異世界の餓狼系男子

みくもっち

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50 北方の脅威

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 翌日──昨夜のうちに調べたリストをもとに、近場の街から行ってみることにした。

 リストにはチートスキルを持っている疑いのある願望者デザイアの名と、主に活動している街が書かれていた。
  
 総数で35名。かなりの数だ。この全員がチートスキルを持っているとは限らないが……よくこの短期間に調べあげたものだ。

 シエラが言うには、そこまで範囲は広くないとの事。ほとんどがこのブクリエ国内と周辺国。やはり勇者とチートスキル所有者は引き合う性質があるのか……。

 これなら、この領都を拠点として効率よく集めることが出来そうだ。かといっていちいち城に戻るのも癪なので、泊まるときはこの宿を利用しよう。



 それから半年間ほどかけてチートスキルを収集。
 結果的には、リストからは28のスキルを手に入れた。なかなかの精度ではないだろうか。
 旅の途中で独自に手に入れた情報から5つ。伊能の新しい情報から10。

 合計で43のチートスキル。
 今まで手に入れたものと合わせると、すでに108のうちの半分のスキルを手に入れたことになる。

 あと半分は……やはり遠方になるのだろうか。
 定期的に伊能からの連絡があるが、ブクリエ国内とその周辺ではもうチートスキルの情報はなかなか手に入らないとのことだった。

 あと変化といえば、俺の二つ名が一個増えた。
《餓狼系主人公》だけだったのだが、新たに《完全なる転生者》というのが加わった。
 
 いきなり自分の頭にダダダダ、と文字が打ち込まれたので驚いたものだ。
 シエラの説明によると、ひとつはスキル獲得によるものと、あとは領主となって多くの人々に認識されるようになったから、だそうだ。

 認識──発現する願望の力を固定するにはこれが必要だ。つまり、この願望者デザイアは強い、こんな能力が使える、と知られれば知られるほど、願望者デザイアの力は増す。

 これで俺も複数の二つ名を持つ願望者デザイア……超越者リミットブレイカーとなったのだが、もともと最強といってもいい強さなので関心は無い。

 それより、旅の途中で魔物との遭遇──やはり頻度が増えている。
 フェンリルやギガオーガ並みの超級も三体倒した。
 だが、肝心の魔王についての情報はなんら掴めていない。今の俺の力なら、どんな相手だろうと秒殺できそうなのだが……。

 領都の宿でこれからのチートスキルの集め方を話し合いつつ、シエラに魔王の事を質問する。
 今までに何度も活動期、休眠期を繰り返し、世界の危機の度に魔王と戦っているはずなのだから。

「だからさぁ、魔王ってその時その時で姿が違うから、これだっ、て言えないんだよね。メチャクチャ強いって事ぐらいしかわかんない」

「じゃあ、今まで倒したヤツはどんな姿だったんスか? 参考程度にはなるかも……」

「前回はねえ、長い三つ首に大きな翼、二本の尻尾に金色の鱗。口からは稲妻のような光線を吐く、巨大なヤツだった」

「いや……それ、キング○ドラっスね……。その前はどんなだったんスか」

「その前は……小柄で色が白くて、全体的にツルッとしてて、尻尾があって……あとは、キィエエエッ、て叫んで指から光線出す……」

「それは……フ○ーザじゃないっスかね。もう、マジメに答えてくださいっスよ」

「ホントだもん。シエラ、ウソついてないもん。疑うなら、カーラか千景に聞いてみたらいいよ」

 シエラはへそを曲げてしまった。
 ソファーに座るイルネージュに抱きつき、しばらく反応がないなと思ったら、すうすうと寝息を立ててしまっていた。

「シエラさん、最近おかしいですね。いきなり眠ってしまう事が多いような……」

 シエラの頭をイルネージュが心配そうに撫でる。  
 そういえば歩いてる途中でついてこないな、と思ったら道の真ん中で大の字になって寝ている事があった。
 この《女神》……もしかしたら次の休眠期が近づいているのではないか。

 ふいにコンコン、とノックの音。
 警戒するように俺は立ち上がるが──大丈夫だ。敵意のある相手なら、イルネージュのアイスブランドが反応しているはず。

「……僕です。楊です。伊能さんからの新しい情報を伝えに来ました」

《斉天大聖》楊永順ヤンヨンシュンだ。伊能の部下で、猫耳の美少年……。
 入ってと促すとシュバッ、と素早い動作で部屋の中へ。
 ここまではカッコいいのだが、イルネージュを見ると顔を真っ赤にしてモジモジしはじめる。
 そう、この少年は女性を見ると必ずこういう反応を示す。いい加減、知り合いには慣れてほしい。

 イルネージュにはシエラを抱きかかえながら退室してもらう。
 ここでようやく楊は落ち着きを取り戻した。

「お気遣い、感謝します。さっそく本題に……北東で勢力を伸ばしている願望者デザイア黄武迅ウォンウーシンの名は聞いた事があると思いますが……」

 その名は旅の途中でもよく耳にした。
 願望者デザイアとしてまだそこまで経っていないにも関わらず、周辺国を瞬く間にまとめあげ、脅威となる超級魔物も自ら封印して回っているらしい。
《封魔士》の二つ名の他に《英雄》とまで呼ばれるようになったそうだ。

「その黄武迅がついに北方の大領主、岩秀がんしゅうと手を結んだとの事。形式的には同盟、となっていますが事実上、黄武迅は岩秀の勢力を傘下に収めたと言われています」

「そりゃあ、スゴいっスけど……俺に関係あるっスかね」

 国とか政治の事はミリアムに任せているし、事実、俺がいなくても十分に国は機能している。
 例えその黄武迅が攻め込んできたとしても正直、どうでもいい。

「……あなたが思っている以上に、あなたはこの国にとって重要な存在。ミリアムさんも伊能さんもそう思っています……これをお受け取り下さい」

 楊は懐から布にくるまれた何かを取り出して俺に渡す。
 何か大事なモノだろうか? 高そうな布の中には手紙。これまた上質な紙に封蝋がしてある。印はブクリエ国公式のモノだ。

「この手紙……なんスか、これは」

「南方の領主、ヨハン・ランメルツ様に宛てたものです。溢忌さん……あなたが直接使者となって赴いて頂きたいのです」
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