私の家族は変わってる

松田ねこ太郎

文字の大きさ
6 / 20

第六話

しおりを挟む
 
 

「おや、気に入ってもらえなかったかな」
「違うんです。その、毎日は多いかなって……」
 
 ミレーお姉さまの言う通り、その日から毎日私の元にプレゼントが届くようになった。
 花束はもちろん、私が遠慮しない程度のアクセサリーや調度品、お茶菓子などの数々。身につけるものだったり部屋に置くものだったり食べるものだったり、部屋の中がどんどんヴィンセントさまからの贈り物で埋め尽くされていく。
 あまりの多さに眩暈がしそうになったし、小さい宝石なのに絶対お高いだろうというアンクレットは怖くて着けられない。
 それに無駄にセンスが良くて、私好みで、受取拒否もできないぐらい素敵で……。いつもうっかり受け取ってしまって自己嫌悪に陥ってしまう。
 まだ婚約をして一ヶ月も経っていないのに、私の身の回りはヴィンセントさまに贈られたもので形成されていた。
 なんだかすごく彼が大好き! という感じで非常に恥ずかしい。いつも気合を入れてヴィンセントさまからのアクセサリーやドレスを選ぶメイドに喝を入れられない自分も悪いのだけど。
 
 数日おきにデートへ誘ってくれるヴィンセントさまはいつも穏やかな表情を浮かべ私との会話を楽しんでくれる。とても記憶力の良い方だから私が気に入っているものの話をすると決まってそれを覚えていて、昨日の晩御飯すら忘れてしまう私とは大違いだ。
 今日だって前々から気になっていたカフェに誘ってくれた。以前新しくオープンするんですよ、って何かの話のついでに伝えたことで私すら忘れていたぐらいなのに。
 わざわざ予約してくれていたのには驚いてしまった。
 
「多いことはないさ。寧ろ贈り足りないなって考えていたぐらいだからね」
「あれで贈り足りないって……。これ以上は無理です。私の部屋に入らなくなっちゃう!」
「それじゃあ困るから君の部屋を増やしておかなくちゃね」
 
 一部屋じゃ足りないなぁと言いながらコーヒーを飲んでいるが、これは私が嫁ぐ時には私の部屋を増やすということなのかな。今から結婚後の想像をして顔がじわじわ熱くなるのを感じて隠すように俯きながらケーキを食べる。
 このカフェの売りだというブラッディケーキは真っ赤な見た目で食べると舌が赤くなるという代物。ケーキなのに早く食べないと飲み物のように溶けてしまうらしい。早食いじゃないと食べれないじゃないと思ったのは内緒。
 店内は大賑わいで満席だし、早く食べなきゃって黙って食べているグループもあれば、笑いながらドリンクのように溶けたケーキを味わっているグループもいる。
 発案者はヴァンパイア一族のようだ。確かにウルフ族ならもっと固形の硬い食事を発案しそうだ。
 
「じゃあミオはどういうのが好きかな。どうせなら私の趣味じゃなくて君の趣味に合わせようか」
「私の趣味ですか? うーん。特別好きってものはないから悩みますね」
「愛用のカバンとか文房具とか色々あるだろう。そういうのはお気に入りを使うと思うんだけど、どういうのを使っているんだい。こだわりとかはないだろうか」
 
 膝に置いてあるショルダーバッグに触るとつるりとした触り心地のワイバーンの鱗がついている。
 
「私が使ってる物って全部お兄さまたちが選んでくれるんです。このカバンはリューお兄さまがプレゼントしてくれて、このスカートはミレーお姉さまが作ってくれて。……そう言えば私が選んでる物って食べ物ぐらいかも」
「それはそれですごいね……」
 
 今まであまり意識してこなかったけど、改めて考えるとすごい気がする。
 私自身趣味が悪いわけではないと思うけれど、選ばせてもらったことがない、いや、選ばせてもらえないわけではなくて、私を私以上に知っている人たちが選んでくれるので選んだことがないだけなんだ。言い訳みたいに聞こえるけど、本当に私以上に私のこと考えてくれるんだもの。託すしかないじゃない。
 決して私が趣味が悪いとかじゃないと思うの。たぶん。
 
 
 

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

夫と息子に邪険にされたので王太子妃の座を譲ります~死に戻ってから溺愛されても今更遅い

青の雀
恋愛
夫婦喧嘩の末に置き去りにされた妻は、旦那が若い愛人とイチャついている間に盗賊に襲われ、命を落とした。 神様の温情により、10日間だけこの世に戻った妻と護衛の騎士は、その10日間の間に心残りを処分する。それは、娘の行く末と……もし、来世があるならば、今度は政略といえども夫以外の人の妻になるということ。 もう二度と夫と出会いたくない彼女は、彼女を蔑ろにしてきた息子とも縁を切ることを決意する。 生まれかわった妻は、新しい人生を強く生きることを決意。 過去世と同じ轍を踏みたくない……

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています

藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。 結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。 聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。 侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。 ※全11話 2万字程度の話です。

次期国王様の寵愛を受けるいじめられっこの私と没落していくいじめっこの貴族令嬢

さら
恋愛
 名門公爵家の娘・レティシアは、幼い頃から“地味で鈍くさい”と同級生たちに嘲られ、社交界では笑い者にされてきた。中でも、侯爵令嬢セリーヌによる陰湿ないじめは日常茶飯事。誰も彼女を助けず、婚約の話も破談となり、レティシアは「無能な令嬢」として居場所を失っていく。  しかし、そんな彼女に運命の転機が訪れた。  王立学園での舞踏会の夜、次期国王アレクシス殿下が突然、レティシアの手を取り――「君が、私の隣にふさわしい」と告げたのだ。  戸惑う彼女をよそに、殿下は一途な想いを示し続け、やがてレティシアは“王妃教育”を受けながら、自らの力で未来を切り開いていく。いじめられっこだった少女は、人々の声に耳を傾け、改革を導く“知恵ある王妃”へと成長していくのだった。  一方、他人を見下し続けてきたセリーヌは、過去の行いが明るみに出て家の地位を失い、婚約者にも見放されて没落していく――。

妻からの手紙~18年の後悔を添えて~

Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。 妻が死んで18年目の今日。 息子の誕生日。 「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」 息子は…17年前に死んだ。 手紙はもう一通あった。 俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。 ------------------------------

あっ、追放されちゃった…。

satomi
恋愛
ガイダール侯爵家の長女であるパールは精霊の話を聞くことができる。がそのことは誰にも話してはいない。亡き母との約束。 母が亡くなって喪も明けないうちに義母を父は連れてきた。義妹付きで。義妹はパールのものをなんでも欲しがった。事前に精霊の話を聞いていたパールは対処なりをできていたけれど、これは…。 ついにウラルはパールの婚約者である王太子を横取りした。 そのことについては王太子は特に魅力のある人ではないし、なんにも感じなかったのですが、王宮内でも噂になり、家の恥だと、家まで追い出されてしまったのです。 精霊さんのアドバイスによりブルハング帝国へと行ったパールですが…。

存在感のない聖女が姿を消した後 [完]

風龍佳乃
恋愛
聖女であるディアターナは 永く仕えた国を捨てた。 何故って? それは新たに現れた聖女が ヒロインだったから。 ディアターナは いつの日からか新聖女と比べられ 人々の心が離れていった事を悟った。 もう私の役目は終わったわ… 神託を受けたディアターナは 手紙を残して消えた。 残された国は天災に見舞われ てしまった。 しかし聖女は戻る事はなかった。 ディアターナは西帝国にて 初代聖女のコリーアンナに出会い 運命を切り開いて 自分自身の幸せをみつけるのだった。

【完結】乙女ゲーム開始前に消える病弱モブ令嬢に転生しました

佐倉穂波
恋愛
 転生したルイシャは、自分が若くして死んでしまう乙女ゲームのモブ令嬢で事を知る。  確かに、まともに起き上がることすら困難なこの体は、いつ死んでもおかしくない状態だった。 (そんな……死にたくないっ!)  乙女ゲームの記憶が正しければ、あと数年で死んでしまうルイシャは、「生きる」ために努力することにした。 2023.9.3 投稿分の改稿終了。 2023.9.4 表紙を作ってみました。 2023.9.15 完結。 2023.9.23 後日談を投稿しました。

処理中です...