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第1部 剣聖 羽鳴由佳
24 強襲
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料理対決はカーラの勝利? で幕を閉じ、とりあえずはモンティレの条件を達成した。これで志求磨の石板のありかが聞き出せる。
「よくやってくれた。約束通り石板を渡そう。わたしについて来てくれ」
なんとかカーラの料理を食べずにすみ、落ち着いたところでモンティレが石板の元に案内しようとしたときだった。私兵の一人が駆け込んでくる。
「モンティレさま! ま、魔物が、魔物の群れが結界を越えて街に侵入! しかもこの屋敷に集まってくるようです!」
この報告にモンティレは血相を変えてカーラに詰め寄る。
「魔物だと──バカな! あ、あんたの結界はどうなってるんだ! 話が違うぞ、あんたがこの街に住む条件として張った結界のはずだ」
「その結界にわずかな綻びを生じさせて、密かに下級魔物を飼っていたのは誰かしらね。どこかの願望者に頼んだのでしょうけど。だけど、今回の襲撃はわけが違う。この数、それに……」
詰め寄るモンティレを杖でいなしながら、カーラの表情が険しくなる。ズシン、ズシンと大地が揺れはじめた。
「超級がいるわ。あんなのがいたら一都市なんて簡単に滅ぶわよ。モンティレ、あなたは郊外の住人を先導して避難させて」
「あ、あんたはどうするんだ」
「わたしたちはここで迎え撃つ。敵の目的はわたしたち……いえ、石板かも。とにかく急いで」
カーラの指示に、モンティレはくそっ、と吐き捨てながらも使用人と私兵を率いて住民の保護や避難誘導へと向かった。
「いいわ……魔物たちは市街地には目もくれず、こっちに向かってきている……」
カーラはウィッチハットのつばを押さえながら集中している。どうやら街全体の魔物の動きを感知できるようだ。
「わたしはこれ以上魔物が入って来ないように結界を張り直しながら、超級の相手をするわ」
それはいくらカーラさんでも無理なのでは? この大きなセペノイアの街全体を覆う結界を張りながら、あの鋼竜なみの魔物を相手にするなんて。
わたしがそれを口に出そうとする前に、カーラの指示が飛ぶ。
「由佳ちゃんはその他の魔物をお願い。ちょっと数が多くて大変だけど。アルマちゃんは結界に穴を開けた願望者がいるから捕まえて。逃げ出した住民に紛れているわ。追跡、暗殺のスキルを持つアルマちゃんにしか頼めないことだけど、必ず生け捕りにしてね」
アルマは頷き、その願望者の特徴を聞いて市街地のほうへ走って行った。その間にもズシン、ズシンと地鳴りのような足音が近づいてくる。
「き、来た」
小高い丘の上から頭がぬっ、と現れた。全身が戦国時代の甲冑に包まれた巨大な武者だ。その風貌はミイラのようで、手にはわたしの刀の何十倍もある刀が握られている。
「豪天……超級でもかなり珍しいタイプ。死んだ願望者が呪術で巨大アンデッド化したもの。《覇王》が過去に封印してたはずなんだけど」
豪天の足下にはわらわらと下級、中級の魔物が集まり、こちらに向かって来る。ゴブリンやリザードマン、オーク。全部で300はいるが、魔物があのように軍勢として街を襲うなんて聞いたことがない。
「由佳ちゃん、考えるのは後。来るわよ」
グオオオォ、と豪天が刀の先をこちらに向けた。魔物の軍勢が一斉に走り出す。
「上等。来るなら来い」
ひとりの願望者を相手にするよりは、雑魚魔物の200や300ぐらいどうということはない。それより結界を張るために集中するであろうカーラには一匹たりとも近付けさせるつもりはない。
屋敷の門の前で居合いの構え。醜悪なツラをしたゴブリン、オークが太刀風の射程距離内に入った。
「シッ!」
居合いから幾筋もの斬撃を放つ。その衝撃波は魔物たちの前衛十数匹を倒した。
だがギィギィ言いながら仲間の死骸を踏み越え、続々と魔物たちは進軍する。わたしは神速で一気に距離を詰め、魔物たちの中に飛び込んだ。
ゴブリンの棍棒ごと脳天を叩き斬り、返す刃でオークの首をかっ切る。横列に並んだリザードマンたちが槍を突き出す。その穂先を5本まとめて斬り飛ばし前転──起き上がりざま足や腹を切り裂く。
魔物たちの包囲がやや緩んだ。素早く納刀。
「シッ!」
再び太刀風。前方の魔物たちが次々と吹き飛ぶ。
背後に気配──刀を逆手に持ちかえ、振り向かずに突き刺す。引き抜き、逆手のまま前方に迫ったリザードマンの顎から頭にかけて斬り上げた。
ゴブリンたちが捨て身の攻撃。オークの背中を踏み台にして次々と跳躍、頭上から飛びかかる。
対空の一閃。5匹のゴブリンが真っ二つになったが、まだゴブリンたちは降ってくる。
一匹に肩を、一匹に髪を掴まれる。そのまま上へ上へとのしかかられ、わたしは魔物たちに押し潰され──るわけなかった。練気にて力を増強。力任せに魔物たちを振りほどき、投げ飛ばし、殴りつけ、足で踏み砕いた。
『由佳ちゃん、無理しないで。いったん引いて』
頭に直接カーラの声が響く。これは念話か。
たしかに熱くなりすぎていた。近くにあの豪天が迫っている。それにしてもデカイ。二本足で人間みたいに歩いている分、鋼竜より大きく見える。
カーラは自分に任せてと言っていたが、わたしはこのデカブツを素通りさせるつもりはなかった。
納刀、練気を刀身に一点集中──わたしの渾身の一撃を喰らわせてやる。
「よくやってくれた。約束通り石板を渡そう。わたしについて来てくれ」
なんとかカーラの料理を食べずにすみ、落ち着いたところでモンティレが石板の元に案内しようとしたときだった。私兵の一人が駆け込んでくる。
「モンティレさま! ま、魔物が、魔物の群れが結界を越えて街に侵入! しかもこの屋敷に集まってくるようです!」
この報告にモンティレは血相を変えてカーラに詰め寄る。
「魔物だと──バカな! あ、あんたの結界はどうなってるんだ! 話が違うぞ、あんたがこの街に住む条件として張った結界のはずだ」
「その結界にわずかな綻びを生じさせて、密かに下級魔物を飼っていたのは誰かしらね。どこかの願望者に頼んだのでしょうけど。だけど、今回の襲撃はわけが違う。この数、それに……」
詰め寄るモンティレを杖でいなしながら、カーラの表情が険しくなる。ズシン、ズシンと大地が揺れはじめた。
「超級がいるわ。あんなのがいたら一都市なんて簡単に滅ぶわよ。モンティレ、あなたは郊外の住人を先導して避難させて」
「あ、あんたはどうするんだ」
「わたしたちはここで迎え撃つ。敵の目的はわたしたち……いえ、石板かも。とにかく急いで」
カーラの指示に、モンティレはくそっ、と吐き捨てながらも使用人と私兵を率いて住民の保護や避難誘導へと向かった。
「いいわ……魔物たちは市街地には目もくれず、こっちに向かってきている……」
カーラはウィッチハットのつばを押さえながら集中している。どうやら街全体の魔物の動きを感知できるようだ。
「わたしはこれ以上魔物が入って来ないように結界を張り直しながら、超級の相手をするわ」
それはいくらカーラさんでも無理なのでは? この大きなセペノイアの街全体を覆う結界を張りながら、あの鋼竜なみの魔物を相手にするなんて。
わたしがそれを口に出そうとする前に、カーラの指示が飛ぶ。
「由佳ちゃんはその他の魔物をお願い。ちょっと数が多くて大変だけど。アルマちゃんは結界に穴を開けた願望者がいるから捕まえて。逃げ出した住民に紛れているわ。追跡、暗殺のスキルを持つアルマちゃんにしか頼めないことだけど、必ず生け捕りにしてね」
アルマは頷き、その願望者の特徴を聞いて市街地のほうへ走って行った。その間にもズシン、ズシンと地鳴りのような足音が近づいてくる。
「き、来た」
小高い丘の上から頭がぬっ、と現れた。全身が戦国時代の甲冑に包まれた巨大な武者だ。その風貌はミイラのようで、手にはわたしの刀の何十倍もある刀が握られている。
「豪天……超級でもかなり珍しいタイプ。死んだ願望者が呪術で巨大アンデッド化したもの。《覇王》が過去に封印してたはずなんだけど」
豪天の足下にはわらわらと下級、中級の魔物が集まり、こちらに向かって来る。ゴブリンやリザードマン、オーク。全部で300はいるが、魔物があのように軍勢として街を襲うなんて聞いたことがない。
「由佳ちゃん、考えるのは後。来るわよ」
グオオオォ、と豪天が刀の先をこちらに向けた。魔物の軍勢が一斉に走り出す。
「上等。来るなら来い」
ひとりの願望者を相手にするよりは、雑魚魔物の200や300ぐらいどうということはない。それより結界を張るために集中するであろうカーラには一匹たりとも近付けさせるつもりはない。
屋敷の門の前で居合いの構え。醜悪なツラをしたゴブリン、オークが太刀風の射程距離内に入った。
「シッ!」
居合いから幾筋もの斬撃を放つ。その衝撃波は魔物たちの前衛十数匹を倒した。
だがギィギィ言いながら仲間の死骸を踏み越え、続々と魔物たちは進軍する。わたしは神速で一気に距離を詰め、魔物たちの中に飛び込んだ。
ゴブリンの棍棒ごと脳天を叩き斬り、返す刃でオークの首をかっ切る。横列に並んだリザードマンたちが槍を突き出す。その穂先を5本まとめて斬り飛ばし前転──起き上がりざま足や腹を切り裂く。
魔物たちの包囲がやや緩んだ。素早く納刀。
「シッ!」
再び太刀風。前方の魔物たちが次々と吹き飛ぶ。
背後に気配──刀を逆手に持ちかえ、振り向かずに突き刺す。引き抜き、逆手のまま前方に迫ったリザードマンの顎から頭にかけて斬り上げた。
ゴブリンたちが捨て身の攻撃。オークの背中を踏み台にして次々と跳躍、頭上から飛びかかる。
対空の一閃。5匹のゴブリンが真っ二つになったが、まだゴブリンたちは降ってくる。
一匹に肩を、一匹に髪を掴まれる。そのまま上へ上へとのしかかられ、わたしは魔物たちに押し潰され──るわけなかった。練気にて力を増強。力任せに魔物たちを振りほどき、投げ飛ばし、殴りつけ、足で踏み砕いた。
『由佳ちゃん、無理しないで。いったん引いて』
頭に直接カーラの声が響く。これは念話か。
たしかに熱くなりすぎていた。近くにあの豪天が迫っている。それにしてもデカイ。二本足で人間みたいに歩いている分、鋼竜より大きく見える。
カーラは自分に任せてと言っていたが、わたしはこのデカブツを素通りさせるつもりはなかった。
納刀、練気を刀身に一点集中──わたしの渾身の一撃を喰らわせてやる。
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