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16(終)
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季節は静かに春へと移ろっていく。
木々には桜の蕾がつき始め、柔らかな風に揺れるたびに、昨日までの慌ただしさが遠い記憶のように感じられる。
僕は、今日も生徒会室にいる。 会長の隣で、親衛隊として一歩距離を置いていたのは、もう過去の話だ。 付き合い始めた今、僕は会長の親衛隊を抜けた。ルールを守れないで、隊長なんてつとめるべきではないと思ったから。
意外なことに、会長と僕の関係を応援してくれている子が大半でそのまま親衛隊に居てほしいと言ってくれる声が多く、引き留められたが例外を作るのは嫌だったので辞めた。
肩の力を少し抜いた状態で、会長を見守る立場ではなく、一緒に歩む存在として隣にいる。
会長は、いつものように整然とした机上で書類に目を通している。 しかし、視線を上げると、僕の存在にふと気づく瞬間があり、その度に軽く微笑むのだ。 その笑顔は、日常の隙間に、温かい光を差し込むようだった。
「嶺」
突然、会長が声をかける。 僕は手を止め、書類から目を上げる。
「なに?」
会長は微かに笑い、書類を指で押さえたまま言った。
「実はな……次期生徒会長を、陽貴に推薦しようと思ってる」
一瞬、驚きで目を見開く。 真柴くんが、次期生徒会長──? あの彼が?
「え……本当に?」
会長はにやりとした表情で、少し得意げに胸を張る。
「もちろん。そのために、生徒会補佐にしたんだ」
そのために生徒会補佐にした……? 僕の頭の中で言葉が何度も反響する。 そうか、僕と真柴くんが再会したあの時から会長はすべてを見越していたのだ。 真柴くんの気持ちと、そして自分の後任を育てるために、補佐に据えた──。
「会長……すごい……」
自然に感嘆の声が漏れる。 その言葉に、会長は少し得意げに肩を揺らし、さらに微笑む。
「ふふ、これで生徒会も、そして俺たちも、不安なことは何一つない」
会長のその言葉には、自信と余裕が混じっている。 彼は完璧主義者であり、すべてを計算し、先を見据えるタイプだ。
春休みが明け、僕たちは高校三年生としての新しい生活を始めた。 教室も変わり、新しいクラスメイトたちも増えたが、僕達の関係は変わらない。 いや、一つだけ変わったことはある。
それは、もう会長ではなくなったということだ。
予定通り、生徒会長を真柴くんに引き継いでから引退した。しかし、相変わらずの冷静さで生徒会活動の引き継ぎを真柴くんにしていて、僕はそれをそっと支えている。 でも、今度は「親衛隊」としてでも「生徒会補佐」としてでもなく、「恋人」として隣にいるのだ。
真柴くんは、一応形だけは僕の親衛隊のままだけど、生徒会の活動が忙しくて特に何も行動に移すことは出来なくなった。
それも、冬貴の思惑通りなのかもしれないと思うと、少し笑えた。
ある日、廊下で真柴くんとすれ違った。 少し照れくさそうに手を振る彼に、冬貴はさりげなく微笑み返す。 そして僕に向かって、軽く小声で言った。
「嶺くん、兄さんをよろしくお願いします」
僕はうなずき、胸の奥で安心感が広がる。 あの真柴くんが生徒会長として立つこと。 そして冬貴がそれを見越していたこと。
放課後、冬貴の部屋で二人きりになれる大切な時間。 僕たちの間には、自然な会話と笑いがある。 関係性が変わっても、すでに心の距離は十分に縮まっている。 冬貴の熱い視線を追うたびに、胸の奥が熱くなり、目をそらせない自分がいる。
「嶺」
冬貴がそっと声をかける。 僕は顔を上げ、彼の瞳に目を合わせる。
「これからも、ずっと一緒だ」
その言葉に、心の奥でほっとする。 長い迷いも、すれ違いも、すべてがこの瞬間のためにあったのだと、深く納得できる。
僕は自然に笑い、頬を赤くして冬貴の身体に微かに寄り添う。 その距離感は、かつての緊張や不安とは違う、安心感に満ちたものだ。 冬貴もまた、微笑みながら手を伸ばし、僕の肩に軽く触れる。
「嶺、愛してる」
小さな声だったけれど、重みと温かさがある。 頷き返す僕の心には、確かな幸福が満ちていた。
窓の外では春風がそよぎ、桜の花びらが静かに舞う。 冬貴の手を握り、胸の奥の高鳴りを感じながら、僕は新しい日常を噛み締める。
「これから、いろんなことがあるだろうけど……」
冬貴が小さく笑った。 その笑顔は、すべてを超えた表情だった。
「でも、俺たちなら大丈夫だ」
僕は小さく頷き、その手を強く握る。 胸の奥で、すべての不安や迷いが溶け、確かな幸福感が広がる。
高校三年生の新学期。 冬貴との恋、真柴くんの生徒会長就任、皆んなとの新しい日常…… すべてが静かに、でも確かに、僕の心を満たしていく。 冬貴の手が頬を撫で、温かさが胸に残る。 長い迷いもすれ違いも、すべてが報われた瞬間。
そして、心の奥で小さくつぶやく。
これが、僕の選んだ恋。 すべての想いが重なり合った、この幸せを胸に抱きながら。
夕陽が落ち、暗闇が広がり静かに一日の終わりを告げる。 その中で、僕と冬貴はただお互いと、これからの日々を見つめていた。
(完)
僕は、今日も生徒会室にいる。 会長の隣で、親衛隊として一歩距離を置いていたのは、もう過去の話だ。 付き合い始めた今、僕は会長の親衛隊を抜けた。ルールを守れないで、隊長なんてつとめるべきではないと思ったから。
意外なことに、会長と僕の関係を応援してくれている子が大半でそのまま親衛隊に居てほしいと言ってくれる声が多く、引き留められたが例外を作るのは嫌だったので辞めた。
肩の力を少し抜いた状態で、会長を見守る立場ではなく、一緒に歩む存在として隣にいる。
会長は、いつものように整然とした机上で書類に目を通している。 しかし、視線を上げると、僕の存在にふと気づく瞬間があり、その度に軽く微笑むのだ。 その笑顔は、日常の隙間に、温かい光を差し込むようだった。
「嶺」
突然、会長が声をかける。 僕は手を止め、書類から目を上げる。
「なに?」
会長は微かに笑い、書類を指で押さえたまま言った。
「実はな……次期生徒会長を、陽貴に推薦しようと思ってる」
一瞬、驚きで目を見開く。 真柴くんが、次期生徒会長──? あの彼が?
「え……本当に?」
会長はにやりとした表情で、少し得意げに胸を張る。
「もちろん。そのために、生徒会補佐にしたんだ」
そのために生徒会補佐にした……? 僕の頭の中で言葉が何度も反響する。 そうか、僕と真柴くんが再会したあの時から会長はすべてを見越していたのだ。 真柴くんの気持ちと、そして自分の後任を育てるために、補佐に据えた──。
「会長……すごい……」
自然に感嘆の声が漏れる。 その言葉に、会長は少し得意げに肩を揺らし、さらに微笑む。
「ふふ、これで生徒会も、そして俺たちも、不安なことは何一つない」
会長のその言葉には、自信と余裕が混じっている。 彼は完璧主義者であり、すべてを計算し、先を見据えるタイプだ。
春休みが明け、僕たちは高校三年生としての新しい生活を始めた。 教室も変わり、新しいクラスメイトたちも増えたが、僕達の関係は変わらない。 いや、一つだけ変わったことはある。
それは、もう会長ではなくなったということだ。
予定通り、生徒会長を真柴くんに引き継いでから引退した。しかし、相変わらずの冷静さで生徒会活動の引き継ぎを真柴くんにしていて、僕はそれをそっと支えている。 でも、今度は「親衛隊」としてでも「生徒会補佐」としてでもなく、「恋人」として隣にいるのだ。
真柴くんは、一応形だけは僕の親衛隊のままだけど、生徒会の活動が忙しくて特に何も行動に移すことは出来なくなった。
それも、冬貴の思惑通りなのかもしれないと思うと、少し笑えた。
ある日、廊下で真柴くんとすれ違った。 少し照れくさそうに手を振る彼に、冬貴はさりげなく微笑み返す。 そして僕に向かって、軽く小声で言った。
「嶺くん、兄さんをよろしくお願いします」
僕はうなずき、胸の奥で安心感が広がる。 あの真柴くんが生徒会長として立つこと。 そして冬貴がそれを見越していたこと。
放課後、冬貴の部屋で二人きりになれる大切な時間。 僕たちの間には、自然な会話と笑いがある。 関係性が変わっても、すでに心の距離は十分に縮まっている。 冬貴の熱い視線を追うたびに、胸の奥が熱くなり、目をそらせない自分がいる。
「嶺」
冬貴がそっと声をかける。 僕は顔を上げ、彼の瞳に目を合わせる。
「これからも、ずっと一緒だ」
その言葉に、心の奥でほっとする。 長い迷いも、すれ違いも、すべてがこの瞬間のためにあったのだと、深く納得できる。
僕は自然に笑い、頬を赤くして冬貴の身体に微かに寄り添う。 その距離感は、かつての緊張や不安とは違う、安心感に満ちたものだ。 冬貴もまた、微笑みながら手を伸ばし、僕の肩に軽く触れる。
「嶺、愛してる」
小さな声だったけれど、重みと温かさがある。 頷き返す僕の心には、確かな幸福が満ちていた。
窓の外では春風がそよぎ、桜の花びらが静かに舞う。 冬貴の手を握り、胸の奥の高鳴りを感じながら、僕は新しい日常を噛み締める。
「これから、いろんなことがあるだろうけど……」
冬貴が小さく笑った。 その笑顔は、すべてを超えた表情だった。
「でも、俺たちなら大丈夫だ」
僕は小さく頷き、その手を強く握る。 胸の奥で、すべての不安や迷いが溶け、確かな幸福感が広がる。
高校三年生の新学期。 冬貴との恋、真柴くんの生徒会長就任、皆んなとの新しい日常…… すべてが静かに、でも確かに、僕の心を満たしていく。 冬貴の手が頬を撫で、温かさが胸に残る。 長い迷いもすれ違いも、すべてが報われた瞬間。
そして、心の奥で小さくつぶやく。
これが、僕の選んだ恋。 すべての想いが重なり合った、この幸せを胸に抱きながら。
夕陽が落ち、暗闇が広がり静かに一日の終わりを告げる。 その中で、僕と冬貴はただお互いと、これからの日々を見つめていた。
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