは二匹──逃げ出した。ヒュッ、と剣を投げつけて一匹を串刺しにし、馬で駆けながら剣を回収。
残る一匹にも追いつき、首をはねた。
「いや、さすが勇者殿。お見事」
伊能が拍手しながら近づき、馬を降りてオークの死骸を見下ろす。
「よし、そんじゃ素材を剥ぎ取ろうか」
「うえ、グロいっスけど……マジでやんなきゃダメっスか」
「仕方ねえな。まずは俺がやってやるよ。ああ、素材になりそうな箇所はお前さんが分かるだろ」
俺はステータスウインドウを開き、神器練精の項目からさらにオークの素材を調べる。
「ええと、代表的なのは牙っスね。それに肉とか皮とか骨……キモいっスね~。あとは身に付けてる毛皮とか人間から奪った武器、防具なんかっスね」
「ふむ。まあ、やってみるか」
伊能は短剣を取り出し、手際よく素材の剥ぎ取りをおこなっていく。
目の前に並べられた骨や肉片、古びた手甲や脛当てを前に、改めてステータスウインドウを開き、願望の力を高める。
素材が光を放ちだした。もともと持っている復元のスキルに似ている……。
素材が宙に浮き、回転しはじめる。そしてまばゆい光とともに一箇所に集まり──。
出来上がったのは斧。柄が長く、両刃のタイプ。いかにもバイキングが持ってさそうな……。
「ほう、なかなか……で、勇者殿、威力のほうはどうかな」
「ちょっと試してみるっス」
身の丈以上の岩があった。出来上がったばかりの斧を両手で持ち、そこへ振り下ろす。
岩は木っ端みじんに粉砕。かなりの威力だが──斧も刃の部分が欠けてしまっていた。
「こりゃあ、武器の性能というより勇者殿のバカ力のせいだな……それとオーク程度の素材じゃあ、それに耐えられんみたいだ」
「そうっスね。もっと強い魔物からの素材ならイイのが作れそうっス。まあ、当分は必要ないっすスけど」
願望者だろうが魔物だろうが、大抵の相手なら素手でも十分だ。素材集めなんかはグロいのさえなければ面白そうだが。
スキルの確認も終え、俺と伊能は街道へと戻る。
その後、いくつかの村を経由してブクリエの国境へ。関所があったが、伊能は許可証を見せてなんなく通過した。
「全然警戒されてないっスね。仲間が捕まってるか殺されたんなら、俺たち堂々と入るのはマズいんじゃないっスか」
「表向き、ブクリエとセペノイアは協力関係にある。今回の俺の任務も公式な訪問という形を取ってるんだぜ。捕まったにしろ死んだにしろ調査員はギルドの事は喋ってないだろう……まあ、あちらさんも特定は出来てないだろうよ」
「お互い、腹の探り合いってわけっスね」
「おうよ。セペノイアの組合長たちはブクリエとの関係は大事に思ってるが、同時に恐れてもいる。まだ誰も成し得てない世界の統一。その可能性に最も近いと言われているのがブクリエだからな」
国境からさらに三日。特に問題なくブクリエの領都へと到着した。
領都の入り口でも伊能は許可証を兵士に見せていた。
兵士のひとりが城まで案内すると申し出たが、伊能はそれを断る。
「なに、はじめてじゃねえしな。迷子になんかなんねーよ」
兵に馬を預け、そこからは徒歩で城へと向かう。
ブクリエの街……セペノイアは商人の街といった感じだったが、ここは武装した兵士や傭兵っぽい人物が多い。
店が多く並ぶ場所でも、武器や防具を扱っている所が目立つ。街全体がものものしい雰囲気だ。
「たしかに大きな街っスけど、なんだかヤな感じっスね。ゴツい人多いし。あ、願望者も何人かいるみたいっスね」
あまり顔はまじまじ見ないようにしているが、それでも時折ダダダダ、と頭に文字が打ち込まれる。
慣れてきたのか、以前よりもイラっとはしなくなってきたようだが。
「上のモンが警戒してんのは、普段から武力偏重のこの国がさらに軍備を増強しているって事だ。使えそうな願望者も雇い入れてるようだな」
「城に行くって事は、さっそくここの領主に会うってことっスか」
「ああ……その前に。勇者殿は気付いたかい? この街に入ってから尾行られてるぜ」
「えっ、マジスか。分からなかったっスね。俺らが調査員を探しに来てるのバレてるんじゃ……」
「いや……おい、振り向くなよ。そこから曲がるぞ」
伊能は自然な感じで右の路地に入る。
伊能はそのまま路地を進み、俺は物陰に隠れる。
しばらくして全身をローブに包みフードを目深に被った、いかにも怪しい二人組が路地に進入してきた。
伊能がひとりで振り向いたのを見て、慌てて引き返そうとするが、俺がその前に立ちはだかる。
「何者っスか? 場合によっちゃあ、覚悟してもらうっスよ」
俺がちょいと脅すように聞くと、背の低いほうがフードを脱ぎながら言った。
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