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次の日の朝、真柴くんが部屋まで迎えに来てくれた。
かろうじて顔を洗って寝癖は直してはいたものの、学校に行く準備が全く終わってなかったので、部屋に入ってもらった。
すると、すっかり忘れていたけれど会長が泊まっていたことと、僕のベッドで寝ていて、そのことに真柴くんがショックを受けて、校舎に向かう道も話しかけても上の空になってしまい、殆ど無言のまま教室で別れた。
去り際に「兄さんとやっぱり……」とか何とか呟いていたけれど、雰囲気が怖すぎて声はかけられなかった。
「どうしたの?なんか落ち込んでない?」
心配した田中君が話しかけてくれたけど、僕は真柴くんに何か盛大に勘違いされている気がして気が気ではなかった。
授業も身が入らず、田中君や会長が移動教室に連れていってくれたり、先生に当てられても答えを教えてもらった。
そうこうしている内に昼休みになり、真柴くんから連絡をもらったので中庭で会うことになった。
「嶺様、お昼ご飯です。こちらをどうぞ」
「え、お弁当?真柴くんが作ったの?」
色とりどりの美味しそうなおかずが沢山入ったお弁当。
肉巻き、卵焼き、かぼちゃのサラダ、しゅうまい、ミニトマトなど僕の好物ばかり。
僕が思わず感動の声を上げると真柴くんは照れた様子で笑った。
「俺、自炊得意なんです。嶺く…様にも是非食べて貰いたくて、田中先輩に色々聞いて作りました」
そういうことなら、とありがたくお弁当を受け取ることにした。
「……美味しい!」
安心したのか、嬉しそうな顔をした真柴くんに胸が締めつけられる。
お弁当作ってもらったりとか、中庭で食べるとか、こんなの付き合ってるも同然じゃない?
僕が内心浮ついた気持ちでまったり噛み締めながら食べていると、隣に座る真柴くんはすでに食べ終え、姿勢を正していた。
「嶺様、昼食中に申し訳ないのですが、本日は親衛隊のルールを決定したいと思っています」
「は、はい……」
慌ててお弁当をかきこみ、僕もそれに倣って姿勢を正す。
僕は生徒会長親衛隊でのルールを先に話すことにした。
学園の親衛隊の中でも一番の人数が所属しているし、特にその一とそのニは歴代の生徒会長親衛隊のルールをそのまま踏襲しているからだ。
その一、会長に告白してはならない。
歴代の生徒会長もそうだったらしいが、僕達の代も、まだ生徒会長になる前のファンクラブだった時からとにかく告白されまくった。
会長は節操なしなので付き合うことはしないものの、とりあえず手は出すので隊の規律が乱れてしまう。
親衛隊を作る時に、一応セフレ関係は一掃してもらい、なるべくひっそりしてくれと会長本人にはお願いをしている。あんまり守られてはいないけれど。
もし本気で恋心を抱いた場合は諦めるか、親衛隊を抜けることが一番だろう。
そのニ、会長の日常生活の邪魔にならない。
会長が人気なことはよく分かっているので、プライベートに深く関わりすぎないでおこうというルールだ。
特に、今の代は親衛隊長の僕と副隊長の田中君がクラスが同じなので何かとサポートも出来る。
朝の支度や寮までの付き添いについては会長が僕を指名しているので他の隊員は見守るくらいしかすることはない。
それでも大丈夫だと言う隊員のみ、入隊が認められる仕組みだ。
会長自身が一人の相手に縛られたくない人なので、不平等感が生まれないようにこうしたルールを設定した。
その三、学生生活に支障がないように。試験の成績は上位を目指す。
これは、僕が作ったルール。
生徒の代表である生徒会長を慕う隊であるからこそ、他の学生から手本になるような親衛隊を目指している。
試験前には勉強会を開くなど、親衛隊での活動で成績が落ちたと言われない為のルールだ。
そういう訳で、今の生徒会長親衛隊は他の親衛隊と比べると穏健派だと思う。
会長と隊員との距離感は一定に別れてるし、特に派閥や揉め事も起こる事はない。
田中君曰く、会長の顔が良すぎて遠くから眺めるくらいが丁度良いんじゃないか、とのこと。
中身は割とどうしようもないし。
他の親衛隊、特に副会長の親衛隊なんかはもっとルールが厳しくて何十個もあるらしいし、必要最低限以外は親衛隊と関わらないように言われているそう。
「田中先輩にも相談したら、基本的には生徒会長親衛隊と同じでいいんじゃないかって……俺もそう思ってます」
僕は複雑な心境で頷いた。
このルールを認めたら、両思いには遠回りになる。
でも、無法地帯にする訳にもいかないし、隊長だけ特別にとはいかないのも分かる。
特に、僕の隊であるなら、僕が踏襲した歴代のルールに倣わないのはおかしいと言われる可能性もあるだろう。
「あ、でも一つだけ追加して欲しいかも」
「はい!なんでもおっしゃって下さい!」
真柴くんの立場も考えて、あまり口出しをするのはよそうと思った。けれど一つだけ変えたいことはある。
「様付けで呼ばれるのは嫌かな。嶺くん、とか先輩にして」
「え……」
どうしても昔のように、嶺くんって呼ばれたかった。
距離が出来た気がして切なくて。
親衛隊になってしまったから仕方ないのかもしれないけれど、そこだけは譲れなかった。
「……だめ?」
「あ、の……そんな、烏滸がましくて」
「昔は呼んでくれたじゃん、お願い」
そう言うと真柴くんは眉を顰めて分かりました……と渋々了承したところで昼休みが終わるチャイムが鳴り、慌てて教室に戻った。
「嶺……くん!帰りにまた迎えに来ます!では!」
絶望的だった僕の恋が一歩前進した気がして、その後の授業はうきうきで受けることが出来た。
この時はこれから大波乱が起こるとは知らずに。
かろうじて顔を洗って寝癖は直してはいたものの、学校に行く準備が全く終わってなかったので、部屋に入ってもらった。
すると、すっかり忘れていたけれど会長が泊まっていたことと、僕のベッドで寝ていて、そのことに真柴くんがショックを受けて、校舎に向かう道も話しかけても上の空になってしまい、殆ど無言のまま教室で別れた。
去り際に「兄さんとやっぱり……」とか何とか呟いていたけれど、雰囲気が怖すぎて声はかけられなかった。
「どうしたの?なんか落ち込んでない?」
心配した田中君が話しかけてくれたけど、僕は真柴くんに何か盛大に勘違いされている気がして気が気ではなかった。
授業も身が入らず、田中君や会長が移動教室に連れていってくれたり、先生に当てられても答えを教えてもらった。
そうこうしている内に昼休みになり、真柴くんから連絡をもらったので中庭で会うことになった。
「嶺様、お昼ご飯です。こちらをどうぞ」
「え、お弁当?真柴くんが作ったの?」
色とりどりの美味しそうなおかずが沢山入ったお弁当。
肉巻き、卵焼き、かぼちゃのサラダ、しゅうまい、ミニトマトなど僕の好物ばかり。
僕が思わず感動の声を上げると真柴くんは照れた様子で笑った。
「俺、自炊得意なんです。嶺く…様にも是非食べて貰いたくて、田中先輩に色々聞いて作りました」
そういうことなら、とありがたくお弁当を受け取ることにした。
「……美味しい!」
安心したのか、嬉しそうな顔をした真柴くんに胸が締めつけられる。
お弁当作ってもらったりとか、中庭で食べるとか、こんなの付き合ってるも同然じゃない?
僕が内心浮ついた気持ちでまったり噛み締めながら食べていると、隣に座る真柴くんはすでに食べ終え、姿勢を正していた。
「嶺様、昼食中に申し訳ないのですが、本日は親衛隊のルールを決定したいと思っています」
「は、はい……」
慌ててお弁当をかきこみ、僕もそれに倣って姿勢を正す。
僕は生徒会長親衛隊でのルールを先に話すことにした。
学園の親衛隊の中でも一番の人数が所属しているし、特にその一とそのニは歴代の生徒会長親衛隊のルールをそのまま踏襲しているからだ。
その一、会長に告白してはならない。
歴代の生徒会長もそうだったらしいが、僕達の代も、まだ生徒会長になる前のファンクラブだった時からとにかく告白されまくった。
会長は節操なしなので付き合うことはしないものの、とりあえず手は出すので隊の規律が乱れてしまう。
親衛隊を作る時に、一応セフレ関係は一掃してもらい、なるべくひっそりしてくれと会長本人にはお願いをしている。あんまり守られてはいないけれど。
もし本気で恋心を抱いた場合は諦めるか、親衛隊を抜けることが一番だろう。
そのニ、会長の日常生活の邪魔にならない。
会長が人気なことはよく分かっているので、プライベートに深く関わりすぎないでおこうというルールだ。
特に、今の代は親衛隊長の僕と副隊長の田中君がクラスが同じなので何かとサポートも出来る。
朝の支度や寮までの付き添いについては会長が僕を指名しているので他の隊員は見守るくらいしかすることはない。
それでも大丈夫だと言う隊員のみ、入隊が認められる仕組みだ。
会長自身が一人の相手に縛られたくない人なので、不平等感が生まれないようにこうしたルールを設定した。
その三、学生生活に支障がないように。試験の成績は上位を目指す。
これは、僕が作ったルール。
生徒の代表である生徒会長を慕う隊であるからこそ、他の学生から手本になるような親衛隊を目指している。
試験前には勉強会を開くなど、親衛隊での活動で成績が落ちたと言われない為のルールだ。
そういう訳で、今の生徒会長親衛隊は他の親衛隊と比べると穏健派だと思う。
会長と隊員との距離感は一定に別れてるし、特に派閥や揉め事も起こる事はない。
田中君曰く、会長の顔が良すぎて遠くから眺めるくらいが丁度良いんじゃないか、とのこと。
中身は割とどうしようもないし。
他の親衛隊、特に副会長の親衛隊なんかはもっとルールが厳しくて何十個もあるらしいし、必要最低限以外は親衛隊と関わらないように言われているそう。
「田中先輩にも相談したら、基本的には生徒会長親衛隊と同じでいいんじゃないかって……俺もそう思ってます」
僕は複雑な心境で頷いた。
このルールを認めたら、両思いには遠回りになる。
でも、無法地帯にする訳にもいかないし、隊長だけ特別にとはいかないのも分かる。
特に、僕の隊であるなら、僕が踏襲した歴代のルールに倣わないのはおかしいと言われる可能性もあるだろう。
「あ、でも一つだけ追加して欲しいかも」
「はい!なんでもおっしゃって下さい!」
真柴くんの立場も考えて、あまり口出しをするのはよそうと思った。けれど一つだけ変えたいことはある。
「様付けで呼ばれるのは嫌かな。嶺くん、とか先輩にして」
「え……」
どうしても昔のように、嶺くんって呼ばれたかった。
距離が出来た気がして切なくて。
親衛隊になってしまったから仕方ないのかもしれないけれど、そこだけは譲れなかった。
「……だめ?」
「あ、の……そんな、烏滸がましくて」
「昔は呼んでくれたじゃん、お願い」
そう言うと真柴くんは眉を顰めて分かりました……と渋々了承したところで昼休みが終わるチャイムが鳴り、慌てて教室に戻った。
「嶺……くん!帰りにまた迎えに来ます!では!」
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この時はこれから大波乱が起こるとは知らずに。
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