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第一章 友だちになろう
9 君は友だち
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「えっ……えっと……ちょっとそこまで狩りに……」
あれ、何か既視感があるような? と、混乱する頭で汗をかきながらアスラに答える。ますます、圧が強くなったような気がする。
「手足を縛り上げて閉じ込めておこうか、それともホカノモノはコロシツクシテしまおうか」
アスラは俺を見て、グランを見る。その瞳はうっすらと赤みを帯びて暗い。俺ははっとして声を上げた。
「アスラ! 起こさなくてごめん。俺は詳しい理由は話せないけど、グランを知っているんだ。王都の学園に入学してある事件を止めたい。俺に協力してくれないか?」
駆け寄って腕を掴み、目を合わせる。今のお前は殺すなんてことはしない。お前を軽んじたわけじゃない。過去、お前が世界を滅ぼしたなんて、俺はそんなことを死んでも告げるつもりはない。だから、話せないことも多いけれど、俺はお前を大切にしたいと思っている。
「お前は俺の何だ?」
「友達だろう?」
じっと目をそらさず見つめ続ける。僅かに赤みを帯びていた瞳はゆっくりと明るい空の色に戻っていく。
「ならば共に行こう」
俺は、心の中でほっと息をつくと、恐慌状態になっているグランを宥める。自分を超える魔力の持ち主には初めて出会ったのだろう。
「彼はなんだ!?」
危険ではないのか!? とアスラの異常性に気付いているようだ。魔界の封印が解かれたわけではないので、俺もここまでアスラが既に力を使えるとは思っておらず驚いていた。普段はそれほど魔力を感じないが、先ほどのように規格外なことを為す。
「ま、まさか!? 伝説にある魔の者!?」
グランの目が恐怖から抑えきれない興味の色に変わるのに気づく。し、しまった! グランの興味の範疇に入ってしまったか!? それは、それでややこしいことになる。
「と、とにかくまずはぴーちゃんが優先だろう?」
俺たちは狭間に向かった。通常であれば界と界の薄くなった境界のような場所が入口となるが、グランは自身の魔術で転移可能だ。俺は過去にも、自分自身では転移魔術を習得することはできなかった。
過去の最後の瞬間に俺はこの世界とつながってしまった魔界に入ったが、それは崩壊寸前の世界だった。普通の人間は魔力の濃さによって魔界では生きられない。一方で狭間は力のある多くの人間が訪れる。魔界とこの世界の境界のような空間で、魔力が人間にも耐えることの出来る濃さであり、魔力の詰まった魔石や輝石があり、魔生物などもおり、危険も多いが手に入れることができると非常に実入りがよいのである。
「ぴーちゃんの鳴き真似をしてくれ」
「何だって!?」
「雌の魔鳥は雄の魔鳥の鳴き声でやってくるんだ」
「な、なるほど?」
そう言うと、グランはコホンっと咳払いを一つし、両手を広げバタバタ動かし身体を上下に屈伸しながら前後に動きだす。
「ギャギャキャギヤ、グギャッ!」
「あれは何をしている?」
「……うん。ぴーちゃんに成りきってんだ……きっと」
「鳴き声以外も真似する必要があるのか?」
「ないな!」
白銀の繊細な美貌をした少年が、全身全霊をもって魔鳥の奇妙な動きを真似ているのは、現実感がない光景である……。ちなみに、過去も鳴き声を真似るには成りきる必要がある! と同じことをしていた。
ぴぴぴと可愛いおとぎ話に出てきそうな白く丸い雌の小鳥が出てきて、グランは、魔法で作った白銀の鳥籠に収めた。うっとりと眺める様子は、心から恋い慕う思い人を眺めるようでもある。
俺は行きたくなかったが、そのままグランの転移魔法でグランの別宅の一つに向かう。結界を張っているのだろう。辺りに人気はなく、別宅の中に入らずとも、一角の屋根が崩れ中から白い羽毛がはみ出しているのが分かる。それは、顔を覗かせるとカッと全身の目を開き、こちらを見た。一面に広がった複数の目と、開いた大きな口の中のぎざぎざの歯は、夢に見そうな有様である。過去、目にした聖女は引き攣った顔をしながら丸焼きにしてしまって良いですか? と言っていた。割と可愛いもの好きの聖女は、期待を裏切られ衝撃を受けたのだった。
危うげなく、グランは、ぴーちゃんと雌の魔鳥の引き合わせを行い、みるみる縮んでいくぴーちゃんを確保した。
「ありがとう。僕も約束を果たそう。ただ、ぴーちゃんとは今夜一晩別れの時を過ごさせてくれ」
鳥籠に仲睦まじく寄り添う二羽の魔鳥の番を見ながら、悲しげに言う。
「分かった。だが、明日返す時は俺も付き添う」
どれほど、グランには魔の生物の騒ぎを起こされたか……。殊勝な感じで反省していても、何度もやらかすのだ。
「……うぅ……」
やはり、あわよくば番で飼おうと思っていたな……。俺たちはこうして、世界一の魔術師の推薦を持って、学園に入学することになる。それから、聖剣は聖物と認められたものの、俺を主と認定してしまっているのは、どうやっても変えられないようで、俺のものとなった。
「お前が学園に行きたい理由とはなんだ? 」
入学の前の晩、アスラに問われ、俺は答える。
「この国に、ナニカが入りこもうとしているんだ」
それは、あっという間に広がり多くの犠牲を出す。過去、この国が衰え、魔への抵抗が微々たるものになってしまったのは、その災厄があったためでもある。
あれ、何か既視感があるような? と、混乱する頭で汗をかきながらアスラに答える。ますます、圧が強くなったような気がする。
「手足を縛り上げて閉じ込めておこうか、それともホカノモノはコロシツクシテしまおうか」
アスラは俺を見て、グランを見る。その瞳はうっすらと赤みを帯びて暗い。俺ははっとして声を上げた。
「アスラ! 起こさなくてごめん。俺は詳しい理由は話せないけど、グランを知っているんだ。王都の学園に入学してある事件を止めたい。俺に協力してくれないか?」
駆け寄って腕を掴み、目を合わせる。今のお前は殺すなんてことはしない。お前を軽んじたわけじゃない。過去、お前が世界を滅ぼしたなんて、俺はそんなことを死んでも告げるつもりはない。だから、話せないことも多いけれど、俺はお前を大切にしたいと思っている。
「お前は俺の何だ?」
「友達だろう?」
じっと目をそらさず見つめ続ける。僅かに赤みを帯びていた瞳はゆっくりと明るい空の色に戻っていく。
「ならば共に行こう」
俺は、心の中でほっと息をつくと、恐慌状態になっているグランを宥める。自分を超える魔力の持ち主には初めて出会ったのだろう。
「彼はなんだ!?」
危険ではないのか!? とアスラの異常性に気付いているようだ。魔界の封印が解かれたわけではないので、俺もここまでアスラが既に力を使えるとは思っておらず驚いていた。普段はそれほど魔力を感じないが、先ほどのように規格外なことを為す。
「ま、まさか!? 伝説にある魔の者!?」
グランの目が恐怖から抑えきれない興味の色に変わるのに気づく。し、しまった! グランの興味の範疇に入ってしまったか!? それは、それでややこしいことになる。
「と、とにかくまずはぴーちゃんが優先だろう?」
俺たちは狭間に向かった。通常であれば界と界の薄くなった境界のような場所が入口となるが、グランは自身の魔術で転移可能だ。俺は過去にも、自分自身では転移魔術を習得することはできなかった。
過去の最後の瞬間に俺はこの世界とつながってしまった魔界に入ったが、それは崩壊寸前の世界だった。普通の人間は魔力の濃さによって魔界では生きられない。一方で狭間は力のある多くの人間が訪れる。魔界とこの世界の境界のような空間で、魔力が人間にも耐えることの出来る濃さであり、魔力の詰まった魔石や輝石があり、魔生物などもおり、危険も多いが手に入れることができると非常に実入りがよいのである。
「ぴーちゃんの鳴き真似をしてくれ」
「何だって!?」
「雌の魔鳥は雄の魔鳥の鳴き声でやってくるんだ」
「な、なるほど?」
そう言うと、グランはコホンっと咳払いを一つし、両手を広げバタバタ動かし身体を上下に屈伸しながら前後に動きだす。
「ギャギャキャギヤ、グギャッ!」
「あれは何をしている?」
「……うん。ぴーちゃんに成りきってんだ……きっと」
「鳴き声以外も真似する必要があるのか?」
「ないな!」
白銀の繊細な美貌をした少年が、全身全霊をもって魔鳥の奇妙な動きを真似ているのは、現実感がない光景である……。ちなみに、過去も鳴き声を真似るには成りきる必要がある! と同じことをしていた。
ぴぴぴと可愛いおとぎ話に出てきそうな白く丸い雌の小鳥が出てきて、グランは、魔法で作った白銀の鳥籠に収めた。うっとりと眺める様子は、心から恋い慕う思い人を眺めるようでもある。
俺は行きたくなかったが、そのままグランの転移魔法でグランの別宅の一つに向かう。結界を張っているのだろう。辺りに人気はなく、別宅の中に入らずとも、一角の屋根が崩れ中から白い羽毛がはみ出しているのが分かる。それは、顔を覗かせるとカッと全身の目を開き、こちらを見た。一面に広がった複数の目と、開いた大きな口の中のぎざぎざの歯は、夢に見そうな有様である。過去、目にした聖女は引き攣った顔をしながら丸焼きにしてしまって良いですか? と言っていた。割と可愛いもの好きの聖女は、期待を裏切られ衝撃を受けたのだった。
危うげなく、グランは、ぴーちゃんと雌の魔鳥の引き合わせを行い、みるみる縮んでいくぴーちゃんを確保した。
「ありがとう。僕も約束を果たそう。ただ、ぴーちゃんとは今夜一晩別れの時を過ごさせてくれ」
鳥籠に仲睦まじく寄り添う二羽の魔鳥の番を見ながら、悲しげに言う。
「分かった。だが、明日返す時は俺も付き添う」
どれほど、グランには魔の生物の騒ぎを起こされたか……。殊勝な感じで反省していても、何度もやらかすのだ。
「……うぅ……」
やはり、あわよくば番で飼おうと思っていたな……。俺たちはこうして、世界一の魔術師の推薦を持って、学園に入学することになる。それから、聖剣は聖物と認められたものの、俺を主と認定してしまっているのは、どうやっても変えられないようで、俺のものとなった。
「お前が学園に行きたい理由とはなんだ? 」
入学の前の晩、アスラに問われ、俺は答える。
「この国に、ナニカが入りこもうとしているんだ」
それは、あっという間に広がり多くの犠牲を出す。過去、この国が衰え、魔への抵抗が微々たるものになってしまったのは、その災厄があったためでもある。
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