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54 願望式人型戦闘兵器
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「ええっと……シトライゼだったっスよね。俺に力を貸してくれるんスか」
「そうです。まず、わたしの持っているチートスキルをあなたに渡しましょう。準備はいいですか」
「いいですかっ、てここでいきなり戦うつもりっスか」
「そうです。わたしの計算によると、あなたは今この場でチートスキルを得るのが最も効率よく合理的であると出ています」
シトライゼの身体からキュイイイイ、と駆動音。ハイレグボディスーツの縦に入った白いラインが光りだす。
「ちょ、ちょっと待ってほしいっス。俺、まだ願望の力が全然使えないみたいっス。まともに戦えないんスよ」
「いいえ。わたしのアナライズ機能によれば、あなたはすでに4割ほどの力を回復しています。なおも戦えないのは、その胸に提げた十字架の効果によるものですね」
俺の首にはいつの間にか十字架が……これは、ヨハンが身につけていたものと同じ。そう、シエラとイルネージュもこれを身につけていた。
十字架を引きちぎり、投げ捨てる。
なんだか身体が軽くなった感じがする。力もある程度は入るようになった。
「これ、なんだったんスか」
「あのクロワ領主、ヨハンの持つチートスキルです。あなたの力を弱めることは出来ても、意のままに操るのは無理だったようですね」
「それなら、シエラとイルネージュも操られてるって事っスね! いや、安心したっス。元に戻せるってわけっスから」
「そうです。あのお二方の十字架を外せば、元に戻るでしょう。さあ、安心したところで──行きますっ!」
ガシャッ、とシトライゼが右手首が変形──。
砲身となり、ロケット弾が発射された。
「いきなりっスか──!」
盾は破壊されている。素手のガードで耐えられるか。
衝撃。熱と痛み。だが、力はある程度取り戻している。ダメージは超再生でたちまち癒えた。
が、煙幕。視界の見えないところからダダダダンッ、と銃弾が撃ち込まれる。
数発は身体に命中。数発は剣で叩き落とした。
剣に属性付与で風属性を付け、一振り。
ゴウッ、と煙幕が晴れる。
次はこちらから──と身構えたが、シトライゼの姿がない。
ドドドドッ、と上からの銃撃。見上げると、シトライゼは宙に浮いていた。
「これはわたし本来の能力ではありません。わたしは陸戦専用なので……。この飛翔の力を攻略し、手に入れるのです。それが勇者である、あなたの試練」
シトライゼの指先から銃弾の雨。
飛び退いてかわしつつ、俺も左手の指先に集中──炎弾をドドドドンッ、と放った。
シトライゼはさらに上昇し、炎弾をかわす。あの高さ……あの高度まで届く攻撃の方法が俺にあるのか。
シトライゼは上空を飛びながらロケット弾を撃ち込んでくる。この爆撃に俺はなす術がない。
攻撃をかわしながらステータスウインドウを開く。何か対抗できるスキルはないか。
──これはどうだろうか。遠距離攻撃できそうなスキル、雷光の矢。
剣を鞘に収め、スキル発動。矢を射るような構えを取ると、バチバチィッ、と電撃の弓矢が出現。
鷹の目で飛び回るストライゼの姿を捕捉。
グウッ、と弓を引き絞り──放った。
こちらの攻撃を避けようと、ストライゼはボッ、ギュウウンッ、と空中を移動。だが無駄だ。矢には追尾の効果を付けてある。
バチィッ、とストライゼに命中。やった……落下している。いや、あの高さから落ちれば木っ端みじんになるだろう。
──この距離、届くか。
ヴンッ、と腕を突き出す。減速の魔法を放った。
ヒュウウゥ、とストライゼの落下速度が緩やかになる。
地面に無事着地すると同時に、ストライゼから光る球体が飛び出して俺に吸い込まれた。
これでチートスキル、飛翔は俺のものだ。
「さすがです、溢忌様。チートスキルを手に入れるだけでなく、わたしの身まで案じて頂けたとは」
ストライゼが無表情、棒読みセリフでこちらを褒める。
助けたのは、まだ本調子でない自分のサポートを期待しての事だ。荒木だけでなく、この国の領主とも戦わなければならない。
「領主のヨハンの目的はなんスかね。荒木を使ってなんか企んでいるんスか」
「勇者、という肩書きを利用しているのでしょう。今、諸国はどこの国につくか慎重になっています。勇者の存在は自国アピールの格好の宣伝になります。だから本物の溢忌様にいられては困るのです」
「荒木が偽物って分かっててやってんスね。シエラとイルネージュもおかしな術にかけられてるみたいだし……許せないっスね」
「ええ。我がマスター、カーラもこのような諸国を刺激するような事案を望んではいません。わたしと協力し、荒木の名が広がる前にヤツを倒しましょう」
「今のところ、俺とシトライゼしか味方がいないんスよね。なんかいい計画があるんスか」
聞くと、シトライゼの頭部のあたりからピピピ、カシャカシャ、と電子音が聞こえてきた。
おお……コンピューターでスゴい作戦を考えてるに違いない。
そしてピー、ガガガ、とシトライゼの口からレシートの紙みたいなモノが出てきた。
え……なんか昭和のなつかしロボット番組を見ているような気がしてきた。
「そうです。まず、わたしの持っているチートスキルをあなたに渡しましょう。準備はいいですか」
「いいですかっ、てここでいきなり戦うつもりっスか」
「そうです。わたしの計算によると、あなたは今この場でチートスキルを得るのが最も効率よく合理的であると出ています」
シトライゼの身体からキュイイイイ、と駆動音。ハイレグボディスーツの縦に入った白いラインが光りだす。
「ちょ、ちょっと待ってほしいっス。俺、まだ願望の力が全然使えないみたいっス。まともに戦えないんスよ」
「いいえ。わたしのアナライズ機能によれば、あなたはすでに4割ほどの力を回復しています。なおも戦えないのは、その胸に提げた十字架の効果によるものですね」
俺の首にはいつの間にか十字架が……これは、ヨハンが身につけていたものと同じ。そう、シエラとイルネージュもこれを身につけていた。
十字架を引きちぎり、投げ捨てる。
なんだか身体が軽くなった感じがする。力もある程度は入るようになった。
「これ、なんだったんスか」
「あのクロワ領主、ヨハンの持つチートスキルです。あなたの力を弱めることは出来ても、意のままに操るのは無理だったようですね」
「それなら、シエラとイルネージュも操られてるって事っスね! いや、安心したっス。元に戻せるってわけっスから」
「そうです。あのお二方の十字架を外せば、元に戻るでしょう。さあ、安心したところで──行きますっ!」
ガシャッ、とシトライゼが右手首が変形──。
砲身となり、ロケット弾が発射された。
「いきなりっスか──!」
盾は破壊されている。素手のガードで耐えられるか。
衝撃。熱と痛み。だが、力はある程度取り戻している。ダメージは超再生でたちまち癒えた。
が、煙幕。視界の見えないところからダダダダンッ、と銃弾が撃ち込まれる。
数発は身体に命中。数発は剣で叩き落とした。
剣に属性付与で風属性を付け、一振り。
ゴウッ、と煙幕が晴れる。
次はこちらから──と身構えたが、シトライゼの姿がない。
ドドドドッ、と上からの銃撃。見上げると、シトライゼは宙に浮いていた。
「これはわたし本来の能力ではありません。わたしは陸戦専用なので……。この飛翔の力を攻略し、手に入れるのです。それが勇者である、あなたの試練」
シトライゼの指先から銃弾の雨。
飛び退いてかわしつつ、俺も左手の指先に集中──炎弾をドドドドンッ、と放った。
シトライゼはさらに上昇し、炎弾をかわす。あの高さ……あの高度まで届く攻撃の方法が俺にあるのか。
シトライゼは上空を飛びながらロケット弾を撃ち込んでくる。この爆撃に俺はなす術がない。
攻撃をかわしながらステータスウインドウを開く。何か対抗できるスキルはないか。
──これはどうだろうか。遠距離攻撃できそうなスキル、雷光の矢。
剣を鞘に収め、スキル発動。矢を射るような構えを取ると、バチバチィッ、と電撃の弓矢が出現。
鷹の目で飛び回るストライゼの姿を捕捉。
グウッ、と弓を引き絞り──放った。
こちらの攻撃を避けようと、ストライゼはボッ、ギュウウンッ、と空中を移動。だが無駄だ。矢には追尾の効果を付けてある。
バチィッ、とストライゼに命中。やった……落下している。いや、あの高さから落ちれば木っ端みじんになるだろう。
──この距離、届くか。
ヴンッ、と腕を突き出す。減速の魔法を放った。
ヒュウウゥ、とストライゼの落下速度が緩やかになる。
地面に無事着地すると同時に、ストライゼから光る球体が飛び出して俺に吸い込まれた。
これでチートスキル、飛翔は俺のものだ。
「さすがです、溢忌様。チートスキルを手に入れるだけでなく、わたしの身まで案じて頂けたとは」
ストライゼが無表情、棒読みセリフでこちらを褒める。
助けたのは、まだ本調子でない自分のサポートを期待しての事だ。荒木だけでなく、この国の領主とも戦わなければならない。
「領主のヨハンの目的はなんスかね。荒木を使ってなんか企んでいるんスか」
「勇者、という肩書きを利用しているのでしょう。今、諸国はどこの国につくか慎重になっています。勇者の存在は自国アピールの格好の宣伝になります。だから本物の溢忌様にいられては困るのです」
「荒木が偽物って分かっててやってんスね。シエラとイルネージュもおかしな術にかけられてるみたいだし……許せないっスね」
「ええ。我がマスター、カーラもこのような諸国を刺激するような事案を望んではいません。わたしと協力し、荒木の名が広がる前にヤツを倒しましょう」
「今のところ、俺とシトライゼしか味方がいないんスよね。なんかいい計画があるんスか」
聞くと、シトライゼの頭部のあたりからピピピ、カシャカシャ、と電子音が聞こえてきた。
おお……コンピューターでスゴい作戦を考えてるに違いない。
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え……なんか昭和のなつかしロボット番組を見ているような気がしてきた。
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