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6 追っ手
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フォルクンク帝国国境の砦を陥とし、無事祖国の大地を踏むことができたアネリーゼ姫。
しかし油断はできない。ここは帝国に支配された土地。
帝国領から追っ手の軍も派遣されているだろうし、駐屯軍と挟み撃ちにされては元も子もない。
第2章に突入。そしてマップは6。
騎兵を中心とした帝国の追っ手から逃げ切るのがこのマップのクリア条件。
あの橋を全員渡り切ってしまえばいいわけだけど。敵は機動力のある騎兵たち。歩兵中心のわたしたちは絶対に追いつかれる。
逃げながら戦うって難しそう。ゲームでのわたしはどうやってクリアしたっけ。
たしか山と川にはさまれた狭い地形まで逃げ込んで……。
そこで重歩兵ホルガーと比較的防御力の高い騎兵ウルリクが壁役で敵を足止め。
壁役に阻まれて身動きの取れない敵を弓兵エイナルと魔術士クラーアが狙い撃ちという戦法だった。
敵COMがアホだったので、敵は囲まれようが孤立しようがおかまいなしに突っ込こんできたけど。
この世界じゃどうなんだろう……。
ほらほら来た来た、もうバトルは始まってるよ!
遠くに見える橋を目指し、わたしたちは走る。
敵の数は多い。最悪なのは騎馬の機動力を活かされて回り込まれることだ。
平原を一直線に進んで橋を目指すのはヤバい。ちょっと迂回して狭い地形に誘いこまなきゃ。
「姫は先行して橋を目指してください! 護衛はホルガー殿に任せる! あとの者は僕に続け! アネリーゼ姫が逃げ切るまで全力で敵を阻止する!」
あれれれ、わたしが指示する前にセヴェリン王子が作戦決めちゃったよ。
ダメだって。このだだっぴろい場所じゃ、こっちが不利なんだって。
ああ、カーソル動かしてユニットを直接操作したい。どうしてこうも思い通りにならないのか。
ゴツイ重歩兵ホルガーに手を引かれながらわたしは逃げる。
っちょ、どうせなら側にいる護衛はセヴェリン王子か騎士ウルリクがいいのに。なんでこのホルガーなんだ。
この鼻息フンガフンガいわせて走ってるホルガー。どうひいき目に見てもイケメンではない。ゴリラだ。
このキャラだけ担当した絵師が違うんじゃないかって思わせるほど、造形が違う。
ネットで投稿されているイラストでも槍の代わりにバナナを持たせられたり、キャラの人気投票ではぶっちぎりのワーストワン。でもアネリーゼ姫は女神みたいな人だからこんなゴリラにも優しいんだよね。
ああ、セヴェリン王子たちは騎兵の集団とぶつかり、乱戦に。回復役のわたしがいなくて大丈夫なんだろうか。
そしてこのゴリラはいつまでわたしの手を握ってるんだろう。万が一、親密度が上がったらどうするつもりだ。
「姫様、このホルガーが側にいれば安心です! 決して俺から離れないでください!」
いや、黙れ。ゲームのアネリーゼ姫ならいざ知らず。わたしはイケメンにしか用がないのだ。ゴリラはバナナでも食ってろ。
もちろんアネリーゼ姫の姿をしたままそんなことを言えるはずもなく、わたしは優しくゴリラに話しかける。
「ゴリ……いえ、ホルガー。手を離してください。このまま王子たちを置き去りにしたまま逃げるわけにはいきません。あなたも彼らの援護に回ってください」
言いながら手を振りほどこうとしたが、ホルガーはますます力を込めてわたしの手を握る。いててて、このばか力、クソゴリラ。かよわいアネリーゼ姫の手を握りつぶすつもりか。
「ダメですっ! あなたが無事でなければ意味がありません! 危険なことはおやめください!」
ホルガーも頑として受け入れない。
わたしは引きずられるように橋へ向かう。そこへ2騎の騎兵が迫ってきた。
ほら、結局止められない分の敵がこっちに向かってくるじゃん。
どっちにしろ危険だってのに!
敵騎兵の狙いは当然わたしだ。
ゲームでもアネリーゼ姫が撃破されればゲームオーバーになる。ここじゃあリセットかましてセーブデータからやり直すなんて出来そうにないけど。
馬上から突き出される槍。おっとお、ホルガーが身を挺してわたしをかばった。ナイスゴリラ。
続いて繰り出された攻撃も弾き、反撃。槍に貫かれた敵は馬上から転げ落ちる。
いけない、残る1騎が背後に回り込んでいる。
ホルガーの背中に痛烈な一撃。
だけど強固な防御力をほこる重歩兵相手にそれほどダメージは与えられなかったみたい。
わたしは剣を突き出し、それに怯んだもう1騎もホルガーが叩き落とした。
やった、倒すことができた。なんか戦闘中に引きの画面になったような変な感覚したけど。
「姫様、申し訳ありません。どうか回復魔法を……」
ホルガーがキツそうな顔で頼んできた。大げさだなあ、お前そんなにダメージ受けてないだろ。回復してやるけども。
わたしは杖を取り出し、ホルガーの目の前に掲げた。
ビカアッ、と閃光がほとばしり、ホルガーは目を押さえながら転げまわる。
「うわあっ、目が……目があぁーっ! 姫様っ、目があーっ!」
あ、ゴメン。間違えて回復じゃなくてルクスの魔法使っちゃった。閃光で目を眩ませるやつね。わざとじゃないよ。
そんなことしてる間にセヴェリン王子たちがこっちへ向かってきた。
「姫、敵の大多数は倒すことができました。さらなる増援が来る前に橋まで急ぎましょう」
ふえ、すげえ。正攻法であの騎兵集団を倒したってのか。みんな傷だらけだけど。今のメンバーって、わたしがゲームでやってた時より絶対強いよね。ひとりも欠けてないし。
こうしてわたしたちはクリア条件である橋の向こう側まで行くことができた。これでマップ6はクリアだ。
帝国からの追っ手を撃退してひとまずは安心。一息つけるって場面なんだけど、ここでわたしは予期せぬイベントに遭遇することになる。
しかし油断はできない。ここは帝国に支配された土地。
帝国領から追っ手の軍も派遣されているだろうし、駐屯軍と挟み撃ちにされては元も子もない。
第2章に突入。そしてマップは6。
騎兵を中心とした帝国の追っ手から逃げ切るのがこのマップのクリア条件。
あの橋を全員渡り切ってしまえばいいわけだけど。敵は機動力のある騎兵たち。歩兵中心のわたしたちは絶対に追いつかれる。
逃げながら戦うって難しそう。ゲームでのわたしはどうやってクリアしたっけ。
たしか山と川にはさまれた狭い地形まで逃げ込んで……。
そこで重歩兵ホルガーと比較的防御力の高い騎兵ウルリクが壁役で敵を足止め。
壁役に阻まれて身動きの取れない敵を弓兵エイナルと魔術士クラーアが狙い撃ちという戦法だった。
敵COMがアホだったので、敵は囲まれようが孤立しようがおかまいなしに突っ込こんできたけど。
この世界じゃどうなんだろう……。
ほらほら来た来た、もうバトルは始まってるよ!
遠くに見える橋を目指し、わたしたちは走る。
敵の数は多い。最悪なのは騎馬の機動力を活かされて回り込まれることだ。
平原を一直線に進んで橋を目指すのはヤバい。ちょっと迂回して狭い地形に誘いこまなきゃ。
「姫は先行して橋を目指してください! 護衛はホルガー殿に任せる! あとの者は僕に続け! アネリーゼ姫が逃げ切るまで全力で敵を阻止する!」
あれれれ、わたしが指示する前にセヴェリン王子が作戦決めちゃったよ。
ダメだって。このだだっぴろい場所じゃ、こっちが不利なんだって。
ああ、カーソル動かしてユニットを直接操作したい。どうしてこうも思い通りにならないのか。
ゴツイ重歩兵ホルガーに手を引かれながらわたしは逃げる。
っちょ、どうせなら側にいる護衛はセヴェリン王子か騎士ウルリクがいいのに。なんでこのホルガーなんだ。
この鼻息フンガフンガいわせて走ってるホルガー。どうひいき目に見てもイケメンではない。ゴリラだ。
このキャラだけ担当した絵師が違うんじゃないかって思わせるほど、造形が違う。
ネットで投稿されているイラストでも槍の代わりにバナナを持たせられたり、キャラの人気投票ではぶっちぎりのワーストワン。でもアネリーゼ姫は女神みたいな人だからこんなゴリラにも優しいんだよね。
ああ、セヴェリン王子たちは騎兵の集団とぶつかり、乱戦に。回復役のわたしがいなくて大丈夫なんだろうか。
そしてこのゴリラはいつまでわたしの手を握ってるんだろう。万が一、親密度が上がったらどうするつもりだ。
「姫様、このホルガーが側にいれば安心です! 決して俺から離れないでください!」
いや、黙れ。ゲームのアネリーゼ姫ならいざ知らず。わたしはイケメンにしか用がないのだ。ゴリラはバナナでも食ってろ。
もちろんアネリーゼ姫の姿をしたままそんなことを言えるはずもなく、わたしは優しくゴリラに話しかける。
「ゴリ……いえ、ホルガー。手を離してください。このまま王子たちを置き去りにしたまま逃げるわけにはいきません。あなたも彼らの援護に回ってください」
言いながら手を振りほどこうとしたが、ホルガーはますます力を込めてわたしの手を握る。いててて、このばか力、クソゴリラ。かよわいアネリーゼ姫の手を握りつぶすつもりか。
「ダメですっ! あなたが無事でなければ意味がありません! 危険なことはおやめください!」
ホルガーも頑として受け入れない。
わたしは引きずられるように橋へ向かう。そこへ2騎の騎兵が迫ってきた。
ほら、結局止められない分の敵がこっちに向かってくるじゃん。
どっちにしろ危険だってのに!
敵騎兵の狙いは当然わたしだ。
ゲームでもアネリーゼ姫が撃破されればゲームオーバーになる。ここじゃあリセットかましてセーブデータからやり直すなんて出来そうにないけど。
馬上から突き出される槍。おっとお、ホルガーが身を挺してわたしをかばった。ナイスゴリラ。
続いて繰り出された攻撃も弾き、反撃。槍に貫かれた敵は馬上から転げ落ちる。
いけない、残る1騎が背後に回り込んでいる。
ホルガーの背中に痛烈な一撃。
だけど強固な防御力をほこる重歩兵相手にそれほどダメージは与えられなかったみたい。
わたしは剣を突き出し、それに怯んだもう1騎もホルガーが叩き落とした。
やった、倒すことができた。なんか戦闘中に引きの画面になったような変な感覚したけど。
「姫様、申し訳ありません。どうか回復魔法を……」
ホルガーがキツそうな顔で頼んできた。大げさだなあ、お前そんなにダメージ受けてないだろ。回復してやるけども。
わたしは杖を取り出し、ホルガーの目の前に掲げた。
ビカアッ、と閃光がほとばしり、ホルガーは目を押さえながら転げまわる。
「うわあっ、目が……目があぁーっ! 姫様っ、目があーっ!」
あ、ゴメン。間違えて回復じゃなくてルクスの魔法使っちゃった。閃光で目を眩ませるやつね。わざとじゃないよ。
そんなことしてる間にセヴェリン王子たちがこっちへ向かってきた。
「姫、敵の大多数は倒すことができました。さらなる増援が来る前に橋まで急ぎましょう」
ふえ、すげえ。正攻法であの騎兵集団を倒したってのか。みんな傷だらけだけど。今のメンバーって、わたしがゲームでやってた時より絶対強いよね。ひとりも欠けてないし。
こうしてわたしたちはクリア条件である橋の向こう側まで行くことができた。これでマップ6はクリアだ。
帝国からの追っ手を撃退してひとまずは安心。一息つけるって場面なんだけど、ここでわたしは予期せぬイベントに遭遇することになる。
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