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溺没
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「なるほどな、そういう出会いだったんだな。」
納得したように頷く雄馬と同じように、雛も翼も同様にうなずいている。二人の出会い、現在に至るまでの連なり、奏斗の気持ち、それらを今初めて耳にしたのだ。
雛は少し涙目になりながら、堪えるようにつぶやく。
「話したこともないけどさ……きっと優しい人なんだろうな。何で私、よく知りもしないのにあんなこと陰で言っちゃったんだろう。ほんとに私最低だ。ごめんね、奏斗。ごめんね雪くん。」
翼がスマホ先の奏斗に向かって口を開く。
「ほんとにごめん。二人の邪魔をしたいとか、雪くんの悪口を言おうとか、そういう意図はなかったんだよ。結果的にそうなってしまったことに変わりはないけど……」
雄馬も反省と謝罪の言葉を口にする。
「悪かった奏斗。お前らがこんなに深い関係築いているなんて知らなかった。お前の気持ちを理解できていなかった。自分たちの都合で、憶測で勝手に話を進めて、傷つけて……反省してる。」
「いや、話さなかった俺も悪いから、このことで謝るのはもうおしまい。それに、翼。君が昔色々あって、人に過度に見られたり、距離を縮められたりすることに嫌悪感を抱いてしまうのは知ってる。だから、雪がジーっと見てきたことや視線を強く感じたことに不快な気持ちを感じたことも責められない。だから、もう俺には謝らなくていいよ。」
優しく穏やかな声で言葉を選びながら伝えているのが翼には分かる。そういうところが好きなのだ、人として。0か100か、正か悪かではなく、そこにあるものを見ようとしてくれる。
「だけど、俺がやってしまったことは結果的に傷つけることになってしまったから。自分の過去がどうとかで言い訳をするつもりはないよ。でも、ありがとう奏斗。ありがとう。」
顔は見えないが、空気が柔らかくなり、フッと微笑んでいるかのような音がした。
「雛も、翼も、雄馬も、皆もう謝らないで。お互い様だから。それより、俺の気持ちをからかったり、否定したり、面白がったりしないでくれてありがとう。それが本当に嬉しい。」
その言葉で、3人の空気も心なしか和らいだ。奏斗の心からの言葉を、その奥にある心情をしっかりと受け止めたのだ。
奏斗も安心していた。彼らなら大丈夫なのだと。気持ちを否定するような人ではない。受け入れる努力をしようとしているわけではない。ただそのまま受け止めてくれた。そこにあるままの感情を理解してくれた。さも普通であるかのように。
「明後日、雪と話したいと思ってる。そこで、俺の気持ちを伝える予定。本当は明日のつもりだったんだけど、雪も今日のことがあるから、きっと考える時間がほしいだろうなと思って。時間が取れるかどうか聞いてみるよ。」
「「「ありがとう」」」
3人はとりあえずはホッとする。自分たちが直接言っては警戒されてしまうだろうし、そもそも連絡手段がない。とにかくもう一度会って話す機会が欲しい。結果はどうであれ、伝えないといけないことがあるのだ。全員そう思ったのか、空気が引き締まったような感じがした。
「俺は、間違っていたのかもしれない。」
そんな空気感を弱弱しく破るかのように、奏斗が呟く。
「雪が、ずっと何かを考え込んでいるようだったんだ。ずっと何かを抱えて生きていて、でもそこに土足で踏み込むのはよくないと思った。だから、いつか雪が話したいと思ったとき、それを聞いて一緒に考えたり、悩んだりできるように準備していようと思った。でも、結局雪を一人にしてしまった。待ってるって言ったけど、本当は俺が怖かっただけなんだ。自分の気持ちと向き合って、雪に踏み込んでいくのが怖かったんだ。」
悲しそうに、自嘲めいた笑いをこぼす。過去の行動や思考を悔やむように。
翼がそっと口を開く。
「皆そうだ。誰だって、気持ちと向き合うのは怖い。人と向き合うのは怖い。その相手が大切であればあるほどに。失うことや、今の居心地の良い関係性が崩れることを恐れるから。俺も怖いよ。さっきもすっげえ怖かった、お前と、そして自分と向き合うの。でも、怖いけど、しこりを残したままでいたくない。心の底から笑っていられる、そんな関係でいたいから。」
真剣に言葉を選びながら話す。
「奏斗は自分が間違えたと思うかもしれない。俺も今日間違えた。いや、今日だけじゃない。気づいていたのに、見て見ぬふりをした。だから、間違いを正したいと思う。お前と、彼と、笑い合えるように。もし、それがうまくいかなくても、その間違いを認識して、それを背負って生きていきたい。」
おそらくは泣いているであろう雛と雄馬の涙声でうなずく声がうっすらと聞こえる。奏斗は深く呼吸をする。
「うん、そうだね。俺も、正したい。背負いたい。ありがとう、翼、雄馬、雛。」
本当に良い友人をもったものだ、と心の中で呟く。見ようとしないと見えないものがある。見たくないものは勝手に現れてくるのに、本当に見たいものは自分から働きかけないと見ることができない。
「ありがとう。」
もう一度、そう伝える。
すると、涙声と鼻水の音が混ざってはいるが、同じ言葉が返ってきた。
納得したように頷く雄馬と同じように、雛も翼も同様にうなずいている。二人の出会い、現在に至るまでの連なり、奏斗の気持ち、それらを今初めて耳にしたのだ。
雛は少し涙目になりながら、堪えるようにつぶやく。
「話したこともないけどさ……きっと優しい人なんだろうな。何で私、よく知りもしないのにあんなこと陰で言っちゃったんだろう。ほんとに私最低だ。ごめんね、奏斗。ごめんね雪くん。」
翼がスマホ先の奏斗に向かって口を開く。
「ほんとにごめん。二人の邪魔をしたいとか、雪くんの悪口を言おうとか、そういう意図はなかったんだよ。結果的にそうなってしまったことに変わりはないけど……」
雄馬も反省と謝罪の言葉を口にする。
「悪かった奏斗。お前らがこんなに深い関係築いているなんて知らなかった。お前の気持ちを理解できていなかった。自分たちの都合で、憶測で勝手に話を進めて、傷つけて……反省してる。」
「いや、話さなかった俺も悪いから、このことで謝るのはもうおしまい。それに、翼。君が昔色々あって、人に過度に見られたり、距離を縮められたりすることに嫌悪感を抱いてしまうのは知ってる。だから、雪がジーっと見てきたことや視線を強く感じたことに不快な気持ちを感じたことも責められない。だから、もう俺には謝らなくていいよ。」
優しく穏やかな声で言葉を選びながら伝えているのが翼には分かる。そういうところが好きなのだ、人として。0か100か、正か悪かではなく、そこにあるものを見ようとしてくれる。
「だけど、俺がやってしまったことは結果的に傷つけることになってしまったから。自分の過去がどうとかで言い訳をするつもりはないよ。でも、ありがとう奏斗。ありがとう。」
顔は見えないが、空気が柔らかくなり、フッと微笑んでいるかのような音がした。
「雛も、翼も、雄馬も、皆もう謝らないで。お互い様だから。それより、俺の気持ちをからかったり、否定したり、面白がったりしないでくれてありがとう。それが本当に嬉しい。」
その言葉で、3人の空気も心なしか和らいだ。奏斗の心からの言葉を、その奥にある心情をしっかりと受け止めたのだ。
奏斗も安心していた。彼らなら大丈夫なのだと。気持ちを否定するような人ではない。受け入れる努力をしようとしているわけではない。ただそのまま受け止めてくれた。そこにあるままの感情を理解してくれた。さも普通であるかのように。
「明後日、雪と話したいと思ってる。そこで、俺の気持ちを伝える予定。本当は明日のつもりだったんだけど、雪も今日のことがあるから、きっと考える時間がほしいだろうなと思って。時間が取れるかどうか聞いてみるよ。」
「「「ありがとう」」」
3人はとりあえずはホッとする。自分たちが直接言っては警戒されてしまうだろうし、そもそも連絡手段がない。とにかくもう一度会って話す機会が欲しい。結果はどうであれ、伝えないといけないことがあるのだ。全員そう思ったのか、空気が引き締まったような感じがした。
「俺は、間違っていたのかもしれない。」
そんな空気感を弱弱しく破るかのように、奏斗が呟く。
「雪が、ずっと何かを考え込んでいるようだったんだ。ずっと何かを抱えて生きていて、でもそこに土足で踏み込むのはよくないと思った。だから、いつか雪が話したいと思ったとき、それを聞いて一緒に考えたり、悩んだりできるように準備していようと思った。でも、結局雪を一人にしてしまった。待ってるって言ったけど、本当は俺が怖かっただけなんだ。自分の気持ちと向き合って、雪に踏み込んでいくのが怖かったんだ。」
悲しそうに、自嘲めいた笑いをこぼす。過去の行動や思考を悔やむように。
翼がそっと口を開く。
「皆そうだ。誰だって、気持ちと向き合うのは怖い。人と向き合うのは怖い。その相手が大切であればあるほどに。失うことや、今の居心地の良い関係性が崩れることを恐れるから。俺も怖いよ。さっきもすっげえ怖かった、お前と、そして自分と向き合うの。でも、怖いけど、しこりを残したままでいたくない。心の底から笑っていられる、そんな関係でいたいから。」
真剣に言葉を選びながら話す。
「奏斗は自分が間違えたと思うかもしれない。俺も今日間違えた。いや、今日だけじゃない。気づいていたのに、見て見ぬふりをした。だから、間違いを正したいと思う。お前と、彼と、笑い合えるように。もし、それがうまくいかなくても、その間違いを認識して、それを背負って生きていきたい。」
おそらくは泣いているであろう雛と雄馬の涙声でうなずく声がうっすらと聞こえる。奏斗は深く呼吸をする。
「うん、そうだね。俺も、正したい。背負いたい。ありがとう、翼、雄馬、雛。」
本当に良い友人をもったものだ、と心の中で呟く。見ようとしないと見えないものがある。見たくないものは勝手に現れてくるのに、本当に見たいものは自分から働きかけないと見ることができない。
「ありがとう。」
もう一度、そう伝える。
すると、涙声と鼻水の音が混ざってはいるが、同じ言葉が返ってきた。
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