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第1部 剣聖 羽鳴由佳
47 爆撃突貫娘
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目の前を鋼鉄の壁がゴッ、と通り過ぎる。まるで特急列車が横切ったみたいだ。
巨大斧の一撃。かわしたが、その轟音、衝撃で吹き飛ばされた。しかも撒き散らす土砂や石片が飛んで来る。
「いたたたっ」
全部はかわしきれない。バチバチバチッ、と身体に当たってけっこう痛い。砂煙で視界も遮られた。
ゴヒュッ、と砂煙が晴れる。ナギサが巨大斧を持ちかえただけで周りの気流が変わる。
バッターボックスに立った強打者のような構えから、ボッ、と水平に薙いできた。
こんなものを受け止めたら刀ごと真っ二つだ。
かがんでかわす。頭上を寒気がするような一撃が通り過ぎた。
ナギサは勢いあまってぐるりと回転。わたしに背を向けた。今だ──。
神速で接近。居合いで抜きざま、斬りつけた。
ギンッ、と硬い手応え。これは──左腕の手甲。
「っらあっ!」
ナギサは刀を払いのけ、左ストレート。
のけ反ってかわし、黒由佳ばりに前蹴り。その反動で距離を取る。
「やるな、お前」
蹴りをまともに受けながら、ナギサは全く動じてない。
巨大斧を肩に担ぎ、不敵な笑みを浮かべている。
なるほど。あのバカでかい斧では接近戦では不利だ。近づく敵にはあの手甲で防御したり、ぶん殴ったりするわけか。
納刀し、居合いの構え。
ナギサは巨大斧の柄を両手で長めに持ち、ハンマー投げのようにその場で回転し始めた。
まさか……そう、そのまさかだ。
あの巨大斧をブン投げてきた。うなりを上げて迫る鋼鉄の塊。跳躍してかわす。
巨大斧は大きく弧を描きながらブーメランのように持ち主の元へ。
ナギサはそれをキャッチ。受け止めた反動で足元をギャギャギャといわせながら後退する。
その技、凄まじいが使用者のほうに負担があるのではと思いつつ、着地。短く息を吐きながら抜刀。
「シッ!」
太刀風。一発では終わらない。その余波を活かしてさらに三度刀を振るう。
四つの飛ぶ斬撃がナギサに命中した──が、斧を盾代わりにして防いでいる。
やはりこの距離では不利だ。もう一度近づくしかない。
わたしが柄に手をかけ突っ込もうとしたとき、ナギサが天を指差した。
「そろそろ降ってくるころだから、備えたほうがいいぞ。ミンチになりたくなかったらな」
なんのことだ。空を見上げる。
なんか黒い点々が見えるが……ヒュルルルと、どこかで聞いたような音もする。
「僕の最初の一撃。巻き上げられたいろんな破片は願望の力ではるか上空に。そこから堕ちてくるんだよ、隕石みたいに」
ヒュルルルの音がどんどん近づいてくる。まさか、あの黒い点は──。
ナギサは巨大斧を屋根のようにしてその下に身を隠す。
「由佳あっ!」
砦の城壁の上から志求磨の声。わかってる。どうにかする。
練気。防御に集中しても、おそらくあれは防ぎ切れない。ならば──。
願望の力を集中。防御ではなく、攻撃へ。
全てをこの刀に込め、居合いの構え。
鍔と鞘の間からキイィィ、と光が漏れる。
抜刀。ナギサにではなく、上空へ。
巨大な三日月状の剣閃を放つ。
堕ちてくる石片や土砂の塊。自分の所に堕ちてくる分だけでも、これで破壊する。
真・太刀風によって、真上の黒い点々が切り裂かれて青い空が見えた。問題はその範囲だが……来る!
チュドドドドドドド、とまさに戦争映画の爆撃シーンさながらの光景。揺れる大地、巻き上がる土煙。
直撃は避けたものの、細かい破片はまたバチバチ当たるし、衝撃が全身に伝わって、立っていられない。
ようやく石弾の雨が止み、わたしは土砂に埋もれていたがなんとか這い出る。
ナギサは何事もなかったように巨大斧を構え直す。
「やるなあ。あんな防ぎ方したの、初めて見た」
「冗談じゃない。あんな無差別攻撃……殺す気か」
頭きた。女の子と思ってちょいと加減していたが、もう許さない。
わたしはムスッとしながら刀を抜き、ナギサに向かって歩きはじめる。
ナギサもガガガガ、と巨大斧を引きずりながら近づく。
間合いに入り、互いに技を繰り出そうとした時──わたしとナギサの身体に、同時に矢がかすった。
レオニードの仕業だ。城壁の上で弓を手にニタニタ笑っている。
「お二人さん、そこまでだ。もういいだろ」
ふざけるな、これからだ。
この生意気な小娘をギャフンと言わせて、お仕置きしないと気が済まない……と思っていたが、なんだ、身体の自由がきかない。刀を落とした。……もしやさっきの矢は麻痺矢か。
ナギサも膝をついたまま、動けなくなっている。
わたしたち二人はレオニードに向かって、ぎゃあぎゃあと、あらんかぎりの悪態をついた。
「あんだけやりあえば気も済んだろ。え、俺が嘘ついてたって? ああ、ナギサの事はだいぶ前から知っている。なんでって、五禍将のひとり、奪の将だから当たり前だ。でもな、《覇王》の息子だってことは最近知ったんだぜ」
砦に運びまれたわたしに、レオニードは悪びれもせず説明する。
お前がちゃんとわたし達の中に入って、紹介なりなんなりすれば無駄な戦いをせずに済んだんじゃないのか。
ん? また息子って言った。目の前にいる赤リボンの女の子はやはりリアルでは男なのか。
わたしはゴホン、と咳払いをして質問する。
「え~、つかぬ事をお聞きしますが、あなたのリアルな性別は?」
何故か敬語に。たいがいはすぐに見破れるのだが……志求磨のときと同じで、全くどちらか分からない。
ナギサは怪訝な顔をしながら答えた。
「なんだい、やぶからぼうに。分かんないかな、僕は──」
巨大斧の一撃。かわしたが、その轟音、衝撃で吹き飛ばされた。しかも撒き散らす土砂や石片が飛んで来る。
「いたたたっ」
全部はかわしきれない。バチバチバチッ、と身体に当たってけっこう痛い。砂煙で視界も遮られた。
ゴヒュッ、と砂煙が晴れる。ナギサが巨大斧を持ちかえただけで周りの気流が変わる。
バッターボックスに立った強打者のような構えから、ボッ、と水平に薙いできた。
こんなものを受け止めたら刀ごと真っ二つだ。
かがんでかわす。頭上を寒気がするような一撃が通り過ぎた。
ナギサは勢いあまってぐるりと回転。わたしに背を向けた。今だ──。
神速で接近。居合いで抜きざま、斬りつけた。
ギンッ、と硬い手応え。これは──左腕の手甲。
「っらあっ!」
ナギサは刀を払いのけ、左ストレート。
のけ反ってかわし、黒由佳ばりに前蹴り。その反動で距離を取る。
「やるな、お前」
蹴りをまともに受けながら、ナギサは全く動じてない。
巨大斧を肩に担ぎ、不敵な笑みを浮かべている。
なるほど。あのバカでかい斧では接近戦では不利だ。近づく敵にはあの手甲で防御したり、ぶん殴ったりするわけか。
納刀し、居合いの構え。
ナギサは巨大斧の柄を両手で長めに持ち、ハンマー投げのようにその場で回転し始めた。
まさか……そう、そのまさかだ。
あの巨大斧をブン投げてきた。うなりを上げて迫る鋼鉄の塊。跳躍してかわす。
巨大斧は大きく弧を描きながらブーメランのように持ち主の元へ。
ナギサはそれをキャッチ。受け止めた反動で足元をギャギャギャといわせながら後退する。
その技、凄まじいが使用者のほうに負担があるのではと思いつつ、着地。短く息を吐きながら抜刀。
「シッ!」
太刀風。一発では終わらない。その余波を活かしてさらに三度刀を振るう。
四つの飛ぶ斬撃がナギサに命中した──が、斧を盾代わりにして防いでいる。
やはりこの距離では不利だ。もう一度近づくしかない。
わたしが柄に手をかけ突っ込もうとしたとき、ナギサが天を指差した。
「そろそろ降ってくるころだから、備えたほうがいいぞ。ミンチになりたくなかったらな」
なんのことだ。空を見上げる。
なんか黒い点々が見えるが……ヒュルルルと、どこかで聞いたような音もする。
「僕の最初の一撃。巻き上げられたいろんな破片は願望の力ではるか上空に。そこから堕ちてくるんだよ、隕石みたいに」
ヒュルルルの音がどんどん近づいてくる。まさか、あの黒い点は──。
ナギサは巨大斧を屋根のようにしてその下に身を隠す。
「由佳あっ!」
砦の城壁の上から志求磨の声。わかってる。どうにかする。
練気。防御に集中しても、おそらくあれは防ぎ切れない。ならば──。
願望の力を集中。防御ではなく、攻撃へ。
全てをこの刀に込め、居合いの構え。
鍔と鞘の間からキイィィ、と光が漏れる。
抜刀。ナギサにではなく、上空へ。
巨大な三日月状の剣閃を放つ。
堕ちてくる石片や土砂の塊。自分の所に堕ちてくる分だけでも、これで破壊する。
真・太刀風によって、真上の黒い点々が切り裂かれて青い空が見えた。問題はその範囲だが……来る!
チュドドドドドドド、とまさに戦争映画の爆撃シーンさながらの光景。揺れる大地、巻き上がる土煙。
直撃は避けたものの、細かい破片はまたバチバチ当たるし、衝撃が全身に伝わって、立っていられない。
ようやく石弾の雨が止み、わたしは土砂に埋もれていたがなんとか這い出る。
ナギサは何事もなかったように巨大斧を構え直す。
「やるなあ。あんな防ぎ方したの、初めて見た」
「冗談じゃない。あんな無差別攻撃……殺す気か」
頭きた。女の子と思ってちょいと加減していたが、もう許さない。
わたしはムスッとしながら刀を抜き、ナギサに向かって歩きはじめる。
ナギサもガガガガ、と巨大斧を引きずりながら近づく。
間合いに入り、互いに技を繰り出そうとした時──わたしとナギサの身体に、同時に矢がかすった。
レオニードの仕業だ。城壁の上で弓を手にニタニタ笑っている。
「お二人さん、そこまでだ。もういいだろ」
ふざけるな、これからだ。
この生意気な小娘をギャフンと言わせて、お仕置きしないと気が済まない……と思っていたが、なんだ、身体の自由がきかない。刀を落とした。……もしやさっきの矢は麻痺矢か。
ナギサも膝をついたまま、動けなくなっている。
わたしたち二人はレオニードに向かって、ぎゃあぎゃあと、あらんかぎりの悪態をついた。
「あんだけやりあえば気も済んだろ。え、俺が嘘ついてたって? ああ、ナギサの事はだいぶ前から知っている。なんでって、五禍将のひとり、奪の将だから当たり前だ。でもな、《覇王》の息子だってことは最近知ったんだぜ」
砦に運びまれたわたしに、レオニードは悪びれもせず説明する。
お前がちゃんとわたし達の中に入って、紹介なりなんなりすれば無駄な戦いをせずに済んだんじゃないのか。
ん? また息子って言った。目の前にいる赤リボンの女の子はやはりリアルでは男なのか。
わたしはゴホン、と咳払いをして質問する。
「え~、つかぬ事をお聞きしますが、あなたのリアルな性別は?」
何故か敬語に。たいがいはすぐに見破れるのだが……志求磨のときと同じで、全くどちらか分からない。
ナギサは怪訝な顔をしながら答えた。
「なんだい、やぶからぼうに。分かんないかな、僕は──」
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