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4 王太子妃
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それから数週間が過ぎたけど、身の周りで特に異変は起きなかった。
わたしはいつも通りに自己の鍛錬や兵の調練、狩り、領内の政務等をこなしていた。
そこへ突然の報せ。
王家からイェーリンゲン家宛に一通の手紙が届いた。
わたしはすぐにお父様の部屋に呼び出される。
いつもはベッドで横になっているお父様が身体を起こしていた。
「イルゼ、大変なことが起きた。ああ、これは奇跡ではないか」
子供のように目を輝かせ、いまにもベッドから降りてきそうな喜びようだ。
「お父様、落ち着いてください。一体、なにが?」
「この手紙だ。王家から直々に届いた。読んでみるがいい」
手紙を受け取り、一読。
そこには信じられない内容が書かれていた。
アンスバッハ侯爵令嬢を王太子妃として迎えたい、とある。
つまり、これはエアハルト様の婚約者ってこと⁉
わたし自身も卒倒しそうになり、後ろで慌てて執事が支える。
信じられない。このわたしがエアハルト様のの婚約者になるだなんて。
小説の内容と変わってるけど……。
本来なら悪役令嬢であるイルゼはアンスバッハ領の武力を誇って傲慢な態度を取っていた。
だけどわたしは不戦派に対しても真っ向から否定することはしなかったし、イジワルもしてない。
その効果なんだろうか。政略結婚っぽいところもあるだろうけど、舞踏会でのエアハルト様に与えた印象は良かったってことだ。
「こうしてはいられんぞ、イルゼ。さっそく了承の返事を。それと正式な婚約までには様々な準備がいる。ドレスもすべて新調しようではないか。おお、とうとう我がイェーリンゲン家が王家と姻戚に」
お父様の喜びようを見てわたしも嬉しい。
男子もいないイェーリンゲン家がこれ以上の栄達を望むなら、それこそ王家と姻戚関係になる他ない。
不戦派に傾いている王家との関係はそこまで良くないと思っていたところにこの一報。
お兄様やお母様の死でふさぎ込みがちだったお父様がこれで少しは元気になってくれるなら。
それに王太子妃になるってことは、完全に処刑ルート回避ってことじゃん。
運命は、小説の内容は改変できるってことだ。わたしの行動ひとつで。
小説は中盤までしか読んでないけど、本来の婚約者はマルティナだからね。
あの子には悪いけど、こっちも命がかかってるから必死だ。
わたしはこの世界でエアハルト様のお嫁さんになって幸せに暮らすんだ!
✳ ✳ ✳
その日から正式な婚約の日に向けての準備に城の中は大忙しとなった。
わたしも鍛錬や調練どころではなく、毎日のように服のサイズを測られていた。
「昨日も測ったのになんでまた測るの」
侍女のヘレナに愚痴をこぼす。
ヘレナはわたしの身体のあちこちに巻き尺を当てながら言った。
「一言にドレスと言っても、ウェディングドレスから舞踏会用に茶会用。外出用に普段着。それに下着や寝間着も新調しますので。それぞれの用途に応じて測り方も変わってくるのです。あ、お腹のところを測るときだけ引っ込めないでください。力を抜いて」
この年上のしっかり者の侍女は特に仕立てに関してはプロ級で、わたしの衣装はすべて手がけている程だ。
わたしは観念してぶふぅ~、と息を吐く。
それにしてもこんなんじゃ身体がなまる。
馬で遠乗りしたり、フリッツ相手に剣の稽古もしたい。
そう思っていた時。急に部屋のドアをせわしなく叩く音。
「イルゼ様、おられますか」
フリッツの声。めずらしく慌てているようだ。
「いる。何用か」
「北賊です。国境を越えて侵入したとの報告が」
北賊とは北のロストック人に対する蔑称だ。
ここしばらくはおとなしくしていたと思っていたのだが、また動きだしたのか。
「国境を守備していた正規兵は」
「たいした戦闘もおこなわず、多くは逃げてしまったようです。このままでは付近の村が襲われてしまうかと」
こんな時期に。
外交の効果は出てないのだろうか。わたしとしても正式な婚約前に戦なんてしたくない。
エアハルト様にも刺激しないように、とも言われていた。
でも今回はむこうから仕掛けてきたものだ。それに村が襲われでもしたら取り返しがつかない。
「わかった、わたしが出る。いますぐ用意できる騎兵の数は」
「三百。時間は少しかかりますが総勢五百は揃えられます」
「三百で先行する。お前はあとで残りの二百と歩兵を率いて来い」
「分かりました」
ドアの向こうでフリッツが駆け足で去っていく。
わたしも急いで準備しないといけない。
ヘレナに手伝ってもらって甲冑を装着する。
「ロストックの連中も無粋ですね。嫁入り前のこんな時期に」
「まあ向こうはこっちの事情なんて知らないだろうからな」
「戦に赴く格好とは、どうしてこうも地味で面白みがないのでしょうね。背中にたくさん羽根飾りとか付けてはいけないのですか?」
「う~ん。恥ずかしいし、矢のいい的になってしまうな。目立てばいいというものではない」
「なるほど。狙われやすくなるのは困りますね」
そんな会話をしながら準備は完了。
城の外ではすでに騎兵三百が整列していた。
わたしは自分の馬にまたがり、号令をかける。
目指すは北西の国境地帯。
砂埃が濛々と立ち込めている。
敵兵が確認できた。前方に騎馬。後ろに歩兵の混成部隊。ざっと見、五百ほど。
幸い、一番近い村はまだ襲われていなかった。しかし、あと少し到着が遅れていたらどうなっていたか分からない。
「このままぶつかる。突撃用意」
馬上で槍を構え、姿勢を低くする。
速度を一気に上げて近づいた。敵も気づいている。
敵の先頭とぶつかる。同時にわたしの槍は三騎をなぎ倒していた。
「赤豹だ」
「赤豹がいるぞ」
敵兵から畏れとも侮蔑とも取れるような声があがる。
わたしの赤い髪から付けられた異名だ。
さらに突っ込みながらふたりを貫いた。
わっ、と敵の隊がふたつに割れた。
味方とともにそこへ飛び込む。
数は少ないがこちらは精鋭。思うさまに暴れまわり、敵の騎馬隊を蹴散らす。
その勢いのまま後方の歩兵たちも攻撃。
わたしが槍を振るたびに血煙が舞う。
崩れだした敵部隊。だが、その中から真っ直ぐに向かってくる単騎。
角兜に毛皮を羽織った出で立ち。
この部隊を率いる敵将か。
味方の兵に手出しはするな、と言ってわたしも前に出る。
互いに名乗らない。向こうはわたしのことなんて十分に知っているだろうし、わたしもこれから首だけになる人間に興味はない。
同時に馬腹を蹴った。
数秒もしないうちに互いの間合いに。
先手は敵将。
ゴッ、と槍の穂先がわたしの顔面を狙う。
もうそれだけで大した技量でないことは分かった。
槍も使わず左の小手ではたき落とす。
敵はバランスを崩しつつ、今度は斜め下からの突き上げ。
身体を傾けてかわし、カウンター気味の一閃。
敵将の右腕は槍を握ったまま吹っ飛んでいた。
馬を走らせ、すれ違いざまに首を落とす。
それを見た敵兵たちが一斉に逃げ出す。
逃がすか、と追うとした時。
逃げ腰の敵兵たちに浴びせられる矢の雨。
敵兵たちは悲鳴をあげて次々と倒れていく。
矢を放ったのはフリッツが引き連れてきた部隊だった。
「あとの追撃は僕らにお任せください」
フリッツがそう言って横を通り過ぎていく。
いいところを持っていかれた気分だが、あとはフリッツがうまくやってくれるだろう。
ここで痛めつけておけば、しばらくは攻めてくることもない。
✳ ✳ ✳
「さすがでしたね。こちらの被害はほとんどなく、撃退することができました」
アンスバッハ領への帰り道でフリッツが話しかけてくる。
こうして実戦を積むのも兵にとってはいい経験になる。
敵は少数で、敵将も大した強さではなかったけれど。
不謹慎だけど、わたしもちょっとした気分転換にはなった。
気になるのは、エアハルト様の言いつけを破ってしまったかもしれないということ。
でも民衆を危険にさらすわけにはいかないし、ロストックを調子づかせるわけにもいかない。
侵攻が容易だと思われたら、いつ大軍が南下してくるかも分からないのだ。
それこそ大事な人たちを守れなくなる。領民や城のみんな、家族。そしてエアハルト様も。
「わたしが嫁いでいった後はお前がしっかり騎士団をまとめてみんなを守るんだぞ。分かっているのか」
王太子妃として迎えられたら、さすがに出陣なんか出来なくなる。フリッツは頼りになるヤツだが、それだけが心残りだ。
「大丈夫ですよ。それよりイルゼ様がいなくなったら城の中が静かになるでしょうね。狩りの回数も減るので近隣の獣の数も増えるでしょう」
減らず口を叩くフリッツに、言ったなと拳を振るったがひょいとかわされた。
「そんなこと言って、お前が一番さみしいんじゃないのか。古い付き合いだしな」
イジワルでそう言ったが、フリッツはそのままトコトコと馬を先に進める。
「…………に決まってるじゃないですか」
「ん? なんだって?」
「いえ、先に戻って出迎えの準備をしておきます。イルゼ様はあとからゆっくりとお戻りください」
そう言って駆けていった。
おかしなヤツだな、とわたしは馬の背に揺られながらそれを見送った。
わたしはいつも通りに自己の鍛錬や兵の調練、狩り、領内の政務等をこなしていた。
そこへ突然の報せ。
王家からイェーリンゲン家宛に一通の手紙が届いた。
わたしはすぐにお父様の部屋に呼び出される。
いつもはベッドで横になっているお父様が身体を起こしていた。
「イルゼ、大変なことが起きた。ああ、これは奇跡ではないか」
子供のように目を輝かせ、いまにもベッドから降りてきそうな喜びようだ。
「お父様、落ち着いてください。一体、なにが?」
「この手紙だ。王家から直々に届いた。読んでみるがいい」
手紙を受け取り、一読。
そこには信じられない内容が書かれていた。
アンスバッハ侯爵令嬢を王太子妃として迎えたい、とある。
つまり、これはエアハルト様の婚約者ってこと⁉
わたし自身も卒倒しそうになり、後ろで慌てて執事が支える。
信じられない。このわたしがエアハルト様のの婚約者になるだなんて。
小説の内容と変わってるけど……。
本来なら悪役令嬢であるイルゼはアンスバッハ領の武力を誇って傲慢な態度を取っていた。
だけどわたしは不戦派に対しても真っ向から否定することはしなかったし、イジワルもしてない。
その効果なんだろうか。政略結婚っぽいところもあるだろうけど、舞踏会でのエアハルト様に与えた印象は良かったってことだ。
「こうしてはいられんぞ、イルゼ。さっそく了承の返事を。それと正式な婚約までには様々な準備がいる。ドレスもすべて新調しようではないか。おお、とうとう我がイェーリンゲン家が王家と姻戚に」
お父様の喜びようを見てわたしも嬉しい。
男子もいないイェーリンゲン家がこれ以上の栄達を望むなら、それこそ王家と姻戚関係になる他ない。
不戦派に傾いている王家との関係はそこまで良くないと思っていたところにこの一報。
お兄様やお母様の死でふさぎ込みがちだったお父様がこれで少しは元気になってくれるなら。
それに王太子妃になるってことは、完全に処刑ルート回避ってことじゃん。
運命は、小説の内容は改変できるってことだ。わたしの行動ひとつで。
小説は中盤までしか読んでないけど、本来の婚約者はマルティナだからね。
あの子には悪いけど、こっちも命がかかってるから必死だ。
わたしはこの世界でエアハルト様のお嫁さんになって幸せに暮らすんだ!
✳ ✳ ✳
その日から正式な婚約の日に向けての準備に城の中は大忙しとなった。
わたしも鍛錬や調練どころではなく、毎日のように服のサイズを測られていた。
「昨日も測ったのになんでまた測るの」
侍女のヘレナに愚痴をこぼす。
ヘレナはわたしの身体のあちこちに巻き尺を当てながら言った。
「一言にドレスと言っても、ウェディングドレスから舞踏会用に茶会用。外出用に普段着。それに下着や寝間着も新調しますので。それぞれの用途に応じて測り方も変わってくるのです。あ、お腹のところを測るときだけ引っ込めないでください。力を抜いて」
この年上のしっかり者の侍女は特に仕立てに関してはプロ級で、わたしの衣装はすべて手がけている程だ。
わたしは観念してぶふぅ~、と息を吐く。
それにしてもこんなんじゃ身体がなまる。
馬で遠乗りしたり、フリッツ相手に剣の稽古もしたい。
そう思っていた時。急に部屋のドアをせわしなく叩く音。
「イルゼ様、おられますか」
フリッツの声。めずらしく慌てているようだ。
「いる。何用か」
「北賊です。国境を越えて侵入したとの報告が」
北賊とは北のロストック人に対する蔑称だ。
ここしばらくはおとなしくしていたと思っていたのだが、また動きだしたのか。
「国境を守備していた正規兵は」
「たいした戦闘もおこなわず、多くは逃げてしまったようです。このままでは付近の村が襲われてしまうかと」
こんな時期に。
外交の効果は出てないのだろうか。わたしとしても正式な婚約前に戦なんてしたくない。
エアハルト様にも刺激しないように、とも言われていた。
でも今回はむこうから仕掛けてきたものだ。それに村が襲われでもしたら取り返しがつかない。
「わかった、わたしが出る。いますぐ用意できる騎兵の数は」
「三百。時間は少しかかりますが総勢五百は揃えられます」
「三百で先行する。お前はあとで残りの二百と歩兵を率いて来い」
「分かりました」
ドアの向こうでフリッツが駆け足で去っていく。
わたしも急いで準備しないといけない。
ヘレナに手伝ってもらって甲冑を装着する。
「ロストックの連中も無粋ですね。嫁入り前のこんな時期に」
「まあ向こうはこっちの事情なんて知らないだろうからな」
「戦に赴く格好とは、どうしてこうも地味で面白みがないのでしょうね。背中にたくさん羽根飾りとか付けてはいけないのですか?」
「う~ん。恥ずかしいし、矢のいい的になってしまうな。目立てばいいというものではない」
「なるほど。狙われやすくなるのは困りますね」
そんな会話をしながら準備は完了。
城の外ではすでに騎兵三百が整列していた。
わたしは自分の馬にまたがり、号令をかける。
目指すは北西の国境地帯。
砂埃が濛々と立ち込めている。
敵兵が確認できた。前方に騎馬。後ろに歩兵の混成部隊。ざっと見、五百ほど。
幸い、一番近い村はまだ襲われていなかった。しかし、あと少し到着が遅れていたらどうなっていたか分からない。
「このままぶつかる。突撃用意」
馬上で槍を構え、姿勢を低くする。
速度を一気に上げて近づいた。敵も気づいている。
敵の先頭とぶつかる。同時にわたしの槍は三騎をなぎ倒していた。
「赤豹だ」
「赤豹がいるぞ」
敵兵から畏れとも侮蔑とも取れるような声があがる。
わたしの赤い髪から付けられた異名だ。
さらに突っ込みながらふたりを貫いた。
わっ、と敵の隊がふたつに割れた。
味方とともにそこへ飛び込む。
数は少ないがこちらは精鋭。思うさまに暴れまわり、敵の騎馬隊を蹴散らす。
その勢いのまま後方の歩兵たちも攻撃。
わたしが槍を振るたびに血煙が舞う。
崩れだした敵部隊。だが、その中から真っ直ぐに向かってくる単騎。
角兜に毛皮を羽織った出で立ち。
この部隊を率いる敵将か。
味方の兵に手出しはするな、と言ってわたしも前に出る。
互いに名乗らない。向こうはわたしのことなんて十分に知っているだろうし、わたしもこれから首だけになる人間に興味はない。
同時に馬腹を蹴った。
数秒もしないうちに互いの間合いに。
先手は敵将。
ゴッ、と槍の穂先がわたしの顔面を狙う。
もうそれだけで大した技量でないことは分かった。
槍も使わず左の小手ではたき落とす。
敵はバランスを崩しつつ、今度は斜め下からの突き上げ。
身体を傾けてかわし、カウンター気味の一閃。
敵将の右腕は槍を握ったまま吹っ飛んでいた。
馬を走らせ、すれ違いざまに首を落とす。
それを見た敵兵たちが一斉に逃げ出す。
逃がすか、と追うとした時。
逃げ腰の敵兵たちに浴びせられる矢の雨。
敵兵たちは悲鳴をあげて次々と倒れていく。
矢を放ったのはフリッツが引き連れてきた部隊だった。
「あとの追撃は僕らにお任せください」
フリッツがそう言って横を通り過ぎていく。
いいところを持っていかれた気分だが、あとはフリッツがうまくやってくれるだろう。
ここで痛めつけておけば、しばらくは攻めてくることもない。
✳ ✳ ✳
「さすがでしたね。こちらの被害はほとんどなく、撃退することができました」
アンスバッハ領への帰り道でフリッツが話しかけてくる。
こうして実戦を積むのも兵にとってはいい経験になる。
敵は少数で、敵将も大した強さではなかったけれど。
不謹慎だけど、わたしもちょっとした気分転換にはなった。
気になるのは、エアハルト様の言いつけを破ってしまったかもしれないということ。
でも民衆を危険にさらすわけにはいかないし、ロストックを調子づかせるわけにもいかない。
侵攻が容易だと思われたら、いつ大軍が南下してくるかも分からないのだ。
それこそ大事な人たちを守れなくなる。領民や城のみんな、家族。そしてエアハルト様も。
「わたしが嫁いでいった後はお前がしっかり騎士団をまとめてみんなを守るんだぞ。分かっているのか」
王太子妃として迎えられたら、さすがに出陣なんか出来なくなる。フリッツは頼りになるヤツだが、それだけが心残りだ。
「大丈夫ですよ。それよりイルゼ様がいなくなったら城の中が静かになるでしょうね。狩りの回数も減るので近隣の獣の数も増えるでしょう」
減らず口を叩くフリッツに、言ったなと拳を振るったがひょいとかわされた。
「そんなこと言って、お前が一番さみしいんじゃないのか。古い付き合いだしな」
イジワルでそう言ったが、フリッツはそのままトコトコと馬を先に進める。
「…………に決まってるじゃないですか」
「ん? なんだって?」
「いえ、先に戻って出迎えの準備をしておきます。イルゼ様はあとからゆっくりとお戻りください」
そう言って駆けていった。
おかしなヤツだな、とわたしは馬の背に揺られながらそれを見送った。
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