孤毒の解毒薬

紫月ゆえ

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熟成

2-2

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 「奏斗、お待たせ。家まで迎えに来てくれてありがとう。」

 「全然いいよ。じゃあ行こうか。雪の念願の遊園地!」

 今日は雪がずっと夢見てた遊園地に行くのだ。高校生のときに偶然テレビで見た絶叫系のアトラクションが多くある遊園地。訪れてみたいと思っていたが、一人で行くのは気が引けた。何より気軽に行ける距離ではないし、遊園地という、家族連れや友人と一緒に訪れる人が多い場所に一人で行くのは憚られた。雪は基本的に単独行動が得意だが、遊園地は別だ。一人よりも一緒にはしゃぐ誰かがいたほうが楽しいに決まっているということは、友人のいない雪にも分かっていた。

 そして、今日、念願のその場所に行くことができるのである。

 数週間前、奏斗に行ってみたいと誘ったところ、喜んで頷いてくれた。しかも、奏斗は万全の状態で楽しめるように一泊二日の旅行にしないかと言ってくれたのだ。

 「一泊二日!?誰かと旅行なんて、俺初めてなんだけど。」

 「えっ、そうなの?じゃあなおさら気合入るなぁ。俺が運転するから一緒に旅行しようよ。」

 「いいのか?めっちゃ嬉しい!」

 「いいに決まってるじゃん!」

 「奏斗のその計画だと、一日目に現地に向かってちょっとゆっくりして宿に泊まって、二日目に遊園地で朝から楽しむって感じ?」

 「そう!雪、分かってるじゃん。初めてとは思えない計画力。」

 「ずっと行きたかったからな。計画は何回もしたんだけど、実行に移す勇気はなかった。」

 「じゃあ俺と一緒に実行しよう!でも、雪、絶叫系とか興味あったんだ。てっきり落ち着く場所とか静かな場所とかのほうが好きなんだろうなーって思ってた。」

 「もちろん落ち着く場所も好き。静かで厳かな観光地とかは好きだし、大学にある奏斗のお気に入りの場所も一目で気に入った。けど、遊園地は別なんだよ。ジェットコースターとか、絶叫系のアトラクション乗ってみてー!楽しそう!」

 はちきれんばかりの満面の笑みで語る雪に、奏斗の心も踊った。もっと笑顔がみたい、もっと楽しんでほしい、いや、可能ならば一緒に楽しみたい、そう思った。

 「うん、じゃあ行こう!そうと決まればさっそく計画立てようよ。いつがいい?あ、旅館は俺のおすすめがあるんだ。」

 そうして、行きたいと誘ってみたその日にとんとん拍子に予定がたった。奏斗の運転で現地まで行き、そこで少し観光をすることにした。そして、以前奏斗が家族旅行で訪れた際に宿泊した旅館がよかったとのことなので、今回もそこに泊まることにした。そして、その翌日、朝から念願の遊園地で一日中楽しむのである。

 「帰りの運転大変じゃね?いいの?」

 「いいよ。俺も雪と一緒に楽しみたいから。どこへでも連れてくよー!」

 「ありがとうほんとに。すっげー楽しみ。」

 雪は、これまでの人生で得られていなかった楽しさを、今、奏斗と体験しているのだ。
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