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次の日、迎えに来た真柴くんが、僕の顔を見るなり恐る恐る質問をぶつけてきた。
「兄さんと嶺くんは、本当に付き合ってないんですか?」
「……さあね。どっちでもいいでしょ」
自分でも分かるくらい、声のトーンが低かった。 昨日の、あの転校生に対して真柴くんがあからさまにデレデレしていたことが、どうしても頭から離れなかった。
僕の目の前であんなふうに笑うなんて。 何を話していても、僕といる時よりもずっと柔らかい笑顔で。 あの顔を思い出すだけで胸の奥がざらつく。
「何か怒ってますか?」
「怒ってない」
「……そう、ですか」
怒ってないわけがないだろ、と思いながら、わざと視線を逸らした。
結局、気まずいまま教室の前で別れ、僕たちの間にはまた小さな距離が出来た。 手を伸ばせば届く距離なのに、何か透明な壁があるようだった。 話しかけようとすると、言葉が喉の奥で溶けてしまう。
放課後。 そんな気まずい状況にも関わらず、今は文化祭準備期間なので生徒会の活動は休めない。 嫌でも顔を合わせなければいけない。
「柊くん、入っていいよ~」
「失礼します!」
会計の林くんが同じクラスで仲良くなったらしく、あの転校生を生徒会室に連れてきた。 おかげで、会長の機嫌は目に見えて悪化。 空気は最悪だった。
副会長と真柴くんは、あからさまに楽しそうに転校生の話に加わっている。
「それでさ、クラス企画の出し物、もう決まったの?」 「まだですけど、たぶんカフェになるかもです」 「いいね。制服とかどうするの?」
そんな他愛のない話題で笑い合う二人の声が、生徒会室の端まで響く。
会長は眉間にしわを寄せ、僕は無言で資料をホチキス留めしていた。 副会長は書類を一枚も手に取らず、他の二人も話をしているだけで手は動いていない。 結局、まともに作業しているのは会長と僕だけだった。
「……陽貴。仕事は終わったのか?」
「えっ? あ、あとでやります!」
「あ?そんなんで許す訳ねぇだろ」
会長の低い声に、真柴くんは肩を跳ねさせて作業を再開した。 僕はそんなやりとりを見ながら、こっそりため息をついた。
一週間ほど、そんな状態が続いた。 誰かがふざけて、会長が怒って、結局仕事は僕と会長に回ってくる。 ある日の放課後、生徒会室を開けると、そこには誰もいなかった。
「あいつら……この忙しい時期に……」
机の上には、書類の山と空になったコーヒーカップがいくつも並んでいた。
「会長、もう倒れちゃいますよ。寝てください」
「寝たら終わらない」
「でもこのままじゃ、倒れます」
会長は返事の代わりに軽く笑った。 その笑い方が、いつもより弱々しく見えた。
風紀委員会から見かねて手伝いの申し出があったけれど、会長は頑なに断ったという。
「俺たちの仕事は、生徒会で終わらせる」
そう言って。
彼のそんな真面目さを知っているからこそ、余計に見ていられなかった。
書記の武くんがたまに来て自分の仕事と書類の整理をしてくれるのが唯一の救いだった。 それでも副会長と会計の分の穴は埋まらない。 目まぐるしい忙しさの中、文化祭当日がじりじりと近づいてくる。
「告白イベント?」
そんなある日、放送委員会の会議室に呼び出された。
僕は生徒会長親衛隊として。生徒会としても呼ばれていた。
文化祭二日目の夕方に行われるステージの“告白イベント”の説明を受けるためだった。
このイベントは、どんな相手にも告白できるチャンスを与えるというもの。 生徒会役員だろうが、風紀委員だろうが、誰でも。 この日だけは全てのルールを一時的に取り払う、という。
説明が終わった途端、会議室がざわめきに包まれた。
「つまり……生徒会長とかにも告白できるってこと?」
「そういうことです」
放送委員の部長が微笑んで頷く。
「ちょ、ちょっと待ってください!」
と真柴くんが手を挙げた。
「そんな、親衛隊持ちとか関係なくって……それ、混乱しませんか?」
「むしろ、それを目的としてるんですよ」
さらっと返された説明に、真柴くんは黙り込んだ。
この学園ならではの、特殊な親衛隊制度をよく思ってない人も大勢いる。
けれど、声を上げるには色々と面倒が起きそうで黙っているしかないのが現実だ。
僕は少しだけ期待した。もしかしたら真柴くんもこのイベントに参加するのではないか、と。
「いいんじゃないか?誰にだってチャンスは平等だ」
周囲が騒然とする中、会長が静かにそう言って、ぐるっと会議室中を見回した。
その言葉に、誰も反論できなかった。 最終的に、イベントの間と、そこで成立したカップルについてはルールを適用しないことで話がまとまった。
もし、イベントで真柴くんに告白されたら、僕はOKするんだろうか。
その夜、寮の自室でベッドに横たわりながら、天井を見つめて考えた。 蛍光灯の明かりがぼんやり白く滲む。 正直言って、段々と自分の気持ちが分からなくなっていた。
僕は真柴くんのどこが好きなんだろう。 昔は、彼が笑うだけで心臓が跳ねていた。 隣にいれるだけで嬉しかったし、他の誰かと話しているのを見ると嫉妬した。 だけど今は、そういう気持ちがどこか鈍くなっている。
顔も、声も、見た目も――全部、会長と似ているせいで。 むしろ、会長のほうが落ち着いていて、大人で、話していて安心できる。
最近では、業務連絡以外で真柴くんと話すことも減った。 彼が他の子たちと楽しそうに笑っている姿を見かけるよりも、会長の仕事の負担を考える方が胸の奥がもやもやする。 それは怒りなのか、同情からなのか、自分でも分からない。
だって、会長はこの状況に根を上げることもなく、遅くまで黙々と残っている。 疲れているくせに僕の分の仕事まで減らそうとしてくれて、「ありがとう」と頭を撫でてから笑う。 その笑顔を見ていると、胸が熱くなる。
――あれ?
もしかして、僕は真柴くんじゃなくて、とっくに会長のことを好きになっているのかもしれない。
そう気づいた瞬間、息が止まった。 頬がじわじわと熱くなる。
「うそ……」
呟いた声が震えていた。 今までの自分の行動が、全部恥ずかしく思えてくる。 だって、同じベッドで平然と寝たり、着替えの時やお風呂上がりに裸を見られても何にも気にならなかったのに。 それが今となっては、思い出すだけで心臓が跳ねる。
明日から会長の顔をまともに見られないかもしれない。 そう思って、布団を頭までかぶった。
天井の灯りが滲んで、視界が少しだけぼやける。 僕は自分の心をなんとか落ちつけようと、そっと目を閉じた。
「兄さんと嶺くんは、本当に付き合ってないんですか?」
「……さあね。どっちでもいいでしょ」
自分でも分かるくらい、声のトーンが低かった。 昨日の、あの転校生に対して真柴くんがあからさまにデレデレしていたことが、どうしても頭から離れなかった。
僕の目の前であんなふうに笑うなんて。 何を話していても、僕といる時よりもずっと柔らかい笑顔で。 あの顔を思い出すだけで胸の奥がざらつく。
「何か怒ってますか?」
「怒ってない」
「……そう、ですか」
怒ってないわけがないだろ、と思いながら、わざと視線を逸らした。
結局、気まずいまま教室の前で別れ、僕たちの間にはまた小さな距離が出来た。 手を伸ばせば届く距離なのに、何か透明な壁があるようだった。 話しかけようとすると、言葉が喉の奥で溶けてしまう。
放課後。 そんな気まずい状況にも関わらず、今は文化祭準備期間なので生徒会の活動は休めない。 嫌でも顔を合わせなければいけない。
「柊くん、入っていいよ~」
「失礼します!」
会計の林くんが同じクラスで仲良くなったらしく、あの転校生を生徒会室に連れてきた。 おかげで、会長の機嫌は目に見えて悪化。 空気は最悪だった。
副会長と真柴くんは、あからさまに楽しそうに転校生の話に加わっている。
「それでさ、クラス企画の出し物、もう決まったの?」 「まだですけど、たぶんカフェになるかもです」 「いいね。制服とかどうするの?」
そんな他愛のない話題で笑い合う二人の声が、生徒会室の端まで響く。
会長は眉間にしわを寄せ、僕は無言で資料をホチキス留めしていた。 副会長は書類を一枚も手に取らず、他の二人も話をしているだけで手は動いていない。 結局、まともに作業しているのは会長と僕だけだった。
「……陽貴。仕事は終わったのか?」
「えっ? あ、あとでやります!」
「あ?そんなんで許す訳ねぇだろ」
会長の低い声に、真柴くんは肩を跳ねさせて作業を再開した。 僕はそんなやりとりを見ながら、こっそりため息をついた。
一週間ほど、そんな状態が続いた。 誰かがふざけて、会長が怒って、結局仕事は僕と会長に回ってくる。 ある日の放課後、生徒会室を開けると、そこには誰もいなかった。
「あいつら……この忙しい時期に……」
机の上には、書類の山と空になったコーヒーカップがいくつも並んでいた。
「会長、もう倒れちゃいますよ。寝てください」
「寝たら終わらない」
「でもこのままじゃ、倒れます」
会長は返事の代わりに軽く笑った。 その笑い方が、いつもより弱々しく見えた。
風紀委員会から見かねて手伝いの申し出があったけれど、会長は頑なに断ったという。
「俺たちの仕事は、生徒会で終わらせる」
そう言って。
彼のそんな真面目さを知っているからこそ、余計に見ていられなかった。
書記の武くんがたまに来て自分の仕事と書類の整理をしてくれるのが唯一の救いだった。 それでも副会長と会計の分の穴は埋まらない。 目まぐるしい忙しさの中、文化祭当日がじりじりと近づいてくる。
「告白イベント?」
そんなある日、放送委員会の会議室に呼び出された。
僕は生徒会長親衛隊として。生徒会としても呼ばれていた。
文化祭二日目の夕方に行われるステージの“告白イベント”の説明を受けるためだった。
このイベントは、どんな相手にも告白できるチャンスを与えるというもの。 生徒会役員だろうが、風紀委員だろうが、誰でも。 この日だけは全てのルールを一時的に取り払う、という。
説明が終わった途端、会議室がざわめきに包まれた。
「つまり……生徒会長とかにも告白できるってこと?」
「そういうことです」
放送委員の部長が微笑んで頷く。
「ちょ、ちょっと待ってください!」
と真柴くんが手を挙げた。
「そんな、親衛隊持ちとか関係なくって……それ、混乱しませんか?」
「むしろ、それを目的としてるんですよ」
さらっと返された説明に、真柴くんは黙り込んだ。
この学園ならではの、特殊な親衛隊制度をよく思ってない人も大勢いる。
けれど、声を上げるには色々と面倒が起きそうで黙っているしかないのが現実だ。
僕は少しだけ期待した。もしかしたら真柴くんもこのイベントに参加するのではないか、と。
「いいんじゃないか?誰にだってチャンスは平等だ」
周囲が騒然とする中、会長が静かにそう言って、ぐるっと会議室中を見回した。
その言葉に、誰も反論できなかった。 最終的に、イベントの間と、そこで成立したカップルについてはルールを適用しないことで話がまとまった。
もし、イベントで真柴くんに告白されたら、僕はOKするんだろうか。
その夜、寮の自室でベッドに横たわりながら、天井を見つめて考えた。 蛍光灯の明かりがぼんやり白く滲む。 正直言って、段々と自分の気持ちが分からなくなっていた。
僕は真柴くんのどこが好きなんだろう。 昔は、彼が笑うだけで心臓が跳ねていた。 隣にいれるだけで嬉しかったし、他の誰かと話しているのを見ると嫉妬した。 だけど今は、そういう気持ちがどこか鈍くなっている。
顔も、声も、見た目も――全部、会長と似ているせいで。 むしろ、会長のほうが落ち着いていて、大人で、話していて安心できる。
最近では、業務連絡以外で真柴くんと話すことも減った。 彼が他の子たちと楽しそうに笑っている姿を見かけるよりも、会長の仕事の負担を考える方が胸の奥がもやもやする。 それは怒りなのか、同情からなのか、自分でも分からない。
だって、会長はこの状況に根を上げることもなく、遅くまで黙々と残っている。 疲れているくせに僕の分の仕事まで減らそうとしてくれて、「ありがとう」と頭を撫でてから笑う。 その笑顔を見ていると、胸が熱くなる。
――あれ?
もしかして、僕は真柴くんじゃなくて、とっくに会長のことを好きになっているのかもしれない。
そう気づいた瞬間、息が止まった。 頬がじわじわと熱くなる。
「うそ……」
呟いた声が震えていた。 今までの自分の行動が、全部恥ずかしく思えてくる。 だって、同じベッドで平然と寝たり、着替えの時やお風呂上がりに裸を見られても何にも気にならなかったのに。 それが今となっては、思い出すだけで心臓が跳ねる。
明日から会長の顔をまともに見られないかもしれない。 そう思って、布団を頭までかぶった。
天井の灯りが滲んで、視界が少しだけぼやける。 僕は自分の心をなんとか落ちつけようと、そっと目を閉じた。
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