死神探偵事務所

十六路木

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調査 File.2 クレーマー

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「宣告する。お前はもう俺には勝てない」

 「炎龍王だと?!ふざけるな、何故こんな小僧に!」

『黙れ。神なんぞの存在を崇めて好き勝手する貴様らがこの男を語るな』

「さぁどうする?ここで今までの罪を認めて特別警察に引き渡されるか、ここで死ぬか。選べ」

 蓮と腕の鎧に埋め込まれている宝石の中にいるフレイムに睨まれ、アルゴルは怯みながら足元に魔法陣を展開した。

「この借りは必ず返す!さらばだ!」

「あ、待ちやがれ!」

 蓮は叫びながら走り出したが、アルゴルの方が早く、その姿は光に包まれて消えた。

「くっそ!また逃がした!」

 そう言いながら蓮は腕の龍化を解いた。

「兄さん、今日は腕大丈夫!?」

「ん?あぁ、今日は力使ってねぇから大丈夫だよ。それに、フレイムも食いたくて食ってんじゃねぇよ」

『すまねぇな蓮。俺の力がお前に適合出来ねぇで』

「気にすんな、しょうがねぇだろ」

カードから聞こえる声は、先程の宝石から聞こえていた蓮曰くフレイムというドラゴンの声だ。

「心配しないなんて無理だよ。兄妹なんだもん……」

「分かってるよ」

 そう言って蓮は日和の頭を撫でた。
 それを見ていた優奈は、怯えながら蓮達に近付いた。

「何なの?」

「え?」

「あなた達は一体何なの?死神だとか新世界派とか、何なの?!」

「………………分かった。話すから、事務所に行かないか?」

「兄さん、それは」

 蓮の言葉に、日和は慌てた様子で会話を阻んだ。

「所長に、死神の事は無闇矢鱈と口にするなって言われてるじゃん。それに、兄さんも話して大丈夫なの?」

「大丈夫だって。責任は俺が取るし、所長も許すだろ」

 今も目の前で行われている会話に優奈は取り残されていた。

「とあえず、連れて行って」

 それに耐えかねたのか、優奈は急ぐ事を促した。

「あ、悪い。それじゃあ行くか」

 蓮はそれを受け入れて、懐からスマホを取り出して誰かに電話をかけ始めた。

「佐久間か?悪いけど迎え来てくんね?あ、わかった。サンキュー」

「兄さん?何で佐久間呼んだの?」

「え?お前が喜ぶだろうと思って」

「連君、その佐久間って人は誰なの?」

「あぁ、俺達の同僚で日和の彼氏」

「え?」

「ちょっ!」

ブーーーーン キュルルルッ

「お、丁度来たみたいだ。行こうぜ」

「え?ちょっと待ってよ!」

「兄さんなんで言うの?!」

 混乱する二人を見てニコッと笑い、振り返りながら言った。

「いやいや、どうせバレるだろ」

「三人とも何やってんのー?早く乗れよー」

「ほら、お前の王子様がお呼びだぜ」

 ただニヤッと笑って日和を一瞥した後に何事も無かったのように蓮は佐久間と呼ばれた青年の乗る車に歩きだした。

そして数分後。

「所長。こちらの依頼人、立原 優奈さんに死神や新世界派の事などの情報を開示したいのでその許可を頂きに来ました」

 死神探偵事務所の奥手にある机。その机に手をついて蓮はそう言った。それに対して所長と呼ばれた男は一つため息をつき、優奈を見た。

「これで会うのは2度目ですね。立原さん」

「は、はい。えっと…」
「そうですね。名刺を渡しましたが流石にそれだけでは覚えられませんか。それではもう一度自己紹介と行きましょうか。私の名前は大上 達也と申します」

「あ、大上さん。すみません」

「いえいえ、構いませんよ」

 ニコりと笑い優奈に構わないと伝えると、今度は蓮の方を向いた。

「さてと、蓮。接触があったのか?」

「はい、そのまま戦闘に入りましたが取り逃しました」

「それはいい。優奈さんとお前達に怪我は?」

「ありません」

 蓮の発言に達也はもう一度ため息をつき、一枚のカードを取り出して呟いた。

かい

 その言葉と共に蓮の身体を光が包み、その光が弾けると綺麗だった衣服が砂や血に汚れていった。

「隠せると思ったか?」

「ちっ」

 蓮は舌打ちをしながら頭を掻いた。

「上級術はセコい」

「お前が使わせたんだろ」

「くっ…そ、それより説明の事!」

((((誤魔化した…))))

「まぁそうだな。とにかく、説明は俺からするからお前はシャワーと着替えと治療だ」

「ういーす」

 蓮は上着を脱ぎながら扉を開いて隣の部屋へと入っていった。

「さてと、それでは話しますかね。まずは新世界派の説明です。奴らはここ数年で急激に勢力を拡大させた武装宗教組織です。自らの信仰する神の為に人を容赦なく殺害し、その殺害した人を生贄と呼びます。彼らの特徴は能力者の数です。全ての能力者の人数と比べれば微々たる物ですが、なんせ能力は多く存在し、一つの能力の中でも多くの派閥があります。その事を考えると奴らはかなり大手の能力者集団です。
続いて私達死神の能力者の事を。死神の能力とは、死神の力の断片をカードに封じ込めてそのカードの力を解放する事によって力を得ます。
そもそも死神の能力は儀式を行うか、生まれ持つ能力が変化しなければその力を使う事は出来ません。極稀に神器と呼ばれる上級の能力や武器を発現させる者もいます。そしてその死神の能力者を集めて作られた組織がここ、死神探偵事務所という訳です」

「つまりは、ここの職員は全員能力者なんですか?」

「いえ、違います。この事務所には一般人も含まれます。事務員や秘書、助手。それにアルバイト等もここでは働いています」

「え?アルバイトもいるんですか?」

「はい、条件は少しありますが。大体高卒認定のある者なら雇います」

 その言葉に少し驚きつつ、優奈は少し躊躇いながら口を開いた。

「じゃあ、あの……私をここで雇って貰えませんか?」

「「「え?」」」

「え?ちょい優奈どったの?」

「そうっすよ優奈さん!」

「理由をお聞きしてもよろしいですか?」

 優奈は再度躊躇いながらも、意を決した様に顔を上げて口を開いた。

「失職しました!」

「…え?」

「えっと、え?」

「あの、経緯をお聞きしても?」

「新世界派のストーカー行為のせいで会社に迷惑がかかると人事課に言われて…」

「あぁ、そういう事ですか」

「優奈さん、非常に言いづらいっすけど……それも多分新世界派の仕業だと思います」

ガチャッ

「多分じゃなくて確実だろ」

 その時、髪を濡らしジーパンに上裸の上からパーカーを羽織っただけの格好で出てきた。

「きゃあっ?!」

「ちょっ、兄さん!今優奈がいる!」

「ん?あ、忘れてた」

 蓮はそう言いながらパーカーの前のチャックを閉めた。

「ていうか、どうするんすか?」

「まぁ、判断はこの依頼が終わってからだな」

「だってよ」

「ありがとうございます!」

 優奈がお辞儀をした瞬間、蓮の表情が強ばった。

「優奈、じっとしてろ」

「え?」

「いいから」

ブチッ!

蓮が優奈の首の後ろ辺りで手を握ると、何かが潰れた様な音が事務所に響いた。

「え?」

「ちっ、使い魔か。気付けなかった」

 そして次の瞬間に蓮は窓の方を睨んだ。

「所長。監視されてます」

「だな」

 事務所が緊張感に包まれる中、とある廃工場の様な場所ではローブを纏った集団が居た。

「アルゴル様。監視用の使い魔が一匹やられました」

「そうですか。しかし使い魔程度にも気付かない様な相手に負けたとあっては私の名誉に傷が付きますからね。ある意味安心ですよ」

 そして二つの場所で声が重なる。

「「次は、確実に仕留める」」
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