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第一章 友だちになろう
3 草笛の音
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子供達を部屋に戻し、マーサに騒がせた詫びをしてから、俺は庭を歩いていた。あの石礫がどこから飛んで来たのかが気になっていたのだ。
方向的に樹下の子供たちということはあり得ない。こっちの方だったよな、と、もし犯人がいたとしてもまだその場にいる事などはないよなと思いつつも、俺は歩いていく。
どこからか美しい笛の音色が響く。どこか切なく寂しいその音色は月の光の中に揺蕩う。導かれるように歩を進めると、少し開けた場所に出て、大きな大樹が現れた。
それは一幅の絵のようだった。木の枝に腰掛け長い脚を伸ばした美しい黒髪の少年。一枚の葉を唇にあて美しい音色を奏でている。思わず見惚れると、その目の覚めるような紺碧の瞳が俺を見た。
「何故、落とさなかった?」
「え?」
「お前は奴らにいじめられていただろう。落とすのだと思ったが」
「そんなことするはずないだろう!」
「何故? 」
アスラは本当に、不思議そうに俺を見る。
「ああ、みんなが見ていたからか」
「あれは、ただの脅しだ」
「俺なら、なめた真似をされたら、誰も見ていない場所で二度とそんなことができないように片を付ける」
すとっと身軽にアスラは、飛び降りこちらに近付いてくる。
「脅しとは、要求が叶えられない時にはそうするという意志がなければ、脅しではない。あの馬鹿な子供の返答次第では落とすこともあったのか? なければ、それは虚仮威しだ」
「それで結構。そんな選択肢はない!」
「ふーん」
俺に近付くと、アスラは俺の胸に手を置き、近くの木に押し付けた。顔を寄せ、耳元で囁く。
「落としていれば、面白いやつだと思ったのに」
「石礫はお前が放ったのか?」
「どうだと思う? だが、証拠も無くそんな事を聞いてどうするのだ? もし、濡れ衣だった場合、お前は俺にどんな代償を払う?」
そう言うと、アスラは俺の耳に噛み付き、舐める。ぞっと肌が粟立ち、俺が振り払うと、その美しい顔に笑みを浮かべ、去っていく。
「おやすみ。良い夜を」
月は冷たく輝き、その光は呆然とする俺を白々と照らしていた。
方向的に樹下の子供たちということはあり得ない。こっちの方だったよな、と、もし犯人がいたとしてもまだその場にいる事などはないよなと思いつつも、俺は歩いていく。
どこからか美しい笛の音色が響く。どこか切なく寂しいその音色は月の光の中に揺蕩う。導かれるように歩を進めると、少し開けた場所に出て、大きな大樹が現れた。
それは一幅の絵のようだった。木の枝に腰掛け長い脚を伸ばした美しい黒髪の少年。一枚の葉を唇にあて美しい音色を奏でている。思わず見惚れると、その目の覚めるような紺碧の瞳が俺を見た。
「何故、落とさなかった?」
「え?」
「お前は奴らにいじめられていただろう。落とすのだと思ったが」
「そんなことするはずないだろう!」
「何故? 」
アスラは本当に、不思議そうに俺を見る。
「ああ、みんなが見ていたからか」
「あれは、ただの脅しだ」
「俺なら、なめた真似をされたら、誰も見ていない場所で二度とそんなことができないように片を付ける」
すとっと身軽にアスラは、飛び降りこちらに近付いてくる。
「脅しとは、要求が叶えられない時にはそうするという意志がなければ、脅しではない。あの馬鹿な子供の返答次第では落とすこともあったのか? なければ、それは虚仮威しだ」
「それで結構。そんな選択肢はない!」
「ふーん」
俺に近付くと、アスラは俺の胸に手を置き、近くの木に押し付けた。顔を寄せ、耳元で囁く。
「落としていれば、面白いやつだと思ったのに」
「石礫はお前が放ったのか?」
「どうだと思う? だが、証拠も無くそんな事を聞いてどうするのだ? もし、濡れ衣だった場合、お前は俺にどんな代償を払う?」
そう言うと、アスラは俺の耳に噛み付き、舐める。ぞっと肌が粟立ち、俺が振り払うと、その美しい顔に笑みを浮かべ、去っていく。
「おやすみ。良い夜を」
月は冷たく輝き、その光は呆然とする俺を白々と照らしていた。
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