初恋の人が親衛隊になるなんて聞いてない!

tomoe97

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僕がシャワーを浴びている間に、会長が食堂からデリバリーを頼んでいてくれたらしくテーブルには二人分のサンドイッチ、サラダ、スープが並んでいた。
このデリバリーシステムは、忙しいのと人気すぎてまともにご飯にありつけないことが多い生徒会役員と風紀委員会の特権でもあり、会長は食堂に行くのが面倒でよく利用している。


「……美味しそう」

「足りなかったらまた頼むから、食うぞ」

ポンポンと、ソファの空いているスペースを叩く会長。

「僕の部屋なんですけど……」

文句は言いつつ、食欲には抗えない。大人しく隣に座り、サンドイッチに手を伸ばした。
この学園は無駄にお金がかかっているので食堂のクオリティも高い。
僕の実家はお金持ちでも何でもなく、ただの一般家庭なのでいつも食堂ではコスパ重視のうどんかカレーの二択しか頼んだことがない。
普段ならあまり食べないお洒落な軽食。サンドイッチの中には分厚いベーコンがふんだんに入っていて、粒マスタードとの相性が良い。
サラダも、瑞々しくて新鮮さを感じる。
スープはこれまた優しい味で時間をかけて煮込まれた深い味わいだ。

僕がじっくりと味わって食べているうちに、会長は飽きたのかとっくに食べるのを止めていて、僕の観察をしていた。

微笑ましいと思われているであろう笑顔が妙に気恥ずかしい。
穴が空くほど見つめらている気がする。
特に会話をすることなく黙々と食べ進めることに集中した。



「それで、これからどうするか」

「これから、とは」

はぁ、と深いため息をついたかと思えば、呆れた表情を浮かべた。

「何の為に陽貴とお前を生徒会に入れたと思ってんだよ」

そりゃ、もちろん自分が楽する為でしょ。

「俺が楽する為じゃねぇからな」

心の中を見透かされたようで驚いた。

それから、僕と会長は話し合った。

まず、僕達の現状は、会長から見ても両思いなのに親衛隊制度のせいで告白することもされることも難しくなった、ということ。

これによって、全く進展が見込めなくなったということ。

つまりは、僕は長年想い続けた初恋の人が近くに現れたというのに、あの頃と同じまま。
付き合うことも、その先も、何一つ望めないということ。

「そんなの!困る!!!!!」

一つ一つを整理していく内に、状況がやばいことに改めて気が付いた。
どんどん青ざめていく僕のおでこを会長が叩いた。

「だから、作戦会議だって言ってんだろ」

会長の提案はこうだった。

生徒会に入れたのは、強制的に二人の時間を作る為。
真柴くんはスポーツ推薦、特別寮に入っている。学年も違うのでわざわざ来てもらう以外に接点は無い。
しかし、生徒会補佐という立場なら二人で作業する時間が増える。
しかも、そこで僕がアピールを頑張れば、真柴くんが耐えきれなくて告白するかもしれない、と。
そうなればこっちのもの。親衛隊を解散させるなり脱退するなり、如何様にもなる。

「……確かに」

「両思いになったら親衛隊解散させればいいんじゃねぇ?多分」

会長は得意げに笑っていた。なんだか、適当な所はあったし、結局自分が楽をしたい口実なんじゃないか、という気持ちは拭えなかったが、割と的確な作戦だと思う。

「……なんで、そこまで考えてくれるんですか」

「……お前らには幸せになってほしいからな」

会長の顔は少しだけ寂しそうな気がした。
けれど、それが何でなのかは分からなかった。



その夜、話し合いも終わり片付けも済んだので寝るかとベッドに向かった所、既に会長に占拠されていてさっきまでの頼もしさはどこにいったんだと手が出そうになった。

真ん中で大の字で寝ていたので、会長を壁際まで追いやり、無理矢理ベッドに入ることで事なきを得た。

掛け布団は全て一人で使っても文句は言えないだろう。
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