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2031年の時代に、、
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2031年5月。米国バージニア州にある秘密軍事施設のエンフィールド基地。ここの兵器用整備ハンガーに全長10メートルはある人型のマシンが複数機、メンテナンス作業を受けていた。
このマシンはMUV(マルチ ユニット ビークル)と呼ばれる多目的型の機械である。
今、このハンガーに格納されているのは全て米国の大手兵器メーカーであるデルタファウラー社製の軍用MUVである。各自の格納装置に戦闘攻撃型、中距離支援型、強行偵察狙撃型の機体が固定されていて、
整備スタッフが周りをひっきりなしに行き交いしていた。そのMUVのうちの一機 戦闘攻撃型のDF/A15通称ワイバーンのコクピットでレイモンド・デュース一等軍曹は小型ラップトップコンピューターの
キーボードを規則的に叩いていた。この時間帯をもっぱらデュースは訓練で得られた数値、例えば火器の命中精度に関するデータをコンピューターに入力してパターンを導き出す事に費やしていた。片手のデジタ
ルウォッチをチラリと見るとすでに時刻は13時半近く。このデータ入力に没頭して2時間は経っている。この一等軍曹は肩の凝りをほぐそうと一旦ラップトップから手を離した。
「またワイバーンを乱暴に扱いましたね、軍曹。私にこう言わせるのは何度目かしら?」その尖った若い女の声を聞いてデュースの中に不快感がわいてきた。赤みがかった鳶色の短い髪をなびかせ、
作業用のズボンと薄めの黒いジャケットを着ているこの女性をレイモンドは好きになれなかった。「聞いていますか?軍曹?」
「ああ、もちろんだよ、ミズ ブリュースター
乱暴に扱ったとかいうのはさっきのジャングルゾーンでの一件のことかな?」フィービー ブリュースターは無言でデュースを睨んでいた。確かにデュースも悪いとは思う。
彼は密林戦を想定した訓練施設、通称ジャングルゾーンで自分のワイバーンをひどい雨天の中、長時間にわたり沼地で稼働させていたのである。MUVのようなデリケートにできている精密機械をそんな粗悪な
環境下で使えば当然、故障の原因になりかねない。しかしデュースにも譲れない事があった。「いざ任務となればここのジャングルゾーン以上に過酷な自然環境にMUVを投
入することもある、そういう時に備えて訓練でデータ収集をしているんだ。」それでもブリュースターの方は納得しかねるという表情だった。「あなたのMUVは市民の納めた税金で造られたものなんですよ、も
っと慎重に扱ってください。それに、、、」彼女はつづけた。「機体のデータ収集や解析は私の仕事です、あなたの専門ではないわ」レイモンドは無言で聞いていた。
(まあ、そう言うよな、、、)ブリュースターは実を言うと軍人ではなくデルタファウラー社のエンジニアだった。彼女は会社の指示で自社製品のMUVのデータを収集するためにこのエンフィールド基地に来て
いた。そしてデュースと出会い、既に2ヶ月近くが経過していた。確かにブリュースターの主張は正しい、それを理解したいとデュースも思う。だが彼もまだ若い。才色兼備で歯に衣着せぬ言葉を使うブリュースタ
ーについ反感を抱いてしまうのだ。
「俺の視点も尊重してほしいんだよ、戦闘員としての俺の視点をね。実戦はワンパターンで進む事はまずない。アクシデントが必然的に起こる。だから(常に備え、それ
に汗を流せ)という基本に従うんだ。」ブリュースターが何の話か分からず、戸惑っているのを見て、急いでデュースも補足した。「前に所属していた部隊で教わった話だ。陸軍第85MUV空挺コマンド師団。
民間人の君が知るわけない。すまなかった。」 「とにかく、、、」ブリュースター嬢はデュースをまっすぐ見据えて言い出した。「軍曹とは議論を重ねて関係を調整するのが望ましいですね。私は自分のオフィス
に戻りますから、では、失礼します。」ブリュースターはゆっくりと背を向けてその場から歩き去った。その女性エンジニアの後ろ姿を何気なく眺めているとデュースはハッとした。
彼女の姿が仲違いをしている実の妹とどうしても重なって見えてしまうのだ。できれば考えないようにしているのに一人でいる時などには血を分けたその妹、ケイトについてあれこれ気にしてしまう。彼女からすれ
ば兄のレイモンドは任務ばかり優先して家族を無視していると思っている。(俺なりに考えていることもあるんだ。ケイト)去っていくブリュースターの後ろ姿を見つめてデュースは内心で愚痴をこぼした。さらに
心でこんな声が無意識に響いた(フィービーとケイトの件で苛立つ意味は無い。お前にはお前の戦争がある それなのに何でいつも意識する?、、、知るもんか。)彼はのろのろと身体を動かしてチーズバーガーを掴み遅い昼食にありついた。
このマシンはMUV(マルチ ユニット ビークル)と呼ばれる多目的型の機械である。
今、このハンガーに格納されているのは全て米国の大手兵器メーカーであるデルタファウラー社製の軍用MUVである。各自の格納装置に戦闘攻撃型、中距離支援型、強行偵察狙撃型の機体が固定されていて、
整備スタッフが周りをひっきりなしに行き交いしていた。そのMUVのうちの一機 戦闘攻撃型のDF/A15通称ワイバーンのコクピットでレイモンド・デュース一等軍曹は小型ラップトップコンピューターの
キーボードを規則的に叩いていた。この時間帯をもっぱらデュースは訓練で得られた数値、例えば火器の命中精度に関するデータをコンピューターに入力してパターンを導き出す事に費やしていた。片手のデジタ
ルウォッチをチラリと見るとすでに時刻は13時半近く。このデータ入力に没頭して2時間は経っている。この一等軍曹は肩の凝りをほぐそうと一旦ラップトップから手を離した。
「またワイバーンを乱暴に扱いましたね、軍曹。私にこう言わせるのは何度目かしら?」その尖った若い女の声を聞いてデュースの中に不快感がわいてきた。赤みがかった鳶色の短い髪をなびかせ、
作業用のズボンと薄めの黒いジャケットを着ているこの女性をレイモンドは好きになれなかった。「聞いていますか?軍曹?」
「ああ、もちろんだよ、ミズ ブリュースター
乱暴に扱ったとかいうのはさっきのジャングルゾーンでの一件のことかな?」フィービー ブリュースターは無言でデュースを睨んでいた。確かにデュースも悪いとは思う。
彼は密林戦を想定した訓練施設、通称ジャングルゾーンで自分のワイバーンをひどい雨天の中、長時間にわたり沼地で稼働させていたのである。MUVのようなデリケートにできている精密機械をそんな粗悪な
環境下で使えば当然、故障の原因になりかねない。しかしデュースにも譲れない事があった。「いざ任務となればここのジャングルゾーン以上に過酷な自然環境にMUVを投
入することもある、そういう時に備えて訓練でデータ収集をしているんだ。」それでもブリュースターの方は納得しかねるという表情だった。「あなたのMUVは市民の納めた税金で造られたものなんですよ、も
っと慎重に扱ってください。それに、、、」彼女はつづけた。「機体のデータ収集や解析は私の仕事です、あなたの専門ではないわ」レイモンドは無言で聞いていた。
(まあ、そう言うよな、、、)ブリュースターは実を言うと軍人ではなくデルタファウラー社のエンジニアだった。彼女は会社の指示で自社製品のMUVのデータを収集するためにこのエンフィールド基地に来て
いた。そしてデュースと出会い、既に2ヶ月近くが経過していた。確かにブリュースターの主張は正しい、それを理解したいとデュースも思う。だが彼もまだ若い。才色兼備で歯に衣着せぬ言葉を使うブリュースタ
ーについ反感を抱いてしまうのだ。
「俺の視点も尊重してほしいんだよ、戦闘員としての俺の視点をね。実戦はワンパターンで進む事はまずない。アクシデントが必然的に起こる。だから(常に備え、それ
に汗を流せ)という基本に従うんだ。」ブリュースターが何の話か分からず、戸惑っているのを見て、急いでデュースも補足した。「前に所属していた部隊で教わった話だ。陸軍第85MUV空挺コマンド師団。
民間人の君が知るわけない。すまなかった。」 「とにかく、、、」ブリュースター嬢はデュースをまっすぐ見据えて言い出した。「軍曹とは議論を重ねて関係を調整するのが望ましいですね。私は自分のオフィス
に戻りますから、では、失礼します。」ブリュースターはゆっくりと背を向けてその場から歩き去った。その女性エンジニアの後ろ姿を何気なく眺めているとデュースはハッとした。
彼女の姿が仲違いをしている実の妹とどうしても重なって見えてしまうのだ。できれば考えないようにしているのに一人でいる時などには血を分けたその妹、ケイトについてあれこれ気にしてしまう。彼女からすれ
ば兄のレイモンドは任務ばかり優先して家族を無視していると思っている。(俺なりに考えていることもあるんだ。ケイト)去っていくブリュースターの後ろ姿を見つめてデュースは内心で愚痴をこぼした。さらに
心でこんな声が無意識に響いた(フィービーとケイトの件で苛立つ意味は無い。お前にはお前の戦争がある それなのに何でいつも意識する?、、、知るもんか。)彼はのろのろと身体を動かしてチーズバーガーを掴み遅い昼食にありついた。
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