SRPG転生王女 〜お気に入りキャラの中から結婚相手を選びます~

みくもっち

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2 転生? 夢?

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 瞬間移動したみたいに周りの景色が一変していた。
 わたしはわけがわからないまま、周りを見渡す。

 暗く、ジメジメした狭い部屋。
 臭いもひどい。あれ、これわたしから臭ってるのかな。
 ボロボロで汚れきった布切れみたいな服を着ている。

「なにこれ、なんでこんな……って、ここどこ!? あれ、わたしの声もなんか変。わたしの声じゃない!」

 わたしの声って、こんな声優さんみたいなキレイな声じゃない。ゴホンゴホンと咳払いしながら手探りで前に進む。

 目の前には格子。まるで牢獄だ。
 わたしは格子にしがみつき、外の様子をうかがう。

 外は長い通路が伸びていた。松明の灯りで照らし出されている。

「あれ、でもここって前に一度見たような……」

 自分の十数年の短い人生の中でこんな薄気味悪いところに来たことなんてないはず。
 だけどこの既視感。わたしはここを知っている。

 突然、通路の右奥からガシャガシャと金属のこすれる音ともに中世の甲冑を着込んだ集団が通り過ぎていく。
 わたしはびっくりして格子から離れ、隅のほうにうずくまる。

 何かの撮影だろうか。コスプレにしては妙にリアルで気合入っていたな、と考えてる間に今度は通路の左奥のほう。
 激しい金属音と怒号、悲鳴。床に倒れる音。

 何? なになになに⁉

 完全にビビっていると、タタタ、と軽快な足音とともに現れたのは──白を基調とした美しい軽鎧ライトアーマーにマントをなびかせる金髪金眼の超絶美青年。

「姫、ご無事ですか⁉ 今すぐここから出します! ヴィリ!」

 美青年が呼びかけると、マントのうしろからひょこっと顔を出したのは茶髪で瞳の大きい少年。こちらもなかなかの美少年。

 ふたりの容姿にわたしがふおおお、と興奮してる間にヴィリと呼ばれた美少年がカチャカチャと格子の扉に何かを差し込んでいる。

「よっ……と、楽勝! これで開くよ」

 ガシャン、と開いた扉から入ってくるふたり。
 
「アネリーゼ姫、早くここから脱出を」

 そう呼ばれたわたしは混乱する。
 異人さんだ。どうしよう。わたし英検四級だし。っていうか、日本語話してる? え、どこかの劇団員なのかな。

「アネリーゼ姫、僕の手をお取りください。立てますか?」

 美青年に手を取られ、あれよあれよという間にわたしはそこから出て通路のほうへ。
 今までわたしが入ってた部屋を振り返って見てみる。
 マジで牢獄だ。それ以外の表現の仕様がない。

「セヴェリン王子、なんか姫様の様子がおかしいね。大丈夫なのかな」

 美青年の名はセヴェリンというらしい。って、それわたしがやってるゲームのキャラクターそのものじゃん。

 見た目はともかく声まで声優さんのイケボなのはどういうこと?

 このヴィリという少年もそうだ。海外のコスプレイヤーさんだろうか。わたしのことアネリーゼ姫って呼んでるけど……ないない! こんな日本人丸出しのわたしがあんな美少女だなんて。

「ち、違います。人違いです。マイネームイズ……あ、日本語通じるんだった。わたしは権現崎ごんげんざきかなめって名前で……」

「ゴンゲ……? いけない、姫はまだ混乱されてるようだ。ヴィリ、急いでここを出るぞ」

「了解ー。外でウルリクが待ってるからね。そこまで行けば安全でしょ」

 調子よくヴィリが言い、わたしはセヴェリンに手を引かれるまま、通路の左奥のほうへ。
 
「ひっ」

 わたしは思わず小さく悲鳴をあげた。
 床に複数の人間が倒れている。さっき通り過ぎた西洋甲冑の人たちだ。

 演技で倒れてるのだろうけど、血だまりなんかあるので妙にリアルだ。
 踏まないように乗り越えて進み、階段へ突き当たる。

 階段を上り、今度は広い通路へ出る。
 やっぱり壁や床は石造りで灯りは松明。凝ったセットだなと感心してるヒマもなく、ふたりに急かされてわたしは建物の中を進む。

 途中にも死体役の人が転がっていたけど、もう気にしない。やっぱりこれ、なんかの撮影かドッキリだ。
 カメラはどこにあるんだろうと気にしつつ、わたしは建物の外へ。

 外の景色。広大な草原、森。遠くにそびえる山々。振り返って建物を見てみれば、西洋ふうの古城。
 ここ本当に日本なんだろうか。でもやっぱりどこかで見たことがある。

 森のほうからガラガラとほろ付きの馬車が向かってくる。わたしの前で止まり、御者が飛び降りてひざまずく。
 おお、この緑髪の真面目そうな美形は……アネリーゼの忠実な騎士ウルリクではないか。再現度高いコスプレだなあと感心する。

「姫……よくぞご無事でっ……! あなたをこうやって救い出す日をどんなに待ちわびてたことか」

 肩を震わせ、むせび泣くウルリク。
 大げさだなあ。そういう演技だから仕方ないか。でもこの王女を救出するシーンって、まんまアネリーゼ戦記のオープニングじゃん。
 すでにオワコンと化したゲームを映像化するなんてどんだけヒマ……いや、情熱のなせる業か。

「姫、この中にお召し物を用意してあります。どうぞお着替えください」

 着替えねえ。たしかにこのボロ切れをいつまでも着ているわけにもいかないか。でもどんなに着飾ったとしてもわたしはわたし。ゲームの主人公みたいな美少女にはなれないっつーの。

 ここでわたしだけ素の状態で振る舞うのも気が引ける。ゲームの進行通りにご苦労、と言って幌の中へ。
 幌の中はランプの灯りで照らされていた。
 さすがにこの中までは撮影してないよね。

 用意されている衣装。予想していた通り、ゲームのアネリーゼ姫と同じものだ。
 金の装飾が施されている紅い軽鎧ライトアーマー。これ、わたしがひとりで着ろってのか……?

 四苦八苦しながらもなんとか着替え終わる。けっこうサマになってるんじゃないかな。
 短いひらひらのスカートで太ももがむき出しなのは気になるけど。

 ああ、ボサボサの髪も整えないと。
 わたしは櫛を手におや、と肩まである髪に触れる。

 わたしの髪ってこんなに長くない……はず。
 恐る恐る手鏡をのぞきこんだわたしは、驚きのあまり手鏡を放り投げ、尻もちをつく。

「姫、どうかいたしましたか。なにか物音がしましたが」

 外でウルリクの心配する声。なんでもありません、と慌てて答え、手鏡を拾い上げる。
 鏡に映った美少女。わたしじゃない。流れるような青髪に吸い込まれそうな青の瞳。牢獄に閉じ込められていたとは思えないほどの美しい白い肌。

「これ……撮影なんかじゃない。ここって本当にゲームの世界なのかも。わたしが主人公のアネリーゼ姫になってるなんて」
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