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第2部 消えた志求磨
59 魔法少女まさか☆由佳が
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上見こむらはアンダースローで手榴弾をバラバラと投げ込む。
ワルキリギリスの腹の下でボッカンボッカン爆発が起きるが……ダメだ。たいしてダメージを与えているようには見えない。
化物がギーッ、チョンッ、と前進してきた。上見ほむらは両手にサブマシンガンを持ち、撃ちながら後退。
いかん、追いつかれる。わたしは走りながら名刀変化。
大太刀──名刀鋼牙。
ワルキリギリスはギザギザだらけの前肢で上見こむらを捕らえようとしている。
「せやあっっ!」
緑色の不気味な顔面に大太刀の一撃。
硬い──しかし、ここからだ。片ヒザを曲げ、全体重をかけて柄に力を込める。
「ぬううっ!」
鋼牙独自の技、斬壊。
強引に振り抜く。ワルキリギリスの巨体がズッ、と横にズレた。
よし、片目を潰した。これで怯むはず──。
「あぶないっ!」
上見こむらの声。ワルキリギリスの凶悪なアゴがわたしの目の前に。
「────!」
なんだ、一瞬……意識が途切れたような……。
わたしはいつの間にかワルキリギリスから離れた場所にいる。
すぐ前には上見こむら。サブマシンガンを捨て、今度は拳銃を取り出す。
「少しだけなら時を止めることができるわ。でも連続では無理……由佳、もう少し下がって」
なんだと、時を……。そういえばこの少女の二つ名は《時を操る少女》。
超越者でもないのにそんなことが可能なのか。今まで時間を操った願望者は葉桜溢忌しかいない。
「もう少し……。あいつが近付いてから……よし、今!」
上見こむらは何やら手元のスイッチを押した。
キインッ、キインッ、と遠くで甲高い音が連続で聞こえた。
そして放物線を描いて何かが落下してくる。
ボボボボッ、ボンッ、と落下物はワルキリギリスの背中に落ちて爆発。
ギイイイ、とヤツは苦しみ、横に倒れた。
「スゴい! 今のは!?」
「迫撃砲8基の砲撃。弾道計算してヤツをそこまで誘き寄せたの。あとはコイツを至近距離で撃ち込めば」
上見こむらは拳銃を構えながら走る。
ピクピクと痙攣しているワルキリギリスに向けて照準を合わせた。
「──あっ!」
ブウンッ、とワルキリギリスの前肢が動いた。
弾き飛ばされ、倒れる上見こむら。
キリギリスの化物はぐぐぐと起き上がった。
「そんな……これだけの火力でもまだ足りないなんて……また勝てないの? わたしは」
上見こむらは動けない。このままではやられる。
わたしは名刀変化を解除、元の姿に。
名刀飛蝶を納刀、居合いの構え。練気で願望の力を集中させる。
キイイイ、と鍔と鞘の隙間から気の光が漏れる。
「シッ!」
抜刀──。三日月状の巨大な剣閃が放たれた。
地面を削りながら剣閃はワルキリギリスに到達。ヤツの身体がゴッ、と浮き、脚の1本がちぎれ飛んだ。
渾身の真・太刀風。さすがに効いたようだ。
ヤツはまた横に倒れた格好。よし、今度はあの柔らかそうな腹部を狙って攻撃してやる。
わたしが納刀した瞬間、またヤツの脚が動いた。もちろんここまで届くはずはない。脚を地面に突き刺し、掘り上げた岩石を飛ばしてきたのだ。
「う、うわっ」
予想外の反撃に反応が少し遅れた。
岩石の直撃は避けたが、割れた破片が右足に当たってしまった。
「くそっ、足が……」
動かない。ヤツは再び起き上がり、上見こむらのほうを狙っている。この足では助けられない。
「やあ、羽鳴由佳。どうやら僕の出番のようだね」
この声は……振り向くと、猫のようなウサギのようなワケわからん白い動物。
コイツは森で出会ったミュウべいとかいう願望者だ。
「僕ならこの危機を救うことができる。もちろんキミが魔法少女になることが条件だけどね」
わたしは悩む。あのキリギリスの魔物は多分超級魔物だ。普通に戦っても勝ち目はない。《断ち斬る者》になれば倒せるかもしれないが、もしまた暴走状態になってしまったら取り返しがつかなくなる。
「本当に強くなるんだろうな」
わたしはミュウべいに確認。
ミュウべいはもちろんだよ、と力強く頷いた。
「キミはスゴい才能を秘めている。きっと最強の魔法少女になれるよ」
「ダメぇっ! まど……由佳! そいつの言うことを信じては──」
上見こむらが叫ぶが、もう遅い。わたしの身体はミュウべいの力によってまばゆい光に包まれて変化していた。
ふわふわのおさげ髪にピンクのリボン。小学生が着るような真っ赤なワンピース。それと手に持っているのはキラキラしたコンパクトミラーだ。
体型や顔はもとのわたしのままだからこの格好はちょっと……。いや、そんなことよりコレ……魔法少女なのか?
「おい、コレなんか間違ってないか? なんというかその……古いっていうか。わたしの想像してたのと全然違う」
聞いてみたが、ミュウべいはそれでいいんだよと返事をする。
「さあ、そこからが本番だよ。そのコンパクトに向かって呪文を唱えるんだ」
ワルキリギリスの腹の下でボッカンボッカン爆発が起きるが……ダメだ。たいしてダメージを与えているようには見えない。
化物がギーッ、チョンッ、と前進してきた。上見ほむらは両手にサブマシンガンを持ち、撃ちながら後退。
いかん、追いつかれる。わたしは走りながら名刀変化。
大太刀──名刀鋼牙。
ワルキリギリスはギザギザだらけの前肢で上見こむらを捕らえようとしている。
「せやあっっ!」
緑色の不気味な顔面に大太刀の一撃。
硬い──しかし、ここからだ。片ヒザを曲げ、全体重をかけて柄に力を込める。
「ぬううっ!」
鋼牙独自の技、斬壊。
強引に振り抜く。ワルキリギリスの巨体がズッ、と横にズレた。
よし、片目を潰した。これで怯むはず──。
「あぶないっ!」
上見こむらの声。ワルキリギリスの凶悪なアゴがわたしの目の前に。
「────!」
なんだ、一瞬……意識が途切れたような……。
わたしはいつの間にかワルキリギリスから離れた場所にいる。
すぐ前には上見こむら。サブマシンガンを捨て、今度は拳銃を取り出す。
「少しだけなら時を止めることができるわ。でも連続では無理……由佳、もう少し下がって」
なんだと、時を……。そういえばこの少女の二つ名は《時を操る少女》。
超越者でもないのにそんなことが可能なのか。今まで時間を操った願望者は葉桜溢忌しかいない。
「もう少し……。あいつが近付いてから……よし、今!」
上見こむらは何やら手元のスイッチを押した。
キインッ、キインッ、と遠くで甲高い音が連続で聞こえた。
そして放物線を描いて何かが落下してくる。
ボボボボッ、ボンッ、と落下物はワルキリギリスの背中に落ちて爆発。
ギイイイ、とヤツは苦しみ、横に倒れた。
「スゴい! 今のは!?」
「迫撃砲8基の砲撃。弾道計算してヤツをそこまで誘き寄せたの。あとはコイツを至近距離で撃ち込めば」
上見こむらは拳銃を構えながら走る。
ピクピクと痙攣しているワルキリギリスに向けて照準を合わせた。
「──あっ!」
ブウンッ、とワルキリギリスの前肢が動いた。
弾き飛ばされ、倒れる上見こむら。
キリギリスの化物はぐぐぐと起き上がった。
「そんな……これだけの火力でもまだ足りないなんて……また勝てないの? わたしは」
上見こむらは動けない。このままではやられる。
わたしは名刀変化を解除、元の姿に。
名刀飛蝶を納刀、居合いの構え。練気で願望の力を集中させる。
キイイイ、と鍔と鞘の隙間から気の光が漏れる。
「シッ!」
抜刀──。三日月状の巨大な剣閃が放たれた。
地面を削りながら剣閃はワルキリギリスに到達。ヤツの身体がゴッ、と浮き、脚の1本がちぎれ飛んだ。
渾身の真・太刀風。さすがに効いたようだ。
ヤツはまた横に倒れた格好。よし、今度はあの柔らかそうな腹部を狙って攻撃してやる。
わたしが納刀した瞬間、またヤツの脚が動いた。もちろんここまで届くはずはない。脚を地面に突き刺し、掘り上げた岩石を飛ばしてきたのだ。
「う、うわっ」
予想外の反撃に反応が少し遅れた。
岩石の直撃は避けたが、割れた破片が右足に当たってしまった。
「くそっ、足が……」
動かない。ヤツは再び起き上がり、上見こむらのほうを狙っている。この足では助けられない。
「やあ、羽鳴由佳。どうやら僕の出番のようだね」
この声は……振り向くと、猫のようなウサギのようなワケわからん白い動物。
コイツは森で出会ったミュウべいとかいう願望者だ。
「僕ならこの危機を救うことができる。もちろんキミが魔法少女になることが条件だけどね」
わたしは悩む。あのキリギリスの魔物は多分超級魔物だ。普通に戦っても勝ち目はない。《断ち斬る者》になれば倒せるかもしれないが、もしまた暴走状態になってしまったら取り返しがつかなくなる。
「本当に強くなるんだろうな」
わたしはミュウべいに確認。
ミュウべいはもちろんだよ、と力強く頷いた。
「キミはスゴい才能を秘めている。きっと最強の魔法少女になれるよ」
「ダメぇっ! まど……由佳! そいつの言うことを信じては──」
上見こむらが叫ぶが、もう遅い。わたしの身体はミュウべいの力によってまばゆい光に包まれて変化していた。
ふわふわのおさげ髪にピンクのリボン。小学生が着るような真っ赤なワンピース。それと手に持っているのはキラキラしたコンパクトミラーだ。
体型や顔はもとのわたしのままだからこの格好はちょっと……。いや、そんなことよりコレ……魔法少女なのか?
「おい、コレなんか間違ってないか? なんというかその……古いっていうか。わたしの想像してたのと全然違う」
聞いてみたが、ミュウべいはそれでいいんだよと返事をする。
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