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第1部 剣聖 羽鳴由佳
46 意志を継ぐ者
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レオニードの言葉に、わたしと志求磨は顔を見合わせる。
「《召喚者》……かつて《覇王》黄武迅が持っていた二つ名と能力。この二つ名は特殊でな、代々継承されてるもんだ。以前は葉桜溢忌。その前はお前らもよく知っている《青の魔女》カーラだ」
「カーラさんが?」
これは知らなかった。あの人が葉桜溢忌より前に《召喚者》だったなんて。
「ああ。どういった経緯で、あの女から葉桜溢忌、その後《覇王》に二つ名が継承されたかまでは知らねえけどな。こっちに喚ばれるヤツらは《召喚者》の資質によって大きく違ってくると聞いた事ある。おそらくその辺りが理由だと思うがな」
なるほど。たしかに黄武迅はこの世界を願望者の安住の地にしたいと願っていた。
まさに理想的な《召喚者》だ。かつては葉桜溢忌もそのような理想があったのだろうか。
あのカーラが、現在の葉桜溢忌に二つ名を譲るなんて考えられない。
「話を元に戻すぞ。《覇王》は自分の身に起きる事を薄々勘づいていたようだな。怪我をした頃に極秘裏に継承を済ませていたようだ。自分の息子にな」
「息子だって!」
大きな声で驚いたのは志求磨だ。わたしだってひっくり返りそうになった。
以前から知っていたことだが、この世界では願望者は子孫を残すことが出来ない。
そういった男女のアレな行為は可能らしい。しかし、子を成した例はひとつも無いと聞いている。
「たまげただろ? 噂に過ぎなかったんだが、マジな話だ。これも超越者ならではのブッ飛んだ能力のひとつじゃねえのか」
「てことは、その息子さんが見つかったってこと?」
わたしの問いに、レオニードは葉巻の煙を吐き出しながらああ、と答えた。
「お前らがさっきやりあった海賊いたろ。あれらを束ねている親玉が《召喚者》の二つ名を持っているらしい。なんで《覇王》の息子が海賊やってんのか分かんねえが」
「さっきの間の抜けた海賊……あれの親玉? なんか信じられない。そもそもなんで《覇王》の息子って存在がずっと隠されてたんだ?」
「そこまで俺が知るかよ。とにかく、お前らが再びこっちに来れたのはそいつのおかげでもあるんだからな。会ってみるべきだろう。まだあの葉桜溢忌に勝つつもりならな」
黄武迅の敵討ち。あの男には世話になったし、理想にも同調できる。
とはいえ、あの葉桜溢忌と戦うほどの理由がわたしにあるだろうか。
下手したら、いや、今のわたしなら確実に死ぬ。
しかし、黄武迅が命を賭けて守ろうとしたこの世界──放ってはおけない。
あの葉桜溢忌という男、今はおとなしいが機嫌ひとつで世界を滅ぼしかねない。
相対したとき、そんな危うさというか、幼稚な面を感じた。だからこそ、黄武迅も岩秀も必死になってアイツを倒そうとしていたのではないか。
わたしの決意は変わらない。志求磨も一緒だ。
伝えると、レオニードはぶはっ、と膝を叩きながら笑った。
「そう言うと思ったぜ。さすが俺の見込んだ女だ。実はもう会う約束はしてある。今回の戦いでお前らのことが耳に入ったんだろ。謎の海賊団首領が正体明かしてここに来るってんだ。スゲエよな」
向こうもわたし達を探していたのか。やはり《覇王》の息子として、あの葉桜溢忌に対抗する意志があるのだろうか。
しかし、海賊団の首領とは──麦わら帽子を被って身体がビヨーンと伸びて『海賊王になる!』とか言い出したらいろんな意味でドキドキする。
コンコン、と執務室のドアがノックされる。
「お、もう来たようだぜ。おう、入んな」
ドアが開き、そこに現れたのは──あれ、女の子だ。
大きな赤いリボン。それがまず目に飛び込んできた。青く長い髪に大きな瞳。小柄で可愛らしい中学生ぐらいの年齢か。
服装はもろセーラー服。わたしはブレザーだが、なんか被ってるみたいでイヤだ。左腕にだけゴツい手甲を装着している。
ダダダダ、と頭の中に文字が打ち込まれた。
《爆撃突貫娘》《召喚者》ナギサ・ライト。
間違いなく《召喚者》の二つ名がある。しかし、似てない。息子だと聞いていたのに。いや、願望者だから容姿は関係ないし、リアルな性別は男なのかもしれない。
「おい、僕の部下が世話になったみたいだな。《剣聖》ってのはお前か」
おお、尊い。これが僕っ娘というやつか。はじめて見た。ん、わたしをにらんでいるな。
ナギサはテーブルに片足をガン、と乗せ、親指でドアのほうを指す。おいおい、そんな短いスカートで……見えてるぞ。
「表に出ろ。メンツを潰されたままじゃ、僕の気が済まない」
なんか話が違う……レオニードのほうを見ると、ニヤニヤしている。コイツ、騙したな。
「いや、わたしはアンタの父親と知り合いで……」
「そんな事は知っている! オヤジのことは今関係ない! 早くしろっ!」
どうやら話が通じる相手では無いようだ。わたしはおとなしく外に出ることにした。
外に出ると、まず驚いたのが巨大な斧が無造作に置かれていたことだった。まさかこれが武器なのか?
まさかな。自分の身長どころの騒ぎではない大きさだ。
いくら願望者でもこれは扱いづらい。
しかしナギサはそれを片手でぐわっ、と持ち上げた。ウソでしょ、と呟いた瞬間、それが振り下ろされた。
「《召喚者》……かつて《覇王》黄武迅が持っていた二つ名と能力。この二つ名は特殊でな、代々継承されてるもんだ。以前は葉桜溢忌。その前はお前らもよく知っている《青の魔女》カーラだ」
「カーラさんが?」
これは知らなかった。あの人が葉桜溢忌より前に《召喚者》だったなんて。
「ああ。どういった経緯で、あの女から葉桜溢忌、その後《覇王》に二つ名が継承されたかまでは知らねえけどな。こっちに喚ばれるヤツらは《召喚者》の資質によって大きく違ってくると聞いた事ある。おそらくその辺りが理由だと思うがな」
なるほど。たしかに黄武迅はこの世界を願望者の安住の地にしたいと願っていた。
まさに理想的な《召喚者》だ。かつては葉桜溢忌もそのような理想があったのだろうか。
あのカーラが、現在の葉桜溢忌に二つ名を譲るなんて考えられない。
「話を元に戻すぞ。《覇王》は自分の身に起きる事を薄々勘づいていたようだな。怪我をした頃に極秘裏に継承を済ませていたようだ。自分の息子にな」
「息子だって!」
大きな声で驚いたのは志求磨だ。わたしだってひっくり返りそうになった。
以前から知っていたことだが、この世界では願望者は子孫を残すことが出来ない。
そういった男女のアレな行為は可能らしい。しかし、子を成した例はひとつも無いと聞いている。
「たまげただろ? 噂に過ぎなかったんだが、マジな話だ。これも超越者ならではのブッ飛んだ能力のひとつじゃねえのか」
「てことは、その息子さんが見つかったってこと?」
わたしの問いに、レオニードは葉巻の煙を吐き出しながらああ、と答えた。
「お前らがさっきやりあった海賊いたろ。あれらを束ねている親玉が《召喚者》の二つ名を持っているらしい。なんで《覇王》の息子が海賊やってんのか分かんねえが」
「さっきの間の抜けた海賊……あれの親玉? なんか信じられない。そもそもなんで《覇王》の息子って存在がずっと隠されてたんだ?」
「そこまで俺が知るかよ。とにかく、お前らが再びこっちに来れたのはそいつのおかげでもあるんだからな。会ってみるべきだろう。まだあの葉桜溢忌に勝つつもりならな」
黄武迅の敵討ち。あの男には世話になったし、理想にも同調できる。
とはいえ、あの葉桜溢忌と戦うほどの理由がわたしにあるだろうか。
下手したら、いや、今のわたしなら確実に死ぬ。
しかし、黄武迅が命を賭けて守ろうとしたこの世界──放ってはおけない。
あの葉桜溢忌という男、今はおとなしいが機嫌ひとつで世界を滅ぼしかねない。
相対したとき、そんな危うさというか、幼稚な面を感じた。だからこそ、黄武迅も岩秀も必死になってアイツを倒そうとしていたのではないか。
わたしの決意は変わらない。志求磨も一緒だ。
伝えると、レオニードはぶはっ、と膝を叩きながら笑った。
「そう言うと思ったぜ。さすが俺の見込んだ女だ。実はもう会う約束はしてある。今回の戦いでお前らのことが耳に入ったんだろ。謎の海賊団首領が正体明かしてここに来るってんだ。スゲエよな」
向こうもわたし達を探していたのか。やはり《覇王》の息子として、あの葉桜溢忌に対抗する意志があるのだろうか。
しかし、海賊団の首領とは──麦わら帽子を被って身体がビヨーンと伸びて『海賊王になる!』とか言い出したらいろんな意味でドキドキする。
コンコン、と執務室のドアがノックされる。
「お、もう来たようだぜ。おう、入んな」
ドアが開き、そこに現れたのは──あれ、女の子だ。
大きな赤いリボン。それがまず目に飛び込んできた。青く長い髪に大きな瞳。小柄で可愛らしい中学生ぐらいの年齢か。
服装はもろセーラー服。わたしはブレザーだが、なんか被ってるみたいでイヤだ。左腕にだけゴツい手甲を装着している。
ダダダダ、と頭の中に文字が打ち込まれた。
《爆撃突貫娘》《召喚者》ナギサ・ライト。
間違いなく《召喚者》の二つ名がある。しかし、似てない。息子だと聞いていたのに。いや、願望者だから容姿は関係ないし、リアルな性別は男なのかもしれない。
「おい、僕の部下が世話になったみたいだな。《剣聖》ってのはお前か」
おお、尊い。これが僕っ娘というやつか。はじめて見た。ん、わたしをにらんでいるな。
ナギサはテーブルに片足をガン、と乗せ、親指でドアのほうを指す。おいおい、そんな短いスカートで……見えてるぞ。
「表に出ろ。メンツを潰されたままじゃ、僕の気が済まない」
なんか話が違う……レオニードのほうを見ると、ニヤニヤしている。コイツ、騙したな。
「いや、わたしはアンタの父親と知り合いで……」
「そんな事は知っている! オヤジのことは今関係ない! 早くしろっ!」
どうやら話が通じる相手では無いようだ。わたしはおとなしく外に出ることにした。
外に出ると、まず驚いたのが巨大な斧が無造作に置かれていたことだった。まさかこれが武器なのか?
まさかな。自分の身長どころの騒ぎではない大きさだ。
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