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尋問と回想
しおりを挟む「せっかくだ、この際、目玉をえぐった
方がいいんじゃないか? なあ、、
ボス?」
そんな、不気味な台詞を口にした者がいて、ますます、バクスターは胃がむかむかした。
(ヘクターより少し、年上だろうか?
確かサンテスとかいう名前だったな、、)
細身のヘクターより小太りで贅肉が目立ち、肌がやや浅黒い感じだった。
「黙れ、サンテス。お前の目をえぐるぞ」
凄みをきかせて尋問者のリーダーは一喝した。
その、リーダー格の男とバクスターの目が合った。
「殺せよ、好きなやり方で楽しめ、、」
バクスターは尋問者を睨み付け、そう虚勢を張った。
一方の相手は忌々しげに首を横に振った。
「俺は急ぎすぎるのは嫌いなんだ。 野蛮なやり方もな、、」
そして、バクスターは、
CIA本部で受けた、
この尋問者、アルドル・マレラについて
の説明を思い出していた。
極貧の家庭で育ち、
路上生活を経てカルテルのメンバーに拾われてから、この男は、
己の才覚、精神力のみで、辣腕を振るってきただけに、侮りがたいタイプであった。
マレラは、知恵が回り、心理的なテクニックにかけては、カルテル随一で、今までに、
囚われた、米国、又は、その他の情報機関員の多くが、このサディストとの心理戦に敗れ、
最後には、死体として、捨てられる末路を辿った。
バクスター自身、事前にCIA本部のラングレーで十分な尋問対策の訓練を受けたつもりだが、想像以上に苦しかった。
「おい、トニー?」
マレラが突然、口を開いた。
「お前がジャーナリストでないことは分かる モーテルにあった、書類や記者のID、パスポートでな、、特にIDの場合、俺は注意深く調べるようにしている。
どれも特別製の偽造だ」
バクスターは答えなかった。
「お前はアメリカの情報機関員だろ?所属は?国防省か、CIA、FBI、どうなんだ?」
バクスターはそれでも無言だった。
そして、あの、ヘクター、が怒りを露わにしてナイフの刃先をバクスターの眼球すれすれに突きつけた。
「いい加減にしろよ、、!クソアメリカ人が! 黙ってたって助からねえぞ、、
お前の友達 親兄弟まで 殺しつくしてやりてぇぜ!!」
バクスターはそれに対し、不敵に笑って言い返した。
「やってみろよ、、能無しが!」
ヘクターはその返答を受けて、顔が紅潮し、今にもナイフを
バクスターの目に刺し込もうかという勢いがあった。
しかし、考え直したのかナイフを引っ込めると後ろに下がると、突如、バクスターに唾を吐いた。
そして、薄笑いを浮かべると、こう、言い添えた。
「まあ、いいさ、お前は、
ボスの料理だ。どれだけ、
辛抱できるか、もう少し、
見物せてもらうぜ」
そして、ヘクターは口笛を吹きながら、離れていった。
そんな中 エメットはヘクターの言葉にあった友達というキーワードが妙に引っかかっていた。
彼には、友人と呼べる人間がほとんどいなかった。
その多くは10年以上前のヴェトナム戦争で死んでいたのだ。
多くの戦友は、エメットの知る限り、自らの信念を貫き、
戦場という状況下でも、冷静にプロとして生き、死に行った者たちだった。
しかし、それほどの、男たちでも、死ぬ時は死ぬ。
アメリカの世論を混乱させ、
誰からも理解を示されなかった、
あのヴェトナムの戦地で、
バクスターが生き延びることが
できたのは、
戦友たちの、助けがあったからだった。
(しかし、今の俺はどうだ?自分でヘマをして、アイツらのおかげで、保てた命を絶ってしまうかもしれない、状況にいるじゃないか、、)
バクスターはそう、自虐し、急に嫌悪感が、にじみ出たが、突然、ある記憶がフラッシュバックした。
(そういえば、まだ、いたな俺の友達、
いや、兄弟以上の間柄だった奴が、、
ダニエル、、お前は、
今どこにいるんだ?)
ダニエル・カッター。その男はバクスターがヴェトナムで一緒だった戦友の一人だった。
二人共、海軍特殊部隊SEALの隊員として、多くの作戦に従事し辛酸
を舐めてきたものだった。
長距離偵察活動、破壊工作、情報収集任務、ベトコンの指揮官級の人物を捕縛する、スナッチミッション、
いちいち挙げたら、21世紀まで、かかるのでないかという作戦数があった。
184cmの長身で、高校のフットボールで、鍛えた、たくましい肉体を持つ、バクスターと対照的に、
カッターは170cm、体重、70キロの小柄な体格の持ち主だった。
しかし、特殊部隊のSEALの隊員にふさわしく、筋骨隆々さはバクスターに負けず、
そして、誰よりも、足音を立てない術に長けていた。
このスキルは、ヴェトナムでの特殊作戦に関わる者たちから羨ましがられた。
それで、、カッターに付けられた、
あだ名が、ステルスブーツマンだった。
本人はこの、あだ名がイマイチ、
好きになれず、どうか、呼ばないようにしてくれ、、
と周囲に、懇願していたのをバクスターはずっと覚えていた。
カッターは、高校を卒業後、
自ら、志願して、軍の徴募事務所に行き、海軍に入隊後、またしても、
志願して、特殊作戦部隊要員のトレーニングコースを受けることにした。
そして、ヴェトナムでSEAL隊員の大幅な補充計画が持ち上がると、現地に派遣され
一足先に、戦場にいた、バクスターと、知り合った。
正直、カッターを部隊のキャンプで初めて、見たとき、バクスターはこれといって、特別に思うことはなかった。
ちょうど、その頃は、長距離の潜入偵察作戦の帰還直後で、疲れ切っていたのだ。
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