上 下
1 / 5

特殊部隊の二人その1

しおりを挟む
アメリカのみならず、他国の市民が思うと、ピンとは、こないだろう。


米海軍の要員は常に艦船の中にいるわけではなく、陸で、迷彩戦闘服を着て、作戦に関わる事があることを。



そういったことに従事するのは海軍の特殊なコマンド部隊に限る。その一つが

(ネイビーフォース)、と呼称される、

部隊で、機密性が高く、あまり、世間に名前が知れわたることはない。


そのネイビーフォース チーム1の隊員

ジョナサン ベイカー少尉は任務のため、

中東のウラグスタン国内にある、山脈の一帯にいた。


彼の隣には、ベテラン隊員の

スコット ビギロー中尉がいた。


二人とも、双眼鏡を手に、ある場所を監視していた。この状態を続けて、6時間以上は経過している。現地時間で、時刻は16時20分。


ベイカーは目を休める頃だと思い、一旦

双眼鏡を目から離した。

「ターゲットはもうすぐ、

    現れるはずでしょう。」


ベイカーは腕時計を見た。


「あと、10分のはずです。」


ビギローの方は、双眼鏡から、目を離さず、返答した。



「ライフルの点検をしろ

俺は無線で本部に連絡する。」


ベイカーはうなずいた。


若い少尉はブライトリング・アームズ社製の狙撃用ライフル銃に手を伸ばし、作動不良が無いか、確認に移った。



このBA/SR-mk.Ⅱ スナイパーライフル
は命中精度の面では非常に信頼できるもので、極限まで銃器に厳しいテストを課す、ネイビーフォースの信頼を勝ち取ったものの、一つである。


口径は7.62mmで、ボルトアクション式の発射方式を取り入れている。


銃身長は600mm以上、基本設計は複雑な部分を削り取り、シンプルなものとなっている。


この設計へのこだわりは、開発元のブライトリング・アームズ社が
米陸海軍の特殊部隊員が、シンプルな装備設計思想を、好んでいるのを認知しているところから、きている。


ビギローは衛星通信装置ANAF/ PNRC-15のヘッドセットを手にして、音声でやり取りしていた。


「キマイラ  ゼロワンより、

デルタ ・ワン・ワンへ、命令を確認した。 

ターゲットを排除後、合流ポイント

キャンパス シックスへ、向かう。以上。」



彼はそう言って、ヘッドセットを元に戻しベイカーの方を振り向いた。


「中尉、ライフルの方は、準備が

完了しました。天候、視界 、共に良好です。CDIA(中央国防情報局)の天気予報力に感謝ですね」


ビギローは思わず、微笑んだ。


ベテラン隊員はベイカーの隣に、腹這いになると狙撃の支援に使用する、観測スコープの調整に取りかかった。


ここからは、軍用双眼鏡ではムリがあるからだ。ビギローが偽装用ネットをかぶり出す中、


若い狙撃手も、偽装用ネットをかぶり、

腹這いになると、ライフルのスコープを覗き、そこから見える十字線を、ターゲットが現れるであろう、場所に合わせた。

トリガーには、いつでも、指をかけられるようにしていて、同時に呼吸の安定を図った。


「手際よく、奴を狩れると信じているよ、若人よ、距離680メートルだ、

風はやや強め、砂塵はない、理想的だな」



二人の狙撃チームがいる山脈の丘から600メートル以上、 木造の邸宅が一軒、あった。


目立つところはない、三階建ての家で、バルコニーや広い庭もあった。


そして、庭にはブランコとサッカーボールが見えた。


それが、チームの二人に多少の緊張を走らせた。


(子供がいるのか?くそ、情報と違う。)


これからの、二人の行い、


つまり、軍事作戦のために、殺人を犯すことを思うと、ためらいが、でた。


しかし、すぐに、二人の兵士は

そのためらいを打ち消し、目標の家に神経を集中した。

    
しおりを挟む

処理中です...