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60 三年殺し
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これで……ようやく終わった。
目の前の黒い球体はまだ回転し、中央で渦を巻いている。
これはどうやったら消えるのか……。
顔を近づけると、そこからグアッ、と腕が伸びてきて俺の首をつかむ。
こ、れは──荒木の左腕。まだ消えてなかったのか。
ギリギリと俺の首を締め上げる。
腕を引き剥がそうとして後ずさると、荒木の顔が浮かび上がってきた。
「テメーも道連れだっ、溢忌ィィッ! テメーも地獄に落ちろぉっ!」
「いや、アンタだけっスよ。落ちるのはね」
ヒザ蹴りで荒木のアゴをかち上げた。つかんでいた手がゆるみ、俺は紫電一閃でその左腕を斬り飛ばした。
「いいぃ溢忌ィッ、テメーはっ、テメーだけはっっ!」
叫びながら再び黒い球体に吸い込まれていく荒木。
完全に見えなくなると中からボボボボボボボッ、と光る球体がいくつも飛び出してきた。
「うおっ、コイツは──」
数十個もの光る球体は俺の胸のあたりをめがけてどんどん飛び込んでくる。
これは荒木の持っていたチートスキル。
これがすべて俺のものに──。
チートスキルをすべて吸収すると、目の前の渦を巻いている黒い球体も小さくなり、やがて消滅した。
今度こそ間違いなく完全決着だ。
ガシャガシャッ、と周囲から音。
先ほど蹴散らしたクロワ軍が戻ってきたようだ。
まだ懲りないか──と身構えたが、兵達は武器を捨て、ひざまずく。勇者だと信じていた荒木が倒されたのを見て、もはや抵抗する気はないようだ。
あとはシエラとイルネージュを正気に戻すだけだ。
城の中へ入り、あの教会のような場所へ急ぐ。
中は──無人。ステンドグラス下の祭壇まで進む。
左奥に階段があった。地下へと続いているようだ。
ためらうことなく、階段を降りる。
降りた先は──俺が最初に閉じこめられていた牢獄ではない。
アーチ状の天井の通路。四方は石の壁。
蝋燭の灯りが至るところに置かれ、中は明るい。
通路は奥まで続いている。ここは納骨堂か何かだろうか。壁に石棺が埋め込まれている。
カツン、カツン、と俺の足音だけが通路に響く。
しばらく歩くと、誰かが床に倒れているのを発見した。あれは──。
「シトライゼッ、大丈夫っスか」
先行してシエラとイルネージュを探しに行っていたが、敵に襲われたのだろうか。
ぐったりして意識はないが……死んではないようだ。カシ、カシ、ウイイン、とかすかに機械音が聞こえる。
「しばらくここで待っててくださいっス」
腐るほどスキルは持っているのだが、なぜか相手の体力を回復させるスキルは持っていない。いや、そもそもこの《願望式人型戦闘兵器》に効果があるのか分からないが。
ともかくシトライゼはそのままにして先に進む。
鷹の目を発動。近くに敵が潜んでいるのは間違いない。
だが不意を突こうが待ち伏せしようが、荒木のチートスキルまで手に入れた俺に怖いものなどない。
あの柱……あの陰にひとり隠れている。
俺は無防備にそこへ近づく。
柱の陰からズアアッ、と地を這うように氷が伸びてくる。
この攻撃は──イルネージュだ。
氷は俺のヒザ辺りまでガチガチに固めたが──今さらそんな攻撃は通じない。何事もなくバキバキと砕きながら前進。
イルネージュは奥へと逃げる。スキルを使って止めようとしたが、背後に回り込む敵の気配。
振り返らずともそれはシエラだと分かった。
シエラなら問題ない。あの駄女神が俺を妨害する事など不可能。
なんらかの拍子でケガをさせてしまわないかと気を使うぐらいだ。ここは無視してイルネージュを追う。
「ふンっ、ぐっ!」
突然、肛門に激痛。俺は尻を押さえながら座り込む。
これは……どういうわけだ。いかなる攻撃も今の俺には通用しないはず。
涙目で振り返ると、人差し指を伸ばした両手の構えをしたシエラ……まさか、あれはカンチョーか。喰らったのは小学生以来だ。
「秘技、三年殺し……偽勇者め、思い知ったか」
勝ち誇ったようにニチャア、と笑う。
なぜ攻撃が通じるのか分からないが、とにかくあの胸に提げている十字架を外せば……。
俺はプルプルとヒザを震わせながら立ち上がる。
「ほう、これを受けて立ち上がるとはな。だけどシエラばっかりに注意がいってるとほら、ヤバいぞ」
ガツンッ、と後頭部に衝撃。イルネージュの攻撃だが……まただ。わずかだがダメージがある。荒木の男の拳のように物理無効を貫通するスキルでも持っているのか? いや、シエラやイルネージュにそんな能力はない。
イルネージュがアイスブランドを振り下ろす。
シエラの極悪カンチョーが再び俺の肛門を狙う。
ここで、俺はスキルを発動──時間停止。
やはり願望の力を相当使う……止められるのは2、3秒程か。だが十分だ。
俺はシエラの十字架を引きちぎり、投げ捨てる。
あとはイルネージュ。俺は胸の辺りに手を伸ばすが──おや、見当たらない。
紐の部分は見えるが、これはどうしたものか。
まごまごしてる間に時間が動き出す。
目の前の黒い球体はまだ回転し、中央で渦を巻いている。
これはどうやったら消えるのか……。
顔を近づけると、そこからグアッ、と腕が伸びてきて俺の首をつかむ。
こ、れは──荒木の左腕。まだ消えてなかったのか。
ギリギリと俺の首を締め上げる。
腕を引き剥がそうとして後ずさると、荒木の顔が浮かび上がってきた。
「テメーも道連れだっ、溢忌ィィッ! テメーも地獄に落ちろぉっ!」
「いや、アンタだけっスよ。落ちるのはね」
ヒザ蹴りで荒木のアゴをかち上げた。つかんでいた手がゆるみ、俺は紫電一閃でその左腕を斬り飛ばした。
「いいぃ溢忌ィッ、テメーはっ、テメーだけはっっ!」
叫びながら再び黒い球体に吸い込まれていく荒木。
完全に見えなくなると中からボボボボボボボッ、と光る球体がいくつも飛び出してきた。
「うおっ、コイツは──」
数十個もの光る球体は俺の胸のあたりをめがけてどんどん飛び込んでくる。
これは荒木の持っていたチートスキル。
これがすべて俺のものに──。
チートスキルをすべて吸収すると、目の前の渦を巻いている黒い球体も小さくなり、やがて消滅した。
今度こそ間違いなく完全決着だ。
ガシャガシャッ、と周囲から音。
先ほど蹴散らしたクロワ軍が戻ってきたようだ。
まだ懲りないか──と身構えたが、兵達は武器を捨て、ひざまずく。勇者だと信じていた荒木が倒されたのを見て、もはや抵抗する気はないようだ。
あとはシエラとイルネージュを正気に戻すだけだ。
城の中へ入り、あの教会のような場所へ急ぐ。
中は──無人。ステンドグラス下の祭壇まで進む。
左奥に階段があった。地下へと続いているようだ。
ためらうことなく、階段を降りる。
降りた先は──俺が最初に閉じこめられていた牢獄ではない。
アーチ状の天井の通路。四方は石の壁。
蝋燭の灯りが至るところに置かれ、中は明るい。
通路は奥まで続いている。ここは納骨堂か何かだろうか。壁に石棺が埋め込まれている。
カツン、カツン、と俺の足音だけが通路に響く。
しばらく歩くと、誰かが床に倒れているのを発見した。あれは──。
「シトライゼッ、大丈夫っスか」
先行してシエラとイルネージュを探しに行っていたが、敵に襲われたのだろうか。
ぐったりして意識はないが……死んではないようだ。カシ、カシ、ウイイン、とかすかに機械音が聞こえる。
「しばらくここで待っててくださいっス」
腐るほどスキルは持っているのだが、なぜか相手の体力を回復させるスキルは持っていない。いや、そもそもこの《願望式人型戦闘兵器》に効果があるのか分からないが。
ともかくシトライゼはそのままにして先に進む。
鷹の目を発動。近くに敵が潜んでいるのは間違いない。
だが不意を突こうが待ち伏せしようが、荒木のチートスキルまで手に入れた俺に怖いものなどない。
あの柱……あの陰にひとり隠れている。
俺は無防備にそこへ近づく。
柱の陰からズアアッ、と地を這うように氷が伸びてくる。
この攻撃は──イルネージュだ。
氷は俺のヒザ辺りまでガチガチに固めたが──今さらそんな攻撃は通じない。何事もなくバキバキと砕きながら前進。
イルネージュは奥へと逃げる。スキルを使って止めようとしたが、背後に回り込む敵の気配。
振り返らずともそれはシエラだと分かった。
シエラなら問題ない。あの駄女神が俺を妨害する事など不可能。
なんらかの拍子でケガをさせてしまわないかと気を使うぐらいだ。ここは無視してイルネージュを追う。
「ふンっ、ぐっ!」
突然、肛門に激痛。俺は尻を押さえながら座り込む。
これは……どういうわけだ。いかなる攻撃も今の俺には通用しないはず。
涙目で振り返ると、人差し指を伸ばした両手の構えをしたシエラ……まさか、あれはカンチョーか。喰らったのは小学生以来だ。
「秘技、三年殺し……偽勇者め、思い知ったか」
勝ち誇ったようにニチャア、と笑う。
なぜ攻撃が通じるのか分からないが、とにかくあの胸に提げている十字架を外せば……。
俺はプルプルとヒザを震わせながら立ち上がる。
「ほう、これを受けて立ち上がるとはな。だけどシエラばっかりに注意がいってるとほら、ヤバいぞ」
ガツンッ、と後頭部に衝撃。イルネージュの攻撃だが……まただ。わずかだがダメージがある。荒木の男の拳のように物理無効を貫通するスキルでも持っているのか? いや、シエラやイルネージュにそんな能力はない。
イルネージュがアイスブランドを振り下ろす。
シエラの極悪カンチョーが再び俺の肛門を狙う。
ここで、俺はスキルを発動──時間停止。
やはり願望の力を相当使う……止められるのは2、3秒程か。だが十分だ。
俺はシエラの十字架を引きちぎり、投げ捨てる。
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