私の家族は変わってる

松田ねこ太郎

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第五話

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 ヴィンセントさまは紳士的でとても優しい方だった。
 三年間の留学を経て一ヶ月前に帰国されたらしい。その間に数カ国巡り見解を広げてきたようで、彼の口から聞く他国の文化はとっても興味深くずっと聞きたいと思ってしまう。 説明が上手すぎてまるで目の前に映像が浮かぶようだった。物語のようでもあり旅行している気分になる。旅行日記なんて本が出せそう。そしたら買いたい。
 彼は自分の話だけではなく私の話もしっかり聞いてくれる。相槌だったり質問だったり、興味深そうに聞いてくれる様は今までのお見合いと全然違うと感じることができた。彼は“ミオ”の話を聞いてくれる。“シェドリー家の令嬢”ではない。ただ個人を認めてくれるだけでこんなにも違うのか。
 私を尊重してくれるのが嬉しくて、あんな人が夫だったら。そんなことを考えてしまい顔が熱くなる。
 
「あらあら。ミオったら真っ赤よ」
 
 お見合いから数日後、温室にあるテーブルセットで長女のミレーお姉さまとお茶をしていると私の様子に微笑んだミレーお姉さまの柔らかな体が波打つ。
 
「誰のことを考えているのかしら。目の前にいる私のことじゃないのはわかるわ」
「……ミレーお姉さま、意地悪しないで」
「可愛いわね。恋する乙女のような顔で。林檎のように真っ赤で食べちゃいたいぐらい」
「お姉さまに食べられると冷たくて息ができないから嫌よ」
「あら残念」
 
 全然残念じゃなさそうな表情で笑うお姉さまは温室に降り注ぐ光で輝いていて宝石みたいに綺麗だ。私の体は陽の光を普通に受け止めるから、お姉さまが羨ましい。
 
「あのね、婚約者ってどんなことをすればいいのかな。お姉さまはいつもお義兄さまとどんなことをしているの」
「まあ! あのミオからそんな言葉が聞けるなんて今日はなんて日かしら! お祝いしなくちゃいけないわ」
「やめてよー」
 
 勢いづいたミレーお姉さまがメイドを呼ぶために鈴を持つのを必死で止める。体が滑るからなかなか掴めないけど、今止めないとまた無駄に晩食が豪勢になってしまう。あんなのは婚約成立の日だけで十分。
 
「ミオが婚約を承諾したのだってお姉さますごく嬉しかったのよ。リューなんて自分が紹介したのに悔しそうにしていたもの。相変わらず感情の乱れ方が異常よねぇ」
「そんなの私の方がびっくりしたよ。まさかこんな私に求婚届が届くなんて思わなかったもん」
「相変わらずあなたは自分の魅力がわからないのね。こんなに素敵なのに勿体ないわ」
 
 柔らかくて冷たい手が頬を撫でる。包まれているような安心感があるミレーお姉さまはヴィンセントさまとの婚約をとても喜んでくれた。
 今までのお見合いが散々だったせいもあってか私が男性不信になっていたらと悩んでいたみたい。お見合いだって立会いたいと何度も申し出てくれたぐらい心配させたから余計かも。
 
「花束が届いたんでしょう。好かれているわね」
「そうなのかなぁ」
 
 今朝、彼から摘みたてだと言う薔薇の花束が届いた。部屋に飾ると薔薇の濃い香りが身体を包むように漂ってなんだかふわふわとした気持ちになったのだ。なんだか自分が浮かれていると感じるように落ち着かなくなって朝からヴィンセントさまのことばかり考えてしまう。
 
「きっと毎日届くわよ」
 
 確信を得たような表情をするミレーお姉さまは相変わらず光り輝いていた。
 
 
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