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48 異形
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ミアの聖光矢。頑丈な床や柱に穴を空けるほど威力が上がってきている。
まともに喰らえば相当なダメージを受けてしまうだろう。
連続で攻撃しつつ、隙あらば極大聖光線を放つつもりだ。
今度は神竜の巫女に助けてもらえない。
ミアの魔法の合間を縫って、わたしも睡眠や閃光で対抗。
もちろん魔法の耐性が強いミアにこんなのが効くはずないけど、集中を乱すことぐらいはできる。
この魔法の応酬の間に隙を見つけて──あっ、わたしの杖が壊れちゃった!
連戦が続いたから使用回数限界だったんだ!
ミアが勝利を確信したように笑みを浮かべる。
「突入前に武器の点検もしてなかったの? 間抜けなプレイヤーね、権現崎みさき」
ミアがそう言って杖を突き出す。
だがミアの杖も連続使用により先からボロボロと崩れた。
「しまった、こんな時に」
急いで新しい杖を取り出そうとするミア。
させるか、とわたしは走りながら剣を抜く。間に合うか。
お互いの身体が交差。ミアが新たに取り出した杖は真っ二つになり、床に落ちる。
わたしは振り返りざま、剣の柄でミアを打ち据えた。
がっ、と呻きながらミアは倒れこんだ。
もう杖もないようだし、無力化したも同然だろう。
そういえばセヴェリン王子は。
セヴェリン王子とフェルディナン将軍の戦いはまだ続いている。
やはりあの魔法武器に手こずっているようだ。
セヴェリン王子は身体のあちこちにダメージを負っている。
わたしが助っ人に加わろうと近づくが、セヴェリン王子は強い口調でそれを断る。
「ここは僕ひとりで決着をつける! これは一対一の勝負なんだ」
この世界の命運がかかってるのに、なに強情な事言ってるんだろ。
でも正々堂々と戦いたいってのはなんとなく分かる。
わたしはセヴェリン王子の意思を尊重して戦いを見守ることに決めた。
ゴッ、ゴアッ、と飛ぶ連続の炎弾。
なんとかかわしているが、もう体力の限界が近いんじゃないだろうか。足元がふらついている。
あっ、とうとうセヴェリン王子にまともに当たっちゃった!
炎に包まれ、膝をつくセヴェリン王子。
こんなのもう見てるだけのわけにはいかない。
トドメとばかりにフェルディナン将軍も飛び込む。
その時──燃えさかる炎を断ち切って踏み込むセヴェリン王子の姿。
「ぬうっ⁉」
とっさに槍で受けるが、槍もろともフェルディナン将軍は袈裟懸けに斬られていた。
「ぐ……ここまでか。帝国に……栄光あれ」
ゲームと同じ最期の言葉。フェルディナン将軍は崩れ落ちる。
セヴェリン王子も剣を振り下ろしたまま、前のめりに倒れた。
ああ、ひどい火傷だ。神剣ゲフィオンのおかげで炎に対する抵抗力はあったみたいだけど。
わたしはさっそく回復させようと杖を取り出す。
だけど……やば、回復の杖も壊れちゃってるよ。
わたしのバカ、ホントにプレイヤー失格だ。
回復とか支援ぐらいでしか役に立たないのに。
カツ、カツ、と足音が近づいてくる。
皇帝だ。正確には皇帝の姿をした本物のアネリーゼ姫。
手にはロスキレ王国の神剣グルヴェイグが握られている。
「終わりにしましょう。あなたも、わたくしも。この世界も。偽りの人生も作られた世界もいらない。わたくしはわたくしの意思ですべてを終わらせるのです」
グルヴェイグを振り上げる皇帝。
わたしも剣を構える。
ガキッ、とただの一撃。触れただけでわたしの剣のほうが折れてしまった。
杖もないし、わたしは完全に丸腰。
わたしは頭をフル回転させてどうにか時間を稼ごうとする。
「待って、あなたが皇帝の中に入ったなら、元々の皇帝の魂はどこにいったの? 入れ替わるのなら、このアネリーゼ姫の中に入ってなきゃおかしいでしょう」
わたしの突然の問いに皇帝の動きが止まる。
だがそれは一瞬だ。再び剣を振り上げる。
「そんなの……もう関係ないでしょう! わたくしはこの世界に復讐するのです! どうせみんな偽物、嘘っぱちの世界なんだから!」
振り下ろされた剣がわたしの眉間に──。
打ち込まれることはなかった。うしろから神竜の巫女が羽交い締めにしている。
「どれ、やっとあの球から出られたわ。む、暴れるな」
神竜の巫女は軽く手刀を当てて皇帝を気絶させる。
ふう、時間差はあったけどミアを倒したからビリビリの球体から出られたわけね。まぐれだけど助かった。
「あれ、でも人間同士の戦いには手を貸さないって……」
「む、聞くな。今回だけだ。特別にな。他言するなよ」
照れたように鼻をかきながら神竜の巫女が答える。
ああ、これでやっと……。
ロスキレの国も元通りになる。帝国軍も追い出して。
もうこっちから攻める事もしない。本当に和平を結んで、完全に争いを無くすんだ。
作られたゲームの世界でもいいじゃないか。
この世界には本物みたいにたくさんの人が住んでいて、みんなそれぞれの人生があって……。
みんな大事なわたしの仲間だ。本物だとかゲームの人だとか関係ない。
クリアして何年経ったって絶対に忘れるもんか。
もし、元の世界に戻ったとしても。
ヴヴンッ──。
聞いたことのないような異音。
なんだ、空間が……歪んで見える。
そしてスローモーションのように吹っ飛んでいく神竜の巫女。
身体に大穴が空いて……一体何が。
壁に叩きつけられる神竜の巫女。
床にドサリと落ちてピクリとも動かない。
ザザッ、ザッ、と玉座や壁がバグったゲームみたいにノイズが走る。
「縺翫o繧翫↓縺吶kッ! 縺?▽繧上j縺ョ縺帙°縺?rッ!」
なに? わけのわからない叫び声。
床が隆起して地震のように全体が揺れている。
わたしは振り返る。
ミア……その顔。目が大きく見開いて空洞のような暗黒をのぞかせている。
口もぽっかりと空いたような黒い穴。そこからひどくザラついた声が漏れ出ている。
「縺励?縺励s縺ァ縺阪∴繧ッッ!」
真っ黒な影をまといながらミアが襲いかかってきた。
まともに喰らえば相当なダメージを受けてしまうだろう。
連続で攻撃しつつ、隙あらば極大聖光線を放つつもりだ。
今度は神竜の巫女に助けてもらえない。
ミアの魔法の合間を縫って、わたしも睡眠や閃光で対抗。
もちろん魔法の耐性が強いミアにこんなのが効くはずないけど、集中を乱すことぐらいはできる。
この魔法の応酬の間に隙を見つけて──あっ、わたしの杖が壊れちゃった!
連戦が続いたから使用回数限界だったんだ!
ミアが勝利を確信したように笑みを浮かべる。
「突入前に武器の点検もしてなかったの? 間抜けなプレイヤーね、権現崎みさき」
ミアがそう言って杖を突き出す。
だがミアの杖も連続使用により先からボロボロと崩れた。
「しまった、こんな時に」
急いで新しい杖を取り出そうとするミア。
させるか、とわたしは走りながら剣を抜く。間に合うか。
お互いの身体が交差。ミアが新たに取り出した杖は真っ二つになり、床に落ちる。
わたしは振り返りざま、剣の柄でミアを打ち据えた。
がっ、と呻きながらミアは倒れこんだ。
もう杖もないようだし、無力化したも同然だろう。
そういえばセヴェリン王子は。
セヴェリン王子とフェルディナン将軍の戦いはまだ続いている。
やはりあの魔法武器に手こずっているようだ。
セヴェリン王子は身体のあちこちにダメージを負っている。
わたしが助っ人に加わろうと近づくが、セヴェリン王子は強い口調でそれを断る。
「ここは僕ひとりで決着をつける! これは一対一の勝負なんだ」
この世界の命運がかかってるのに、なに強情な事言ってるんだろ。
でも正々堂々と戦いたいってのはなんとなく分かる。
わたしはセヴェリン王子の意思を尊重して戦いを見守ることに決めた。
ゴッ、ゴアッ、と飛ぶ連続の炎弾。
なんとかかわしているが、もう体力の限界が近いんじゃないだろうか。足元がふらついている。
あっ、とうとうセヴェリン王子にまともに当たっちゃった!
炎に包まれ、膝をつくセヴェリン王子。
こんなのもう見てるだけのわけにはいかない。
トドメとばかりにフェルディナン将軍も飛び込む。
その時──燃えさかる炎を断ち切って踏み込むセヴェリン王子の姿。
「ぬうっ⁉」
とっさに槍で受けるが、槍もろともフェルディナン将軍は袈裟懸けに斬られていた。
「ぐ……ここまでか。帝国に……栄光あれ」
ゲームと同じ最期の言葉。フェルディナン将軍は崩れ落ちる。
セヴェリン王子も剣を振り下ろしたまま、前のめりに倒れた。
ああ、ひどい火傷だ。神剣ゲフィオンのおかげで炎に対する抵抗力はあったみたいだけど。
わたしはさっそく回復させようと杖を取り出す。
だけど……やば、回復の杖も壊れちゃってるよ。
わたしのバカ、ホントにプレイヤー失格だ。
回復とか支援ぐらいでしか役に立たないのに。
カツ、カツ、と足音が近づいてくる。
皇帝だ。正確には皇帝の姿をした本物のアネリーゼ姫。
手にはロスキレ王国の神剣グルヴェイグが握られている。
「終わりにしましょう。あなたも、わたくしも。この世界も。偽りの人生も作られた世界もいらない。わたくしはわたくしの意思ですべてを終わらせるのです」
グルヴェイグを振り上げる皇帝。
わたしも剣を構える。
ガキッ、とただの一撃。触れただけでわたしの剣のほうが折れてしまった。
杖もないし、わたしは完全に丸腰。
わたしは頭をフル回転させてどうにか時間を稼ごうとする。
「待って、あなたが皇帝の中に入ったなら、元々の皇帝の魂はどこにいったの? 入れ替わるのなら、このアネリーゼ姫の中に入ってなきゃおかしいでしょう」
わたしの突然の問いに皇帝の動きが止まる。
だがそれは一瞬だ。再び剣を振り上げる。
「そんなの……もう関係ないでしょう! わたくしはこの世界に復讐するのです! どうせみんな偽物、嘘っぱちの世界なんだから!」
振り下ろされた剣がわたしの眉間に──。
打ち込まれることはなかった。うしろから神竜の巫女が羽交い締めにしている。
「どれ、やっとあの球から出られたわ。む、暴れるな」
神竜の巫女は軽く手刀を当てて皇帝を気絶させる。
ふう、時間差はあったけどミアを倒したからビリビリの球体から出られたわけね。まぐれだけど助かった。
「あれ、でも人間同士の戦いには手を貸さないって……」
「む、聞くな。今回だけだ。特別にな。他言するなよ」
照れたように鼻をかきながら神竜の巫女が答える。
ああ、これでやっと……。
ロスキレの国も元通りになる。帝国軍も追い出して。
もうこっちから攻める事もしない。本当に和平を結んで、完全に争いを無くすんだ。
作られたゲームの世界でもいいじゃないか。
この世界には本物みたいにたくさんの人が住んでいて、みんなそれぞれの人生があって……。
みんな大事なわたしの仲間だ。本物だとかゲームの人だとか関係ない。
クリアして何年経ったって絶対に忘れるもんか。
もし、元の世界に戻ったとしても。
ヴヴンッ──。
聞いたことのないような異音。
なんだ、空間が……歪んで見える。
そしてスローモーションのように吹っ飛んでいく神竜の巫女。
身体に大穴が空いて……一体何が。
壁に叩きつけられる神竜の巫女。
床にドサリと落ちてピクリとも動かない。
ザザッ、ザッ、と玉座や壁がバグったゲームみたいにノイズが走る。
「縺翫o繧翫↓縺吶kッ! 縺?▽繧上j縺ョ縺帙°縺?rッ!」
なに? わけのわからない叫び声。
床が隆起して地震のように全体が揺れている。
わたしは振り返る。
ミア……その顔。目が大きく見開いて空洞のような暗黒をのぞかせている。
口もぽっかりと空いたような黒い穴。そこからひどくザラついた声が漏れ出ている。
「縺励?縺励s縺ァ縺阪∴繧ッッ!」
真っ黒な影をまといながらミアが襲いかかってきた。
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