初恋の人が親衛隊になるなんて聞いてない!

tomoe97

文字の大きさ
4 / 22

3

しおりを挟む
無理矢理口に突っ込まれた焼きそばパンに死にかけ、その辺にあったコーラで流し込む。
会長が俺のだぞとか言ってきたけど知ったことではない。

「お、動き出した」

「殺す気ですか!」

隣でへらへらと笑う顔に怒りを覚えたが、その行為で我に帰れたのもまた事実だった。
見渡すと今は中庭のベンチ。恐らく、会長が引きずってきてくれたのだろう。

「感謝しろよ。お前の分、わざわざ売店まで出向いて買ってきたんだから」

「え、会長……」

「田中が。」

会長じゃないんかい。少しでも期待した自分が馬鹿だった。
というか田中君、パシリに使ってごめんと心の中で謝罪しておいた。


「陽貴のこと好きなの?」

「……あぁ、はい。そうです」

どうせ隠したって仕方ないが、このニヤニヤ顔の会長に言うのはすごく、なんかこう釈だった。

そして根掘り葉掘り聞かれたので、小学生の時に同じ図書委員会だったこと、卒業式の日に告白されたこと、連絡出来なかったこと、今でも好きなことを正直に話した。

「お前ら……こじらせてるな」

「やっぱりそうですよね……」

「両思い確定でなんでわざわざ遠回りするんだろうな。あいつは。」

二人で顔を見合わせて溜息をついた。

「あ、でも考えみたら僕の親衛隊なんて出来ないか」

「ん?なんでそう思う」

何故なら、親衛隊は役職持ち、またはファンクラブ総数が50人を超える大所帯でなければ結成されず、殆どがファンクラブ止まりだからだ。

「ファンクラブならまだ規律とかも緩いしなんとかなるかも!」

ファンクラブは、その会にもよるが殆どが遊び半分の軽い気持ちで入っている人が多い。顔ファン、なんとなく、周りが入っているから、人数集めなどよくよく聞けば全然ファンじゃないみたいな人もいたりする。
掛け持ちも有りなのでいくつも加入することもできる。

対して親衛隊は風紀委員会に申請をして、メンバーについても厳正な調査をした上で正式に決定される。
その際に規則やルールなどを親衛対象と話し合った上で、決めていく。

親衛隊と親衛対象が恋愛関係になることは隊の規律を乱すことになりかねる。

皆を平等に愛することが出来なければ、不平等感が生まれるので、親衛隊としてのモチベーションが低下してしまうのだ。

なので、親衛対象に好きな人、若しくは恋人がいる場合にはそれでも入りたい人だけが隊に残り、もし親衛隊に入っていれば抜けるという暗黙の了解がある。

「残念ながら、お前のファンクラブ元々50人超えてたからいけると思う」

僕のファンクラブ???50人超えてる???

「き、聞いてない……」

「田中が作ったやつ」

確かに、田中君が前にファンクラブがどうのこうの話をしていた気がする。田中君は常に勢いが強いから適当に頷いていることが仇となってしまった。

「で、でも!それなら田中君が親衛隊隊長になるべきですよね!」

僕は藁にも縋る思いで会長の目を見るも、会長はあの田中だぞと言わんばかりの顔をしていた。

「俺の親衛隊に入っている田中が、俺に似た男に何かをお願いされて、駄目と言う筈がない」

それはそう。
なんなら親衛隊隊長を譲る気しかしない。


「あ、嶺くん。こんな所にいた!真柴くん~嶺くん居たよ~!」

噂をしていれば田中君がやってきた。
隣には何故か少し顔を赤らめた真柴くん。

とてつもなく嫌な予感しかしない。

「嶺くん……、いや、嶺様。」

嫌な予感は的中した。真柴くん跪いてるし。会長は笑い堪えてるし、田中君はうんうん頷いてる。めちゃくちゃ顔を見てるから顔ファンになって言いくるめられたことは間違いなかった。


「この度、嶺様の親衛隊を設立させていただきました。隊長は僭越ながら自分が務めます」

真柴くんの演説のような挨拶は続いた。
この学園に入学してからファンクラブや親衛隊の存在を知ったこと。僕が会長の親衛隊隊長だったこと。
それが何故か悔しくて絶対に負けられないという気持ちが湧いたこと。
だから、誰にも負けないような親衛隊を作ろうと思ったこと。

ずれてる……。真柴くん、惜しいよ……。

思考が体育会系すぎる真柴くんは話し終えた後に満足気に立ち上がった。

「これから頑張ります!また放課後にお迎えに上がります!それでは!!!」

「次、移動教室だから先行くね~。会長と嶺くんも急ぎなよ~」

真柴くんと田中君は嵐のように去り、呆気に取られる僕と、笑いすぎて咳が止まらない会長だけが残された。

「あ~……あいつスポーツ推薦だから。」


フォローになっているのか微妙な会長に舌打ちをした。




そうして放課後になると、宣言通り真柴くんが教室に迎えに来てくれた。
教室では会長にそっくりな美形の登場に騒然としていた。

「嶺様、お迎えに上がりました」

その呼び方辞めて欲しいと思いつつ、顔の良さに強くは出られない僕は小心者だ。
鞄を持ちたがる真柴くんを躱しながらなんとか廊下に出ると、会長に首根っこを掴まれたので変な声が出た。


「お前ら、生徒会室行くぞ」

有無を言わさぬ会長の勢いは、真柴くんもそっくりだなと思いつつ。
抵抗しても良いことは無いので黙って引きずられながら僕達は生徒会室に向かった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

眠りに落ちると、俺にキスをする男がいる

綿毛ぽぽ
BL
就寝後、毎日のように自分にキスをする男がいる事に気付いた男。容疑者は同室の相手である三人。誰が犯人なのか。平凡な男は悩むのだった。 総受けです。

【柳原学園】いやいや、俺は『俺様生徒会長』だから

西園 斎
BL
家の都合で『俺様』を演じてる生徒会長が、生徒会やら風紀やら教師やらから好かれるお話。 演技俺様会長総受け(愛され)/後固定CP *10年以上前の作品を、やや加筆修正していきます

ビッチです!誤解しないでください!

モカ
BL
男好きのビッチと噂される主人公 西宮晃 「ほら、あいつだろ?あの例のやつ」 「あれな、頼めば誰とでも寝るってやつだろ?あんな平凡なやつによく勃つよな笑」 「大丈夫か?あんな噂気にするな」 「晃ほど清純な男はいないというのに」 「お前に嫉妬してあんな下らない噂を流すなんてな」 噂じゃなくて事実ですけど!!!?? 俺がくそビッチという噂(真実)に怒るイケメン達、なぜか噂を流して俺を貶めてると勘違いされてる転校生…… 魔性の男で申し訳ない笑 めちゃくちゃスロー更新になりますが、完結させたいと思っているので、気長にお待ちいただけると嬉しいです!

劣等アルファは最強王子から逃げられない

BL
リュシアン・ティレルはアルファだが、オメガのフェロモンに気持ち悪くなる欠陥品のアルファ。そのことを周囲に隠しながら生活しているため、異母弟のオメガであるライモントに手ひどい態度をとってしまい、世間からの評判は悪い。 ある日、気分の悪さに逃げ込んだ先で、ひとりの王子につかまる・・・という話です。

台風の目はどこだ

あこ
BL
とある学園で生徒会会長を務める本多政輝は、数年に一度起きる原因不明の体調不良により入院をする事に。 政輝の恋人が入院先に居座るのもいつものこと。 そんな入院生活中、二人がいない学園では嵐が吹き荒れていた。 ✔︎ いわゆる全寮制王道学園が舞台 ✔︎ 私の見果てぬ夢である『王道脇』を書こうとしたら、こうなりました(2019/05/11に書きました) ✔︎ 風紀委員会委員長×生徒会会長様 ✔︎ 恋人がいないと充電切れする委員長様 ✔︎ 時々原因不明の体調不良で入院する会長様 ✔︎ 会長様を見守るオカン気味な副会長様 ✔︎ アンチくんや他の役員はかけらほども出てきません。 ✔︎ ギャクになるといいなと思って書きました(目標にしましたが、叶いませんでした)

Q.親友のブラコン兄弟から敵意を向けられています。どうすれば助かりますか?

書鈴 夏(ショベルカー)
BL
平々凡々な高校生、茂部正人«もぶまさと»にはひとつの悩みがある。 それは、親友である八乙女楓真«やおとめふうま»の兄と弟から、尋常でない敵意を向けられることであった。ブラコンである彼らは、大切な彼と仲良くしている茂部を警戒しているのだ──そう考える茂部は悩みつつも、楓真と仲を深めていく。 友達関係を続けるため、たまに折れそうにもなるけど圧には負けない!!頑張れ、茂部!! なお、兄弟は三人とも好意を茂部に向けているものとする。 7/28 一度完結しました。小ネタなど書けたら追加していきたいと思います。

俺は夜、社長の猫になる

衣草 薫
BL
冤罪で職を追われた葵は、若き社長・鷹宮に拾われる。 ただし条件は――夜は“猫”として過ごすこと。 言葉を話さず、ただ撫でられるだけの奇妙な同居生活。 タワマン高層階の部屋で、葵は距離を崩さない鷹宮に少しずつ惹かれていく。 けれど葵はまだ知らない。自分が拾われた本当の理由を。

聞いてた話と何か違う!

きのこのこのこ
BL
春、新しい出会いに胸が高鳴る中、千紘はすべてを思い出した。俺様生徒会長、腹黒副会長、チャラ男会計にワンコな書記、庶務は双子の愉快な生徒会メンバーと送るドキドキな日常――前世で大人気だったBLゲームを。そしてそのゲームの舞台こそ、千紘が今日入学した名門鷹耀学院であった。 生徒会メンバーは変態ばかり!?ゲームには登場しない人気グループ!? 聞いてた話と何か違うんですけど! ※主人公総受けで過激な描写もありますが、固定カプで着地します。 他のサイトにも投稿しています。

処理中です...