異世界の剣聖女子

みくもっち

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第1部 剣聖 羽鳴由佳

32 意外な助っ人

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 黒由佳が突進。
 二刀からの無数の斬撃。アルマ並みの速さと鋭さ。だが雑すぎる。
 わたしは冷静にさばきながら後退。刃で弾く度に火花が散る。

「ふへっ、さすがお姉さま。やるじゃん」

「お姉さまは──やめろっ」

 二刀の打ち下ろしをまとめて弾き返す。黒由佳の両腕が上がった。
 わたしは返す刃で薙ぎ、黒由佳は前蹴り。同時にお互いの腹に入った。

「いってぇ、このっ」

「ぐっ、うぅ」

 よろめきながら後退。入ったが、全然浅い。
 
「……頭きた、死ねよ」

 傷にもかまわず黒由佳は動く。今度は右から回り込むように。
 わたしもそれに合わせて動く。動きながら早足になる。
 走り出した。走りながら──斬り結ぶ。
 斬撃の応酬。お互いの刃が幾度も身体をかすめる。
 このまま走り続けると壁が迫ってくる。が、壁を駆け上がる。
 横向きに、平地を走るように壁を走りながらも斬り合いは続く。

「あはは、すげ! 楽し!」

 黒由佳が歓喜の声をあげながら二刀を振り回す。直前まで怒っていたのに、なんなんだこいつは。
 
 壁を蹴り、床へ着地。
 距離を取る。こいつの出来ない太刀風を見舞ってやる。

「シッ!」

  衝撃波を飛ばす。一発では済まさない。再度納刀から抜刀。二発目が飛び、三発目以降は抜き身のまま刀を振る。
 
 太刀風の技は居合いで放った初撃が一番威力が高い。
 その余力で複数の衝撃波を飛ばせるが、威力は期待出来ない。その代わり牽制や目眩ましにはもってこいだ。
 
 計六発の衝撃波が黒由佳を襲う。次々と着弾し、周囲は煙に包まれた。
 攻撃的なアイツなら、この距離を嫌って必ず突っ込んでくるはず。
 そこへカウンターで居合い斬りを叩き込んでやる。わたしは納刀し、静かに待つ。

 ヒュッ、と何かが飛んできた。抜刀──弾き飛ばす。これは……アイツの片方の刀。
 
「うぃーっ!」

 黒由佳。地を這うような姿勢から足を狙って斬りつけてきた。
 跳躍してかわしたとたん、きた、蹴りだ。派手な胴回し回転蹴り。
 なんとかガードしたが、衝撃でわたしは壁に叩きつけられた。
 しまった、刀を落とした。対する黒由佳はまだ一振りの刀を持っている。
 
 倒れているわたしに刃を突き立てようとする黒由佳。だが急に振り返り、あらぬ方向を斬りつけた。

 足元に落ちたのは矢。放ったのは──レオニードだ。

「ふへ、まだ生きてたんだ、あのイケメン」

 イケメンかどうかは分からないが、ヒドイ怪我を負っていたのはたしかだ。
 レオニードは一矢放つのがやっとだったらしく、床に両手をついて苦悶の表情。

 注意がレオニードに向いている、今だ。
 腰の鞘を抜きながら立ち上がり、打ちかかる。反応した黒由佳に刀で受けられた瞬間、鞘は捨てた。
 神速で懐へ潜り込み、肩で当て身。そこから強引に一本背負い。
 床に叩きつけられ、うっ、と呻きながら黒由佳はもう一本の刀も手放した。
 
 仰向けのまま黒由佳が刀に手を伸ばす。すかさず届かないところまで蹴り飛ばした。

「ひど、お姉さまったら!」

 香港アクションスターみたいにバッと起き上がり、黒由佳の回し蹴り。パァン、と派手な音が響く。
 腕で防いだが──痛い。くそ、まだくる。
 次はローキックの連打。脛で受けるが、冗談じゃないくらい痛い。こんなもの受け続けたら立てなくなる。
 またきた、下段への蹴り。掴んでやると身構えたのだが、蹴りの軌道がヒュッ、と変わり──頭に衝撃。わたしは倒れていた。
 いつの間にか床が目の前にある。頭上から黒由佳の笑い声。

「あっはは、ひっかかった。素手の戦いはウチのほうが強いみたい。覚悟してーよ、お姉さま」

 刀を拾い上げた黒由佳がトドメを刺そうとしている。
 マズイ、頭がクラクラして動けない。レオニードにも頼れない。くそ、こんなわけの分からんヤツ相手に……。

「まぁてぇぇぇい!」

 突然、響く声。
 タイミングバッチリだ。わたしの危機に駆けつけたのは一体……。
 朦朧としながら声の主のほうへ目を向け、わたしはダメだ、と床に突っ伏した。

 黒の革ジャンにジーパン、手にはレザーグローブ。白いマフラーをたなびかせた昭和感たっぷりの男。
 大げさにポーズをつけ、背後が爆発。間違いない、《アライグマッスル》御手洗剛志だ。

「わたしが来たからには安心したまえ! むむ、あの女、さては敵の組織の魔造人間だな! ならばわたしも本気を出さねばなるまい」

 勝手に話を進めているが、なんでお前がここにいるんだ。それにアライグマなんかがあの凶悪な女に勝てるわけない。
 2秒で八つ裂きにされるぞ。早く逃げろ。

 わたしの心配をよそに御手洗剛志は革ジャンからマスクを取り出す。

「そおおぅおーーちゃっく!」

 閃光がほとばしり、爆発が起こる。
 
 華麗にポーズを決めた《アライグマッスル》が登場。ナレーションが上から降ってくる。

「魔造人間は強敵だ、気を付けろ《アライグマッスル》! さあ、テレビの前のみんなも声援を送ってくれ! 頑張れ、《アライグマッスル》! 負けるな、《アライグマッスル》! 次回、魔造人間クロユッカーとの死闘、乞うご期待!」
 

 


 

 

 
 
 
 
 
 
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