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47 ミアの手に入れた力
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先行した諜報兵らの報告。王城付近や城門近くに敵は潜んでないとの事。
以前の戦いでは砦に隠れていた敵兵に包囲されたが、それもいないのは確認済だ。
わたし達は何の障害もなく城門をくぐり、城の中へ。
城の中ではさすがに敵兵がわらわらと集まってきた。
それに王の間へと続く扉が閉まろうとしている。
「姫様! ここは俺らに任せて早く中へ!」
敵兵を食い止めながらヴィリが叫ぶ。
わかった、と言いながら滑り込むように王の間へと突入。わたしと数人が中に入ったところで完全に扉が閉められた。
早くも仲間たちが分断されてしまった。ヴィリ達は大丈夫だろうか。
王の間へと入れたのはわたしとセヴェリン王子、そして神竜の巫女。げ、3人しかいないじゃん。
神竜の巫女はバカ強いけど人間同士の戦いには手を貸さないっていうし。実質、わたしとセヴェリン王子だけで戦わないといけないのか……?
王の間はやたらうす暗い。半径数メートルぐらいしか視認できない。
どこかに敵が潜んでいるのか、と警戒しながら進む。
距離的に半ばまで歩いた頃だろうか。急に四方の松明がボボボ、と明るく燃えだした。一気に闇が払われて王の間がはっきりと見渡せる。
奥の玉座には仮面を被った少年が鎮座している。その両脇にはふたりの人物。
少年はフォルクンク帝国皇帝で中身は本物のアネリーゼ姫。ふたりの人物は司祭ミアと駐屯軍最高司令官だった聖騎士フェルディナン将軍だ。
「ようこそ、権現崎かなめ。異世界からの旅人よ。わたくしを止めに来たのですね」
皇帝が玉座に座ったまま仮面を外す。黒髪に黒い瞳。美少女のような白い顔が露になる。
「なぜ大陸に戦乱を巻き起こすような事をするの? せっかく平和になろうとしていたのに。あなたは……アネリーゼ姫は誰よりも優しくて、臣下や国民の事を愛していたのに。それこそ女神のように慕われていたのに」
まっすぐに見つめてわたしは疑問をぶつける。お姫様の暮らしになんの不自由があるってんだ。こんなに綺麗で可憐な容姿。みんなにチヤホヤされてなんでも手に入る。完璧な人生じゃないか。皇帝に乗り移る必要なんてどこにあるんだ。
「……あなたには分からないでしょうね。自分の存在はおろか、この人生も世界もすべてが作り物の偽物だと知ったときの絶望なんて」
皇帝の言葉……この世界がゲームだって事に気づいている。でもどこでそれを知ったのだろうか。そもそも他人の身体に乗り移るなんてどうやって……?
ここで薄ら笑いを浮かべながら前に出てきたのはミアだ。杖でポンポンと手を叩きながら喋りはじめる。
「わたしですよ。神話や伝説に精通し、各国の公文書館にも自由に出入りできると説明したでしょう。当然各地に眠る遺跡や神殿にも学術調査の名目で入ることができます。まあ詳しい場所は省きますが、とある遺跡の地下深くで見つけたのですよ、わたしは」
「見つけた? 一体何を……」
「この世界の真理、成り立ち。すべてを改変できる力。まだ一部だけどわたしはその力を行使できる。親しい友人であったアネリーゼ姫にその事を話したのも、この世界の真実を知ってほしかったため」
やっぱりコイツが元凶だ。この世界が現実じゃなくて、自分や人生が誰かの意図で作られたものだって知ったら誰だっておかしくなってしまう。
クヌーズ先生もそれであんな事言ってたんだ。なまじ頭がいいだけに、ゲームとか仮想現実とか理解しちゃったのかもしれない。
「わたしがヤツに感じた邪悪な力の正体とはそれか。それはこの世に出してはならぬ禁忌の力。世界の崩壊を招くぞ」
神竜の巫女の言葉に、ミアは大きく頷く。
「世界の崩壊……? それこそわたしやアネリーゼ姫が望んでる結末でしょうよ。こんな偽りの世界、消えてしまえばいい。わたしにはその力がある。人の魂を入れ替えたり、強大な魔力を得たり……権現崎かなめ。あっち側の人間であるあなたがアネリーゼ姫に宿るのは計算外でしたが」
ここでミアの杖がブンッ、と振られた。
杖の先から放たれた閃光が神竜の巫女にヒット。彼女はバチバチと放電するような球体に閉じ込められた。
「わたしの力は徐々に強くなっている。神竜の巫女、あなたを封じ込められるくらいにね。そこでおとなしく見ておきなさい」
球体の中から神竜の巫女が何か呼びかけているが、声も届かない。
拳や蹴りを放っても球体はビクともしなかった。こんな力、やっぱり異常だ。ミアの手に入れた力というのはこの世界の根源──ゲームのプログラムに関わるものかもしれない。
深紅の烈槍クリムゾンテイルを携えたフェルディナン将軍がゆっくり近づいてくる。この人もちゃんと理解しているのだろうか。協力している皇帝やミアはこの世界を無くそうとしているんだって。
「アネリーゼ姫、下がって。あの男との決着は僕が」
神剣ゲフィオンを構えながらセヴェリン王子も前に出る。
ああ、この男たちは世界が偽物だとか崩壊するとかは二の次なのかも。ゲームのキャラクターとして戦うことが最優先なんだ。
「いくぞっ」
離れた位置からフェルディナン将軍の突き。
穂先から飛び出た炎弾。セヴェリン王子は横っ飛びでかわす。
この戦い、間接攻撃ができないセヴェリン王子が不利だ。いくらゲフィオンを持っていたとしても。わたしが加勢が入るべきだ。
でもわたしのほうにも聖光矢が飛んでくる。ミアめ、わたしに手出しさせないつもりか。
「権現崎かなめ。あなたは本来ここにいてはならないイレギュラーな存在。死んだら元の世界に戻れるのかしら? 試してみたらどう?」
恐ろしいことを言いながらバンバン攻撃魔法を飛ばしてくる。くそお、これじゃセヴェリン王子を助けるどころじゃない……!
以前の戦いでは砦に隠れていた敵兵に包囲されたが、それもいないのは確認済だ。
わたし達は何の障害もなく城門をくぐり、城の中へ。
城の中ではさすがに敵兵がわらわらと集まってきた。
それに王の間へと続く扉が閉まろうとしている。
「姫様! ここは俺らに任せて早く中へ!」
敵兵を食い止めながらヴィリが叫ぶ。
わかった、と言いながら滑り込むように王の間へと突入。わたしと数人が中に入ったところで完全に扉が閉められた。
早くも仲間たちが分断されてしまった。ヴィリ達は大丈夫だろうか。
王の間へと入れたのはわたしとセヴェリン王子、そして神竜の巫女。げ、3人しかいないじゃん。
神竜の巫女はバカ強いけど人間同士の戦いには手を貸さないっていうし。実質、わたしとセヴェリン王子だけで戦わないといけないのか……?
王の間はやたらうす暗い。半径数メートルぐらいしか視認できない。
どこかに敵が潜んでいるのか、と警戒しながら進む。
距離的に半ばまで歩いた頃だろうか。急に四方の松明がボボボ、と明るく燃えだした。一気に闇が払われて王の間がはっきりと見渡せる。
奥の玉座には仮面を被った少年が鎮座している。その両脇にはふたりの人物。
少年はフォルクンク帝国皇帝で中身は本物のアネリーゼ姫。ふたりの人物は司祭ミアと駐屯軍最高司令官だった聖騎士フェルディナン将軍だ。
「ようこそ、権現崎かなめ。異世界からの旅人よ。わたくしを止めに来たのですね」
皇帝が玉座に座ったまま仮面を外す。黒髪に黒い瞳。美少女のような白い顔が露になる。
「なぜ大陸に戦乱を巻き起こすような事をするの? せっかく平和になろうとしていたのに。あなたは……アネリーゼ姫は誰よりも優しくて、臣下や国民の事を愛していたのに。それこそ女神のように慕われていたのに」
まっすぐに見つめてわたしは疑問をぶつける。お姫様の暮らしになんの不自由があるってんだ。こんなに綺麗で可憐な容姿。みんなにチヤホヤされてなんでも手に入る。完璧な人生じゃないか。皇帝に乗り移る必要なんてどこにあるんだ。
「……あなたには分からないでしょうね。自分の存在はおろか、この人生も世界もすべてが作り物の偽物だと知ったときの絶望なんて」
皇帝の言葉……この世界がゲームだって事に気づいている。でもどこでそれを知ったのだろうか。そもそも他人の身体に乗り移るなんてどうやって……?
ここで薄ら笑いを浮かべながら前に出てきたのはミアだ。杖でポンポンと手を叩きながら喋りはじめる。
「わたしですよ。神話や伝説に精通し、各国の公文書館にも自由に出入りできると説明したでしょう。当然各地に眠る遺跡や神殿にも学術調査の名目で入ることができます。まあ詳しい場所は省きますが、とある遺跡の地下深くで見つけたのですよ、わたしは」
「見つけた? 一体何を……」
「この世界の真理、成り立ち。すべてを改変できる力。まだ一部だけどわたしはその力を行使できる。親しい友人であったアネリーゼ姫にその事を話したのも、この世界の真実を知ってほしかったため」
やっぱりコイツが元凶だ。この世界が現実じゃなくて、自分や人生が誰かの意図で作られたものだって知ったら誰だっておかしくなってしまう。
クヌーズ先生もそれであんな事言ってたんだ。なまじ頭がいいだけに、ゲームとか仮想現実とか理解しちゃったのかもしれない。
「わたしがヤツに感じた邪悪な力の正体とはそれか。それはこの世に出してはならぬ禁忌の力。世界の崩壊を招くぞ」
神竜の巫女の言葉に、ミアは大きく頷く。
「世界の崩壊……? それこそわたしやアネリーゼ姫が望んでる結末でしょうよ。こんな偽りの世界、消えてしまえばいい。わたしにはその力がある。人の魂を入れ替えたり、強大な魔力を得たり……権現崎かなめ。あっち側の人間であるあなたがアネリーゼ姫に宿るのは計算外でしたが」
ここでミアの杖がブンッ、と振られた。
杖の先から放たれた閃光が神竜の巫女にヒット。彼女はバチバチと放電するような球体に閉じ込められた。
「わたしの力は徐々に強くなっている。神竜の巫女、あなたを封じ込められるくらいにね。そこでおとなしく見ておきなさい」
球体の中から神竜の巫女が何か呼びかけているが、声も届かない。
拳や蹴りを放っても球体はビクともしなかった。こんな力、やっぱり異常だ。ミアの手に入れた力というのはこの世界の根源──ゲームのプログラムに関わるものかもしれない。
深紅の烈槍クリムゾンテイルを携えたフェルディナン将軍がゆっくり近づいてくる。この人もちゃんと理解しているのだろうか。協力している皇帝やミアはこの世界を無くそうとしているんだって。
「アネリーゼ姫、下がって。あの男との決着は僕が」
神剣ゲフィオンを構えながらセヴェリン王子も前に出る。
ああ、この男たちは世界が偽物だとか崩壊するとかは二の次なのかも。ゲームのキャラクターとして戦うことが最優先なんだ。
「いくぞっ」
離れた位置からフェルディナン将軍の突き。
穂先から飛び出た炎弾。セヴェリン王子は横っ飛びでかわす。
この戦い、間接攻撃ができないセヴェリン王子が不利だ。いくらゲフィオンを持っていたとしても。わたしが加勢が入るべきだ。
でもわたしのほうにも聖光矢が飛んでくる。ミアめ、わたしに手出しさせないつもりか。
「権現崎かなめ。あなたは本来ここにいてはならないイレギュラーな存在。死んだら元の世界に戻れるのかしら? 試してみたらどう?」
恐ろしいことを言いながらバンバン攻撃魔法を飛ばしてくる。くそお、これじゃセヴェリン王子を助けるどころじゃない……!
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