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第4章 創作の力
3 2体のS級魔族
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包帯の魔族が作った結界内。
葵は魔導書が使えなくなったが、玉響には影響がないようだった。
扇子を横に薙ぐと、バラバラッと複数のボロい和傘が散らばる。
玉響の能力、【鬼兵召喚】。
喚び出したのはひとつ目に長い舌をベロッと出した妖、からかさ小僧。
バッ、と傘が開くと回転しながら包帯の魔族へ向かっていった。
包帯の魔族は後退、そして跳躍してかわすが、からかさ小僧は高速で追尾。
次々とぶつかり、通りすぎる。
包帯の魔族の身体に切り傷がいくつも入った。
からかさ小僧の傘の縁には刃物が仕込まれていた。
通りすぎたからかさ小僧は旋回し、さらに襲いかかる。
包帯の魔族は着地と同時に両手をあげた。
縛られた生存者のふたりがぐわっと持ち上がり、からかさ小僧たちのほうへ飛んでいく。
衝突の寸前にふたりの生存者は爆発。その血や肉片を浴びたからかさ小僧たちはぐずぐずに溶けて消滅した。
「ダメだっ、玉響! それ以上生存者を殺させるなっ!」
「とは言ってものう、ヌシ様。呪術によって支配された者を救うすべを妾は持たぬ。あの派手な退魔師なら可能かもしれぬが」
桐生カエデか──。しかし、敵の呪術によって新たな召喚はできない。
フラつきながら立ち上がり、葵は考える。
術者自体を倒すのがベストだが、ヤツに危害を加えようとすれば生存者がまた犠牲になる。かといってこのまま手を出さなくても結界は同じ。
もう1体のS級魔族も接近している。
そうこうしてる間にまた生存者のひとりの身体が浮き上がった。
「フザけるなよ、お前らっ……人の命をなんだと思って……」
人の命を贄として呪術を行使する敵。
怒りが込み上げてきた葵は短剣を取り出す。
魔導書は封じられたが、まだ短剣は──使える。柄にはめられた青い宝石が光を放つ。
「注意を引くことぐらいはできるはずだ。その隙に頼むぞ、玉響」
包帯の魔族に向かって左側から回り込むように近づく葵。
包帯の魔族の視線はそちらへ向けられ、浮いた生存者の身体もぴたりと止まる。
「ヌシ様よ、無茶はいかんぞ。危なっかしいのう」
すぐに玉響は輪入道を召喚。炎の車輪が猛然と突進。
包帯の魔族へ激突。ギャギャギャ、と回転して魔族の身体を削り、燃やす。
浮いていた生存者は地面の上に落ちた。動いているので命に別状はなさそうだった。
包帯の魔族は燃え上がりながらも両手で輪入道を挟み、それを持ち上げた。
そしてサッカーのスローインのように玉響へ向けて投げ返す。
「ほ、あじな真似を」
玉響がすっ、と扇子の先を向けただけで輪入道は静止。そして今度は甲冑のS級魔族のほうへと突進。
甲冑の魔族は戦鎚を振り上げ──一撃。
輪入道は叩き潰され、下の石畳も粉砕。まわりの砂利も吹き飛んだ。
グラグラと地面が揺れて葵はよろめく。
それは包帯の魔族も同じだ。
宙に浮いている玉響には影響がない。扇子をススッと動かして翼を持つ妖怪、天狗を召喚。
5体の天狗は疾風のような速さですまき状態の生存者たちのもとへ。
それぞれ抱えて玉響の後方へ運ぶ。結界の外までは運ぶことはできないが、これならもう包帯の魔族への攻撃をためらう必要はない。
「その人間どもは俺のモノだ……返せ」
ボソボソと包帯の魔族がしゃべりながら近づいてくる。玉響の攻撃によってダメージを受けていたはずだが、見たところキズひとつない。
「ほう……面白いのう。異界の物の怪もなかなかやるものよ。貴様、名は」
「ガネストラス……。おい、返せよ。俺の人間……」
ガネストラスと名乗った魔族はフラフラ歩きながら生存者のほうへ向かおうとしている。呪術で支配したとはいえ、離れた位置からでは生存者を操ることができないためか。
もちろんそれを玉響が見過ごすはずはない。
「イカれておるのう。敵の目の前でまるで無防備……細切れにされたいか」
玉響が扇子の先を向けると、天狗5体の一斉攻撃。羽団扇から旋風を巻き起こし、ガネストラスをズタズタに切り裂く。
「ホホホ、いい気味よのう。苦痛に歪む顔が拝めぬのは残念じゃが」
玉響の高笑いが響く中、葵がハッと気付いて叫ぶ。
「玉響っ! 後ろだっ!」
いつの間にか甲冑の魔族が玉響の真後ろに。すでに戦鎚を振り上げた状態。
玉響が振り向く前に──強烈な破壊音と揺れ。石畳の破片と砂利がまき散らされる。
「玉響っ……!」
よろめきながら葵は立ちこめる砂埃の中に呼びかける。
砂埃が晴れ、そこから見えたのは玉響の影が立体的に伸びて魔族の戦鎚を受け止めている姿。
その影は次第に大柄な武者の姿を形どる。大鬼の武者、鬼神大嶽丸。
大太刀で戦鎚を受け止めている──どころか押し返そうとしている。甲冑の魔族の足元に亀裂が入る。
「舐めるでないぞ、異界の物の怪ども。ヌシ様が見ている前では妾は無敵じゃ」
天狗たちに切り裂かれたガネストラスが地面を転がり、さらに天狗たちの追撃。上から高下駄でメッタ蹴りに。
戦鎚を完全に押し返した大嶽丸は上段より豪快な唐竹割り。甲冑の魔族は受け損ね、その肩に刃が深くめり込んだ。
葵は魔導書が使えなくなったが、玉響には影響がないようだった。
扇子を横に薙ぐと、バラバラッと複数のボロい和傘が散らばる。
玉響の能力、【鬼兵召喚】。
喚び出したのはひとつ目に長い舌をベロッと出した妖、からかさ小僧。
バッ、と傘が開くと回転しながら包帯の魔族へ向かっていった。
包帯の魔族は後退、そして跳躍してかわすが、からかさ小僧は高速で追尾。
次々とぶつかり、通りすぎる。
包帯の魔族の身体に切り傷がいくつも入った。
からかさ小僧の傘の縁には刃物が仕込まれていた。
通りすぎたからかさ小僧は旋回し、さらに襲いかかる。
包帯の魔族は着地と同時に両手をあげた。
縛られた生存者のふたりがぐわっと持ち上がり、からかさ小僧たちのほうへ飛んでいく。
衝突の寸前にふたりの生存者は爆発。その血や肉片を浴びたからかさ小僧たちはぐずぐずに溶けて消滅した。
「ダメだっ、玉響! それ以上生存者を殺させるなっ!」
「とは言ってものう、ヌシ様。呪術によって支配された者を救うすべを妾は持たぬ。あの派手な退魔師なら可能かもしれぬが」
桐生カエデか──。しかし、敵の呪術によって新たな召喚はできない。
フラつきながら立ち上がり、葵は考える。
術者自体を倒すのがベストだが、ヤツに危害を加えようとすれば生存者がまた犠牲になる。かといってこのまま手を出さなくても結界は同じ。
もう1体のS級魔族も接近している。
そうこうしてる間にまた生存者のひとりの身体が浮き上がった。
「フザけるなよ、お前らっ……人の命をなんだと思って……」
人の命を贄として呪術を行使する敵。
怒りが込み上げてきた葵は短剣を取り出す。
魔導書は封じられたが、まだ短剣は──使える。柄にはめられた青い宝石が光を放つ。
「注意を引くことぐらいはできるはずだ。その隙に頼むぞ、玉響」
包帯の魔族に向かって左側から回り込むように近づく葵。
包帯の魔族の視線はそちらへ向けられ、浮いた生存者の身体もぴたりと止まる。
「ヌシ様よ、無茶はいかんぞ。危なっかしいのう」
すぐに玉響は輪入道を召喚。炎の車輪が猛然と突進。
包帯の魔族へ激突。ギャギャギャ、と回転して魔族の身体を削り、燃やす。
浮いていた生存者は地面の上に落ちた。動いているので命に別状はなさそうだった。
包帯の魔族は燃え上がりながらも両手で輪入道を挟み、それを持ち上げた。
そしてサッカーのスローインのように玉響へ向けて投げ返す。
「ほ、あじな真似を」
玉響がすっ、と扇子の先を向けただけで輪入道は静止。そして今度は甲冑のS級魔族のほうへと突進。
甲冑の魔族は戦鎚を振り上げ──一撃。
輪入道は叩き潰され、下の石畳も粉砕。まわりの砂利も吹き飛んだ。
グラグラと地面が揺れて葵はよろめく。
それは包帯の魔族も同じだ。
宙に浮いている玉響には影響がない。扇子をススッと動かして翼を持つ妖怪、天狗を召喚。
5体の天狗は疾風のような速さですまき状態の生存者たちのもとへ。
それぞれ抱えて玉響の後方へ運ぶ。結界の外までは運ぶことはできないが、これならもう包帯の魔族への攻撃をためらう必要はない。
「その人間どもは俺のモノだ……返せ」
ボソボソと包帯の魔族がしゃべりながら近づいてくる。玉響の攻撃によってダメージを受けていたはずだが、見たところキズひとつない。
「ほう……面白いのう。異界の物の怪もなかなかやるものよ。貴様、名は」
「ガネストラス……。おい、返せよ。俺の人間……」
ガネストラスと名乗った魔族はフラフラ歩きながら生存者のほうへ向かおうとしている。呪術で支配したとはいえ、離れた位置からでは生存者を操ることができないためか。
もちろんそれを玉響が見過ごすはずはない。
「イカれておるのう。敵の目の前でまるで無防備……細切れにされたいか」
玉響が扇子の先を向けると、天狗5体の一斉攻撃。羽団扇から旋風を巻き起こし、ガネストラスをズタズタに切り裂く。
「ホホホ、いい気味よのう。苦痛に歪む顔が拝めぬのは残念じゃが」
玉響の高笑いが響く中、葵がハッと気付いて叫ぶ。
「玉響っ! 後ろだっ!」
いつの間にか甲冑の魔族が玉響の真後ろに。すでに戦鎚を振り上げた状態。
玉響が振り向く前に──強烈な破壊音と揺れ。石畳の破片と砂利がまき散らされる。
「玉響っ……!」
よろめきながら葵は立ちこめる砂埃の中に呼びかける。
砂埃が晴れ、そこから見えたのは玉響の影が立体的に伸びて魔族の戦鎚を受け止めている姿。
その影は次第に大柄な武者の姿を形どる。大鬼の武者、鬼神大嶽丸。
大太刀で戦鎚を受け止めている──どころか押し返そうとしている。甲冑の魔族の足元に亀裂が入る。
「舐めるでないぞ、異界の物の怪ども。ヌシ様が見ている前では妾は無敵じゃ」
天狗たちに切り裂かれたガネストラスが地面を転がり、さらに天狗たちの追撃。上から高下駄でメッタ蹴りに。
戦鎚を完全に押し返した大嶽丸は上段より豪快な唐竹割り。甲冑の魔族は受け損ね、その肩に刃が深くめり込んだ。
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